ダイバーシティと働き方改革の関係とは?企業の具体的な取り組みも解説

最終更新日時:2023/06/21

ダイバーシティ

ダイバーシティと働き方改革の関係

働き方改革にも深く関わるダイバーシティへの取り組みが注目されています。しかしながら、ダイバーシティの「具体的な取り組み」については、イメージできないという方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、ダイバーシティの意味や働き方改革との関係、効果や注意点に加えて、具体的な事例も紹介していきます。

ダイバーシティと働き方改革

まずは、ダイバーシティと働き方改革の意味を解説していきます。具体的な施策を取り入れる前に、ダイバーシティや働き方改革が示す、本来の意味をしっかりと理解しておきましょう。

ダイバーシティとは?

「最近耳にする機会が増えた」という方も多いと思いますが、ダイバーシティは1980年代から使われている言葉です。国内においては、1985年に制定された「男女雇用機会均等法」により、男女の雇用格差を禁じたことがダイバーシティの始まりとされています。

2000年代以降は、少子高齢化による人材不足への対応やグローバル市場の競争激化や消費者ニーズの変化などにより、ダイバーシティがさらに注目を集めるようになりました。

具体的には、次のような多様性を受け入れようと考える企業が増え、ダイバーシティという言葉が使われる機会が増加しています。

  • 人種
  • 宗教
  • 価値観
  • 性別
  • 障がいの有無
  • ライフスタイル

企業はさまざまな背景を持つ多様な人材の採用や登用を積極的に進めるダイバーシティ経営を推進し、持続的な発展や成長を目指しています。

ダイバーシティとは?基礎知識から重要性・効果・課題・取り組み事例を解説

働き方改革とは?

働き方改革とは、一億総活躍社会を実現するために、政府が主導する取り組みを指します。

働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じます。

[引用:厚生労働省「働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」より]

国内企業は、長時間労働や少子高齢化による人材不足、介護や育児による離職、正社員と非正規雇用者の格差など、さまざまな状況に直面しています。こうした中で、より働きやすい職場環境の構築や生産性向上、多様な人材が活躍できる就業機会の創出などの課題を解決することが企業に求められています。

政府は働き方改革によって、これらの課題を解決するための施策を講じており、2019年4月から順次「働き方改革関連法」を施行しています。

<働き方改革による具体的な施策>

  • 時間外労働の上限規制
  • 勤務間インターバル制度の導入
  • 年次有給休暇の取得義務化
  • フレックスタイム制の見直し
  • 高度プロフェッショナル制度の導入
  • 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
  • 産業医・産業保健機能の強化 など

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ダイバーシティと働き方改革の関係

働き方改革とは多様な人材がそれぞれの事情に応じて、働き方を柔軟に選べる社会を目指すものです。介護や育児・出産で離職を余儀なくされていた人材やシニア人材など、さまざまな人材が活躍できるように社会環境や職場環境を改善する取り組みです。

また残業時間の削減や従業員の健康管理の強化、ワークライフバランスの改善など、企業や労働者を取り巻くルールや環境の改善にかかわる包括的な取り組みを指します。

一方のダイバーシティもまた、人種・性別・学歴・スキル・宗教・国籍など、多様な人材を認める考え方が根底にあります。人材の中には、女性やシニア、外国人、障がいのある人なども含まれます。

つまり、働き方改革を実現する手段の1つとして、ダイバーシティ(もしくはダイバーシティ経営)を位置づけることができるということです。企業は採用基準の見直しや、テレワークの導入、公平・公正な評価基準の導入など、多様な人材がより良く働ける環境を作ることで、働き方改革とダイバーシティを同時に推進することができるのです。

ダイバーシティが注目を集めている理由

ここ数年ダイバーシティという言葉が注目を集めている背景には、企業や社会が直面している次の4つの課題があります。

<少子高齢化による労働力の減少>

総務省の調査では1995年をピークに減少に転じた生産年齢人口は、今後さらに加速度を増して減少すると予測しています。人手不足に対応するために、多様な人材の活用が求められています。

<キャリアの多様化>

企業とともに長期的なキャリア形成をする時代から、雇用形態にこだわらず、副業や趣味と並行した働き方を求める変化も見られています。さまざまな考え方や価値観を持った人材がパフォーマンスを発揮できる職場環境の構築が重要です。

