【解説】ワークライフバランス実現に向けて個人が実践すべきこと

2022/5/26 2022/05/26

ワークライフバランス

ワークライフバランスと個人

ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和を目指す考え方です。個人においても、実現に向けて様々な対策を行うことができます。本記事では、そんなワークライフバランス実現に向けて個人が実践できる対策について詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

ワークライフバランスとは?

ワークライフバランスは、直訳で仕事と生活の調和を指します。内閣府が運営する「仕事と生活の調和」推進サイトでは、ワークライフバランスが実現した社会を、以下のように表現しています。

「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」

[引用:内閣府「「仕事と生活の調和」推進サイト」より]

社会構造や価値観の変化により、慣習的なライフステージを大切にしていた従来のスタイルから、一人ひとりの生き方を尊重するスタイルへと、時代は移り変わっています。そして、資本主義経済にとって、仕事と生活は切り離せない関係にあります。

ワークライフバランスは、人々が多様な人生を歩むために、仕事と生活のバランスが欠かせないことを言い表す語句であり、その社会実現に向けた1つの指標であるといえるでしょう。

ワークライフバランスが注目されている背景

ここではワークライフバランスが注目される主な背景として、4つのポイントを解説します。

少子高齢化

第2次ベビーブームの起こった1970年代以降、日本の出生率は低下しており、少子高齢化が起こっています。これに伴い、生産年齢人口の減少による労働生産性の悪化が問題視されています。

しかし、労働生産性を改善するために、企業が従業員のマンパワーに頼りきると、長時間労働が横行してしまいます。それは従業員の疲労困憊につながり、生活からも余裕を奪い、結果的に少子化対策にも影響を及ぼすリスクがあります。

だからこそ、少子化の進行を緩和し、人々が子どもを授かることに対して、心身ともに余裕を持つため、日本にとってワークライフバランスの推進は欠かせない存在だといえるでしょう。

労働時間の長時間化

日本でワークライフバランスが注目され始めたのは、2013年に国連から過労死対策の勧告を受け、長時間労働の是正を求められたことも要因の1つです。ブラック企業が流行語大賞にノミネートされたのも同時期になります。

加えて2015年には、大手企業に所属する若手社員の過労自殺が連日ニュースとなり、人々の注目を集めました。後日、労働基準監督署による労災認定が報じられたことで、多くの人々が長時間労働の異常性を問題視したことはいうまでもないでしょう。

当時の日本では36協定があった場合でも、月100時間を超える残業は違法とされていました。しかし、前述の事件などを通じて、違法残業の実態が明るみになり、長時間労働の抑制に向けた働き方改革が急務となりました。

女性の社会進出

女性の社会進出が活発になったのは、1972年に施行された男女雇用機会均等法や、1981年に国連が発効した女子差別撤廃条約などがきっかけです。前述の法律や条約によって、労働に対する男女間の差別が見直され、収入格差などに改善の傾向が見られるようになりました。

その後、1999年に策定された新エンゼルプランという子育て支援計画により、仕事と子育てを両立するための環境整備が始まったことで、女性の社会進出は加速していきます。

さらには、2008年のリーマンショックによる失業率の増加、税率や物価の上昇による家計の圧迫などにより、男女間での仕事と家事の固定的な役割分担を維持するのが難しくなりました。これらの要因を背景に夫婦共働きのニーズが拡大し、女性の社会進出をより後押しするかたちとなりました。

女性の社会進出が活発になったことで、既存の育児・介護支援ではカバーできない領域や、妊娠・出産・育児休業に対するハラスメント行為の対策を早急に立てる必要が生まれ、ワークライフバランスの推進へとつながります。

優秀な人材の流出

近年は終身雇用制度が形骸化しつつあり、もはや人材の流出を防ぐための材料として機能していません。その終身雇用制度に代わるものとして、企業が従業員に対して価値を提供するために、新たに取り組んでいるのがワークライフバランスの充実です。

現在では各種制度の改革をはじめ、残業時間や有休取得率などの数値公開、テレワークの推進、パラレルキャリアの支援など、幅広い方法で人材確保に取り組んでいます。

ワークライフバランスの充実が個人にもたらすメリット

人生100年時代といわれる現在において、豊かな人生を過ごすためにも、ワークライフバランスの充実は欠かせません。では、豊かな人生を過ごせることで、個人にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここではワークライフバランスが個人に与える4つのメリットについて解説します。

幸福度の上昇

近年では晩婚化や未婚化をはじめ、人生に対する価値観は多様化しています。優先順位も人によって異なるため、ワークライフバランスを通じて幅広い選択肢が生まれることで、個人はより自分に合った生き方を追求できるようになります。

内閣府が2021年に発表した満足度・生活の質に関する調査報告書でも、ワークライフバランスは満足度・生活の質に関する指標の1つとして設定されており、人生において一定の影響力を持ちます。

そのため、ワークライフバランスを実現することは、個人の幸福度を高めることに対しても有効であるといえるでしょう。

[出典:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書 2021」]

