エッセンシャルワーカーとは?意味や代表的な職種・待遇支援の取り組みを解説

2022/8/21 2022/08/21

ワークライフバランス

医療従事者・エッセンシャルワーカー

新型コロナウイルスの蔓延や2021年の東京オリンピックの開催は、社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーという言葉に注目が集まるきっかけともなりました。その「エッセンシャルワーカー」とは、具体的にどのような言葉なのでしょうか。本記事では、その意味や職種のほか、近年、浮き彫りとなった課題に対する待遇支援の取り組みまでを解説します。

エッセンシャルワーカー(essential worker)の意味とは?

「必要不可欠」という意味を持つ「エッセンシャル(Essential)」の言葉が付けられたエッセンシャルワーカーとは、人々の日常生活の維持に欠かせない仕事、命や健康に関わる仕事に従事する人々のことを示しています。

エッセンシャルワーカーに該当する代表的な職種

厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、以下の職業を「自宅等で過ごす国民が、必要最低限の生活を送るために不可欠なサービスを提供する関係事業者」として定義しました。

ただし、これらはコロナ禍に関係なく日常生活を維持するために必要な職業であるため、エッセンシャルワーカーにも該当すると考えられます。

① インフラ運営関係(電力、ガス、石油・石油化学・LPガス、上下水道、通信・データセンター等)

② 飲食料品供給関係(農業・林業・漁業、飲食料品の輸入・製造・加工・流通・ネット通販等)

③ 生活必需物資供給関係(家庭用品の輸入・製造・加工・流通・ネット通販等)

④ 宅配・テイクアウト、生活必需物資の小売関係(百貨店・スーパー、コンビニ、ドラッグストア、ホームセンター等)

⑤ 家庭用品のメンテナンス関係(配管工・電気技師等)

⑥ 生活必需サービス(ホテル・宿泊、銭湯、理美容、ランドリー、獣医等)

⑦ ごみ処理関係(廃棄物収集・運搬、処分等)

⑧ 冠婚葬祭業関係(火葬の実施や遺体の死後処置に係る事業者等)

⑨ メディア(テレビ、ラジオ、新聞、ネット関係者等)

⑩ 個人向けサービス(ネット配信、遠隔教育、ネット環境維持に係る設備・サービス、自家用車等の整備等

[出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」]

ブルーカラーやホワイトカラーとの違いは?

労働者の職種を示す言葉には、エッセンシャルワーカーのほかにも、「ブルーカラー」や「ホワイトカラー」といった表現があります。

これらの言葉も職業の性質を表しますが、「エッセンシャル」つまり「ライフラインとして必要不可欠」といったニュアンスは含まれていません。

ブルーカラー|技能系職種

ブルーカラーとは、製造業や建設業において、現場作業に従事する労働者を表す言葉です。ブルーカラーの語源は、作業着の「青い襟」が由来とされています。

ホワイトカラー | 事務系職種

ホワイトカラーは、主に企業の管理部門での事務職や企画職、そのほか研究職、販売職などに従事する労働者を表す言葉です。作業着の「青い襟」に対し、ホワイトカラーはシャツの「白い襟」が言葉の由来になっています。

ブルーカラーとホワイトカラーの違い

ホワイトカラーやブルーカラーという言葉が誕生したのは、20世紀の初めとも19世紀の産業革命時とも言われており、いずれにしても100年以上もの間、社会で使われていた言葉ということになります。

かつての日本の雇用システムでは、戦前戦中、大手企業の被雇用者は社員・準社員・工員・組夫といったグループに分けられており、社員・準社員をホワイトカラー、工員・組夫をブルーカラーとして処遇が明確に区別していた時代があります。

さらには、ホワイトカラーの社員においても、幹部候補である社員と事務労働者である準社員では処遇に格差があったとといいます。こうしたいわば「身分制度」は戦後、同一労働同一賃金の原則のもと、是正されていきました(工職身分格差撤廃)。

このような歴史的な背景を持つ言葉ではあるものの、現在では、単純に現場作業中心の職種か、デスクワークなどの事務作業が中心となる職種かといった意味で使われるようになっています。

