働き方改革で中小企業が取り組むべき対応策とは?問題点や成功事例を解説

2022/8/3 2022/08/03

働き方改革

人手不足のイメージ・働き方改革

働き方改革が進む中、中小企業ではどのような取り組みを進めれば良いのでしょうか。本記事では、中小企業が直面する課題やそれに対する解決策、押さえるべきポイントを解説。実際に取り組みに成功した中小企業の事例も紹介します。

働き方改革とは?

働き方改革とは、職場環境を改善すべく打ち出した政府の施策で、働く人々がそれぞれの事情に合わせて多様な働き方ができる社会を実現するための改革です。

政府は働き方改革の一環として、2018年に働き方改革関連法を公布し、その後順次施行されています。今後ますます加速する人手不足に対応するため、働き方改革の推進により職場環境を改善し、生産性向上を図る目的があります。

働き方改革は大企業だけでなく、中小企業においても推進が求められています。日本国内における雇用の約7割が中小企業に属していることを踏まえると、中小企業における働き方改革の推進は日本経済にとっても重要度が高いといえるでしょう。

[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「日本を支える中小企業」]

働き方改革の具体的な内容

働き方改革の具体的な取り組みとして、ここでは8つの項目について詳しく解説します。

(1)時間外労働の上限制限

残業時間の上限は、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的で特別な事情がなければこれを超えることは許されません。

臨時的な事情があり、労使で合意が得られた場合の上限規制は次の通りです。

  • 時間外労働:年720時間以内
  • 時間外労働+休日労働:年100時間未満、2〜6ヶ月平均80時間以内

企業がこうした上限規制に違反した場合には、厳しい罰則が科せられる恐れがあります。

[出典:厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」]

(2)同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、正社員と非正規雇用労働者が同じ仕事をしていれば、差別的な処遇をせず、同じ給与、同じ条件で雇う必要があるというものです。

基本給や賞与だけでなく、食堂、休憩室、更衣室などの福利厚生施設の利用やスキルや知識を学ぶ教育機会についても、待遇差を是正する必要があります。

もし非正規雇用労働者が自身の待遇に不満がある場合には、事業主に説明を求めることが可能です。事業主は、待遇差について労働者に対して説明する義務があります。仮に、働き手と雇用主の間で問題が生じた場合には、行政からの指導や行政ADRによる仲介が行われます。

[出典:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」]

(3)年次有給休暇の時季指定

年次有給休暇の時季指定とは、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に、毎年5日の年次有給休暇を確実に取得させる必要があることを指します。

これまでは、労働者が使用者に取得を申し出るパターンが多く見られました。しかし、現在では使用者が労働者に有給取得時季を確認し、労働者の希望を尊重した取得時季を決定する必要があります。

なお、年次有給休暇は、「半年間継続して雇われている」「全労働日の8割以上出社している」場合に、すべての労働者に与えられる権利です。

[出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説」]

(4)勤務時間インターバル制度

勤務時間インターバル制度とは、前日の業務終了時間と翌日の業務開始時間の間に一定の休息時間を確保する制度です。

日付が変わるまで労働を行い、翌日の早朝から出勤するとなれば十分な休息が取れません。労働者の健康を崩す可能性もあることから、労働者の働く環境に配慮するために企業の努力義務となりました。

また、睡眠時間や生活時間を確保し、プライベートと仕事の両立を実現してワークライフバランスの向上を図る狙いもあります。

[出典:厚生労働省「勤務間インターバル制度について」]

(5)法定割増賃金率50%以上が義務化

法定割増賃金率とは、会社が労働者に時間外労働や休日労働などをさせる場合、通常よりも割増した賃金を払う際の引き上げ率を指します。

2023年4月から時間外労働が月60時間を超える部分に関しては、法定割増賃金率が50%以上となり、企業にとって大きな負担となることが予想できます。

[出典:厚生労働省「法定割増賃金率の引上げ関係」]

