BPR(業務改革)とは?正しい意味や業務改善との違い・進め方を解説

2022/7/15 2022/07/15

業務効率化・業務改善

BPRとは

業務の進め方を部分だけでなく全体で最適化するBPR(業務改革)は、企業の成長に欠かせません。競争が激化する市場環境において、企業はBPRの正しい意味を理解し実践することで業績拡大を図る必要があります。本記事では、BPRとはどのような取り組みなのか、混同されやすい業務改善との違いなどを解説しています。

BPR(業務改革)とは

ビジネスプロセス・リエンジニアリング(Business Process Re-engineering)の頭文字を取ったBPR(業務改革)は、直訳すると企業活動(ビジネス)の工程(プロセス)を再構築(リエンジニアリング)するという意味になります。

BPR(業務改革)の定義

BPR(業務改革)とは、業務・組織・戦略を抜本的に見直し、プロセスの再構築を通じて利益の最大化を目指すための手法です。フロントエンドやバックエンドを問わず、全ての企業活動を結合し、一貫したプロセスとして再構築することを指しています。

BPRの特徴は、マーケットを重視する点です。社会や消費の構造変化に応じて、ビジネスルールを刷新していくことで、市場に求められる製品・サービスの提供を目指します。

BPR(業務改革)の目的

BPR(業務改革)における最大の目的は、業績の拡大です。

消費行動の多様化や労働人口の減少が進行する現代において、既存の業務プロセスを維持することは、業績の縮小につながるリスクを孕んでいます。

そのため、BPRを通じて、生産性の改善や意思決定の迅速化に取り組むことで、組織としてのパフォーマンスが高まり、結果として業績の好転が期待できるでしょう。

BPR(業務改革)が注目されるようになった背景

BPR(業務改革)がビジネスシーンで注目を浴びた時期は、大きく分けて2度あります。

1つ目は、バブル崩壊後の1990年代です。当時、マイケル・ハマー博士(元マサチューセッツ工科大学教授)とジェイムス・チャンピー氏(経営コンサルタント)による共著「リエンジニアリング革命」により、BPRの原型となる概念が提唱されました。

バブル崩壊後の不況に悩まされていた日本にとって、BPRによる組織改革は時代背景の後押しもあり、広く受け入れられました。しかし、当時はまだ知見・ノウハウが少なく、BPRで期待した成果を得られた企業は決して多くありませんでした。

2つ目は、働き方改革への取り組みが本格化した2010年代です。当時、労働人口の減少や出生率の低下により、労働生産性が落ちていき、長時間労働が横行していた日本では、労働環境の整備によるワーク・ライフ・バランスの実現が急務でした。

目下の課題である長時間労働を是正するためには、業務フローなどの部分的な改善だけでは不十分です。企業活動の横断的な連携を含め、業務プロセスの全体最適化を行うことで、初めて長時間労働の本質的な改善が実現します。

そのための手法として、BPRに改めて注目が集まるようになり、導入を検討する企業が増えています。

BPR(業務改革)と業務改善の違いについて

BPR(業務改革)と混同されやすいワードに「業務改善」がありますが、厳密には意味合いが異なります。

改革と改善は、どちらも対象を変化させることを目的としており、ニュアンスの近い言葉です。そのため、BPRと業務改善において、細かな違いを理解できていない方も多いのではないでしょうか。

ここでは業務改善の定義と、BPRとの違いについて触れていきます。

業務改善の定義

業務改善は、特定業務における問題点を取り除く、あるいは置換することによって、バージョンアップを図るための考え方です。簡潔に表現すれば、業務の良い部分は残し、悪い部分を改めようというのが、業務改善の主眼となります。

業務改善に求められる成果は、生産性の向上です。日々の業務を細かく分析すると、QCD(Quality:品質、Cost:費用、Delivery:納期)において無駄や無理がある箇所は、意外と多いのではないでしょうか。

業務改善では、それらの見直しを通じて業務の負担を軽減し、部署やチームとして以前よりも高いパフォーマンスが発揮できる状態を目指しています。

業務改善との違い

BPR(業務改革)と業務改善の主な違いは、対象の期間と範囲です。業務改善は内向きな取り組みで、短期的・限定的な特徴を持っています。

システム、業務フロー、人的リソースなど、社内にフォーカスして問題を捉え、業務の改善点を洗い出すことで、効率化を施すのが業務改善の考え方です。

対して、BPRは外向きな取り組みで、長期的・包括的な特徴を持っています。顧客や市場など、社外にフォーカスして問題を捉え、利益を生み出すための障害となる産業構造やルールを改革するのがBPRの考え方です。

