PDCAとは?サイクルを回す意味や具体例・失敗する原因をわかりやすく解説
多くの企業で採用されているPDCA。企業の成長に欠かせないフレームワークとして活用されていますが、サイクルを回す重要性や意味とは何なのでしょうか。本記事では、PDCAがどのようなフレームワークなのか具体例を交えてわかりやすく解説していきます。
監修者 福本大一 株式会社kubellパートナー アシスタント事業本部|ユニット長 大学卒業後、toC領域のWEBメディア事業で起業。事業グロースに向けたSEO戦略から営業・運用広告に従事し、約2年間の経営を経て事業譲渡。2021年3月からChatwork株式会社(現:株式会社kubell)に入社し、カスタマーマーケティングやアライアンスを経験した後、メディア事業・運用広告事業の責任者としてミッションを遂行する。現在は、DXソリューション推進部のマネージャーとして新規事業領域のセールス・マーケティング・アライアンス・メディア事業を統括。
目次
PDCAとは?
PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の4つのプロセスを繰り返し、継続的に業務改善をおこなう手法のことです。1950年代に品質管理の父と呼ばれるエドワーズ・デミングによって提唱されました。
PDCAサイクルの実施には、生産性向上や業務改善が可能となるメリットのほか、改善ノウハウの蓄積によって組織全体の課題解決力が高まるといった利点があります。
そのため、常に変化が求められる現代社会のビジネスシーンにおいては、PDCAサイクルによる継続的な業務改善と柔軟な課題解決力の向上が、ますますその必要性を増しているといえます。
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PDCAの4つのプロセス
具体的にPDCAサイクルを回す手順を順番に解説していきます。
- Plan:計画
- Do:実行
- Check:評価
- Action:改善
1.Plan:計画
最初のプロセスはPlan(計画)で、PlanのプロセスはPDCA全体の方向性を決定するため極めて重要です。ここでは、目標の設定と達成の方法を決定します。
目標設定の際は、目標を設定する際に抑えるべきポイントをまとめた、以下のSMARTの法則を参考にするといいでしょう。
- Specific:具体的である
- Measurable:数値として測定可能である
- Achievable:実現可能である
- Relevant:部署や会社の目的と関連している
- Time-bound:期限が設定されている
SMARTの法則を活用することで現実的な目標が設定できます。
目標設定が終わったら、具体的な方法とスケジュールを考えます。5W3Hを意識してスケジュールを考えることで、現実的な計画が立てられるようになるでしょう。
2.Do:実行
Do(実行)では、計画で設定した目標のための行動を考案・実行します。
具体的にどのようなことが必要か洗い出し、リスト化するなどして整理しましょう。実行に必要な人員数や作業にかける時間などは、具体的に数値化することもポイントです。
また、実際の作業時間や行動の成果などは記録するようにしてください。これらのデータは、プロジェクトの進捗管理だけでなく、評価や改善の際の重要な判断材料になります。
3.Check:評価
Check(評価)では、目標の達成度合いの確認、問題点の発見をおこないます。
評価のプロセスは、「計画において目標設定を数値化しておく」「実行段階で作業記録を残しておく」ことによりプロセスを効率化することできて適切な評価が可能となります。そして、目標が達成できていない箇所については、原因の検証も忘れずにおこないましょう。
4.Action:改善
評価プロセスで明らかになった問題の原因について改善案を洗い出しましょう。改善案が抽象的だと次の行動に移せなくなるのでできるだけ具体的な改善案を出していくのがポイントです。
完成した改善案については、できる限り数値化した目標を設定し、次のPDCAサイクルへと移行していきましょう。
なお、PDCAは継続的に回していく上で改善すべきポイントばかり意識してしまうと、苦手意識につながってしまうこともあるので成功した点も踏まえて改善していくのがポイントと言えます。
成功した場合は、「なぜ成功したのか」「どのような点が良かったのか」などを意識するようにしましょう。
PDCAサイクルを回す目的と重要性
PDCAサイクルを回す目的は、業務の質や生産性を上げるためであり、業務プロセスや成果物の質を「継続的に改善」していくことにあります。
