【2024年】介護事業所でBCP策定が義務化!期限・罰則・策定方法を解説

記事更新日:2022/11/13

BCP対策

介護現場のBCP

介護事業所で義務化されたBCP策定。災害時に職員・入居者や事業を守るための指南書であるBCPですが、なぜ介護事業所で義務化されたのでしょうか。本記事では、そんな介護事業所におけるBCP策定について、義務化された理由や対応しなかった場合のリスク、策定方法までを詳しく解説していきます。

介護事業所で義務化されたBCP策定とは?

2021年より介護事業所ではBCP(Business Continuity Plan)の策定が義務化されました。BCP策定までの経過措置として3年間の猶予はありますが、できるだけ早くBCPの策定を行わなくてはなりません。

BCP策定とは?

BCPとは、Business Continuity Planの頭文字から取った言葉で日本語では「事業継続計画」という意味です。事業継続計画とは感染症や災害時などの緊急事態においても、事業を継続させるために立てる計画のことです。

特に介護事業所では、自然災害はもちろん、感染症の発生が大きなリスクとなることが予想されるため、インフルエンザや新型コロナなどに備えたBCPの策定が急務となっています。

期限は2024年までの実施

令和3年度(2021年度)に介護報酬が改定されたのに伴い、BCP策定だけでなく研修や訓練の実施など、「BCM(Business Continuity Management)」も義務づけられました。

BCPが緊急時における事業継続や早期の事業復旧を目指すための計画であるのに対して、BCMは事業継続のための「マネジメント」を指します。これは、緊急時において適切にBCPを発動し行動できるように、平時から訓練や検証などを繰り返すことで、BCPの導入・運用や改善を図るための取り組みです。

BCP策定やBCMの義務化は2021年に定められましたが、3年間の経過措置が設けられているため期限は2024年となります。組織全体のマネジメントにも関わる包括的な施策であることから、関連する事業者は早急に対策を行わなければなりません。

介護事業所が義務化に従わなかった場合のリスクとは

万が一介護事業者が義務化に従わない場合には、以下のようなリスクが想定されます。

訴訟による賠償責任

BCP策定およびBCMは義務であるため、万が一対策を講じていない状況下で感染症などが発生し、入居者や職員に被害が及んだ場合には、訴訟による賠償責任が発生することが考えられます。

社会的責任の追及

企業の社会的責任については、近年注目度が高まりつつあります。これは介護施設も例外ではありません。

義務化に従わず、災害や感染症への対策に不備があると、報道やSNSなどを通じて世間に知れ渡る可能性があります。その場合には、入居者やスタッフの身の安全への配慮を怠っているという目を向けられるおそれもあり、社会的責任についても問われるかもしれません。

法的責任の追及

法的責任を追及されると損害賠償請求が発生するだけでなく、その後の事業の継続に大きな影響を及ぼしかねません。

実際、東日本大震災で避難マニュアルを遵守しなかった幼稚園の運営者が法的責任を問われたケースもあります。訴訟に発展した場合、後に和解したとしても、従前のように事業を再開・復旧するためには多大な時間と労力がかかってしまいます。

介護事業所でBCP策定が義務化された理由

介護サービスは、施設に入所している高齢者や障がい者、さらにはその家族が生活する上でなくてはならないものです。大規模災害や感染症拡大などの緊急事態が発生した際に、適切な対策が講じられていない場合、生活の維持だけでなく生命にも甚大な影響を及ぼす可能性があります。

また介護事業者は、地震や水害、土砂災害などが発生した後にも、入居者の生活を守るために事業を継続する必要があります。そのためにも、防災対策や訓練、インフラの確保など、平時からの入念な準備が必要不可欠になるのです。

同時に、サービスを継続するためにはスタッフの健康と安全も守る必要があります。緊急事態時には、長時間の勤務や精神的な負荷が過重にかかることが想定されます。

BCPの策定やBCMへの取り組みを通して、行動指針を明確化するとともに、災害時の人的リソースの確保や他施設・他事業者、地域社会との連携体制を整えておくことが、入居者およびスタッフ双方の健康や安全につながるのです。