そのため、業務改善はBPRに内包されるケースが多く、BPRの一部として捉えられることもあります。

BPR(業務改革)導入のメリット

企業がBPR(業務改革)を取り入れることには、主に3つのメリットがあります。

業務の改善

BPR(業務改革)を通じて抜本的な見直しを行うことで、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。

不要なフローを削除する、人材の配置を見直す、ITツール導入などの業務改善の領域はもちろん、組織構造のボトルネックの特定をはじめとする全社レベルでの取り組みが、全体最適化にもつながります。

この全体最適化が進むほど、横断的な連携の強化や意思決定の迅速化も実現しやすくなるでしょう。

顧客満足度の向上

全体最適化が進行し、社員のパフォーマンスが上がることは、結果的に顧客満足度の向上にも結びつきます。これはプロセス分析による業務理解度の上昇が、業務スピードだけでなく、業務品質も改善できることが要因といわれています。

顧客の満足度は、社員の満足度と一定の相関性があります。そのため、業務を抜本的に改善していく過程で、製品・サービスの存在意義や、顧客・社会に与える影響度を社員が理解することは、顧客満足度の向上にも有効であるといえるでしょう。

社員の技術向上

業務プロセスの分析が進み、理解が深まることで、業務の目的や背景が明確になります。それは社員のモチベーションアップにつながり、意識改革を促すきっかけになるでしょう。

また、効率化によって業務の再現性が高まることで、技術の習得や継承の環境整備がしやすくなります。これによって社員の技術レベルが平準化するだけでなく、さらなる技術向上も期待できるようになるでしょう。

BPR(業務改革)導入の進め方を5stepで解説

BPR(業務改革)の導入には、「検討」「分析」「設計」「実施」「モニタリング・評価」という5つのステップがあります。

1.検討

1つ目のステップは、基本計画を定めるうえで、目的・目標を整理する工程です。

プロジェクトメンバーを中心に改革対象となるテーマを挙げ、改革の影響範囲や必要な予算をベースに優先順位を付けていくことで、企業戦略としての方向性を決定します。

対象テーマが確定した後は、ロードマップやマイルストーンなどを用いて、具体的な期間や指標を定めていきましょう。

2.分析

2つ目のステップは、BPR(業務改革)のテーマに対して、課題点を把握する工程です。対象テーマの業務フローを可視化し、業務の内容やルール、組織構造も踏まえて、分析を行うことで、業務の課題点を特定します。

課題把握には、以下のようなフレームワークの活用も効果的です。

・BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)
・プロセスマッピング
・ベンチマーキング

3.設計

3つ目のステップは、洗い出された課題点をもとに、具体的な改善策を決める工程です。ここでは顧客起点でビジネスプロセスを再設計します。

業績を拡大するうえで阻害要因となる対象を排除し、類似業務の結合、非類似業務の分離、手順・場所・担当者の見直しなどを通じて、プロセス単位での最適化を図ります。

とはいえ、業務部門での改善には限界があります。ときには特定の業務をアウトソースする、業務を集約した専門部門や子会社を立ち上げるなど、より抜本的な改善を心がけることが重要です。

4.実施

4つ目のステップは、具体化した改善案をテストする工程です。どれほど緻密な改善案を生み出すことができても、実際に試してみなければ机上の空論に過ぎません。

しかし、最初から大がかりなプロジェクトを展開すると、時間と労力が膨大に必要となり、その分リスクも大きくなります。

そのため、まずは規模・期間を抑えて少しずつ実践し、想定と結果の答え合わせをしながら、着実に範囲を広げていくと良いでしょう。

5.モニタリング・評価

5つ目のステップは、実施状況をモニタリングし、効果測定を行う工程です。

BPR(業務改革)の導入プロジェクトを進める際は、定期的に振り返りを行い、進捗状況や達成度合いから目標とのズレを把握します。目標に届いていない場合、原因を究明し、対策を練ることで、軌道修正を図ります。

改革後の評価フェーズでは、組織の改善度、顧客への影響度、業績への貢献度などを総合的に評価し、次の改革へとつなげていくことが大切です。

BPR(業務改革)の代表的な手法

ここではBPR(業務改革)の代表的な手法を9つ紹介します。

業務の仕分け

一般的な手法として挙げられるのが、業務分析による業務の仕分けです。多くの業務は複数のタスクの集合体であるため、最小単位のタスクで業務を分類し、優先順位をつけていきます。

