単式簿記とは?複式簿記との違いやメリット・デメリットを解説!

最終更新日時:2023/11/21

会計ソフト

単式簿記とは

簿記には「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があり、事業者はその特徴や違いを理解していなければなりません。そこで本記事では、単式簿記の概要や複式簿記との違い、それぞれのメリットやデメリットを解説します。

簿記とは?

簿記は、経済活動を行う企業や個人が、企業活動を行ううえで生じたお金の流れや取引の内容を整理して記録したものです。

わかりやすい例として、家計簿をイメージしてみましょう。家計簿では、何にどれだけお金を使っているのかを把握するために、毎日の食費や交通費、水道光熱費などの支出を記録し、一方で給料や賞与などの収入も記録します。つまり、1ヶ月の収支のバランスが可視化されることになりますが、これが簿記の基本的な考え方です。

企業では、売上や経費、資産や負債、資本などを簿記に記録し、それらの増減を追うことで、経済状況を評価し、将来の経営方針を決定するための重要な情報を得ることができるのです。

ただし、簿記には「単式簿記」と「複式簿記」の2つがあり、それぞれの記帳の仕方に違いがあるため、理解したうえで選択する必要があります。

単式簿記・複式簿記の違い

単式簿記と複式簿記の違いを理解することで、自身の状況に合った帳簿方法を選択できます。

ここからは、単式簿記・複式簿記の違いを詳しく解説します。

単式簿記

単式簿記は、取引ごとの収入と支出を一つの帳簿に直接記録する方法です。主に小規模な事業主や個人事業主が使用する記帳方法として知られています。

家計簿に近いシンプルな仕組みのため高度な知識がなくても記帳可能ですが、その反面、単式簿記では資産や負債の詳細な変動を明確に把握することが難しくなります。

経営の規模が拡大し、財務状況の詳細な分析や複雑な取引が増えると、単式簿記だけでは不十分となる場合がある点に注意しましょう。

単式簿記の具体例は以下の通りです。

例:11月1日に交通費を1,000円支払った場合

日付勘定科目金額摘要
11月1日旅費交通費1,000円電車賃

複式簿記

複式簿記は、複数の勘定科目を用いて帳簿付けを行う方法です。基本的に、経済的な取引を「借方」と「貸方」の2つの観点から分けて記録を行います。

例えば、企業が100万円の商品を現金で購入した場合、この取引は「現金」の減少と「商品」の増加という2つの観点から記録されます。具体的には、「現金」の会計科目から100万円を減らし(借方)、同時に「商品」の会計科目に100万円を加えます(貸方)。このように、1つの取引が2つの会計科目に影響を与え、その合計金額が一致することで、会計のバランスが保たれます。

そのため、複式簿記にはより詳細で正確な財務分析が可能というメリットがあり、主に法人を中心に採用されています。ただし、個人事業主においても複式簿記により、青色申告特別控除が最大65万円受けられるため、高い節税効果を望むのであれば、複式簿記による記帳がおすすめです。

以下は、交通費を現金で支払った場合の複式簿記の記帳例です。旅費交通費1,000円の支払いが原因となり、現金1,000円が減ったことを明確に記録できます。

例:11月1日に交通費を1,000円支払った場合

日付借方貸方摘要
11月1日旅費交通費 1,000円現金 1,000円電車賃

単式簿記のメリット・デメリット

ここからは、単式簿記のメリット・デメリットを紹介します。

メリット:仕組みが簡単で作成しやすい

単式簿記の最大のメリットとして、シンプルな仕組みがあげられます。特に経理や会計に詳しくない小規模事業者や個人事業主にとって、このシンプルさは大きな利点となるでしょう。

取引ごとの収入と支出を一つの帳簿に記録するだけで、日常の金銭の流れが追跡可能です。

また、複雑な勘定科目など、専門的なスキルや知識が不要なため、初めての経理作業でも迷うことなく、スムーズに取引の内容を記録・整理できるでしょう。

デメリット:貸借対照表の作成ができない

単式簿記は、特定の時点での財政状況を示す重要な財務諸表の一つである貸借対照表の作成ができません。

貸借対照表を作成するには売掛金や買掛金、借入金の残高も記録しておく必要があります。しかし、単式簿記は取引の収支を中心に記録するため、資産や負債の詳細な変動を記録することが難しいのです。

