SWOT分析とは?目的ややり方・具体例からわかるメリットを解説

最終更新日時:2023/07/19

業務効率化・業務改善

SWOT分析とは

ビジネスの課題解決において、フレームワークを活用する機会は少なくありません。SWOT分析は企業の現状を分析するためのフレームワークで、今後の戦略を考えるうえで活用できます。本記事では、SWOT分析の概要、おこなう目的、方法、注意点を解説します。分析事例も紹介するので、活用の際に役立ててください。

SWOT分析とは?

SWOT(スウォット)分析とは、自社や事業の現状を分析するためのフレームワークです。「SWOT」は以下4つの単語の頭文字を意味しています。

  • Strengh(強み):自社・商品・サービスの長所や優れている点
  • Weakness(弱み):自社・商品・サービスの短所や苦手とする点
  • Opportunity(機会):自社・商品・サービスにとってプラスに働く社会・市場の変化
  • Threat(脅威):自社・商品・サービスにとってマイナス影響を与える社会・市場の変化

強みと弱みは自社内の要素のため「内部環境」、機会や脅威は自社外の要素であることから「外部環境」として分類します。また、強みと機会は「プラス要因」、弱みと脅威は「マイナス要因」という位置づけです。

 プラス要因マイナス要因
内部環境S:強みW:弱み
外部環境O:機会T:脅威

SWOT分析は、自社の持つ要素を分類して多角的に分析することで、とるべき経営戦略・事業戦略や、経営資源の最適化・改善点の発見などに幅広く活用できます。

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SWOT分析をおこなう目的

SWOT分析は、効果的な経営・マーケティング戦略の立案を最終目的としておこないます。

ビジネスの効果的な計画や戦略を立案するためには、自社の現状や競合他社との比較、市場の状況や将来性などの要素の多角的な把握・分析が必要となります。

戦略立案に必要な要素を集約しやすく、分析しやすくフレームワーク化したものが、SWOT分析なのです。

SWOT分析は戦略立案前のみならず、立案後のシミュレーションにも役立ちます。現行のビジネスの成長可能性を図り、続行または撤退の判断をするのにも活用できる優れたフレームワークです。

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SWOT分析のやり方

具体的なSWOT分析のやり方を、以下の4つの手順で事例を交えながら解説します。

  1. 目標を設定する
  2. 外部環境の分析をおこなう
  3. 内部環境の分析をおこなう
  4. クロスSWOT分析をおこなう

1.目標を設定する

SWOT分析を始める前に、まずは明確な目標を設定しましょう。目標なく漠然とSWOT分析をおこなっても、なかなか具体性のある成果は得づらいためです。

SWOT分析に取り組もうと思った理由や、具体的に達成したい目標、時期などを明確にし、組織で共通認識を持って分析に取り掛かることが重要です。

ここでは首都圏の架空の飲食店Aについて分析します。飲食店AのSWOT分析をおこなう目標は「結果をもとに新しい施策を立案すること」とします。

2.外部環境の分析をおこなう

目標設定をしたら、外部環境の「機会」と「脅威」から分析を始めましょう。これは外部環境の分析結果によって、内部環境の判断が変わってくる場合があるためです。

外部環境は社外の要素であり、自社ではコントロールできない以下のようなものが該当します。

  • 市場の規模・成長性・トレンド
  • 景気動向
  • 法改正
  • 競合他社の動向

首都圏の架空の飲食店Aの「機会」と「脅威」はたとえば、以下のように分析できます。

  • 機会:観光客の増加・ヘルシー志向の高まり・デリバリーサービスの増加
  • 脅威:新興飲食業態の台頭・インフレ圧力・飲食にまつわる法令の厳格化

3.内部環境の分析をおこなう

外部環境を分析したら、続いて内部環境である自社の「強み」「弱み」を分析しましょう。内部環境は、自社でコントロール・管理できる以下のようなものが該当します。

  • 商品・サービスの価格・品質・ブランド力
  • 自社で保有している技術
  • 人材・資産

たとえば、首都圏の架空の飲食店Aの「強み」と「弱み」の分析結果は以下のような形にしました。

  • 強み:立地による利便性・バラエティに富んだメニュー・品質の高い技術
  • 弱み:競争の激化・難しい人材確保・高い経費

内部環境を分析するための代表的なフレームワークも2つあります。適宜活用するとよいでしょう。

  • 4C分析:顧客価値・コスト・利便性・コミュニケーション
  • 4P分析:製品・価格・流通・販促

これらのフレームワークも活用しながら、競合他社と比較し、できるだけ客観的に自社の強み・弱みを洗い出していきましょう。

4.クロスSWOT分析をおこなう

内部・外部環境を分析したら、クロスSWOT分析をおこない方向性や効果的な戦略を検討していきましょう。

クロスSWOT分析では、2つの内部環境と2つの外部環境を掛け合わせて、以下4種類の戦略を導き出します。

  • 強み✕機会:自社の強みを活かし、機会創出の方法を考案する
  • 強み✕脅威:自社の強みを活かし、脅威を回避する方法を考案する
  • 弱み✕機会:自社の弱みを改善・克服し、機会創出の方法を考案する
  • 弱み✕脅威:自社の弱みを認識し、脅威による影響を最小限に抑える方法を考案する