優先度の低いタスクは廃止、ITツールでの代替、アウトソーシングなどで業務担当者から切り離し、優先度の高いタスクに集中できるように環境を整備します。

ERPの導入

ERP(Enterprise Resources Planning)とは、企業資源計画を意味する言葉で、企業経営の核となるヒト・モノ・カネ・情報の資源要素を一元管理し、経営効率を高めるためのものです。

ERPは統合基幹業務システムとも呼ばれ、販売管理、生産管理、在庫管理などの基幹業務を統合データベースで管理しています。

これまで点在していたデータがERPによって集約されることで、経営状況の可視化が容易になり、より本質的な経営改善に向けた戦略立案が可能となります。

アウトソーシング

アウトソーシングは、単一業務を外部の専門業者に委託する手法です。優先順位の低いタスクを中心に、専門業者に依頼することで、リソース不足を補います。

アウトソーシングには一定のコストが発生するため、AI(人工知能)などの自動化技術で代替できる場合は、ITでの解決手段を模索する場合もあります。

BPO

BPO(Business Process Outsourcing)とは、業務プロセスの外部委託を指す言葉です。

アウトソーシングとの違いは、外部委託の考え方にあります。アウトソーシングは業務遂行に必要なリソースを、外部から補充することを指しますが、BPOの場合はプロセスの企画・設計から完結までを、専門業者に一貫して依頼することを指します。

そのため、BPOではノンコア業務や社内にノウハウのない業務を統合し、継続的に外部に委託することが多いです。代表的なBPOの委託例としては、コールセンター業務や、総務・経理・人事などのバックオフィス部門が挙げられます。

BPOによって一連の業務フローの手離れが実現し、社内のリソースをコア業務に割り当てることができます。

シェアードサービス

シェアードサービスは、間接部門で行われている業務を集約することで、ビジネスプロセスを単純化し、業務の効率化やコスト削減を実現するための手法です。

間接部門とは、業務が売り上げに直結しない部門を指し、コーポレート機能を担う総務、経理・財務、人事・労務、情報システム部門などが該当します。

複数のプロダクトを有する企業は多くの場合、事業部やグループ会社にそれぞれ間接部門を設けています。これはアナログでの業務連携が主流の時代には効果的でしたが、デジタル主流の現代においては逆に高コスト化の要因となってしまいます。

シェアードサービスを通じて間接部門を集約することは、単純にコストを削減するだけでなく、それぞれの部門で蓄積されたナレッジを共有し、より生産性を高めるためのプロセス改革に役立てることも可能です。

シックスシグマ

シックスシグマは統計学を応用し、製品・サービスの品質を高めることで、顧客満足度の向上を図るための手法です。主に製造業を中心に使われていた手法ですが、近年では営業や企画など、幅広い部門で活用されています。

具体的な内容としては、顧客の声に基づいたシグマレベルの設定を通じて、品質に影響を与えるエラーや欠陥を特定し、DMAICやDMADVという方法論を用いて、競合他社との比較やプロセスの向上を目指します。

DMAIC(定義:Define、測定:Measure、分析:Analyze、改善:Improve、定着:Control)は既存プロセスの改善、DMADV(定義:Define、測定:Measure、分析:Analyze、設計:Design、検証:Verify)は新規プロセスの策定に用いられます。

ナレッジ・マネジメント

ナレッジ・マネジメントは、個々人の持つ暗黙知を共有し、新たなイノベーションを促進するための手法です。

暗黙知とは言語化できていないナレッジを指し、主にベテラン社員の経験による判断軸や熟練スキルなどが当てはまります。これらは非定型化業務を効率化するうえで、非常に重要となる要素である反面、標準化が難しいものでもあります。

この暗黙知をSECIモデル(セキモデル:暗黙知を形式知化するための理論)によって変換・可視化し、組織全体で共有・管理することで、ベストプラクティス、専門知識、知的資本、顧客知識の取り出しを簡略化し、新たなイノベーションを導き出すための材料として活用します。

