チャットボットの種類について|特徴や活用例・選び方を解説
チャットボットの導入は、問い合わせ対応の人的負担やコストの削減に有効です。機能や仕組みごとにさまざまな種類があり、効果的に運用するためにも導入時には種類ごとの特徴を押さえておかなければなりません。本記事では、チャットボットの種類や特徴、活用例と選び方を解説します。
目次
チャットボットとは?特徴を紹介
チャットボットとは、チャット上でユーザーとコミュニケーションを取る自動会話プログラムのことです。「チャット」と「ボット」を組み合わせた言葉で、ユーザーからの問いかけに対してロボットが自動的に最適な回答を提供します。
チャットボットは、カスタマーサポートや社内ヘルプデスクの問い合わせ対応など、さまざまな場で使用されているツールです。主にコミュニケーションアプリや企業ホームページ、ECサイトなどに実装され、ユーザーをサポートしています。
▷チャットボットとは?仕組みや種類・使い方、メリットとデメリットをわかりやすく解説
【AIの有無別】チャットボットの種類
チャットボットはAI搭載の有無によって、AI型・シナリオ型の2種類に分けられます。
ここでは、AI型・シナリオ型それぞれの特徴を解説します。
AI型
AI型チャットボットは、あらかじめ登録したデータや会話の履歴から収集したデータを人工知能が繰り返し学習し、回答精度を高められる点が特徴です。複雑なシナリオ設計をしなくても、高度で複雑な内容や種類の多い条件分岐に対応できます。
AI型はユーザーとの自然な会話が可能なため、まるで人と話しているような親しみやすさを感じられる点もメリットです。ただし、開発にあたって膨大なデータを登録する手間や導入・運用のコストがかかります。
AI型チャットボットの活用例
AI型チャットボットは、特に複雑なカスタマーサポートやWeb接客で主に活用されています。
AIが機械学習を続けながら問い合わせに対応できるため、シナリオ型では対応が難しい個別のニーズに沿った内容や、自由入力形式の問い合わせに最適です。
またECサイトやサービスサイトにおいて、ユーザーと対話しながら最適なサービスや商品を紹介するWeb接客にも向いています。対話を通じて見込み顧客の関心を高めて、問い合わせ・資料請求や売上の増加が期待できます。
▷AIチャットボットとは?シナリオ型チャットボットとの違いやおすすめサービスを紹介
シナリオ型(ルールベース型)
AI非搭載のシナリオ型チャットボットは、あらかじめ登録されたシナリオ(会話の流れ)に沿って会話を進めるタイプです。ユーザーにいくつかの選択肢を提示し、問い合わせ内容に合うものを選んでもらうことで回答に導く「選択肢型」などに採用されています。
導入時にはシナリオを作成する必要がありますが、一度設定すれば正確な回答が可能です。また、想定される質問と回答をセットで登録するだけで運用を始められるため、AI型よりも手間とコストがかかりません。
シナリオ型チャットボットは想定される質問が少なく、限定的な場合に適しています。
シナリオ型チャットボットの活用例
シナリオ型チャットボットは、あらかじめ設定したシナリオに沿って会話を進めるため、どんな質問にも対応できるようにシナリオを増やしすぎると、選択肢も増えて利便性が低くなります。そのため、シナリオ型は限定された利用用途での活用がおすすめです。
例えば、資料請求や申し込みの際に氏名や住所などを入力してもらうために活用したり、よくある質問への回答だけを任せたりするなど、あらかじめ利用用途を限定しておくと活用しやすくなります。
▷シナリオ型チャットボットとは?仕組みや導入事例・メリットを紹介
【仕組み別】チャットボットの種類
チャットボットは会話の仕組みによっても分類可能で、以下の4種類に区別されます。
- 選択肢型
- 辞書型
- 選択肢型&辞書型
- ログ型
ここでは、上記の4種類の特徴を解説します。
選択肢型
選択肢型は、チャットボットがいくつかの選択肢を提示し、当てはまるものをユーザーに選んでもらいながら会話を進めます。選択肢を選ぶだけで求める回答まで辿り着けるため、ユーザーが気軽に利用しやすい点がメリットです。
選択肢型は想定される質問の数が少なく、限定的な場合に適しています。一方、複雑な条件分岐がある場合や想定される質問が多い場合には、シナリオの設定が難しくユーザーが求める回答を提供しづらいため適していません。また、想定外の質問に対応できない点もデメリットです。
辞書型
辞書型は、あらかじめ「単語」と「単語に対応する回答」を登録し、そのデータの範囲内で会話をします。AI型チャットボットで用いられているタイプで、ユーザーからの質問に登録した単語が一語でも含まれていれば会話を進めることが可能です。