そのため、PDCAはそのサイクルを回し続けることこそ重要であり、計画(目標設定)の仕方によっては、目標達成へのプロセスを最適化したり、そのスピードを速めたりするためのフレームワークとしても活用することができます。
これらのことからPDCAサイクルの運用は、事業だけでなく個人の成長を促すうえでも、欠かせない取り組みとされているのです。
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PDCAサイクルを回すメリット
次にPDCAサイクルを回すメリットについて、3つに分けて解説します。
目標や課題が明確になる
メリットの1つ目は、目標やアクションが明確になるということです。PDCAサイクルでは、最初のPlan(計画)の段階で目標の設定をおこないます。
この目標設定は、組織全体の目標やあるべき姿について、従業員が改めて確認する機会にもなるため、組織内の意識の統一にも役立ちます。また、従業員一人ひとりが、組織における自分の役割や、求められている成果を再確認することで、日々の行動を見直すきっかけともなるでしょう。
さらには組織における「同じ目標」を意識し直すことで、社内の連帯感が高まり、従業員のエンゲージメント向上が期待できといったメリットもあります。
業務の改善につながる
PDCAのもっとも大きなメリットが業務の改善です。業務プロセスや品質は、時間の経過や体制の変化によって「最適な方法」が変化していくはずです。
たとえば、従業員の配置変更・需要の増加などで人員が不足すれば、それを補うための工夫が必要になるでしょう。新しい技術の普及によって、業務プロセスを大きく改善できる余地が生まれることもあります。
そこでPDCAサイクルを運用することで、このような状況の変化に柔軟に対応した改善が継続され、業務の効率と質を常にブラッシュアップしていく体制が整うようになるのです。
達成への意欲が向上する
PDCAサイクルは継続的におこなうものなので、従業員に業務の改善意識を芽生えさせます。
業務において「少し非効率だな」と思うことがあっても、実際に改善するとなればチームメンバーを含む自分以外の協力が必要になることから、改善の実行にまでは至らないケースは多々あります。また、改善策がわからないなど「改善思考」を持てていないことも珍しくありません。
しかし、PDCAサイクルが組織内に定着していると、改善案の立案、実行、評価といった作業が日常的に実行できるようになります。
従業員自身が、業務の改善を「自分ごと」として捉えられるようになるため、目標達成やプロジェクトの遂行に対する意欲も向上するでしょう。
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PDCAサイクルを回すデメリット
PDCAサイクルを回すデメリットについても注意しましょう。PDCAサイクルは非常に大きなメリットがありますが、いくつか留意すべきことがあります。
ここでは、PDCAサイクルを回すデメリットについて解説します。
回すこと自体が目的化してしまう
PDCAサイクルを回すこと自体が目的になってしまうと、本来達成すべき目標を見失うおそれがあります。PDCAサイクルの最も大きな目的は、業務の改善による仕事の質の向上です。
しかし、PDCAサイクルを重要視しすぎると、サイクルを回すことに過剰な労力を費やし、他の業務を圧迫しかねません。PDCAサイクル自体も、適切に実行されているかを定期的に検証する必要があります。
作業量が増加してしまう
PDCAサイクルを運用するとなれば、PDCAを回す上でのタスクが発生することになります。前述の通り、目標を見失ってしまうとそのタスクが「無駄な作業」になってしまうこともあるでしょう。
必要以上に時間をかけないためにも、計画や評価といったプロセスにもフレームワークを活用し効率化を図る、明確な評価基準を設けるといった体制を整える工夫が求められます。
業務の改善には時間がかかる
PDCAサイクルは4つのプロセスを経て改善を実施するフレームワークです。そのため、スピーディな実行と判断が求められる場面には不向きといった性質があります。
また、前例や既存の業務における課題の改善手法となるため、未知の領域の課題改善にはそぐわない方法といえるでしょう。
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PDCAの具体例
PDCAの仕組みを理解できたところで、ここからはPDCAの身近な具体例について紹介していきます。
日常生活の中でのPDCA具体例
PDCAサイクルを理解しやすいように身近な生活の中での具体例として、掃除ができないという課題に対してのPDCAサイクルについて紹介していきます。
- 計画:掃除するために汚れが目立つ場所をメモとして残しておく
- 行動:掃除をする時間にアラームをかけて掃除を開始する