(6)フレックスタイム制の変更

従来のフレックスタイム制とは、1日の労働時間を固定せず、最長1ヶ月の精算期間の中で自由に働ける制度です。

一方、2019年の改正法によって精算期間が1ヶ月から3ヶ月に延長されたことにより、閑散期や繁忙期に合わせてより柔軟に調整できるようになりました。

[出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」]

(7)高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度とは、一定の年収要件である年収1,075万円以上を満たしており、高度な専門知識を持っている労働者を対象に、労働時間に基づいた制限を撤廃する制度です。

長時間労働を防止する健康確保措置は守りつつ、時間外・休日労働協定の締結、時間外・休日・深夜の割増賃金の支払い義務などの適用を除外するものです。

[出典:厚生労働省「⾼度プロフェッショナル制度わかりやすい解説」]

(8)産業医・産業保健機能の強化

産業保健とは、従業員が心身ともに健康な状態で働ける職場づくりを目的とした企業の取り組みです。企業が生産性を上げていくには、従業員の健康が必要不可欠です。従業員の働く環境の確認、長時間労働者に対する面接やストレスチェックは、その取り組みの一環として挙げられます。

2019年から、主に「産業医の独立性・中立性の強化」「産業医への権限・情報提供の充実・強化」「産業医の活動と衛生委員会等との関係の強化」の3点が改正されました。

[出典:厚生労働省「働き方改革関連法により2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます」]

中小企業が現状抱える課題や問題とは?

企業は率先して働き方改革を行っていかなければなりませんが、簡単に達成できるものではありません。中小企業が働き方改革を進めるうえで直面している主な課題や問題について、5つの視点から解説します。

(1)人手が足りない

多くの中小企業は慢性的に人手不足の問題を抱えています。人手不足のままで働き方改革を進めるのは、現実的に不可能というケースもあるでしょう。

例えば、人手不足が原因で仕事が回っていないのにもかかわらず、職場環境を良くするために残業を取りやめてしまうと、会社として業務が滞ってしまいます。それでも残業時間削減を実行する場合は、従業員が隠れて残業をするという事態に陥る可能性もあり、これでは本末転倒になってしまいます。

働き方改革を推進する上で、中小企業のような限られたリソースで業務をこなしているケースでは、人手不足は特に大きな壁となるでしょう。

(2)人材を採用することが困難

人手不足であれば新しく人を雇えば解決しますが、新規雇用も簡単ではありません。中小企業は採用活動にコストをかけられないので、応募者が少ないことが問題として挙げられます。

また、業務内容が厳しく魅力的ではない場合や、給与などの待遇面で大手企業よりも大きく劣るケースなども、中小企業が採用活動で苦戦する理由の1つです。

(3)人材が確保できても定着しない

中小企業において、新規雇用が成功し、新たな人材を確保できたとしても長く定着しない傾向も多く見られます。

職場環境が良くない、業務内容が単調、給与が低いなどが理由として挙げられます。中小企業ではこうした要因が複数あることから、長期間働ける環境ではない場合が多いのが現状です。

また、指導する側に余裕がないことも多く、新人が充実した教育を受けられずに仕事が上手くいかないことも、新入社員の定着率の低さに影響しています。

(4)ITを導入する基盤が整っていない

働き方改革には、ITツールの導入が効果的です。しかし、中小企業はITツールを導入するための基盤が整っていない傾向にあります。例えば、社長や役員がアナログ的な思考で、ITツールの導入を全く検討していないパターンもあるでしょう。

また、ベテラン従業員が仕事をブラックボックス化していて、他の従業員から見て何の仕事をしているかわからないということも中小企業ならではの問題です。このような職場環境は、ITツールを導入する前段階で大きな壁に直面していると言えるでしょう。

(5)資金不足で働き方改革が進まない

中小企業ゆえに、大きな利益を生み出せていない企業に関しては、資金に余裕がないケースも多いでしょう。また同一労働同一賃金や割増賃金など、新たな制度の施行により、従来よりも人件費が上がることが予想され、より厳しい環境下で事業を継続しなければなりません。

資金がないと、採用拡大やITツールの導入、コンサルティングの活用など、企業も新たな取り組みに手を出せないので、働き方改革が進まず環境改善が達成できないままとなってしまいます。