貸借対照表が作成できないと、事業規模の拡大時に資金調達や税務処理などに必要な財務情報の提供が困難となる場合があります。

デメリット:経営状況を把握できない

単式簿記のもう一つのデメリットは、経営状況の全体像を正確に把握することが難しい点です。

単式簿記は、主に収入と支出の記録に特化しており、収益性は把握しやすものの、資産の動きや負債の状況など、経営の健全性やリスクを評価するうえで必要な多角的な情報が不足してしまいます。

たとえば、売上高の増加は把握しやすいものの、資産の使い道や投資の回収性を評価することが難しく、結果として、誤った経営判断につながってしまうことも考えられます。中長期的な視点で経営戦略や資金運用の計画を立てるためには、より詳細かつ総合的な会計情報が必要となるでしょう。

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複式簿記のメリット・デメリット

ここからは、複式簿記のメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。

メリット:財務諸表を作成できる

複式簿記では、貸借対照表や損益計算書などの詳細な財務諸表の作成が可能です。

取引の度に複数の勘定科目に記録を行うことから、財務諸表を通じて資産や負債、資本の詳細な動きを一元的に把握できます。そのため、経営者や関係者は、正確かつ迅速な経営判断を下す材料を手に入れられるのです。

また、複式簿記に基づく財務諸表は、外部関係者への情報開示をする際も高い信頼性で評価されます。

メリット:青色申告特別控除が受けられる

複式簿記で帳簿を作成することで、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。青色申告特別控除を受ける条件は以下の通りです。

  1. 事業所得もしくは事業的規模の不動産所得がある
  2. 複式簿記で記帳する
  3. 青色申告決算書(貸借対照表と損益計算書)を添付して確定申告をする
  4. 仕訳帳および総勘定元帳は電子帳簿保存を行う
  5. 確定申告書と青色申告決算書の提出は期限内にe-Taxで行う

なお、4と5を満たさない場合は最大55万円の控除となります。

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デメリット:簿記に関する専門的な知識が必要

複式簿記での帳簿付けは、簿記に関する専門的な知識が必要です。取引の度に複数の勘定科目に分けて記録を行う必要があり、借方と貸方の金額を一致させるための調整もしなければなりません。

複雑な手続きを適切に行うためには、基本的な簿記の理解だけではなく、さらなる深い知識が求められます。そのため、慣れないうちは初期の導入や運用において時間やコストがかかる可能性があり、ハードルの高さがデメリットと感じられることもあるでしょう。

貸借対照表と損益計算書について

複式簿記で作成できる貸借対照表と損益計算書は、青色申告において欠かせない書類です。ここからは、それぞれの特徴を紹介します。

貸借対照表とは

貸借対照表は別名バランスシートとも呼ばれ、企業の決算日時点の資産や負債、資本の状況を示す財務諸表の一つです。

具体的には、現金や預貯金などの流動資産と、設備や不動産などの有形固定資産を示す「資産」、借入金や未払金などの「負債」、自己資本の「純資産」を把握できます。

企業が所有する資産と、それをどのように調達したかが明確に示されるため、貸借対照表を通じて企業の財政健全性や資金繰り、資本構造を評価することが可能です。

損益計算書とは

損益計算書は、企業の一定期間(通常1年)における収益と費用を計算し、その差額を利益または損失として表示する財務諸表の一つです。

具体的には、商品の売上やサービスの収入から、商品の仕入れ費や人件費、租税、広告費などの経費を引いた利益を示します。これにより、どれだけの売上があり、何に経費をどれだけ使ってどのくらい儲けが出たのかを一目で把握できることが特徴です。

損益計算書は、投資家や取引先など、企業の財務状況を把握する必要がある第三者に対して公開され、企業の収益性や経営効率を評価するための基本的な資料となります。

損益計算書(PL)とは?項目別の見方と計算方法を紹介

帳簿作成におすすめの会計ソフト

専門的な知識やスキルを必要とする複式簿記ですが、会計ソフトを活用すれば最低限の知識のみで簡単かつ手間なく行えるようになります。

ここからは、帳簿作成におすすめの会計ソフトを3つ紹介します。

やよいの青色申告オンライン

やよいの青色申告オンラインは、中小企業や個人事業主に人気の高い会計ソフトの一つです。

クラウド型のため、いつでもどこでもアクセスが可能で、煩雑な青色申告の手続きを効率的に支援します。直感的な操作性や自動計算機能、税務署への申告サポートなど、ユーザーフレンドリーな機能も豊富。さらに初めての経理・会計作業を行う方でも安心して利用できるよう、充実したサポート体制が整っている点が魅力です。

