クレショフ効果とは?具体例や活用方法・類似した効果を紹介
マーケティングなどでよく用いられる「クレショフ効果」は、関係のない画像や映像を見た時に、それらを関連づけて認識してしまう心理現象です。本記事では「クレショフ効果」とは何か、また具体例や活用方法、類似の心理現象まで解説します。
・クレショフ効果とは関連性のない画像、映像を見た時に無意識に関連する心理効果のこと
・ビジネス上のコミュニケーションやブランディングの手法として活用できる
目次
クレショフ効果の心理作用とは?
クレショフ効果とは、関連性のない複数の画像や映像を連続して見たとき、視聴者がそれらの間に無意識に関連した意味を見出してしまう効果のことです。
例えば、「男性が笑顔で何かを見ている」映像の後に、「元気に走り回る犬」の映像が流れた場合、視聴者は、「犬を見て笑顔になった男性」と解釈します。しかし、犬の映像が「悲しそうな女性」の映像に変われば、「悲しむ女性を見て笑顔を浮かべる男性」という、異なる男性の印象へと変わってしまうのです。
このように、映像の組み合わせによって、見た側に起こる感情や、見た側が受け取るメッセージが大きく変わることをクレショフ効果と呼び、この効果は、1922年にロシアの映画監督、レフ・ウラジミロヴィチ・クレショフ氏によって提唱されました。
クレショフ効果は、今日でも有効活用されており、マーケティング戦略の重要な要素とされています。
クレショフ効果と類似した効果を持つ心理現象
クレショフ効果以外にも、人々の認知や解釈に影響を及ぼす心理現象は数多くあります。ここでは、その中から特に注目すべきいくつかの現象を紹介します。
行動に影響を与える「プライミング効果」
プライミング効果は、事前に受けた刺激が、次の認知や行動に影響するという心理現象です。
例えば、イエローという言葉や色を見せた後に、「フルーツの名前を言ってください」と言われると、多くの人は「バナナ」などの黄色いフルーツを思い浮かべます。そのほか、同じ単語を10回復唱させた後に、その単語と似た誤答がある質問をする言葉遊びも、プライミング効果を利用したゲームです。
これらは「言葉」に関連したプライミングですが、プライミング効果は、嗅覚や視覚のほか、悲しい映像を見た後は、悲観的な反応を示す傾向になるなど、感情にも作用すると言われています。
文章の補足情報を追加する「文脈効果」
「文脈効果」は、クレショフ効果の文章版ともいえる効果で、情報が提示される文脈(順番や状況、背景)によって、その情報の解釈や評価が変わる現象を指します。
例えば、「泣く」という言葉のみでは、嬉しい涙なのか、あるいは、悲しい涙なのかは、「言葉」だけではわかりません。多くの場合、無意識に表情や状況などを「文脈」として関連づけて判断しているのです。
また、「5000円」と「50%OFF!5000円」の表示は、同じ「5000円」なのにもかかわらず、後者の方がより魅力的に感じてしまうのも文脈効果の一例です。
このように前後の情報や文脈の中で言葉や文章が持つ意味合いが変わってくる現象のことを文脈効果といいます。
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クレショフ効果が生み出す関連性ごとの具体例
クレショフ効果は、見る人にさまざまな関連性を連想させます。ここからは、クレショフ効果が、実際にどのように異なる解釈や感情を引き出すのか、具体的な例を見ていきましょう。
人間に関する具体例
クレショフ効果が、人の解釈に影響を与える例では、ある男性の無表情な顔の映像の後に、幸せそうに遊ぶ子供たちのシーンを配置すれば、観客はその男性が子供たちを優しく見守っていると感じるかもしれません。一方、同じ男性の映像の後に、燃え盛る火のシーンを配置すると、観客は男性が何らかの悲しい事態や困難に直面していると解釈することが考えられます。
クレショフ効果はこのように、後に続く映像の内容によって、同じ表情の人物を異なる感情や背景を持つ人物として伝えることができます。
地理に関する具体例
クレショフ効果は、地理的な情報の提示においても効果的に利用されることがあります。
例えば、ある都市の映像の後に、ビジネスマンが忙しく行き交うシーンが流れれば、視聴者はその都市を経済的に発展している場所と解釈します。しかし、同じ都市の映像の後に、親子で散歩をする人々などの映像が流れれば、穏やかな住宅街として解釈されるようになるのです。
特定の地理的な場所の映像とそれに続く異なるシーンの組み合わせによって、その場所の印象や評価が変わる現象は、観光プロモーションビデオや地域ブランディングの際に、特定のイメージを伝えるための有効な手法として活用されています。
意味に関する具体例
クレショフ効果は、異なる「意味」を誘導することもできます。
例えば、古い時計の映像の後に家族の団らんの映像が続けば、視聴者は、時計を「家族の歴史や伝統」を象徴するものとして捉えるかもしれません。一方、同じ時計の映像の後に、オークションの映像が続けば、時計は「高価な骨董品」に見えてきます。