働き方改革に向けて中小企業が取り組むべき対応策

働き方改革の成功に向けて、中小企業が取り組むべき対応策について解説します。

(1)従業員の要望を正確に把握する

働き方改革を進めるには、従業員の要望を正確に把握する必要があります。まずは、従業員が求める要望が何なのかヒアリングを行い情報収集することが大切です。

例えば、給料を上げて欲しいのか、残業を減らしてほしいのか、それとも有給をもっと使いたいのかなど、部署や立場、価値観の違いなどによって、考えや要望はさまざまです。

正確に把握できれば、あとはどのように解決すれば良いのか検討できます。まずは目標を定める意味でも優先順位を上げて実施することが重要です。

(2)ITツール導入で業務効率化を図る

働き方改革には、ITツールの導入は必要不可欠です。ITツールを導入すれば、生産性の向上、業務効率化を図ることができます。

生産性向上・業務効率化によって、今までの人員のままでも短時間で業務をこなせるようになるかもしれません。そうすることで、人手不足の解消や残業時間の削減といった課題を解決し、企業にとって大きな効果を生み出すこともできるでしょう。

(3)適切な勤怠管理をする

残業時間を減らすためには、まず適切な勤怠管理をする必要があります。どの部署でどのような人が何の仕事に携わっていることが長時間労働の原因になっているのか、細かく把握し分析できれば、解決するための糸口が明確になるためです。

また勤怠管理をITツールで行うことにより、正確かつタイムリーに実態を把握し、担当者間で情報共有することもできるでしょう。データを分析することで、原因の特定もしやすくなるはずです。

(4)多様な働き方を実現するために多様な人材を活用する

働き方改革では、働き方の多様性や柔軟性を取り入れることを推進しています。それを実現するために、企業はさまざまな人材を活用することが大切です。

企業が柔軟に多様な人材を取り入れることで、人材確保や離職率の低下、生産性の向上につながることが期待できます。

例えば、シニア人材や女性、地方在住者やフリーランスなど、これまで活用してこなかった人材を積極的に採用することで、多様性が生まれ、職場環境の改善が期待できます。

対応策を取るうえで押さえるべきポイント

働き方改革を成功させるには、いくつか押さえるべきポイントがあるので解説します。

(1)アナログで非効率なやり方に固執しない

働き方改革は、働く環境を改善する意味合いでも、従来のアナログで非効率的な方法では実現できません。これまでのやり方で成果が出ていないのであれば、やり方を抜本的に変える必要があるでしょう。

また、ある程度の成果が出ている場合でも、現状維持では今後の市場環境の変化やデジタル化などに対応できずに売上や利益が減少してしまう可能性もあります。旧来のやり方に固執せず、新たな取り組み、IT化なども検討し柔軟な意識で取り組みましょう。

(2)働き方改革の目的を共有する

働き方改革をなぜ行うのかという目的を、従業員から社長まで全員で共有する必要があります。働き方改革は、考え方や仕事の進め方、システム、社内の規則など、大きな変革を伴うものです。

特定の人や部署だけで推進していては頓挫してしまう可能性が高くなります。働き方改革は、会社全体で取り組んでこそ達成できる大きな課題として、目的を共有したうえで取り組みましょう。

(3)働き方改革に対する従業員のモチベーションをあげる

働き方改革の達成には、従業員のモチベーションが大切です。つまり、従業員自身が、働き方改革に取り組みたいと思うような動機付けを促す必要があります。

例えば、積極的に取り組んだ人には表彰や適切な評価を与えることは大切です。また、働き方改革が成功すれば、心身の健康やワークライフバランスの向上など、社員にとってプラスとなるということを伝え、実行への意識付けをすることが大切です。

(4)全社で取り組む

働き方改革は従業員のモチベーションだけでは達成できません。もちろん経営層だけが注力しても実現するのは難しいでしょう。従業員と社長以下すべての役員が働き方改革について理解を深めた上で、一緒に取り組む姿勢が大切です。全社員一丸で取り組んでこそ、達成に近づける課題でしょう。

