【最新】日本におけるBCP対策の現状と課題とは?今後の対応策も解説

記事更新日:2022/11/04

BCP対策

事業継続計画書・BCP対策

災害やサイバー攻撃などの発生に備え、多くの企業がBCP対策の実施を検討しています。しかし、BCPを策定するためには、解決しなければならない課題が少なからず存在するのも事実です。そこで本記事では、BCP対策についての現状と日本企業が抱える課題、今後の対応策などを徹底解説していきます。

BCP対策とは?

BCPとは「Business Continuity Planning」の頭文字をとったもので、「事業継続計画」を意味します。自然災害やサイバー攻撃が発生した場合でも、被害を最小限に抑え、自社の事業が継続できるように対策することが目的です。

BCPの策定は法律で義務付けられているものではありません。しかし、BCPを策定しておくことで有事の際に事業が中断するリスクを最小化し、迅速な復旧につなげられます。

企業は、競争で優位に立つため、さらに消費者や取引先などのステークホルダーからの信頼を得るためにも、BCPの策定が求められています。

日本におけるBCP対策の現状

日本におけるBCP策定率の現状を「業界別」「企業規模別」「地域別」の観点から見ていきましょう。

業界別の現状

2021年度(令和3年度)の業界別BCP策定率は以下のようになります。

業界 BCP策定率
金融・保険業 81.6%
情報通信業 55.6%
建設業 52.8%
サービス業 42.3%
製造業 52.0%
卸売業 41.4%
運輸業・郵便業 49.0%
不動産業・物品賃貸業 40.7%
小売業 30.5%
宿泊業、飲食サービス業 15.6%

[出典:内閣府「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の概要」]

金融・保険業が81.6%で最も高く、その次に情報通信業(55.6%)、建設業(52.8%)、製造業(52.0%)と続くという結果になりました。

企業規模別の現状

2007年度(平成19年度)から2021年度(令和3年度)までの企業規模別BCP策定率の推移は以下のようになります。なおカッコ内の数値は「策定中」と回答した企業も含む数値です。

 

年度 大企業 中堅企業
平成19年度 18.9%(35.3%) 12.4%(15.8%)
平成21年度 27.6%(58.4%) 12.6%(27.2%)
平成23年度 45.8%(72.3%) 20.8%(35.7%)
平成25年度 53.6%(73.5%) 25.3%(37.3%)
平成27年度 60.4%(75.4%) 29.9%(42.0%)
平成29年度 64.0%(81.4%) 31.8%(46.5%)
令和元年度 68.4%(83.4%) 34.4%(52.9%)
令和3年度 70.8%(85.1%) 40.2%(51.9%)

[出典:内閣府「令和4年防災白書」]

2021年度(令和3年度)における企業規模別のBCP策定率は、大企業が約7割、中堅企業が約4割となっています。

また、日本政府は「国土強靱化年次計画2019」において、2020年までのBCP策定率を以下のように掲げていました。

  • 大企業:100%
  • 中堅企業:50%

[出典:国土強靱化推進本部「国土強靱化年次計画2019」]

現状では目標値に及ばない結果となっています。大企業・中堅企業ともに漸増傾向にあるものの、さらなる推進が必要な状況です。

地域別の現状

2021年の地域別BCP策定率の現状は以下の通りです。なおカッコ内の数値は前年比を示したポイントです。

地域 BCP策定率
北海道 17.9%(+0.6pt)
青森 12.1%(+3.8pt)
岩手 12.4%(+2.3pt)
秋田 7.8%(△2.4pt)
山形 19.7%(+1.5pt)
宮城 15.8%(△0.6pt)
福島 18.9%(+3.0pt)
茨城 24.7%(+3.2pt)
栃木 28.2%(+7.9pt)
群馬 12.6%(△4.1pt)
埼玉 14.3%(+2.0pt)
千葉 17.0%(+0.8pt)
東京 22.5%(+1.4pt)
神奈川 16.3%(+0.9pt)
新潟 13.8%(+0.0pt)
富山 17.1%(△0.3pt)
石川 15.1%(+0.1pt)
長野 20.5%(+1.7pt)
岐阜 18.3%(△0.5pt)
福井 17.1%(+8.2pt)
愛知 17.2%(+1.3pt)
山梨 19.0%(△2.4pt)
静岡 21.5%(+2.4pt)
滋賀 22.7%(+1.4pt)
奈良 18.2%(+9.1pt)
三重 14.7%(△0.3pt)
京都 13.7%(△0.5pt)
大阪 16.1%(+0.8pt)
和歌山 16.9%(△3.1pt)
兵庫 14.4%(△2.1pt)
鳥取 22.2%(+2.2pt)
岡山 20.2%(+0.8pt)
島根 9.8%(△2.3pt)
広島 14.2%(△0.9pt)
山口 17.4(+2.5pt)
香川 18.5%(+5.8pt)
愛媛 14.5%(+1.9pt)
徳島 13.2%(+5.9pt)
高知 28.2%(△1.0pt)
福岡 13.3%(+0.0pt)
大分 12.0%(△1.9pt)
宮崎 15.2%(+0.9pt)
長崎 7.7%(△0.6pt)
佐賀 14.6%(+1.8pt)
熊本 8.9%(+0.3pt)
鹿児島 12.4%(+2.9pt)
沖縄 7.7%(△1.5pt)

[出典:株式会社帝国データバンク「特別企画 : 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021 年)」]

栃木県(28.2%)や高知県(28.2%)、茨城県(24.7%)、滋賀県(22.7%)の策定率が他県に比べて高くなっています。一方で、九州地方や東北地方の数値は、全国水準(17.6%)より5%以上低く、整備が進んでいない実情がみてとれます。

