【最新】ワークライフバランスが実現しやすい職種・業界とは?
「仕事と生活の調和」を意味するワークライフバランス。近年の転職希望者の中には、「ワークライフバランスの実現が可能な企業を選びたい」と考えている人も多いようです。本記事では、ワークライフバランスが実現しやすい職種・業界は何か、転職時の注意点とあわせて解説します。
目次
ワークライフバランスの実情
近年は働き方改革やウェルビーイング経営の浸透により、ワークライフバランスに注力する企業が増えています。
企業にとってのワークライフバランスとは、仕事における生産性を向上させるためには従業員のプライベートの充実が欠かせない、という考え方に重きを置いたものです。
一方でスマートフォンの普及などにより、仕事と生活の線引きが曖昧になったことで、ワークライフバランスを保つことは難しくなっています。休みの日に連絡が入ると、私生活から仕事に引き戻されてしまうため、結果的に仕事から意識を離しづらい状況になっているのです。
日本のワークライフバランスの取り組みは遅れている
経済協力開発機構(OECD)が2019年に発表した調査結果によると、ワークライフバランスの実現における日本の順位は38ヵ国中33位であり、加盟国の中でも下位に位置していることが示されました。
日本の順位が低い理由としては、長時間(週50時間以上)働く従業員の割合が、OECD平均よりも高いことが挙げられています。これによって日本はプライベートに費やす時間が減っており、メンタルヘルスやフィジカルヘルスに影響が出やすくなっているようです。
日本ではかねてより長時間労働の抑制に取り組んでいるものの、出生率や女性雇用率の低さなども相まって、世界的に見るとワークライフバランスの実現は十分とはいえないでしょう。
[出典:OECD Better Life Index「Work-Life Balance」]
転職理由としても重要視されている
日本では企業での取り組みが遅れている反面、ワークライフバランスを希望する人材は増えています。近年では転職理由の1つとして考える人材も多い状況です。
厚生労働省が2022年に発表した労働経済の分析において、リクルートワークス研究所の調査結果をもとに、ワークライフバランスの悪化が転職活動を促進する可能性があることを示唆しています。
特に仕事に対してフィジカル面・メンタル面での負担を感じている場合のほうが転職活動に移行しやすくなっているため、優秀な人材を採用するだけでなく、社内の退職率を下げるうえでもワークライフバランスが重要視される傾向にあるようです。
[出典:厚生労働省「令和4年版 労働経済の分析 -労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-」]
ワークライフバランスが実現しやすい職種とは?
ここではワークライフバランスが実現しやすい職種として、5つのカテゴリを紹介します。
事務職
1つ目は一般事務をはじめ、経理・財務、医療事務、貿易事務、秘書、コールセンターなど、バックオフィス系の中でも事務カテゴリに属する職種です。
これらの職種は年次での繁忙期が決まっているケースが多いため、業務スケジュールを調整しやすく、少ない残業時間で退社できる傾向にあります。
医療系専門職
2つ目は、薬事、品質管理/品質保証、MR(医療情報担当者)などの医療系専門職です。薬事は医薬品の承認機関に対する申請業務が中心となるため、情報収集や資料作成が多い分、メリハリをつけやすいメリットがあります。
また、MRは取引先との関係構築で残業が横行していたものの、接待が禁止され、働き方改革などの後押しを受けた結果、労働環境の改善が進んでいます。
研究開発
3つ目は、研究開発(Research and Development)です。研究開発では製品の製造・販売から、活用にシフトするサービタイゼーションが浸透して以降、AI・IoTなどの研究が進んでいます。
特に研究開発は幅広いITスキルが必要になる分、人材の獲得難易度が高い傾向にあります。そのため、企業は給与条件だけでなく、テレワークやフレックスタイム制の導入など、働き方の多様化を支援することで、自社の魅力付けに取り組んでいるようです。
生産技術
4つ目は、製品の量産化や工程の効率化を支える生産技術です。近年は少品種多量生産(マスカスタマイゼーション)の注目が高まり、工場のFA(ファクトリーオートメーション)化に期待が寄せられています。これにより、生産技術はより多角的な視点で生産効率の改善を求められている状況です。
新たな設備を導入する際や生産ラインで問題が発生した場合を除けば、業務の調整がしやすく、ワークライフバランスが実現しやすいポジションといえるでしょう。
社内SE
5つ目は、ITエンジニアの中でも自社開発に取り組む社内SEです。常駐先の働き方に依存し、プロジェクト単位で働き方が変わる客先常駐のSEとは異なり、社内SEは1つの企業の就業規則に沿って働きます。働き方の切り替えが発生しない分、社内SEはワークライフバランスが実現しやすいでしょう。
また、近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進によってIT業界以外でもデジタル人材の獲得が進んだことで、専門人材の不足が深刻化しています。
そうした背景もあることから、人材の獲得・定着を図るため、他の業界と比べて働き方改革が進んでいる状況です。
ワークライフバランスが実現しやすい業界とは?