- 評価:短時間しか掃除ができなかった
- 改善:掃除開始のアラームを30分ほど早くかける
上記のように日常生活の掃除だけでもこのようなPDCAサイクルを立てることができます。
仕事の中でのPDCA具体例
仕事の中で営業電話をかける際の具体的なPDCAサイクルについて紹介していきます。
- 計画:成約数が少ないためトークスクリプトを改善する
- 行動:上司に電話内容を傍聴してもらいFBをもらう
- 評価:FBをもらってトークスクリプトの改善点が見つかった
- 改善:改善したトークスクリプトを元に業務を行い成約数を比べる
上記のように営業電話の中でPDCAを回していくことにより、電話対応の質向上や成約数向上などが見込めます。
PDCAサイクルを回す際のポイント
PDCAサイクルを効果的に回すために、抑えておきたいポイントを4つに分けて紹介します。
詳細に計画を立てる
最初のPlan(計画)は詳細に立てなければなりません。計画が曖昧だったり、複数の解釈の余地を残すと、メンバー間での意思疎通が困難になります。
また、目標はできる限り「定量的」に設定することが重要です。数値化しておくことで、評価プロセスの適正化や効率化にもつながるでしょう。
具体的には、「作業時間を短縮する」ではなく「現状100時間の作業時間を80時間へと短縮する」といった目標設定です。目標を数値化することで、予定通りに改善計画が進んでいるかの進捗状況の把握も容易になります。
必ず計画した通りに実行する
Do(実行)は、必ず計画したとおりにおこないましょう。もちろん実行してみて初めてわかることや調整が必要になることもあるはずです。
しかし、それらの評価・改善を正確に行うには、原則として計画通りに実行し、計画と課題や問題の因果関係を把握することが求められます。
実行する中での問題点は、行動記録として残しておき、次回のPDCAサイクルへと役立てる準備をしておくようにしましょう。
自分ができる範囲で行う
PDCAサイクルは、実行可能な計画と範囲でおこなうことも大切です。現実的ではない計画や目標の設定は、時間の浪費に終わるだけでなく、従業員のモチベーション低下やPDCAの運用に対する懐疑心を強める結果になってしまいます。
スケジュールやリソースを考慮し問題なく遂行できる数値に留めて、PDCAサイクルは継続して改善を繰り返していきます。
そのため、一回目で大きな効果を得る必要はありません。まずは小さな目標から始め、何度も繰り返しながら大きな目標を目指しましょう。
実行した内容を記録する
PDCAサイクルを回す上で、記録は必ずおこなうようにしましょう。PDCAサイクルは、改善に向けた検証を何度も繰り返していく手法です。
そのため、評価をいかに適切に行うかが、次のサイクルの改善と計画の精度や質の向上へとつながります。そしてその評価に対しては、計画の実行に関する客観的な記録は、検証の上で必須といえるでしょう。
記録の内容については、計画によって異なりますが、実行する際には、どのような事項を記録しておくべきなのか、そして、それらの記録がどのように活かされるのかを具体的に周知しておきます。
記録の方法についても統一しておくことで、その後の評価がスムーズにおこなえるでしょう。
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PDCAサイクルを回す際の注意点|失敗する原因
PDCAサイクルを回そうとしても、うまくいかずに頓挫したり、逆に業務効率が低下してしまったというケースも少なくありません。
ここでは、PDCAサイクルを回す上での注意点と失敗の原因をプロセスごとに分けて解説します。
Planでの注意点・失敗する原因
不正確な現状分析と仮説は、見当違いな方向へとプロジェクトを導いてしまいます。問題点やそこに講じるべき改善策(計画)の仮説は、現状の適切な把握を前提として行うものです。
「仮説」に100%の確実性を求めることは不可能ですが、PDCAサイクルは、仮説の妥当性を検証しながら改善を繰り返す手法のため、PDCAの精度と効果を左右する重要な要素であることに間違いはありません。
そのため、現状の適切な把握は、最低限クリアすべき水準ともいえるでしょう。
Doでの注意点・失敗する原因
スケジュールや作業内容などのプランニングができていないと、Do(実行)で失敗してしまうおそれがあります。
目標設定はできたが、具体的な行動に落とし込めていない場合、計画の実行に無駄な時間を要するばかりか、正確な評価をすることもできなくなります。
このようなことがないように、スケジュールと改善に向けて実行すべきタスクは、何をいつまでに、どのように実行するかなど、できるだけ詳細を提示しておきましょう。
そうすることで、メンバーの作業内容が明確になり、進捗の把握も容易になります。