<消費の多様化>

国内の消費市場が飽和状態にあり、個人の消費動向も多様化しています。「モノの消費」から「コトの消費」への移行も顕著であり、消費行動や価値観が大きく変化しています。外国市場に対応した製品やサービスの開発、変化するニーズに柔軟に対応できる人材の活用が企業経営にとって必要不可欠といえます。

<情報のグローバル化>

国や地域を越えた情報のやりとりが行われ、日本企業の海外進出と海外企業の日本進出が進行しています。国際競争が激しくなり、国内外の需要を満たすアイデアが求められています。

[出典:総務省「平成29年版情報通信白書 第1部特集 データ主導経済と社会変革」]

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ダイバーシティ推進の必要性

企業は上で挙げた「労働力の減少」「キャリアの多様化」「消費の多様化」「情報のグローバル化」に対応するために、ダイバーシティを推進する必要性が高まっています。

企業が直面している慢性的な労働力不足については、女性だけでなく高齢者や障害者、外国人の活躍が必要不可欠です。またフルタイムの正社員だけでなく、時短勤務を可能にしたり、フリーランスや業務委託の人材を有効活用する方法などもあります。

キャリアの多様化については、副業や兼業を可能にする社則を整備したり、仕事とプライベートの両立がかなう働き方を導入することが重要です。消費の多様化・情報のグローバル化に対応するためには、グローバル市場に受け入れられるような多種多様な発想やアイデアが必要不可欠です。

労働環境や働き手の価値観、消費者ニーズや消費行動は、今後も変化していくことが考えられます。企業はこうした変化への対応のためにも、ダイバーシティに取り組む必要があります。

対応が遅れた場合には、人材不足や競争力の低下、生産性や効率性の低下などにもつながるおそれがあるため、経営戦略としての重要性がより一層増しているといえるでしょう。

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ダイバーシティ取り組みによる効果

ここでは、企業がダイバーシティに取り組むことで得られる効果について、3つの視点から解説していきます。

人材を確保できる

ダイバーシティに取り組むことで、人材不足の解消が期待できます。例えば、育児や介護といったライフイベントによる離職を防ぐことで、実績のある人材を手放さない環境を整えられます。

また、ダイバーシティ経営によって多様な人材を採用することは社会的責任を果たすことにもつながります。求職者の中には、企業の取り組み内容や社会的意義を企業選びのポイントにする人もいるでしょう。

そのためダイバーシティ経営に積極的に取り組むことは新卒・中途を問わず、採用活動において大きなアピールポイントになります。

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製品やサービスの開発につながる

変化する消費者ニーズに対応した製品・サービスの開発につなげられることも、ダイバーシティに取り組む効果の1つです。

ダイバーシティとは、さまざま視点や価値観を持った人材を受け入れることを意味するため、既存社員からは生まれてこなかった新たな発想や、新しい顧客に対応した商品開発の可能性も期待できます。

例えば、短時間勤務を希望する女性が働きやすい環境を整備すれば、女性ならではの着眼点にもとづいた製品やサービスの開発につながるかもしれません。

社会的な信用度が上がる

ダイバーシティ経営の促進は、社会的な信用度のアップにもつながります。求職者の中には、働きたくても働けない人も含まれているでしょう。

女性やシニア、障がい者だけでなく、地方在住者など、置かれている環境や境遇は個人個人で異なります。そうした人材を積極的に採用することは社会課題の解消につながります。ダイバーシティに積極的に取り組む企業は、それだけで社会的な信頼を得られるでしょう。

社会的な信用度の高さは、従業員の満足度にもつながるため、自社への帰属意識の向上ややりがいのアップなどにも寄与する可能性があります。

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ダイバーシティ取り組みの注意点

ここでは、ダイバーシティに取り組む際の注意点を紹介していきます。

従業員の理解

ダイバーシティへの取り組みは、企業が生き残るための重要な戦略の1つです。ただし、ダイバーシティの推進によって、既存社員が「安心できる環境や制度が変えられてしまう」というネガティブな感情を抱く懸念もあります。

環境や制度の変化がストレスにつながるリスクを理解し、事前に経営指針や目的を従業員に共有することが重要になります。

職場環境の管理

ダイバーシティに取り組む際には、職場環境の管理も必要不可欠です。ダイバーシティの目的の1つである女性の活躍を例に挙げれば、まずは育児休業を取りやすい環境づくりがあります。そして、テレワークでも業務を進められる制度や設備の充実への配慮も忘れてはなりません。

