経営者が理解しておくべき税金の知識|種類や税金の対策を解説
支払いを義務付けられてる税金は、所得税や法人税などの種類があります。経営者として事業を展開するためには、納めるべき種類の税金について理解しておかなくてはなりません。本記事では、経営者が理解しておくべき税金の知識を、節税対策と併せて解説します。
目次
経営者が理解しておくべき税金の基礎知識
納税は国民の三大義務であり、税金は私たちの生活において重要な存在です。
健全な税務管理は国や地域社会に対する貢献の一環になるだけでなく、企業としての信用を高めることにもなります。税金の基礎知識を理解し、適切かつ効率的な経営に役立てましょう。
税金を納める理由
税金には3つの役割があります。
- 財源調達機能(公共サービスの財源を調達する役割)
- 所得再分配機能(所得の格差を埋める役割)
- 経済安定化機能(景気変動を抑える役割)
税金がない世界では、これらの役割が失われます。公共サービスを維持できず、所得の格差が広がり、景気が不安定になるリスクが高まるのです。多岐にわたる領域が税金で賄われていることからも、税金は生活に欠かせない存在であるといえます。
税金の原則制度
税金の公平な分担を実現するために、税制には「税の三原則」という基本原則があります。
- 公平の原則(担税力に応じて税金の負担を公平化する)
- 中立の原則(税制が個人や企業の経済活動に支障をきたさない)
- 簡素の原則(理解しやすい簡素な税制の仕組みを構築する)
これらの基本原則に従うことで、税制はより公正で効率的なものになると考えられています。
納税が遅れた場合のリスク
納税遅れや申告漏れが発覚した場合、以下のペナルティが科せられます。
- 延滞税が発生する
- 加算税が追加される
- 青色申告が取り消しになる
なお、期限後申告と無申告のペナルティ内容は異なるため、注意が必要です。延滞税などの追徴課税は、申告が早いほど少なくなり、自主的な期限後申告によって無申告加算税が免除される可能性があります。
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個人事業主の経営者が納める税金の種類
個人事業主が納める税金には、所得税・復興特別所得税などの国税と、個人住民税・個人事業税などの地方税があります。
所得税
所得税は、1月1日〜12月31日までの課税所得がある、すべての国民に納税義務があります。課税所得に応じて税率が5%〜45%の7段階に区分され、最終的な納税額が導き出されます。
個人住民税
個人住民税は住民登録先の市町村に対して納める税金で、一定の事由に該当する人を除くすべての住民が課税対象になります。
個人住民税は、前年の所得金額をもとに一律10%が課税される所得割と、一定の所得に対して定額の納付が求められる均等割の2種類で構成されています。
個人事業税
個人事業税は、個人事業主が都道府県に対して納税義務がある地方税の一種です。
全70種類に区分された法定業種の中で、第1〜第3の業種区分があり、税率は区分に応じて3%〜5%と異なります。ただし、事業主控除として年間290万円が控除されます。
復興特別所得税
復興特別所得税は所得税を納めるすべての国民が対象となる税金で、基準所得税額の2.1%が納税額になります。
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法人の経営者が納める税金の種類
法人の場合、個人事業主とは納める税金の種類が異なるので注意しましょう。法人の経営者が納めるべき4種類の税金を紹介します。
法人税
法人税は、企業活動で得た所得金額に対して課される税金です。普通法人(株式会社、合名会社、合資会社、医療法人など)をはじめ、公共・公益法人、協同組合が納税対象者となります。
税率は法人の種類によって異なりますが、普通法人は原則23.2%です。ただし、「資本金1億円以下」という条件を満たすことで、所得金額の年800万円以下の部分にかかる税率が15%まで下がります。
法人住民税
法人住民税は、法人が事業所を構えている都道府県・市町村に対して納める税金です。
法人住民税には、資本金や従業員数に応じた定額を支払う均等割と、法人税の額に住民税率を乗じた額を支払う法人税割があります。法人住民税の金額は、均等割と法人税割の合計です。
均等割は都道府県民税均等割と市町村民税均等割の2種類があり、都道府県民税金等割では資本金等の額に応じて2万円〜80万円、市町村民税均等割は従業員規模に応じて5万円〜300万円の税金が発生します。法人税割は、都道府県が法人税額の1%、市町村が法人税額の6%が税率です。