導入時に多くの単語を登録する作業に手間がかかりますが、一度登録すれば簡単に運用できます。単語によって、質問内容がある程度予測できる場合に適しています。
選択肢型&辞書型
選択肢型&辞書型は、選択肢型と辞書型を組み合わせたタイプです。基本的には、ユーザーに選択肢を選んでもらいながら会話をし、選択肢にない質問をしたい場合にフリーワードで質問を入力してもらうといった対応ができます。
選択肢型&辞書型も、AI型チャットボットで運用されています。選択肢の設計・単語登録の両方に手間がかかりますが、フリーワードでの質問にも対応できるため、選択肢型では取りこぼしていたユーザーの問い合わせにも対応可能です。
ログ型
ログ型は蓄積された会話データから、質問に対して適当と判断した回答を提示するタイプです。会話データが溜まるほど回答精度が高まるため、ユーザーの利用頻度が高い場所に設置するのが適しています。
ログ型もAI型チャットボットに使用されており、人とやりとりしているかのような自然な会話が可能です。また、ユーザーは自由に文章を入力できるため、幅広い問い合わせに対応できます。
【機能別】チャットボットの種類
チャットボットは利用機能によっても分類され、主に以下の4種類があります。
- FAQ型
- 処理代行型
- 配信型
- 雑談型
ここでは、上記の4種類の特徴を解説します。
FAQ型
FAQ型チャットボットは、よくある質問などを登録したFAQをもとに問い合わせ対応ができるタイプです。質問に対して、チャットボットがFAQから適切な回答を提示するため、自動的に問い合わせに対応できます。
FAQ型はカスタマーサポートだけではなく、社内からの問い合わせ対応にも有効です。導入すれば、有人対応はチャットボットが対応できなかった内容のみに限定されるため、問い合わせ業務の負担を減らせます。
処理代行型
処理代行型チャットボットは、ユーザーとの会話で得たデータからシステム処理を行うタイプです。主に、飲食店の予約システムや会議室予約システム、配送業の再配達依頼などに使用されています。
例えば、飲食店の予約システムであれば、チャットに日時や人数を入力するだけでチャットボットが空き時間を照合し、予約の処理が可能です。手間のかかる作業をチャットボットが代行するため、ユーザーの負担を軽減できます。
配信型
配信型チャットボットは情報発信に特化したタイプです。メルマガのような使い方が可能で、ユーザーにセール情報やクーポンなどを配信できます。また、ECサイトで購入した商品の発送通知や配送日を伝える目的でも使用されています。
配信型チャットボットは顧客向けだけではなく、社内向けのリマインドツールとしても使用可能です。例えば、カレンダーツールと連携して、社内の予定を直前に知らせるといった使い方ができます。
雑談型
雑談型チャットボットは問い合わせ対応や情報配信などは行わず、雑談を続けることが主な機能です。チャットボットとさまざまな会話ができ、ユーザーにファンになってもらうことで企業のブランディングや顧客ロイヤリティの向上が期待できます。
代表的な雑談型チャットボットは、日本マイクロソフト社が提供している「りんな」です。雑談を絡めた自然な会話を通じて、商品やサービスの紹介に誘導することもできます。
チャットボットを導入する際の選び方のポイント
チャットボットを選ぶ際には、どのような点に注目すればよいのでしょうか。
ここでは、チャットボットの選び方のポイントを4つ紹介します。
AI搭載の有無
チャットボットは、AI搭載の有無で機能性とコストが大きく変わります。
AI型はシナリオ型よりも回答精度が高く、フリーワードを用いた高度で複雑な会話にも対応可能です。また、会話データから人工知能が自動で学習するため、メンテナンスの手間を減らせます。一方、導入・運用にあたって大きな手間とコストがかかる点がデメリットです。
AI非搭載のシナリオ型は、AI型よりも導入時の設定が簡単に行えます。そのため、導入・運用にかかる手間やコストが少ない点がメリットです。ただし、想定外の質問には答えられないといったデメリットがあります。
自社の問い合わせの種類や数によって、AIの必要性を考慮しましょう。問い合わせの種類が限定的で数が少ない場合は、シナリオ型でも十分に効果を発揮します。
導入してできること
チャットボットに搭載されている機能もチェックしましょう。製品によって、搭載されている機能は異なります。FAQ・処理代行・配信・雑談機能など、使用シーンに合った機能を備えているかをチェックしましょう。
また、同じ機能でも製品によって性能や使い勝手は異なります。複数の製品を比較・検討し、自社に最適なシステムを選びましょう。
▷チャットボットでできること・できないこと|事例や導入手順を解説
他ツールとの連携