心身両方の健康維持

ワークライフバランスの充実によって個人の決定権が拡大すると、肉体的な疲労を軽減するだけでなく、普段感じているストレスの対策範囲も広げることができるでしょう。

滅私奉公という言葉にも表れているように、日本ではプライベートを犠牲にして働くことを受容する傾向にあります。それは有給休暇に対する考え方も同様で、周りの迷惑になるのではないかと取得を遠慮してしまう方も少なくありませんでした。

会社や経済に対する貢献意識の高さは誇るべき国民性である反面、過労死などの問題を抱える日本にとって、心身を労ることは非常に重要です。

ワークライフバランスを通じて仕事とプライベートのメリハリを付けることで、健康維持につながるだけでなく、仕事の効率アップも期待できるでしょう。

コミュニティへの参加促進

近年はSNSの浸透によって、地域活動だけでなく、オンラインサロンやオフラインミーティング(オフ会)など、オンライン/オフライン問わず、誰もが気軽にコミュニティに参加し、交流できるようになっています。

コミュニティに参加し、会社では出会えないような人々との接点を持つことは、自分自身の視野を広げることにもつながります。様々な刺激を受けることで、モチベーションの向上も期待できるでしょう。

スキルアップ

プライベートの時間が増えれば、業務とは別のアプローチで自分自身のスキルを磨いていくことも可能です。書籍やイベントなど、普段とは違った視点での成功体験に触れることで、業務の効率化や新しい企画などのアイデア創出にも役立てられるでしょう。

ワークライフバランス実現に向けて個人が実践すべきこと

厚生労働省が2007年に策定し、2010年に改定した「仕事と生活の調和推進のための行動指針」において、ワークライフバランスの社会実現には、「就労による経済的自立が可能な社会」「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」「多様な働き方・生き方が選択できる社会」の3つが必要だといわれています。

では、その3つの条件を満たすために、働く個人はどのような取り組みを行うべきなのでしょうか。ここでは以下の個人で実践すべきポイントを5つ解説します。

  1. 仕事の場所や時間を変えてみる
  2. 勤務形態を見直してみる
  3. 仕事の効率を上げるために工夫してみる
  4. メンタルヘルスケアを実施してみる
  5. 自分のスキルをさらに磨いてみる

仕事の場所や時間を変えてみる

これまでは決められた時間にオフィスに出社し、業務を開始するのが一般的でした。しかし、仕事に集中しやすい場所や時間には個人差があります。

近年はテレワークの普及によって、オフィスだけでなく、在宅で業務を行う方も増えています。通勤時間を業務や家事など、別の時間に割けることで、家庭との両立もしやすくなるでしょう。

また、自宅は誘惑が多くて集中できないという方は、コワーキングスペース、カフェ、ホテルなど、働く場所を変えてみて、より自分が集中できる環境を探してみましょう。

時間帯に関しては、スケジュール管理にも役立てることができます。例えば朝型の方の場合は午前中にタスクを集中させて、午後はゆったり働くなど、自分自身がよりパフォーマンスを発揮できる時間帯に合わせてスケジュールを調整することで、業務の生産性アップも期待できるでしょう。

勤務形態を見直してみる

会社の制度にもよるものの、フレックスタイム制や時短勤務制度など、個人側で勤務時間をコントロールできる制度がある場合は積極的に活用しましょう。

フレックスタイム制や時短勤務制度を活用すれば、体調や私用に合わせて始業・終業時刻を調整するだけでなく、中抜けの時間を作って適度に休憩を取るなど、働き方に柔軟性を持たせることができます。

近年ではテレワークの普及に伴い、フレックスタイム制の自由度を高めたスーパーフレックスタイム制を導入する企業も増えています。

自由度が高い反面、セルフマネジメントが難しいという難点はありますが、適切な管理ができるようになれば、より自分に合った働き方を実現できるでしょう。

仕事の効率を上げるために工夫をしてみる

日々の業務を改めて見直してみると、改善できるポイントはいくつもあります。業務フローに紛れ込んでいる不要なタスクを洗い出すことに加えて、作業手順を見直す、資料を整理する、ショートカットキーを覚えるなども効果的です。

まずは日々の業務にどれほどの時間がかかっているかを算出し、その結果に基づいて優先順位を決めたうえで、具体的な改善策を考えていきましょう。

メンタルヘルスケアを実施してみる

仕事の難易度が高くて心配になる、コミュニケーションエラーが頻発して苛立ちを感じているなど、働き続けるうえで、心的負荷がかかるリスクはどうしても付きまといます。

ストレスをため込んでしまうと、不眠や頭痛などの身体的反応や、不安や自責などの心理的反応、過食や浪費などの行動的反応の発生要因にもなります。そして、これらは業務上のミスや遅延を誘発するリスクがあります。

ストレスを過度に抱えないためにも、メンタルヘルスケアは重要です。厚生労働省が発効した労働者の心の健康の保持増進のための指針では、メンタルヘルスケアを「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」の4つに分類しています。