法人事業税
法人事業税は、事業そのものに対して課される地方税です。事業を行うにあたって利用する道路や公共サービスの経費を法人が一部負担すべきという考え方から課税されています。法人住民税と異なり、納付先は事業所を構える都道府県のみです。
納税対象者は普通法人(株式会社、合名会社、合資会社、医療法人など)、公益法人や協同組合、人格のない社団・財団です。収益事業から生まれた所得が課税対象になる公益法人などを除き、普通法人や協同組合はすべての所得に対して課税されます。法人事業税には4種類の税割があり、業種に応じて税率が異なります。
税割 | 概要 | 税率 |
付加価値割 | 事業年度ごとの付加価値額を基準に計算 | 0.37%〜1.2% |
資本割 | 資本金等の額を基準に計算 | 0.15%〜0.5% |
所得割 | 事業年度ごとの所得を基準に計算 | 1%〜7% |
収入割 | 特定事業者の事業年度ごとの収入金額を基準に計算 | 0.48%〜1% |
特別法人事業税
特別法人事業税は法人事業税(所得割・収入割)の一部を分離した税金で、令和元年度税制改正において導入されました。
法人事業税の納付対象者となるすべての法人に、特別法人事業税の納付義務があります。税率は法人事業税(所得割・収入割)の税額によって異なり、30%・37%・260%のいずれかが適用されます。
個人・法人に関わらず経営者として納める税金
税金の中には個人・法人の区別なく、納税対象者となる税金があります。ここでは主な4つの税金について解説します。
消費税・地方消費税
すべての消費者が負担する消費税は、消費税・地方消費税を合算した税金です。税金を消費者から預かった法人が国に納めます。ただし、前々年度の課税売上高が1,000万円以下など一定の要件に該当した場合には納税義務が免除されるので確認が必要です。
消費税・地方消費税には標準税率10%と軽減税率8%があり、それぞれ消費税率と地方消費税率の割合が異なります。
標準税率 | 軽減税率 | |
消費税率 | 7.8% | 6.24% |
地方消費税率 | 2.2% | 1.76% |
印紙税
印紙税は、課税文書を作成した際に、該当文書の作成者が納める税金です。課税文書とは契約書や領収書、約束手形などで、20種類あります。
記載された契約金額が契約書なら1万円以上、約束手形なら10万円以上から課税対象となり、1通あたり200円〜60万円の印紙税が課せられます。
自動車税
自動車税は、自動車の所有者に対して都道府県から課せられる地方税です。個人・法人に関わらず自動車を所有していれば納税の義務があります。なお、自動車の種別や用途、排気量等によって税率が変わります。
固定資産税
固定資産税は、土地や建物、償却資産(備品や車両など)の保有者に対して課される税金で、納税先は固定資産が所在する市町村です。固定資産の評価額に対して1.4%の標準税率をかけ、税額を算出します。
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会社経営における節税対策
安定した会社経営のためには、法律を遵守しながら税金を抑えることが求められます。ここでは節税対策のポイントを8つ解説します。
青色申告で確定申告を実施する
青色申告は複式簿記によって日々の取引を正確に記帳することで、税金において最大65万円の特別控除を受けられる制度です。また、青色申告では欠損金の繰越控除を受けることもできるため、将来の納税負担の軽減にもつなげられます。
赤字を繰り越す
青色申告の場合、欠損金の繰越控除として最大10年間まで赤字の繰越ができます。これにより翌年以降に利益が出た場合、赤字と相殺できるため、所得利益から赤字分を減額するという形で税負担の軽減が可能です。
不要な在庫を処分する
もし不要な在庫があれば、処分することで、帳簿の資産を減らせるだけでなく、処分費用を経費として計上できるので、節税につながります。
固定資産についても売却や除却することで固定資産税の節税になるため、見直し不要かどうかチェックしてみるとよいでしょう。
身内を会社の役員に任命する
役員に配偶者や親族を迎え入れることは、節税対策において有効な手段です。
この方法は配偶者や親族の業務実態がある場合に限られますが、役員として定額報酬を支給することで損金として計上できます。損金分として利益から差し引かれるため会社の所得を減らすことになるのです。役員報酬を活用して経営者と所得を分散することで、法人税の軽減が期待できます。