バランス・スコア・カード

バランス・スコア・カード(BSC)は、戦略的な経営を行うためのフレームワークです。

戦略・ビジョンを「財務」「顧客」「内部プロセス」「組織能力」という4つの視点で分類し、視点ごとの評価バランスを取りながら、中長期的な経営改善を目指します。

バランス・スコア・カードを活用することで、戦略の明確化やアクションプランの策定に加えて、業績評価をバランスよく実施できるという利点があり、より多面的な評価・改善の実施が可能となります。

サプライチェーン・マネジメント

サプライチェーン・マネジメント(SCM)とは、供給連鎖管理を意味する言葉で、材料・部品の調達からエンドユーザーに供給・消費されるまでの流れを全体最適化するための手法です。

サプライチェーン・マネジメントには、主に計画、実施、モニタリング・評価という3つのプロセスがあり、バリューチェーン上の情報を可視化することで、バトンパスの円滑化や需給バランスの適切なコントロールを実現します。

BPR(業務改革)の事例

ここではBPR(業務改革)の導入事例として、メーカー2社と地方公共団体の取り組みを紹介します。

花王株式会社

日用品メーカーとして、生活に欠かせない多種多様な商品を世の中に提供する花王株式会社では、その豊富な品数が競合優位性を生み出す一方で、適切な在庫管理に課題がありました。

そこで同社は、キープロセスとなる物流機能を強化するため、サプライチェーン・マネジメントの活用による流通チャネルの可視化に取り組みました。

国内21ヶ所の物流拠点を起点に、店舗の発注情報をもとにニーズを予測し、必要な商品を適切に輸送・保管することで、在庫の最適化を実現しています。

この複数の物流拠点が工場と店舗のハブとして機能することで、ニーズに対して迅速な商品供給が可能となり、品切れによる機会損失の予防にもなっています。

株式会社ブリヂストン

タイヤ・ゴムメーカーとして世界トップクラスのシェアを持つ株式会社ブリヂストンでは、品質要求の高騰や開発期間の短縮など、市場ニーズの変化に伴い、企画開発領域へのパワーシフト実現が急務となっていました。

しかし、設計者が日常的に処理するデータ量の多さや、属人化によるノウハウの可視化・標準化が難しく、慢性的なリソース不足が課題となっていました。

そこで同社は開発業務プロセス改革を発足し、BPOによる設計業務の整理・リスト化を通じて、情報をマニュアルに落とし込むことで、設計業務の標準化に成功しました。

加えて、標準化した設計業務は、エンジニアリング特化型のオペレーション拠点で教育基準を整備することで、新入社員の早期戦力化と品質の安定化を実現しています。

開発業務プロセス改革の結果として、同社では不備率や手戻りが減少するなど、業務精度が向上しただけでなく、設計領域のノウハウ伝承も行えるようになっています。

静岡県

静岡県では、行政における生産性の向上を目的に、BPR(業務改革)の科学的な運用に取り組んでいます。これは職員や資金の削減という一般的な対処療法では、行政の品質改善につながらないと判断したことがきっかけでした。

そこで静岡県は大学教授の指導のもと、幹部職員の研修を通じて課題解決力の向上を図った後、業務棚卸表による業務構造の可視化を行い、なるべく作業負担を増やさないかたちで、継続的に実施していくための仕組みを形成しました。

また、ITシステムを活用した「ひとり1改革運動」によって、取り組み成果の共有が行われることで、従業員の意識改革を促し、具体的な改善展開の足がかりとして機能しています。

行政改革の成果として、静岡県は行政のスリム化、人員・コスト削減を実現しています。

BPR(業務改革)とは業務プロセス全体の最適化を図る取り組み

本記事では、BPR(業務改革)の意味や目的をはじめ、導入メリットやプロセスなどをご紹介しました。

テクノロジーの進歩による競合他社の乱立が起き、労働人口の減少による働き方改革が求められる日本において、BPRでの抜本的な改革の必要性は高まっているといえます。

BPRによる改革を成功に導くためには、既存の慣習にとらわれないことが重要です。DX(デジタルトランスフォーメーション)でのデジタルシフトが注目を浴びていることからも分かるように、大きな変革の波が訪れている現代において、痛みを伴う変化はもはや避けて通れないでしょう。

特に近年はAI、IoTなどの最新テクノロジーの登場により、ノンコア業務をICT技術で代替する選択肢も生まれており、従業員がどの業務に注力するかは、労働生産性を高めるうえで大切な考え方となります。

業績を拡大し、市場に求められる製品・サービスを提供し続けるためにも、BPRの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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