一般的には、ブルーカラーよりもホワイトカラーの方が賃金は高い傾向にあります。ただし、その要因の一つには、現場で働いていた社員が昇給・昇進するにつれ、ホワイトカラーへと移行するといった理由が挙げられます。

また、ブルーカラーの職種は専門的な技術を伴う仕事が多いため、転職がしやすいといった側面もあり、必ずしもホワイトカラーに比べて職種のデメリットが多いというわけではありません。

エッセンシャルワーカーが注目された背景

ホワイトカラーやブルーカラーといった、仕事の特性による分類がある中で、エッセンシャルワーカーという言葉は、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、世間に広く知られるようになりました。

コロナ禍ではライフラインを維持するために働く人たちの様子が連日のようにメディアで取り上げられ、その中でも、特にひっ迫する医療現場における人手不足は、現在も深刻な課題が残されたままとなっています。

不要不急の外出自粛が求められる中でも感染リスクを抱えながら働く、このようなエッセンシャルワーカーへの支援について、多くの人が考えるきっかけを持ったことが、エッセンシャルワーカーへの関心が一気に高まった要因といえます。

エッセンシャルワーカーの需要は増加傾向にある

少子高齢化が進む社会の中で、特に医療・介護関連のエッセンシャルワーカーの需要は上昇傾向にあります。

厚生労働白書によれば、2040年までに日本人の5人にひとりが医療・福祉関連に従事しなければならない状況になると予測されており、今後、そのような状況が大きく変化することは考えにくいとされています。

[出典:厚生労働省「令和2年版厚生労働白書」]

エッセンシャルワーカーに関連する課題

このように注目を集めているエッセンシャルワーカーですが、以下に挙げるような様々な課題を抱えています。

人手不足による労働環境の悪化

業界や職種を問わず社会全体の課題でもある人手不足ですが、エッセンシャルワーカーにおいては、その状況がより深刻であるといわれています。

また、エッセンシャルワーカーに該当する職種は、労働環境や待遇などへの不満から離職率が高い傾向もあり、人手不足による業務過多が、さらなる離職を招く負のループに陥っています。

人手不足は、医療や介護、教育現場のみならず、物流においても、運送業の半数以上の企業において「ドライバー不足」は、早急に解決すべき課題のひとつに挙げられており、さらにはドライバーの高齢化も深刻な問題となっているのです。

待遇が悪い傾向にある

エッセンシャルワーカーが人材不足に陥る原因のひとつには、待遇への不満が挙げられます。エッセンシャルワークは、製造業や建設業などの生産現場、医療現場、小売業や物流など現場での肉体労働を伴う職種が多いことがわかります。

体力的にも業務負担が大きいにもかかわらず低賃金であること、また、介護や建設などの業界では、非正規雇用の社員が多いことも待遇面が改善されない要因といえるでしょう。

また、24時間体制での対応が求められる職種においては、出産や育児といったライフステージの変化によって仕事と生活の両立が困難となることも待遇面への不満が出やすい理由として考えられます。

いずれにしても柔軟性のある勤務形態の導入や、業務に見合った賃金の見直し、労働環境の改善などが急務であるといえます。

偏見がある

エッセンシャルワーカーは、肉体労働が多いことから「3K(きつい、汚い、危険)の仕事」「学歴を問わず誰にでもできる仕事」といった差別的な解釈をされることも多く、否定的な偏見の多い職種といえます。

難易度の高い国家資格を要したり、プロフェッショナルな技術を求められる職種もある中で、このような一方的な「イメージの悪さ」は、エッセンシャルワークの人材不足を招く要因にもなっています。

メンタルの不調が出やすい

エッセンシャルワーカーの中でも、医療従事者だけでなく、警察官や消防士などは、人の命にかかわることも多いため、メンタルの不調を起こしやすい職種であると考えられます。