介護事業所がBCP策定を行うメリット

介護事業所がBCP策定を行うことで、税制優遇や補助金の活用などのメリットも享受できます。ここでは主なメリットについて、次の4つを解説していきます。

  • 入居者や職員を守ることができる
  • 税制優遇や金融支援を活用できる
  • 補助金や助成金を活用できる
  • ワクチンの優先接種を受けられる

入居者や職員を守ることができる

BCPを策定することで、緊急時に優先して行うべき行動が明確になります。特に介護事業所では適切な行動が取れるかどうかによって、職員や入居者の安全や生死が左右される局面もあるでしょう。

緊急事態に対処するためには、BCP策定や事前の訓練が必要です。また、日頃の業務でもBCP対策を意識することで、もしもの時にも冷静に対応することができるでしょう。

実効性の高いBCPの整備は、自然災害が発生したあとの事業の継続と早期の復旧を可能にします。これにより、入居者やスタッフの安全確保だけでなく、取引先や入居者の家族などとも信頼関係を築くことができます。結果的に、事業所の安定経営にもつながるという利点もあるでしょう。

税制優遇や金融支援を活用できる

BCPを作成し国の認定を受けることにより、税制優遇や金融支援を受けることもできます。

税制優遇には「中小企業防災・減災投資促進税制」があります。本制度では、事業継続力強化計画の認定を受けた場合に設備投資に対する20%(令和5年4月1日以後に取得等をする対象設備は特別償却18%)の特別償却が設けられています。

BCPの対策強化のために必要な下記の防災・減災設備が対象です。

  • 100万円以上の機械類(自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプなど)
  • 30万円以上の器具備品(サーモグラフィ装置など)
  • 60万円以上の建物附属設備(自家発電設備、変圧器、配電設備、貯水タンクなど)

[出典:中小企業庁事業環境部企画課経営安定対策室「中小企業防災・減災投資促進税制(特定事業継続力強化設備等の特別償却制度)の運用に係る実施要領」]

また、金融支援では以下のような優遇措置が受けられます。

  • 事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業の信用保険の保証枠を別枠追加。
  • 津波、水害及び土砂災害に係る要対策地域に所在する者の土地に係る設備資金について、貸付金利を引き下げ。
  • 事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業・小規模事業者の防災に係る設備資金の貸付金利を基準金利から引き下げ。

[引用:中小企業庁「「中小企業強靱化法」の概要について」より]

信用保険の保証枠の別枠追加額は普通保険で別途追加2億円、無担保保険の別途追加額は8,000万円、特別小口保険の別途追加額は1,250万円となっています。

また「社会環境対応施設整備資金」として、以下のものが利用できます。

自ら策定したBCPなど※に基づき、防災に資する施設等の整備を行う方

※ 自然災害の他、感染症またはサイバー攻撃にかかる対策の観点から策定され、かつ、次の(1)または(2)に該当するものをいいます。

(1)平成18年2月に中小企業庁が公表した「中小企業BCP策定運用指針」に則り作成した事業継続計画(BCP)および事業継続管理(BCM)。

なお、同指針において作成することが必須とされている事項については、すべて記載する必要があります。

(2)中小企業等経営強化法に規定する事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画のうち認定(変更認定を含む。)を受けた計画。

2.中小企業等経営強化法に定める大企業者であって、同法に基づき連携事業継続力強化計画の認定(変更認定を含む。)を受けた認定連携事業継続力強化を行う方(認定連携事業継続力強化計画の実施期間内において、同法に定める区域内又は地域内に事業所を有し又は有する事業者と共同で、認定連携事業継続力強化の実施をするものに限る。)

[引用:日本政策公庫「社会環境対応施設整備資金」より]

設備資金に関する金利は、通常に比べて低く設定されている「特別利率」が適用されます。

補助金や助成金を活用できる

中小企業者などが策定したBCPを実践するために必要な物品・設備等の導入に要した費用の一部が助成されます。一例として、公益財団法人東京都中小企業振興公社が行っている「BCP実践促進助成金」を紹介します。

助成対象の企業は都内において 1 年以上事業を営んでおり、下記のいずれかの要件を満たした上で BCP を策定した中小企業者および中小企業団体です。

<要件>

  • 公社が実施するBCP策定支援事業による支援
  • 中小企業庁「事業継続力強化計画」の認定

助成対象になる経費の一例は以下の通りです。

<助成対象>

  • 自家発電装置、蓄電池
  • 安否確認システム
  • 感染症対策の物品
  • 従業員用の備蓄品
  • 土のう、止水板

助成率は中小企業者等で1/2、小規模企業者2/3以内となります。ただし、電力の確保に資する物品・設備等の導入に係る経費については助成率は4/5以内です。

助成限度額は1,500 万円(下限額10万円)となります。

※上限1,500万円は業務システムのクラウド化の助成額を含む(業務システムのクラウド化の助成上限額は450万円)