同じアイテムでも、文脈によって異なる意味や価値を持たせることができるクレショフ効果は、物語性を持ったコンテンツ制作や広告などでのメッセージングに有効な手段として使われています。
クレショフ効果をビジネスで上手に活用する方法
クレショフ効果は、ビジネスにおけるコミュニケーションやブランディングの手法として、効果的に活用することができます。その具体的な活用方法について解説します。
対象のイメージを操作する
クレショフ効果による「イメージ操作」について、商品やサービスの広告を想像してみてください。特定の背景や文脈の中にその商品を配置することで、消費者の認識や感じる印象を意図的に変えることができます。
高級ブランドと優雅なライフスタイルを結びつけることで、商品の価値を高めるイメージ戦略は、その代表的な例といえるでしょう。また、食品のパッケージに「美味しそうに食べる人」のビジュアルを使用するのも、食品から幸せを連想させて購買意欲を誘うプロモーションの活用例です。
このように、クレショフ効果を活用して対象のイメージを操作することで、ブランドや商品のポジショニングを効果的に強化し、消費者の購買意欲を高めることができます。
対象をブランディングする
クレショフ効果は、ブランディングにおいても有効なツールとなります。ブランドのイメージや価値を高めるために、抽象的なコンセプトを表現したい場合を考えてみましょう。
例えば、洗剤を、自然やエコロジーを連想させる背景の中で紹介することで、その洗剤は「環境に優しい」というコンセプトが消費者に伝わります。クレショフ効果を使って、商品やサービスのストーリーやメッセージが伝わるコンセプトを作り、効果的なブランディングにつなげていくことができます。
対象にストーリー性を持たせる
異なる映像や情報の組み合わせによって、新しいストーリーやナラティブを生み出すことも可能です。この特性は、商品やサービスにストーリー性を持たせるための戦略として利用することができます。
例えば、商品の歴史や起源を示す映像と、現代の使用シーンを組み合わせることで、伝統と現代性が共存する商品のストーリーを構築できます。また、製品の製造過程や背後にある哲学を描写することで、消費者に深い共感を与えることも可能です。
クレショフ効果を活用することで、単なる商品やサービスを超えた、感動や共感を呼び起こすストーリーを展開することができ、これによりブランドのロイヤリティや顧客との絆を強化する効果も期待できるのです。
▷テンション・リダクション効果とは?マーケティングへの活用方法や注意点
クレショフ効果を活用する際の注意点
クレショフ効果は、消費行動の促進やイメージ戦略に活用できる強力な手法である一方、使い方を誤ると逆効果になってしまうかもしれません。
クレショフ効果を活用するときに気をつけたい注意点は、あらかじめ認識しておきましょう。
悪い印象を与える可能性がある
クレショフ効果は、「人間の認知の曖昧さ」を利用した「イメージ操作」のため、必ずしも、意図した「同じ印象」へと誘導できるとは限りません。
商品やブランドのイメージを強化するつもりが、不適切な映像の組み合わせによっては、メッセージが不明瞭になる、または誤解され、消費者からの信頼を失う原因となる可能性も考えられるのです。
クレショフ効果は確かに効果的な手法ですが、その活用に際しては、ターゲットの文化や感受性、期待などを十分に理解し、細心の注意を払いながら慎重に適用することが求められます。
表現を不快に感じる人物もいる
クレショフ効果を使った表現は、多くの場合、見る人に新しい洞察や感動を与えることができますが、一部の人々にとっては不快に感じられる可能性も無視できません。
価値観や感受性、文化背景は多様で、一つの映像や情報の組み合わせが、あるグループにはポジティブなメッセージとなる一方で、別のグループには否定的に受け止められることもあります。特に、デリケートなテーマや問題に触れる場合、意図しない解釈や誤解を生む恐れがあります。こうしたリスクを避けるためには、ターゲットとなる人々の多様性を理解し、表現の選択や組み合わせに際して十分な配慮が必要です。
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クレショフ効果を理解してアプローチに活かそう
クレショフ効果は、映像や情報の組み合わせによって解釈が変わる心理的な現象であり、見る人の認識や感情に大きく影響を与える力を持っています。
マーケティングを始めとしたビジネスシーンでも広く使われていますが、用いるにあたっては、ターゲットの文化や感受性を理解し、誤解が生じないよう、さまざまな視点から精査し、適切な活用を心がけましょう。
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