(5)できることからスモールスタートで始める

働き方改革の推進は、最初から大規模に行うのではなく、達成できることから小さく実施することが大切です。つまり、スモールスタートで少しずつ進めることが重要です。

大きな変化を求める場合、能力や意識がついていかず、途中であきらめる人ややる気が減退する人も出てくるでしょう。大切なのは、多くの人がクリアしやすい目標を掲げ、小さな成功体験を積み重ねていくことです。小さなゴールを何度もクリアしていった結果、大きなゴールに到達できるのが理想型だと言えます。

(6)中長期の視点で考える

働き方改革は、困難な課題をクリアしなければならないゆえに、短時間でできるものではありません。成果が出るまでにはある程度の期間が必要です。

改革を頓挫させないためにも、中長期で達成することを想定し継続的に取り組んでいきましょう。

中小企業における働き方改革の取り組み成功事例

実際に働き方改革に成功した中小企業の事例を4つ紹介します。

(1)秩父テック株式会社

秩父テック株式会社は、埼玉県にあるボールペンなどの筆記用具組み立てや、鍵・錠前の組み立て、化粧品の充填から仕上げを行う企業です。

従業員は53名(2022年時点)ですが、男性が7名で女性従業員が多いのが特徴的です。女性が働きやすい環境を提供するため、柔軟な勤務時間で働けるだけでなく、出産休暇を3年にするなどユニークな休暇制度を設けました。

また従業員が意見を言いやすい風通しの良い社風であったり、女性目線を意識した福利厚生の一環として1食200円のランチ提供なども実施し、社員から高評価を得ています。

秩父テック株式会社の働き方改革は、従業員目線を大切にした仕組み作りや、働きやすい社風を作り出すことに成功した好例と言えるでしょう。

(2)新雪運輸株式会社

新雪運輸株式会社は、低温食品物流を中心にした運送事業を営む会社です。働く環境を改善すべく、まず全車両にセーフティーレコーダーを設置しました。これは業務を可視化することで、長時間労働の原因を解明するためです。

この施策がきっかけとなり、2020年には2018年と比べて約39%の残業時間削減に成功しました。また、リモート会議や業務のIT化にも積極的に取り組むことで無駄な残業を減らすことにつなげました。新雪運輸株式会社は、業務の可視化やデジタル化によって働き方改革を成功させた事例です。

(3)株式会社吉田測量設計

株式会社吉田測量設計は、岩手県を拠点に測量、調査、設計、保証、維持管理業務などを行う会社です。働き方改革のポイントとしては、勤怠管理システムを導入し、長時間労働の是正はもちろん社員一人ひとりの業務効率化を管理しました。

また講師を招いて、個人のスキルアップを図る手伝いや、会社を良くするための意見交換会なども実施。女性の役職を増やすという積極的な人事策も、女性従業員のモチベーションアップにつながりました。

個人個人のスキルアップや働くためのモチベーションを上げることにポイントをおいた施策によって、働き方改革を成功させた好例だと言えます。

(4)スリー・アールシステム株式会社

スリー・アールシステム株式会社は、光学機器、デジタルグッズを製造販売する企業です。時短社員の対象を全社員に広げ、子育て、介護、結婚、出産、進学、副業のためなど、社員の新しい可能性を見出す勤務形態を採用しました。

また社内図書館やサークル活動などの充実した福利厚生で、社員が自由に学べる機会の提供などに寄与しています。スリー・アールシステム株式会社の働き方改革は、社員の将来性を考えた柔軟な働き方を手助けすることに特化した成功事例でしょう。

中小企業における働き方改革はますます重要に

今回は働き方改革において、中小企業が直面している課題とそれを解決するためのポイント、そして成功事例を解説しました。中小企業で働く人は国内における雇用の7割程度を占めるため、中小企業の働き方改革への取り組みは日本の産業界全体で見ても重要なものとなります。

中小企業は働き方改革に成功することで、人手不足解消、売り上げ確保、利益拡大など、大きなメリットを期待できます。ここで紹介した働き方改革のポイントを参考にして、積極的に取り組み、職場環境の改善につなげましょう。

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