Checkでの注意点・失敗する原因
Check(評価)段階での、よくある失敗原因は、評価基準の曖昧さが挙げられます。評価基準は、数値などで定量的なものにしなければ主観の入った曖昧なものになってしまいます。
実際に効果が得られていなくても、達成感から「よくできた」、「かけた時間に見合った効果はあると思う」と評価してしまうことも少なくありません。
このような主観を排除するためにも、数値のように客観的に評価できる項目が必要です。適切に項目を設定することで、誰もが納得できる評価をおこなえるようになります。
Actionでの注意点・失敗する原因
Action(改善)は、適切な行動が取れないことで失敗するおそれがあります。Check(評価)を終えたあとは、適切な改善をおこなわなければなりません。
しかし、目標の再設定やプロジェクトの見直し、他の従業員との新たな協力などさまざまな行動が必要になります。そのため、改善のハードルが高くなり、実行に移すのがむずかしくなるおそれがあります。
どうしても改善案が現実的でなかったり、過剰に労力がかかってしまう場合は、ハードルを下げるという方法も検討しましょう。
これは一度にすべての改善をおこなわず、できるものから少しずつ始めるという方法です。実行可能な改善を考えることで、次のサイクルへつなげやすくなるでしょう。
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PDCAはもう古い?代わりとなるOODAループ
近年、PDCAに代わる新たな意思決定のフレームワークとして「OODAループ」が注目されています。
OODAとは、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐によって考案された状況判断と意思決定を仕組み化し、改善までのプロセスにおける意思決定を迅速に行うための手法です。
Observe(観察)Orient(判断)Decide(決定)Act(行動)という4つのプロセスを高速で回すことによって、成果の達成を目指すものです。
それぞれのプロセスを、簡単に説明します。
・Observe(観察)
状況判断の材料となる生のデータを収集します。ビジネスの場合は、対象は競合他社、市場の観察になるでしょう。
・Orient(判断)
収集したデータをもとに、今なにが起こっているのかを判断し、方向づけをおこないます。前段階のObserveを十分におこなうことで、状況分析の精度が向上します。
・Decide(決定)
目標達成のためにこれからどうするのかを、状況分析をもとに決定します。
・Act(行動)
前段階で決めたことを実行にうつします。実行の結果、自分の現状把握や判断が妥当だったかがわかるので、状況分析の修正をおこないながらOODAループを繰り返します。
OODAループは高速でプロセスを繰り返すため、短時間で効果を得ることができます。そのため、緊急時の不測の事態や、予測がむずかしい状態でも適切な行動を取ることが可能です。
▷PDCAは古い?注目されるOODAループとの違いやDCAP・PDRを紹介!
PDCAサイクルとOODAループの違い
入念な計画を立ててから実行に移すPDCAサイクルに対して、ODDAでは、状況の把握をした後は「計画を立てずに、とりあえず仮説を実行してみる」ことになります。
また、目的にも大きな違いがあり、PDCAサイクルは、既存業務工程の改善を目的として、ある程度決まった作業手法を改善することで、業務の効率化を目指します。一方、OODAループは不明確で予測のつかない事態にも素早く対応することを目的にしています。
「PDCAサイクルはもう古い、これからはOODAループの時代だ」という声も聞かれますが、手法に優劣の差があるわけではなく、そもそも目的が異なるため、その違いを把握して使い分けるべき手法といえるでしょう。
▷業務効率化・業務改善に役立つフレームワーク10選!活用法まで解説
PDCAサイクルを回して業務効率と成果を高める
PDCAサイクルは、業務効率と生産性の向上、業務プロセスの最適化を目指すための効果的なフレームワークとして活用することが可能です。
また、PDCAサイクルの運用には、業務の改善だけでなく、常に課題感を持って業務を行うことや目標を意識したタスクの遂行といった、組織文化の醸成にもポジティブな影響を与える取り組みとしての効果も期待できます。
組織に「変化と改善」が継続的に実行されることを受け入れる風土と、すぐに改善をおこなえる体制がもたらされることで、企業はさまざまな局面を乗り切れる柔軟さを手に入れることができるでしょう。
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