アンカリング効果とは?具体例や活用方法・フレーミング効果との違い

最終更新日時:2023/08/25

業務効率化・業務改善

アンカリング効果とは

心理学や行動経済学で知られている現象のひとつである「アンカリング効果」。ビジネスや日常生活にも活用されていますが、アンカリング効果とは具体的にどのような現象を指す言葉なのでしょうか。本記事では、アンカリング効果とは何か、フレーミング効果との違いやメリット・デメリット、活用方法などを解説します。

アンカリング効果とは?

アンカリング効果は、初めて提示された情報を基準に考えることで、無意識のうちに最終的な意思決定が左右される現象です。人は情報が十分に揃っていないとき、特定の情報を基準としてしまうことがあります。アンカリング効果は、この心理を利用しているのです。

例えば、商品の価格で「通常よりも30%引き」と書かれている場合、多くの人がお買い得だと感じるのではないでしょうか。このように、アンカリング効果は通常価格などの事前情報がない場合にとくに有効とされています。

アンカリング効果の語源

アンカリング効果の名前は、船の「アンカー(錨)」に由来しています。船がアンカーを投下すると、その位置に固定されるためです。人々の意識や判断も、最初に提示された情報に「固定」される傾向があるという概念を表現しています。

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アンカリング効果とフレーミング効果の違いとは?

アンカリング効果とフレーミング効果は、両方とも人々の意思決定や判断に影響を与える認知バイアスのひとつですが、その原因には明確な違いがあります。

フレーミング効果は、同じ情報や選択肢が異なる表現方法で提示されると、その受け取り方や判断が変わる現象を指します。一方アンカリング効果は、最初に提示された情報によって意思決定が変わってしまうことです。

このふたつの大きな違いは、情報提示のどこに重きを置くかです。フレーミング効果は「情報提示の表現方法」を重視しているのに対し、アンカリング効果は「情報提示の順番」を重視しているという違いがあります。

アンカリング効果の具体例

アンカリング効果は、多くの場面で私たちの判断や意思決定に影響を与えています。ここでは、その具体例をいくつかのカテゴリーに分けて説明します。

マーケティング

アンカリング効果は、マーケティングの領域において活用されています。たとえば、消費者に高価な商品を先に提示することで、その後に示される中価格帯の商品が比較的リーズナブルに感じられるという現象が挙げられます。これは、最初に提示された価格(アンカー)が、消費者のその後の価格評価の基準となるためです。

また、セールや割引の際に、割引前の元の価格を大きく表示し、割引後の価格を隣に表示することで、消費者に大きな割引を感じさせる戦略もアンカリング効果を利用したものです。この元の価格がアンカーとなり、割引後の価格が非常に魅力的に感じられるようになります。

このように、アンカリング効果を理解し、適切に活用することで、マーケティング戦略の効果を最大化することが可能となります。

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営業活動

営業活動におけるアンカリング効果は、交渉の初期段階での価格提示や条件提示においてとくに有効です。営業担当者が最初に高い価格や条件を提示することで、その後の交渉で中間の価格や条件に落ち着くことが多いのです。初めに提示された価格や条件がアンカーとなり、その後の交渉の基準として機能します。

例えば、ある商品の価格交渉において、営業担当者が最初に100万円と提示した場合、顧客はこの100万円を基準として考える傾向があります。その後、営業担当者が少し譲歩して95万円と提案すると、顧客は5万円の割引を受けたと感じ、取引が成立しやすくなるでしょう。

このように、アンカリング効果を理解し、営業戦略に取り入れることで、効果的な交渉が可能となります。

日常生活

日常生活においても、アンカリング効果は多くの場面で見られます。例えば、レストランのメニューを見る際、高価な料理が最初にリストされていると、その後に目にする中価格帯の料理がリーズナブルに感じられることがあるでしょう。この高価な料理がアンカーとなり、他の料理の価格評価の基準として機能します。