報酬と手当を別で支給する
役員報酬とは別に、必要経費を手当を支給することも節税対策として有効です。例えば、通勤手当などは経費として計上できるため、所得税や住民税の削減が期待できます。
会社名義で住居を契約する
マンションなどを会社名義で契約して役員用の社宅扱いとし、その社宅に住む役員の役員報酬から賃料相当額を差し引くことで、節税が可能です。
社宅の場合、家賃補助と比較して税金が安くなる可能性があります。
共済を積極的に活用する
中小企業退職金共済、小規模企業共済、経営セーフティ共済の三共済は、節税効果の高い制度です。
小規模企業共済は掛金を年間87万円まで所得控除に、中小企業退職金共済と中小企業退職金共済は掛金を法人の損金・個人事業の経費として計上できます。
必要に応じて減価償却を利用する
業績が好調の際に固定資産の購入による減価償却を活用することで、翌年以降の減価償却費を増やすことができ、長期的な節税効果が期待できます。
また、30万円未満の少額減価償却資産であれば、年度内に一括で経費に計上可能です。
▷経営者になるにはどうすべき?勉強方法や資格・成功するためのポイント
経営者の節税を効率よくする会計管理システム
長期的な視点で節税効果を得るためには、会計情報を適切に管理することが重要です。ここでは会計業務の効率化に役立つクラウド型の会計ソフトを3つ解説します。
マネーフォワードクラウド会計
マネーフォワードクラウド会計は、会計業務の効率化に重きを置いたクラウド型会計ソフトです。
インターネットバンキングやクレジットカードの取引明細、アップロードした請求書・領収書などをもとに、データの入力・仕訳を自動化できる強みを持っています。また、仕訳データをもとに決算書の自動作成が可能で、経営情報をリアルタイムで可視化できるため、節税効果も把握しやすいでしょう。
提供元 | 株式会社マネーフォワード |
初期費用 | 無料 |
料金プラン | ■スモールビジネス
■ビジネス
※従量課金別途 |
導入企業数 | シリーズ累計導入社数15万社 |
機能・特長 | 2,000以上のサービスとの連携によるデータの入力・仕訳の自動化が特長、取引明細の自動取得、スキマ時間にアプリで仕訳、仕訳ルールの学習機能など |
URL | 公式サイト |
弥生会計オンライン
弥生会計オンラインは、簿記の知識がなくても簡単に操作できることに注力したクラウド型会計ソフトです。
直感的な操作で情報入力ができることに加えて、操作方法や仕訳・経理業務のやり方などが分からない場合は、専門スタッフからサポートを受けられる強みがあります。
提供元 | 弥生株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
※どちらのプランも初年度無償キャンペーンあり |
導入企業数 | 登録ユーザー数310万以上(2023年9月時点) |
機能・特長 | 業務に精通した専門スタッフの支援によるアフターケアが特長、決算書の作成、仕訳・記帳の自動化、税理士・会計事務所連携、スマホで取引入力など |
URL | 公式サイト |
勘定奉行クラウド
勘定奉行クラウドは、業務全体のプロセスの最適化とナビゲーション機能によって、会計業務の効率化を支援するクラウド型の会計ソフトです。
専門家ライセンスを標準搭載していることから、税理士などと連携した会計管理を追加費用なしでできる強みがあります。幅広い製品バリエーションを用意しているため、企業の成長に応じて業務レベルが上がった際、システム側も最適なものにアップグレードできます。
提供元 | 株式会社オービックビジネスコンサルタント |
初期費用 |
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料金プラン |
|
導入企業数 | 累計72万社以上 |
機能・特長 | 企業規模や目的に応じて手軽にアップグレード可能、取引入力・自動起票、会計帳票・分析帳票・管理会計帳票、決算・消費税申告/納税など |
URL | 公式サイト |
経営に関する税金の知識を深めよう
税金には幅広い種類があり、根幹にある役割や原則は同じでも具体的な徴収方法や活用方法が異なります。税金の知識を深めることで、現在の経営においてどのくらい節税の可能性が残っているのかを確認するよい機会になるでしょう。本記事を参考に税のあり方や活用内容、節税対策の知識を深め、経営の効率化を進めてください。
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