ワークライフバランスの実現のしやすさには職種だけでなく、業界にも一定の偏りが見られます。
大手メーカー
化粧品・化学、素材・電子、電気部品、半導体・医療機器など、モノづくりをけん引する大手メーカーは、ワークライフバランスの実現に注力しています。
大手メーカーの中には、経済産業省認定の健康経営優良法人(ホワイト500)や、厚生労働省認定の子育てサポート企業(くるみんマーク)を取得している企業が多いのも特徴です。
健康経営優良法人(ホワイト500)は従業員の健康の管理・増進を投資として捉える健康経営に取り組む企業が認定されるため、生産性の向上という単一的な視点でなく、より多角的な視点での経営戦略が重要視されています。
また、子育てサポート企業(くるみんマーク)は、労働時間数や育児休業取得率などが認定基準に含まれ、多様な労働条件の整備が求められます。
そのため、これらの認定を取得する企業が多い大手メーカーは、ワークライフバランスの面でも優れた取り組みを実施しているといえるでしょう。
[出典:経済産業省「健康経営優良法人認定制度」]
[出典:厚生労働省「子育てサポート認定企業「くるみん・プラチナくるみん・トライくるみん認定、プラス認定」とは」]
銀行業界
銀行業界は、休業制度を法定基準よりも多く設定している企業が多く、休暇の取りやすさに定評のある業界です。
特にメガバンクは長期休暇制度や健康休暇制度などに加え、長時間労働の抑制にも取り組んでおり、ワークライフバランスの支援に注力しています。
信販業界
信販業界は銀行業界と同様に、休暇取得や残業抑制に取り組む企業が多い業界です。特にコールセンターは、スタッフ数が多い傾向にあるため、基本的に土日祝休みで休日出勤率が低く、一方で有給休暇の取得率は高い企業が多くなっています。
医薬品業界
医薬品業界は医薬品開発業務受託機関(CRO)、治験施設支援機関(SMO)、医薬品販売業務受託機関(CSO)に役割が分配された結果、特に製薬会社でワークライフバランスが推進されています。
医薬品業界は外資系企業が多く、コアタイムなしのスーパーフレックス制度や在宅勤務などを通じて、働き方の多様化を推し進める企業が増えています。また、休暇制度が豊富に用意されており、ワークライフバランスの中でも休日面での満足度が高い業界です。
Web業界
Web業界は働く時間や場所を選ばずに業務を遂行できる特性上、フレックスタイム制やテレワークの導入に積極的な企業が多い業界です。
特に請負ではなく、自社サービスを展開する企業はその傾向が強く、業務を社内で完結しやすい分、ワークライフバランスを実現しやすい傾向にあります。
大手IT業界
IT業界では、メーカー系、ユーザー系、独立系に属する大手SIerが、ワークライフバランスの推進に対して積極的に取り組んでいます。
大手SIerはプロジェクトの元請けになる場合が多く、業務量や納期を調整できることから、ワークライフバランスを実現しやすいといわれているようです。
逆に2次請け・3次請けのSIerの場合、元請けに定められた範囲・納期に沿って業務を進める必要があるため、なかなかワークライフバランスの実現が難しいといえるでしょう。
ワークライフバランスが実現しやすい企業の探し方
ワークライフバランスを実現しやすい企業を見つけるには、主に5つのポイントがあります。
- 認定企業を探す
- 大手企業・上場企業
- 各種制度・福利厚生
- 企業の評判を目安にする
- 転職エージェントへ依頼する
これらのポイントについて、1つずつ解説します。
認定企業を探す
1つ目は、認定企業を探すことです。認定企業とは、ワークライフバランスの推進度合いを外部機関によって認められた企業を指し、主に各省庁によって認定されます。
特に、「くるみん認定」ではテレワークの導入や時短勤務制度など、働き方の多様化に資する措置が求められるため、認定企業は働きやすさの推進に積極的であるといえるでしょう。
他にも、ワークライフバランスに関わる認定制度には、次のようなものがあります。
認定機関 | 名称 |
---|---|
厚生労働省 | 安全衛生優良企業認定(ホワイトマーク) |
厚生労働省 | くるみん認定/プラチナくるみん認定/トライくるみん認定 |
厚生労働省 | えるぼし認定/プラチナえるぼし認定 |
厚生労働省 | ユースエール認定 |
経済産業省 | 健康経営優良法人(ホワイト500/ブライト500) |
一般財団法人日本次世代企業普及機構 | ホワイト企業認定 |
地方自治体 | ワーク・ライフ・バランス認定企業 |
大手企業・上場企業
2つ目は、大手企業・上場企業を探すことです。大手企業や上場企業は事業の多角化に伴い、従業員数が数千人を超えることも珍しくありません。