「女性が活躍できる会社づくり」という方針を掲げるだけでなく、従業員が困らない職場環境の管理も企業が積極的に取り組むべき課題といえます。

コミュニケーション環境

ダイバーシティとは多様性を受け入れることであるため、必然的に組織内には多種多様な考え方を持った人材が集まります。状況によっては、考え方の違いから、不和が生じる可能性もあるでしょう。

お互いを理解し、安心できる環境でなければ、十分なポテンシャルのある人材もその能力を発揮することができません。そうならないためにも、社員間で十分なコミュニケーションがとれるような仕組みを作ることが必要になります。

例えば、テレワーク中でも会話をスムーズにできるチャットツールの導入や、Web会議ツールの活用などが考えられます。また、社内SNSや社内報などを使うことでも、社員間のコミュニケーションを促進させることができるでしょう。

ダイバーシティ推進によるメリット・デメリットとは?注意点も徹底解説

ダイバーシティの具体的な取り組み事例

最後にダイバーシティを取り入れ、大きな効果を生み出している事例を紹介していきます。ダイバーシティという言葉に注目が集まり始めている昨今ですが、女性や外国人の積極登用によって、高いメリットを手にしている企業も少なくありません。

日産自動車株式会社

日産自動車株式会社は、1999年にルノー社と提携したタイミングで、働き方を変える取り組みをスタートさせています。

同社の取り組みの特徴は、女性役員を積極登用している点にあります。「キャリアを築きにくい」という一般的な考えを払拭し、女性ならではのアイデアを活かすことで、コンパクトカー「ノート」などの代表作の商品開発に成功しています。

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社も、日産自動車株式会社と同様に女性が活躍できる組織の構築に取り組んでいます。キリンホールディングスは、「働く女性へのプロモーションを行うこと」を目的にダイバーシティを推進しました。

同社では、新規開拓をする過程で女性視点の企画提案が必要であると気づき、女性社員の採用や教育に注力するうちにダイバーシティの考え方が根付いていきました。

株式会社小金井精機製作所

精密部品のメーカーである株式会社小金井精機製作所は、10年ほど前から若手技術者不足に直面し、ベトナム人学生の採用をスタートさせています。

言葉や文化といった障壁があったにもかからわず、いち早くダイバーシティに取り組みさまざまな施策を実践したことで、現在では外国人の人材を中堅以上のポジションに配置することに成功しています。

株式会社吉村

日本茶の包装素材を扱う株式会社吉村は、ペットボトル飲料の影響でニーズが減少したタイミングで、ブランドオーナー制度をスタートさせています。

通常、茶器やギフトといった1つのジャンルを担当するケースがほとんどですが、ブランドオーナー制度によってジャンルにとらわれない提案が可能になりました。

ブランドオーナーが業務分担を行う裁量をもつため、長時間労働に対応できない人材でも十分に活躍できる点も、この制度ならではのメリットです。

大橋運輸株式会社

長時間勤務が課題となっている運送業界ですが、大橋運輸株式会社では短時間勤務を認めるバリエーション勤務を採用しています。この制度によって労働時間の削減を実践しています。

また、外国人やLGBTQの人材も積極的に登用しています。例えば、フィリピン出身の人材を海外事業部の責任者に配置したり、LGBTQの理解のための研修を実施するなど、具体的な取り組みを通して、さまざまな人材が活躍できる職場環境づくりに成功しています。

企業のダイバーシティ推進取り組み事例8選!見本から学ぶ成功の秘訣

ダイバーシティと働き方改革は密接な関係にある

「多様性を受け入れる」という意味をもつダイバーシティですが、働き方改革を進める上で欠かすことのできない考え方です。少子高齢化やグローバル化が進むこれからの時代においては、企業のダイバーシティへの取り組みはより重要性が増していくと考えられます。

ダイバーシティは組織に必要な取り組みである一方で、多様性を受け入れ、変化することをネガティブに捉える従業員がいることも念頭に置く必要があります。

すでにダイバーシティを取り入れ、時代に沿った働き方を実践している企業もありますが、これから取り組む企業はここで紹介した「効果」や「注意点」なども参考にしながら、少しずつダイバーシティを実践してみてはいかがでしょうか。

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