ワクチンの優先接種を受けられる

BCP対策を行っている介護事業者は、「新型インフルエンザ等対策特別措置法第28条」により感染拡大時に優先的にワクチンの接種を受けることが可能です。

優先的にワクチン接種を受けるためには「登録事業者」になる必要があります。この登録事業者になる要件の1つにBCPの作成が含まれています。

介護事業所におけるBCPの策定方法

次に、介護事業所での具体的なBCP策定方法について順番に説明します。具体的なフローは次の6つです。

  1. ガイドラインを確認する
  2. ひな形を使って現状を把握する
  3. 簡易演習を実施する
  4. 一時的なゴールを設定する
  5. 課題の優先順位を決定する
  6. 演習の繰り返し・フィードバック

ガイドラインを確認する

まずは、ガイドラインの確認から始めましょう。感染症と自然災害時の緊急事態では対応が異なるため、ガイドラインを確認することで全体図の把握を行います。

厚生労働省では、それぞれのガイドラインをネット上で公開しています。

<新型コロナウイルス感染症>

厚生労働省「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」

<自然災害>

厚生労働省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」

ひな形を使って現状を把握する

次にひな形を使い現状把握を行います。厚生労働省が公開しているひな形を活用すれば、スムーズに進められるでしょう。

ひな形は、目的や基本方針、主管部門などを規定する「総則」から始まり、「平時からの備え」「初動対応」「体制の確立」などで構成されています。本ひな形をもとに各事業所で適宜改変しながら活用することで、現時点における不足点や課題点などを可視化できるでしょう。

厚生労働省のサイトから入手できるひな形は、新型コロナウイルス感染症編が入所系・通所系・訪問系の3種類、自然災害編は共通とサービス固有の2種類に分かれています。

[出典:厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」]

簡易演習を実施する

次に簡易演習を行います。この演習にはできるだけ多くの関係者に参加してもらい、災害が起きたと仮定し、時系列に沿って行うことでより良い効果が期待できます。

演習の目的は、現時点で対策ができている点の確認や課題の発見です。課題点が見つかったら、その項目を先ほどのひな形に書き足していくことで改善を図ります。

一時的なゴールを設定する

簡易訓練において可視化された課題の解決を一時的なゴールに設定し、2024年の義務化までに可能な限り準備します。

先述したガイドラインには詳細な「対応フローチャート」が記載されています。それを参考にしながら現状分析や達成の難易度の分析を行い、期日までに解決できるように計画の立案を行いましょう。

BCP策定の過程で新たな人員や費用が発生するケースも想定されるため、人員確保の計画や追加予算の作成も同時に進めていきます。

課題の優先順位を決定する

BCP策定過程で現状認識や課題の洗い出しを行う中で、解決すべき問題が複数見つかることもあるでしょう。その課題をまとめて解決することは、時間的・リソース的に困難を伴うため、優先順位を付けていくことになります。

ここで重要なのは、期日と責任者を明確に定めることです。いつまでにどのレベルまで対応するか、責任者は誰かを決めておかないと、計画が頓挫しかねません。

BCP策定過程で可視化された優先順位の高い課題をそのままにしておくと、緊急事態発生時に甚大な影響が出る可能性があります。曖昧なまま放置せずに、BCPの義務化期限を迎えるまでに解決しておきましょう。

演習の繰り返し・フィードバック

日頃から演習を繰り返し実施し、毎回フィードバックを行います。つまり、PDCAサイクルを回し続けることが重要なのです。

さまざまな場面を想定した訓練を行うことで課題が発見されるため、その都度、改善を行うことにより理想的なBCP策定が可能となります。

介護事業所で義務化されたBCP策定について正しく理解

2024年に介護事業所でBCP策定が義務化されます。BCPの策定やBCMの整備ができない場合は、今後の事業所運営にも大きな影響を及ぼすことが予想されます。

BCPを策定することで、入居者・スタッフの安全の確保につながり、健全な事業経営にも寄与するでしょう。まずはBCPについて理解を深め、ここで紹介した策定方法を確認しながら、できるだけ早くBCPの策定に着手しましょう。

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