自分自身でストレスチェックを行う以外にも、上司や専門スタッフに相談して職場環境を改善する、外部の専門機関に相談して復職支援やキャリアカウンセリングを受けるなど、心身の健康を管理していくための方法は複数あります。

社内や外部機関のホットラインを上手く活用し、不調原因の早期的な発見と対策を行い、無理のない働き方を実現しましょう。

自分のスキルをさらに磨いてみる

近年では副業・兼業を容認する企業が増え、パラレルキャリアという言葉が浸透するなど、自分自身のやりたいことに注力しやすい環境が整いつつあります。

また、動画プラットフォームをはじめとする情報共有の進化により、自宅にいながら知識を蓄える手段は着実に増えています。これらを活かして、キャリア形成や能力開発にチャレンジしてみるのも、ワークライフバランスを実現するうえで有効です。

特に現在は終身雇用が形骸化したことで、労働市場の流動性は高まっています。そういった意味でも社外に一度目を向けて、自身のキャリアを見つめなおす機会を作ることは重要であるといえるでしょう。

ワークアズライフとは?正しい意味やワークライフバランスとの違いについて

ワークライフバランス実現に向けた今後の課題

2019年4月より順次スタートした働き方改革関連法への対応により、「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇の取得義務化」「同一労働同一賃金の義務化」など、これまで曖昧になっていた領域に対して明確な基準が設けられるようになりました。

しかし、企業がワークライフバランスの実現に注力する一方で、推進の妨げになる要素も存在しており、その影響で推進スピードが鈍化している企業は少なくありません。ここではワークライフバランスの実現を停滞させる3つのポイントを解説します。

変わろうとしない企業文化

モチ型組織やオムスビ型組織などとも表現されるように、企業は個の集合体です。その統制を取る意味でも、一度定着させた文化を変えるのは難しいという課題を抱えています。

ワークライフバランスの実現に向けてどれほど仕組みや制度を整えても、旧態依然とした企業文化が変わっていなければ意味がありません。

企業文化を変えていくには、管理職や役員陣などの上位ポジションがワークライフバランスの必要性を理解し、制度を扱いやすくなるような環境構築に向けたマネジメントを執り行うことが重要となるでしょう。

生産性が低下してしまうリスク

厚生労働省が2020年に発表した厚生労働白書では、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果をもとに、福利厚生において労働時間・休暇、両立支援に関する労働者側のニーズが高いことを明らかにしました。

一方で、柔軟な働き方を実現するには、既存の業務を効率化する必要があります。業務効率化ができない状態で制度だけを改革してしまうと、生産性が低下し、これまでと同じ成果を出すことが難しくなり、結果的にしわ寄せが従業員に及んでしまいます。

そのため、企業は人材の流出を防ぐためにも、テレワークの導入やRPAの活用など、デジタル技術を駆使したDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むことが重要です。

しかし、レガシーシステムやベンダーロックインなど、DX推進を阻む壁はあまりにも多く、ワークライフバランスの深化にはまだ時間がかかるといえるでしょう。

[出典:厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」]

レガシーシステムとは?DX推進を阻む原因や放置するリスクについて

DXの必要性とは?なぜ重要なのか?もたらす効果や現状のリスクを解説

導入に必要な人材の確保

雇用形態、勤務形態、福利厚生、人事評価など、一口にワークライフバランスといっても、実現するために見直すべき項目は無数にあります。他にも過重労働の防止やメンタルヘルスなど、対策すべき事項が山積みになっている企業もあるでしょう。

しかし、ワークライフバランスを実現するための制度設計や改善計画は、誰にでもできるものではありません。複数の問題を抱えている企業にとっては、何から着手すべきか判断できない場合もあるでしょう。

そのため、ワークライフバランスの実現には成功体験を持った人材の存在が欠かせず、人材確保に時間を要する関係で、取り組みが長期化してしまう課題を抱えています。

ワークライフバランス実現には個人の意識も重要

本記事では、ワークライフバランスが求められている背景から、個人にとってのメリット、実現に向けた課題などを中心に解説しました。

新型コロナウイルスの蔓延によるテレワークの普及をはじめ、平均寿命の伸長やグローバル化によるキャリアの多様化、働き方改革関連法での公正な労働環境の実現など、働き方に対する様々な変化に伴い、ワークライフバランスを求める声は次第に高まっています。

仕事と生活の境界線が曖昧になろうとしている現在において、ワークライフバランスによる柔軟性の確保は、豊かな人生を歩むために重要なポイントであるといえるでしょう。

しかし、ワークライフバランスの実現には、これまでの制度や文化を見直す必要があり、企業によっては大きな変革を迫られることもあるでしょう。変革をスムーズに進めるためには、いかにステークホルダーを巻き込み、変革の必要性を理解・浸透させていけるかが大切です。

企業だけでなく、個人もワークライフバランスの推進を自分事化し、積極的に取り組んでいくことで、自分に合った働き方の実現に一歩近づくでしょう。

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