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アンカリング効果のメリット

アンカリング効果を利用することで、消費者の意思決定や行動を有利に導くことが可能となります。

また、交渉の場面においても、最初に高い価格や条件を提示することで、後の交渉で中間の価格や条件に落ち着くことが期待されます。このように、アンカリング効果を戦略的に活用することで、目的に合わせた意思決定や行動を促進できるでしょう。

アンカリング効果のデメリット

アンカリング効果は、どんなシーンでも活用できるわけではありません。そのため、効果が発揮できないシーンもあるという点がデメリットといえるでしょう。

たとえば、日常的に購入している飲料水や食品など、相場が多くの人に知れ渡っている商品などでは、アンカリング効果が発揮されにくいと考えられています。

アンカリング効果を活用したいと考えている場合、消費者に価格の相場が浸透していない商品やサービスであるかを念頭に置くことが重要です。

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アンカリング効果の活用方法

アンカリング効果は、意思決定や行動の方向性を有利に導くための強力なツールとして、ビジネスの多くの領域で活用されています。以下は、採用活動や社員のマネジメントにおけるその活用方法を示します。

採用活動に活用する

採用活動において、アンカリング効果を利用することで、求職者からの応募が集まりやすくなることが考えられます。

例えば、他社よりも高めの報酬を設定することで、たくさんの応募者に良い印象を与えられるでしょう。それにより多くの応募が集まり、自社に適した優秀な人材を採用することが可能になります。

社員のマネジメントに活用する

社員のマネジメントにおいても、アンカリング効果は有効に活用できます。目標設定の際に、高めの目標を最初に提示することで、目標を達成するために社員のモチベーションを向上させることができます。

また、会議においてはリーダー的な人物が最初に意見を出すことで、それを基準として応用的な意見を集めることが可能です。ただし、参加者に自由に発言させたいときなどは、最後に意見を述べるのがよいでしょう。

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アンカリング効果を活用する際の注意点

アンカリング効果は、意思決定や行動を有利に導くための強力なツールとして活用される一方、適切に管理されないと逆効果となる場合もあります。ここでは、アンカリング効果を活用する際の注意点を見ていきましょう。

二重価格表示に注意する

商品の価格表示において、割引前の価格と割引後の価格を同時に表示する「二重価格表示」は、アンカリング効果を利用した手法の一つです。しかし、消費者がこの表示を誤解するリスクがあります。とくに、割引前の価格が実際の市場価格よりも高く設定されている場合、景品表示法に違反するおそれがあるので注意が必要です。

消費者庁の価格表示ガイドラインでは、二重価格表示の比較対象として使用できる価格は以下の3つとされています。

  • 過去の販売価格
  • メーカー希望小売価格
  • 競合事業者の販売価格

アンカリング効果を狙う際には、元値を高く設定するのが基本ですが、法律違反とならないよう慎重に検討してください。

アンカリング効果を実践する期間に注意する

アンカリング効果を長期間にわたって継続的に活用すると、消費者にとってはそれが当然となり、効果が薄れる可能性があります。

また、過度に利用することで、消費者の疲れや不信感を引き起こすリスクも考えられます。適切な期間やタイミングで活用しましょう。

他の商品にも影響する可能性がある

ある商品の価格やプロモーションをアンカリング効果を利用して設定する際、その商品だけでなく、関連する他の商品やカテゴリー全体の評価や売上にも影響を与える可能性があります。

例えば、ある商品の価格を大幅に下げると、通常価格で販売している同じカテゴリーの商品を高いと感じ、全体の売上が減少する可能性が考えられます。そのため、他の商品ラインナップやブランドイメージを考慮して、アンカリング効果を活用することが重要です。

アンカリング効果を理解しビジネスに活用しよう

アンカリング効果は、人々が最初に提示された情報(アンカー)に意思決定を左右される心理的現象です。ビジネスにおいて、この効果を活用することで、価格設定や交渉の際に消費者や相手の判断を有利に導くことが可能です。

ただし、過度な利用は消費者の不信を招くリスクもあるため、適切なバランスでの活用が求められます。アンカリング効果を意識的に取り入れ、効果的なマーケティングや営業戦略を展開しましょう。

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