そのため、他の企業と比べて、広範に受け入れられるレベルのワークライフバランスを実現しなければ、退職率が増加してしまい人的リソースの維持が難しくなります。
だからこそ、大手企業や上場企業は働き方の多様化に対して積極的な投資を行い、ワークライフバランスの支援を行っている可能性が高いといえるでしょう。
各種制度・福利厚生
3つ目は、各種制度・福利厚生です。ワークライフバランスを推進するためには、社内制度や福利厚生を整える必要があります。具体的には下記のようなものが該当します。
- フレックスタイム制
- テレワーク(在宅勤務)
- 時短勤務制度
- リフレッシュ休暇制度
- メンタルヘルスマネジメント
- カフェテリアプラン
- 企業内託児所
この他にも、産休・育休の法定休暇に対する日数設定や、復職後のサポート体制などを確認することで、企業のワークライフバランスへの取り組みレベルを把握することができるでしょう。
企業の評判を目安にする
4つ目は、会社の評判を目安にすることです。近年は企業の口コミサイトが増えてきており、現職の従業員や元従業員による企業評価が寄せられています。
- OpenWork
- ライトハウス
- キャリコネ
- 転職会議
このような口コミサイトを確認することで、その企業でどのような制度・福利厚生が取り入れられているのかに加えて、ワークライフバランスに対する従業員の意識や部門単位での実情など、実際に働かなければ得られない情報を知ることができます。
転職エージェントへ依頼する
5つ目は、転職エージェントへの依頼です。人材会社に所属する転職エージェントは、企業との仲介役として、求職者が求めるワークライフバランスに合致する企業を探すための手助けをしてくれます。
また、転職エージェントは日々多くの求人情報に触れているため、残業時間や休日数が業界平均と比較した際に多いのか少ないのかなど、客観的な数値に基づいた有益な情報も補足してくれるでしょう。
ワークライフバランス実現が転職理由の際の注意点
ワークライフバランスの実現を目的に転職する場合は、次の3つの点に注意しましょう。
- ワークライフバランスの実現だけを転職理由にしない
- その他の労働条件も確認する
- 職種・業界を変える場合は慎重に
ワークライフバランスの実現だけを転職理由にしない
前提として、企業の採用担当者は自社にとって有益な人材の採用を目指しています。そのうえで志望動機を「ワークライフバランスの実現」という抽象的な表現で伝えてしまうと、プライベートを優先するために仕事をおろそかにするという印象を与える可能性があります。
だからこそ、転職理由ではワークライフバランスの実現を深掘りすることが重要です。
「業務プロセス改善を通じて生産性向上に尽力する」「余暇時間をスキルアップに充当して専門性を高めたい」など、企業にとって有益な前提条件があると、ワークライフバランスの実現という転職理由を前向きに捉えてもらえるでしょう。
その他の労働条件も確認する
ワークライフバランスの実現に固執すると、残業時間、年間休日数、各種制度、福利厚生だけに意識が向いてしまい、その他の労働条件・労働環境を軽視してしまいます。
そのため、仕事内容とのスキルフィット、社風とのカルチャーフィットに加え、人事評価の妥当性、キャリアの柔軟性、企業の経営状態など、多角的な視点で企業との相性を判断すると良いでしょう。
職種・業界を変える場合は慎重に
ワークライフバランスの実現を求めて、異職種・異業種の転職を行う場合は注意が必要です。異職種・異業種では、業務の進め方や組織の考え方が異なります。
そのため、同職種・同業界に転職するよりも、より慎重に適性を判断することが重要となるでしょう。
自分にとっての理想のワークライフバランスを実現しよう
本記事では、ワークライフバランスが実現しやすい職種・業界について解説しました。
近年は働き方の多様化によって、心身の健康を維持するためにも、ワークライフバランスの実現を希望する求職者が増えています。市場のニーズに対して、政府主導の働き方改革の後押しもあり、企業の取り組みも加速している状況です。
一方で、ワークライフバランスの充実度は、職種や業界によって一定の偏りがあります。また、企業は利益の追求を目的とするため、ワークライフバランスの実現を前面に掲げて転職活動を行うと、マイナスイメージを持たれる可能性もあります。
だからこそ、転職を考える際は、自分自身の働き方と相性の良い企業を探し、ワークライフバランスの実現によって企業に還元できる価値を定義することを心がけましょう。
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