SWOT分析で4つの要素の現状を把握・分析し、クロスSWOT分析をおこなうことで自社のとるべき多角的な戦略が導き出せるでしょう。

たとえば、首都圏の架空の飲食店AのクロスSWOT分析で、戦略の案を考えてみましょう。

■強み✕機会

  • 場所の利便性と観光客の増加を活かし、観光客向けの特別メニューやサービスを提供する。
  • 多様なメニューとヘルシー志向の増加を組み合わせ、健康的な食事オプションの提供に注力する。

■強み✕脅威

  • 新興飲食業態の台頭に対抗するため、自社の強みをさらに強化し、他との差別化を図る。
  • 健康・安全規制の厳格化に対応するため、食品衛生管理の徹底と顧客への安全性の強調をおこなう。公的機関との協力や認証の取得など、信頼性を高める取り組みをおこなう。

■弱み✕機会

  • 競争の激化と高い経費をカバーするため、他の飲食店との連携や共同プロモーションをおこなう。
  • 人材確保と育成に取り組むため、研修プログラムやキャリアパスの設定を通じて、従業員のモチベーションとスキルの向上に注力する。

■弱み✕脅威

  • 新興飲食業態の台頭や経済の変動に対抗するため、コスト削減策や効率化プロセスを見直す。
  • 健康・安全規制の厳格化に対応するため、食材の原産地や安全性に対する透明性を高める。

このようにして戦略の案を洗い出してみると、目標であるより具体的な施策へと落とし込んでいけます。

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SWOT分析を活用する際の注意点

SWOT分析には活用する際に知っておきたい注意点があります。ここでは5つの注意点を解説します。

活用する目標を明確にする

SWOT分析を最大限活用するためには、明確な目標が不可欠です。なぜなら、設定した目標によって分析結果の解釈の仕方や立案する戦略が大きく異なるためです。

目標にはたとえば、新商品の開発、新規顧客の獲得、ブランド力の強化などが該当します。分析の目標を明確にし、あらかじめ共有しておくことにより、議論の迷走防止にもつながるでしょう。

分析する対象を正確に把握する

分析対象が異なれば、導き出される強み・弱み・機会・脅威も異なります。SWOT分析の対象を正確に把握し、メンバー間で共通認識を持っておくことも重要です。

SWOT分析は、分析の目標や対象などの前提条件が明確になっていて、はじめて効果を発揮する手法といえます。分析に参加するメンバー間でしっかり目線を合わせて、共通認識を持って取り組みましょう。

必ずしも正確な分析ができるわけではない

SWOT分析による分析結果は必ずしも正確な訳ではない点について理解しておきましょう。以下のような分析方法の性質を理解しておく必要があります。

  • 外部要因を考慮しているので、現状を客観的に判断するのに良い方法である
  • ネガティブ要素も考慮しているので改善点が可視化できる
  • 両極端の要素を区分けするので、分析者によって結果が異なる

このようなSWOT分析の性質を正しく理解しておくことが大切です。

SWOT分析は複数のメンバーで実施する

SWOT分析は、価値観や観点の異なる複数のメンバーで実施するのが理想です。職種や役職が異なれば視点も異なり、分析の抜け漏れを防止できるほか、多くのアイデアを出せる可能性が高まります。

たとえば、経営層・営業職・エンジニア職・男性社員・女性社員など、分析目標や分析対象に合わせつつ、バックグラウンドの異なるメンバーを集めると良いでしょう。

分析結果を戦略に反映する

SWOT分析で要素を洗い出してクロスSWOT分析で戦略の案を導き出したら、具体的な戦略までしっかり反映し、計画に落とし込むことが大切です。

また、新規戦略に対しても、ある程度事業が進んだ段階で振り返りをおこない、必要であれば軌道修正を加えるなどの見直しに取り組みましょう。

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SWOT分析を用いた分析事例を紹介

ここでは分野の異なる3つの企業を例に、実際にSWOT分析をおこない、戦略案を検討してみましょう。

モバイル機器メーカーの分析事例

以下のような条件にあるモバイル機器メーカーの今後の戦略案を導き出してみましょう。

S:強み
  • 人々の生活様式を変える革新性
  • 圧倒的なブランド力
  • 主要製品A・Bの高いシェア率

 W:弱み

  • 比較的高額な価格設定
  • 製品C・Dの伸び悩み

 O:機会

  • グローバル展開
  • 生活に根ざした多彩な製品開発
  • 発展性のある市場

 T:脅威

  • モバイル市場の技術競争の激化
  • 市場全体の低価格化競争の激化
  • セキュリティリスク

■強み✕機会

強みの「革新性」と「ブランド力」、機会の「生活に根ざした多彩な製品開発」の要素をかけ合わせ、生活に密着したニーズを満たす製品開発に取り組む。

■強み✕脅威

強みの「革新性」、脅威の「市場全体の低価格化競争の激化」の要素を活用。コスト効率を向上させる生産体制の最適化や供給チェーンの改善に注力し、競争優位性と品質、付加価値を維持する。