提供元弥生株式会社
初期費用要問い合わせ
料金プラン
  • セルフプラン:9,680円(税込)/年
  • ベーシックプラン:15,180円(税込)/年
  • トータルプラン:26,400円(税込)/年

※1年間無料キャンペーン中(※2023年11月現在)

導入実績弥生シリーズ登録ユーザー数310万以上 (※2023年9月現在)
機能・特徴確定申告書の作成・e-Tax、自動取込・自動仕訳、経営状況の見える化、税理士・会計事務所連携、金融機関連携、POSレジ連携、請求書連携、スマホアプリ、インボイス制度・電子帳簿保存法対応ほか
URL公式サイト

円簿青色申告

円簿青色申告は、青色申告に特化したクラウド型の会計ソフトです。ユーザーが直面するであろう、税務に関する疑問や不安を解消するための機能やサポートが充実しています。

シンプルなインターフェースでの入力や、スマートフォンとの連携によるレシートのスキャン機能など、日々の帳簿作成をスムーズにサポートしてもらえます。また、税務に関する最新情報の提供や確定申告の支援など、会計業務に慣れない事業者でも安心して利用できる環境を整備。煩雑な会計作業を手軽に、正確に行いたい方に推奨される会計ソフトです。

提供元株式会社円簿インターネットサービス
初期費用無料
料金プラン無料
機能・特徴すべての機能がずっと無料、インストールの必要が無い、やよいの青色申告のデータをインポートできる、安心の暗号化によるデータ通信、データは日本国内に2重保管ほか
URL公式サイト

freee会計

freee会計は、日本国内で広く利用されているクラウド会計ソフトの一つです。特に中小企業や個人事業主におすすめで、手軽に会計業務をデジタル化することが可能です。

自動仕訳機能や各種銀行口座との連携、クレジットカードや電子マネーとのデータ同期が可能となっており、煩雑な入力作業を大幅に削減。また、税務申告のサポート機能も充実しており、経理の知識がない方でも安心して利用できます。

クラウド型であるため、場所を問わずさまざまなデバイスからアクセスでき、経理作業の効率化を実現します。

提供元freee株式会社
初期費用要問い合わせ
料金プラン【年払い】

◾️個人事業主向け

  • スターター:12,936円(税込)/年(1,078円/月あたり)
  • スタンダード:26,136円(税込)/年(2,178円/月あたり)
  • プレミアム:43,780円(税込)/年(3,647円円/月あたり)

◾️法人向け

  • ミニマム:26,136円(税込)/年(2,178円/月あたり)
  • ベーシック:52,536円(税込)/年(4,378円/月あたり)
  • プロフェッショナル:52万5,360円(税込)/年(43,780円/月あたり)

【月払い】

◾️個人事業主向け

  • スターター:1,628円(税込)/月
  • スタンダード:2,948円(税込)/月

※プレミアムは月払いプランなし

◾️法人向け

  • ミニマム:2,948円(税込)/月
  • ベーシック:5,808円(税込)/月
  • プロフェッショナル:52,536円(税込)/月
導入実績有料課金事業所数45万事業所(2022年12月末時点)
機能・特徴法改正にも完全対応、自動入力・自動仕訳で手間を最小限に、決算書はボタンを押すだけで完成、お手頃な料金で始めやすいほか
URL公式サイト

単式簿記と複式簿記の違いを理解して正確な帳簿を作成しよう

経営の健全性を評価するためには、正確な帳簿の作成が不可欠です。

単式簿記はシンプルさから小規模な事業主や個人事業主に適しており、一方の複式簿記は、個人事業主から大企業まで標準的な方法として採用されています。

どちらを採用するかは、事業の規模や目的などに応じて異なるため、目的に合った記帳方法を選択しましょう。また、最適な会計ソフトを利用することで、簿記の作業をより効率的かつ正確に行えるようになります。

単式簿記と複式簿記の特性と違いを理解して、経営の基盤となる帳簿をしっかりと構築しましょう。

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