BCP対策が必要とされている理由

BCP対策をすることは、倒産を防ぐことや関係者からの信頼性向上のために必要とされています。

例えば、BCP対策を実施していない場合、被災した際に事業を継続したり、復旧したりすることが難しくなります。被災後の具体策がなく、社内での訓練や教育も行っていない場合にはスピーディーな対応ができないからです。

直近では、東日本大震災や新型コロナウイルスなどの影響で、多くの企業が倒産に追いやられました。被災して事業を継続できなくなることは、自社事業や自社従業員への影響だけでなく、消費者や取引先にも影響を及ぼすことになります。最悪の場合には、取引先まで連鎖的に倒産する可能性もあるのです。

一方で、BCP対策をして事業が中断しない状況を作ることで、サプライチェーン全体の事業継続が可能になります。それにより災害時でも、消費者に対して商品・サービスを滞りなく届けられる可能性が高まります。

このように、防災対策だけでなく、経営戦略の観点からもBCP対策が必要とされています。

BCP対策における現状の課題

BCP策定の重要性が増す中、なぜ大企業・中小企業ともに策定率が100%にならないのでしょうか。帝国データバンクの調査から、BCP対策における現状の課題を解説します。

BCP対策に必要な人材の不足

帝国データバンクの調査によると、BCP対策をしていない企業における、「策定していない理由」は以下のようになります。

BCPを策定していない理由 全体の割合 大企業の割合 中小企業の割合
策定に必要なスキル・ノウハウがない 42.7% 45.4% 42.2%
策定する人材を確保できない 31.1% 37.6% 30.4%
書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい 26.1% 31.3% 25.5%
策定する時間が確保できない 25.8% 31.8% 25.2%
自社のみ策定しても効果が期待できない 24.1% 18.6% 24.6%
必要性を感じない 21.2% 16.8% 21.6%
リスクの具体的な想定が難しい 17.0% 19.9% 16.7%
策定する費用を確保できない 12.7% 9.8% 12.9%
ガイドライン等に自組織の業種に即した例示がない 5.2% 3.8% 5.4%
策定に際して公的機関の相談窓口が分からない 2.8% 2.0% 2.9%
策定に際してコンサルティング企業等の相談窓口が分からない 2.3% 1.6% 2.4%
その他 3.7% 4.3% 3.7%

[出典:帝国データバンク「特別企画 : 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2022年)」]

大企業・中小企業ともに「スキル・ノウハウがない」「人材が確保できていない」という理由が多くなっています。BCPを策定する際には検討するべき事項が多いため、専門知識やそれを有した人材が必要になります。

しかし、人的・資金的なリソース不足から、多くの企業でそのような専門人材を確保できていないのが現状です。

外部インフラの把握の難しさ

BCP対策をする際、外部インフラの情報を把握する必要があります。

災害が発生した際、被害を受けるのは自社だけでなく、外部のインフラも同様に被災することがほとんどです。外部インフラはどのような影響を受け、その結果自社に与える被害は何かということを想定する必要があるのです。

しかし、災害により想定される被害を完全に把握するのは困難なのが現実です。例えば、停電や断水が発生した場合、その規模や期間などを想定するのは難しいでしょう。これは通信、ガス、交通網なども同様です。

実際、BCP対策をしていない企業の約2割が「リスクの想定が難しい」と回答しています。このように、外部インフラの影響範囲が正確に把握できない点も、BCP策定の障害の一つになっています。

[出典:帝国データバンク「特別企画 : 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2022年)」]

策定にかかる時間的コスト

BCPを策定する際、社内外のさまざまな現状や課題を抽出し、検討・検証する必要があるため、多くの時間がかかります。しかし、通常業務も並行して行うのが普通のため、多くの時間をBCP策定に割けないという課題があります。

帝国データバンクによる調査でも「策定する時間が確保できない」と回答している企業が約3割となっています。こうした時間的コストを解決するためには、外部リソースの活用なども考えられますが、費用の問題もあり、なかなか着手できない企業が多いのが現状です。

BCP対策の課題解決に向けて検討できる対応策

ここでは、BCP対策の課題解決に向けて検討できる対応策を2つ紹介します。

BCP全体の見直し

まずはBCPの全体像の把握から始め、すでに策定済みの場合には、必要に応じて見直しを図ることも必要です。自社を取り巻く環境は常に変化しており、それに順応したBCP対策を講じる必要があるからです。

全体の見直しは「策定」「テスト」「改善」の順番でサイクルを回し、更新していくことが大切です。人材不足や通常業務が多忙なためBCP策定に時間が割けない場合でも、課題を発見し、少しずつ改善することでBCPの精度を向上させることができます。

他企業のBCPデータの参照

2003年3月に「企業内容等の開示に関する内閣府令」が改正され、企業は事業のリスクについて情報を開示することが義務付けられました。

他企業の有価証券報告書や決算書から事業リスクに関する情報を収集できるので、そうしたBCP関連データを参照することも課題解決に向けた対応策の一つになり得ます。自社と業種や企業規模などが類似する企業のデータを参考にして、BCP策定の際に生かしましょう。

BCP対策における現状の課題を把握しておこう

本記事では、日本企業におけるBCP対策の現状と課題について解説しました。BCP対策に関しては、まだまだ課題が山積みで、大企業・中小企業ともに策定が進んでいない企業が多いのが実情です。

しかし、BCPを策定していないと自然災害やサイバー攻撃、感染症の拡大などが発生した時に甚大な被害が発生し、企業の存続に大きな影響が出る可能性があります。

BCPの策定に際しては、まずは現状の業務やリスク、課題を把握することが大切です。本記事を参考にして、迅速に対策を進めていきましょう。

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