■弱み✕機会

弱みの「製品C・Dの伸び悩み」、機会の「生活に根ざした多彩な製品開発」をいかして、顧客ニーズの調査やマーケティング活動を強化し、需要の再喚起に取り組む。製品の改良や新機能の追加など、アップグレードの促進を図る。

■弱み✕脅威

弱みの「比較的高額な価格設定」と脅威の「モバイル市場の価格競争の激化」から、ブランド力や製品の品質を強調したマーケティング戦略を展開する。ブランド価値の向上と顧客ロイヤリティの構築に重点を置く。

自動車メーカーの分析事例

次は自動車メーカーのSWOT分析を想定し、戦略案を検討してみます。

S:強み
  • 世界トップクラスの自動車生産台数
  • 世界的なブランド力
  • 財務体質が良好で高い営業利益

 W:弱み

  • 為替変動により利益が不安定
  • アジア市場の開拓が不十分
  • 軽自動車のラインナップが弱い

 O:機会

  • 資源国・新興国でのシェア拡大
  • ガソリン価格高騰にともなう低燃費車の需要増
  • 電動化や自動運転などのCASE(電動化、自動運転、連結性、共有経済)領域の拡大

 T:脅威

  • 為替変動リスク
  • 自動車市場の技術競争の激化
  • 市場全体の低価格化競争の激化

■強み✕機会

強みの「ブランド力」、機会の「資源国・新興国でのシェア拡大」の要素をいかし、資源国や新興国市場でのシェア拡大を図る。現地のニーズに合った車種の開発やマーケティング活動をおこない、地域ごとの販売拡大を目指す。

■強み✕脅威

強みの「財務体質が良好で高い営業利益」と「ブランド力」、脅威の「技術競争の激化」の要素を勘案。研究開発への投資を増やし、次世代技術の開発に取り組む。電動車や自動運転技術の先行開発をおこない、競争優位性を確保する。

■弱み✕機会

弱みの「アジア市場の開拓が不十分」、機会の「資源国・新興国でのシェア拡大」を考慮。アジア市場の開拓を推進するため、現地のニーズを的確に把握し、軽自動車のラインナップを強化する。価格帯や燃費性能に焦点を当てた製品の開発やマーケティング活動をおこない、競争力を高める。

■弱み✕脅威

弱みの「為替変動により利益が不安定」と脅威の「為替変動リスク」を考慮し、ヘッジ戦略の導入や供給チェーンの最適化をおこなう。為替変動による影響を最小限に抑え、安定した収益性を確保する。

大手運輸業の分析事例

最後は大手運輸業の各要素を分析し、戦略案を提案します。

S:強み
  • 全国に張り巡らされた流通網
  • 国内での圧倒的な認知度と高いシェア率
  • 良好な財務体質

 W:弱み

  • 宅配便事業の頭打ち感
  • 本業以外の事業が弱い
  • 新規事業拡大にともなう人件費の増加

O:機会

  • ネット通販事業の拡大
  • 企業向け配送への進出

T:脅威

  • ドライバーをはじめとする人材の不足
  • ネット通販のさらなる浸透による宅配物の増加
  • 人件費の上昇

■強み✕機会

強みの「全国に張り巡らされた流通網」、機会の「ネット通販事業の拡大」の要素をいかし、ネット通販事業の拡大に注力する。効率的な物流システムや高品質なサービスを提供し、顧客のニーズに応えることで市場シェアを拡大する。

■強み✕脅威

強みの「良好な財務体質」、脅威の「ドライバーをはじめとする人材の不足」の要素を勘案。人材不足に対抗するため、労働環境の改善やドライバーの働き方の見直しをおこなう。働きやすさや待遇の向上に注力し、優秀な人材を確保するための措置を講じる。

■弱み✕機会

弱みの「宅配便事業の頭打ち感」、機会の「ネット通販事業の拡大」を勘案し、新たな事業の開拓に注力する。物流関連の新規事業や付加価値の高いサービスの提供に取り組み、事業ポートフォリオの多様化を図る。

■弱み✕脅威

弱みの「新規事業拡大にともなう人件費の増加」と脅威の「ドライバーをはじめとする人材の不足」を考慮し、外部とのパートナーシップを構築する。人材供給の多様化やコミュニティとの協力を通じて、人材の確保と育成に取り組む。

SWOT分析を理解して経営戦略で活用しよう

会社や事業、サービスなどを多角的に分析するフレームワーク「SWOT分析」について、目的ややり方、具体的な戦略案の検討事例も紹介しました。

SWOT分析は強みと弱み、機会と脅威という4つの要素を掘り下げることで現状を分析し、戦略の立案や経過のシミュレーション、レビューへと役立てられます。分析する目標や対象を定め、多くの分析者の視点を用いて分析することで、より実用的な戦略案の検討に活用できるでしょう。

本記事を参考に、ぜひ自社の分析にご活用ください。

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