多くのチャットボットは、外部ツールと連携できます。ビジネスチャットツール・メール配信システム・ショッピングカード・SFA・CRMといった既存のツールと連携したい場合は、対応ツールを確認しましょう。
外部ツールと連携することで、業務の効率化を実現できます。また、チャットボットが収集したデータをマーケティング施策などに活用できる点もメリットです。
サポートの内容
チャットボットを選ぶ際は、サポートの内容もチェックしましょう。サポート体制が充実しているサービスであれば、トラブルや疑問点を迅速に解消でき、導入・運用にあたってアドバイスも受けられるため安心です。
サポート内容は提供元によって異なるので、導入前に確認しましょう。専任のサポート担当がいるサービスや、問い合わせ対応の早いサービスを選ぶのがおすすめです。
▷【2024年最新】おすすめのチャットボット29選比較|無料ツールや比較ポイント
チャットボット導入時の注意点
チャットボット導入時にはいくつか注意すべきポイントがあります。
ここでは、チャットボット導入時の注意点を2つ紹介します。
導入目的を明確にする
チャットボットを導入する前に、導入目的を明確にしましょう。例えば、問い合わせ対応に使用する場合はFAQ型、情報発信を目的とするなら配信型など、導入目的によって選ぶべき種類は変わります。
また、既存の外部システムと連携できるかどうかもチェックしましょう。例えば、顧客管理業務の効率化もしたい場合は、CRMなどと連携できるものがおすすめです。また、マーケティング施策に活用したい場合は、分析機能の付いたサービスを選ぶとよいでしょう。
費用対効果を計算する
チャットボットの導入には、手間とコストがかかります。そのため、導入・運用時にかけたコストが回収できるか、費用対効果を計算することが大切です。
まず、導入・運用にかけられる時間・予算・人員などのリソースをどのくらい捻出できるのかを確認しましょう。その後、初期費用や月額費用、人件費などの導入・運用コストを計算し、費用対効果の高いサービスを選ぶことが重要です。
▷チャットボットの導入費用とは?費用の内訳や相場・費用別にチャットボットを紹介
チャットボットの活用事例
最後に、チャットボットの活用事例を3つ紹介します。
INVOY
クラウド請求書プラットフォームのINVOYでは、自社のホームページに選択肢型のチャットボットを導入しています。
サービスの導入を検討しているユーザーや、すでに利用しているユーザーに対し、サービス内容や料金など複数の選択肢を用意して対話を進めていきます。選択肢を選ぶことでサービス内容や操作方法の不明点、料金について案内できるため、ユーザーの疑問をすぐに解消することが可能です。
選択肢の数が多くユーザーも迷わず選択できるため、顧客満足度のアップが期待されています。
[参照元:INVOY]
Payme
給与前払いサービスPaymeでは、サービス提供サイトでチャットボットを導入しています。チャットボットは選択肢型で、会話を進めながら顧客の問い合わせに回答する仕組みで、「担当者と話したい」といった項目を設けることで、有人対応への引き継ぎもできます。
チャットボットの導入により、サービスの導入を検討している顧客に対してアプローチが可能となりました。電話やメールよりも問い合わせやすく、会話の流れでサービス紹介資料に誘導することで資料請求数や申込件数の増加が見込めます。
[参照元:Payme]
justincase
保険商品を提供するjustincaseでは、サービス提供サイトでチャットボットを導入しています。選択肢型で会話を進めながら、ユーザーの状況に合わせて回答を提示する仕組みです。
チャットボットにはよくある問い合わせを登録しており、ユーザーの疑問に対して自己解決を促します。よって、問い合わせ対応業務の効率化や、有人対応数の減少による人件費削減などの効果が期待されています。
また、保険金請求の受付にもチャットボットを活用しており、導入後に保険金請求の受電数は18%前後減少し、1ヶ月で約180万円のコストカットを実現しました。
[参照元:justincase]
▷チャットボットの導入事例15選|導入時のポイントや成功する方法・メリットを解説
チャットボットの種類を把握して適切な箇所に導入しよう
チャットボットは、カスタマーサポートや社内問い合わせ対応など、幅広いシーンで活用されているツールです。導入することで、自動で対応できる問い合わせ業務が増え、従業員の負担を軽減できます。
チャットボットにはさまざまな種類があります。それぞれの特徴を理解し、自社に適した種類のチャットボットを導入しましょう。
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