また業務の特性上、「深夜帯の勤務」や「長時間勤務」も多いため、心身ともにストレスを溜めやすい状況といえるのです。

業務によるリスクがある

エッセンシャルワーカーは、コロナ禍の外出自粛期間中も休むことなく働き続けた人々がいたように、簡単に「休むことができない」かつ「現場での仕事従事」が求められる職種でもあります。

そのため、業務における感染リスクを完全に解除することはできません。特にコロナ禍においては、「エッセンシャルワークは命に係わるリスクを伴う仕事」という現実が奇しくも浮き彫りになった形といえるでしょう。

エッセンシャルワーカー待遇支援の取り組み

昨今、深刻な人手不足の解消に向け、エッセンシャルワーカーの確保やモチベーション向上のための様々な支援が行われるようになっています。

厚生労働省による取り組み

厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症に対する医療提供を行っている医療機関や医療従事者に向けて「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)」や、医療・介護・障害福祉従事者向けの「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」などの施策を実施。慰労金の給付などにより直接的に医療従事者を支援しています。

そのほか、コロナ禍における医療従事者へのサポートだけでなく、介護職の賃金引き上げに向け資金を援助する「介護職員処遇改善支援補助金」を設けるなど、かねてより処遇改善を促しています。

[出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染の拡大に対応する医療人材の確保の考え方及び関係する支援メニューについて」]
[出典:厚生労働省「「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」について」]
[出典:厚生労働省「医療・介護・障害福祉に従事される方々への新型コロナ緊急包括支援交付金関連情報」]
[出典:厚生労働省「介護職員処遇改善支援補助金」]

自治体による取り組み

エッセンシャルワーカー確保のための支援を、自治体が行っている地域もあります。例えば、東京都では「エッセンシャルワーカーに係る緊急人材確保サポート事業」が行われています。

これは都内の食料品スーパーマーケットやコンビニエンスストアで、新型コロナウイルス感染症等により従業員の1割以上の欠員が生じ、人材派遣で要員を確保した場合、その派遣費用の2分の1を助成するものです。

大阪府では医療人材サービスが無償利用できる体制の整備や医療人材のマッチングといった施策が進められ、さらには、看護師の待遇改善のための補助などが検討されています。

そのほかにも鎌倉市の全国の医療・介護・保育従事者が鎌倉市内の特定の飲食店でドリンクやデザートのサービスを受けられるといった企画など、各自治体が独自の支援を実行しています。

[出典:東京都「エッセンシャルワーカーに係る緊急人材確保サポート事業」]
[出典:大阪府「医療機関等への支援メニューについて(令和4年度) 3.人的支援に関する補助」]
[出典:鎌倉市「エッセンシャルワーカーへの感謝をカタチにーありがとう!まちの健康を守る皆さんへお店からの感謝の気持ち」]

法人による取り組み

日本たばこ産業株式会社(JT)は、 特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンが運営する「空飛ぶ捜索医療団ARROWAS」を通じて、物資が不足した医療機関等へのマスクや食糧供給という形でエッセンシャルワーカー支援を行っています。

また、エッセンシャルワークを行う職種と、業務上テレワークが可能な職種の両方が存在する企業においては、組織内のエッセンシャルワーカーに対する手当の支給といった事例も見られています。

これらの動きは、特にIT系企業において比較的事例が多く、リモートワーカーとエッセンシャルワーカーへの対応バランスを検討したうえでの取り組みと考えることができるでしょう。

[出典:日本たばこ産業株式会社「居場所を失った方やエッセンシャルワーカーへの支援を開始。継続的かつ今後に備えた感染防止対策への支援」]

エッセンシャルワーカーとは生活維持に欠かせない職業

エッセンシャルワーカーは、社会生活基盤を支える、重要な役割を担う働き手です。安定的な雇用の創出のほか、適切な待遇の確保に向けては、民間企業における努力だけでなく、国をあげた支援策など、日本全体で取り組むべき課題といえるでしょう。

ただし、エッセンシャルワーカーを抱える企業においても、より良い労働環境の構築による離職率の改善といった「組織内の施策」を粛々と進めておくことが大切です。

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