アサーティブ・コミュニケーションとは?実践ポイントや活用事例を解説

最終更新日時:2022/09/11

ダイバーシティ

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ダイバーシティが企業経営のキーワードにもありつつあるビジネス環境のなかでは、価値観や属性が異なる人と意見を交わす機会も自然と増えることになります。そこで注目を集めるのが、信頼関係の構築に有効とされているアサーティブ・コミュニケーションです。本記事では、そんな「アサーティブ・コミュニケーション」について、その意味やメリットを詳しく解説していきます。

アサーティブ・コミュニケーションとは?

アサーティブ・コミュニケーションとは、良好な人間関係を構築する際に役立つコミュニケーションの手法です。

近年、ビジネスのグローバル化やダイバーシティ化を背景に、これまで以上にコミュニケーションの質や在り方が重要視されるようになりました。そこで、注目されているのがアサーティブ・コミュニケーションです。

アサーティブ・コミュニケーションの意味

「アサーティブ・コミュニケーション」とは、相手の立場や意見を尊重しつつ、適切な表現を以って自分の意見を正確に伝える自己表現の方法を意味しています。

アサーティブ(Assertive)とは、日本語で「断言する」「言い切る」「自信に溢れている」といった意味を持ち、「自己主張」を表す言葉としてしばしば使われています。しかし、自分の意見を押し殺したり、はたまた、一方的な自己主張を続けるようなコミュニケーションでは良好な人間関係は築けません。

つまり、アサーティブ・コミュニケーションの特徴は、相手を尊重した上で、適切な表現を用いて自分の意見を伝えることの2点にあり、お互いを尊重し合うコミュニケーションなのです。

アサーティブ・コミュニケーションが注目されている背景

アサーティブ・コミュニケーションは、もともとは人間関係の構築が苦手な人向けのカウンセリング手法として用いられていました。

ところが、ビジネスのグローバル化やダイバーシティ化が進む中で、意見や価値観の相違を感じる場面が増えたことから、一般的なビジネスシーンにおいてもアサーティブ・コミュニケーションが注目されるようになったのです。

ライフスタイルや人生の価値観、仕事観のほか、国籍や文化などの属性が異なる人と一緒に働く際には、これまでにはなかった「意見の対立」が生まれることもあります。

しかし、そのような違いを「衝突」させたり、「沈黙(無視)」して受け流したりしていては、人間関係は悪化するばかりであり、やがてチームは機能しなくなってしまいます。

そこで、違いを受け入れつつも、自分の意見を尊重しながら新しいイノベーションや建設的な会話へとつなげていくコミュニケーションが求められるようになったのです。

アサーティブでないコミュニケーションの3つのスタイル

改めて、アサーティブ・コミュニケーションには、「相手の立場や意見を尊重しながら自分の意見も伝える」といった意味があります。

一方で、以下のようなコミュニケーションスタイルはアサーティブとは言えません。

  • 攻撃的スタイル
  • 受け身的スタイル
  • 作為的スタイル

それぞれのスタイルについて解説します。

攻撃的スタイル

攻撃的スタイルとは、相手の気持ちや立場を一切考えず、一方的に自分の意見を主張することを指します。些細なことで苛立ち、思いをそのまま伝えてしまうことも攻撃的スタイルに含まれるため、時には、人格をも否定するような表現が用いられることもあるでしょう。

攻撃的スタイルは、信頼関係を崩壊させるだけでなく、相手の尊厳をも傷つけかねないコミュニケーションです。攻撃的なスタイルでコミュニケーションを取ってしまう人は、まずは感情をコントロールする方法を学ぶ必要があります。

受け身的スタイル

受け身的スタイルは、言いたいことを言えないといった特徴があります。また、相手の一方的な主張であっても、否が応でも受け入れようとしてしまうことも特徴の一つです。

受け身的スタイルの人は、相手から悪く思われることや対立を恐れ、自分の意見をなかなか伝えられません。例えば、実際のビジネスシーンでは、「忙しくても仕事を依頼されたら断れない」「納得できない仕事を低いモチベーションのまま続ける」「手伝いをお願いできず1人で仕事を抱え込んでしまう」といったことが起きます。

作為的スタイル

作為的スタイルは、自分の意見を直接言葉では伝えず、陰口や態度で気づかせるといった特徴があります。攻撃的スタイルのように、相手に直接、自己主張することはないため、表面上は冷静に見えるでしょう。

そのため、抱える感情や不満に周囲が気づきにくい一方で、態度や表情には言いたくても言えない不満が垣間見えることがあり、「コミュニケーションの取りにくい人」と思われがちです。

アサーティブ・コミュニケーションのメリット

ここからは、アサーティブ・コミュニケーションによって得られる4つのメリットを解説していきます。

コミュニケーションの活性化

アサーティブ・コミュニケーションは、「自分が尊重される」安心感をもたらすため、組織の意見交換が促進されます。また、「報・連・相」が活発になることで、コミュニケーション不足によるトラブルを未然に防げるといったメリットもあります。

さらに「自分の意見を聞いてもらえる」という心理的安全性は、何気ない些細なアイデアも共有しやすい環境づくりへとつながり、新たなイノベーションも生まれやすくなるでしょう。

良好な信頼関係の構築

アサーティブ・コミュニケーションは、上司・部下間の良好な人間関係構築に役立ちます。

アサーティブでないコミュニケーションを取ると、立場上、部下は自分の意見や抱える悩みを気軽に共有できなくなります。そのような環境では、一方的な仕事の押し付けが起きやすいだけでなく、部下が理想のキャリアを描けなくなることもあるのです。

一方で、アサーティブ・コミュニケーションを取り入れることで、上司は部下の意見も取り入れながら仕事を進められるようになります。部下においても、「自分の意見に耳を傾けてもらえる」環境での仕事は、自主性を保ちやすいと言えるでしょう。

従業員の生産性向上

アサーティブ・コミュニケーションによって生まれる安心感や自己肯定感は、仕事へのモチベーションや組織へのエンゲージメントの向上につながります。

その結果、能動的に仕事に取り組めるようになるため、高い集中力やパフォーマンスが期待できるでしょう。また、コミュニケーションが活発になることで、それぞれの得手・不得手が明確になるため、強みを活かした適切な人材配置も可能になります。

やりがいを持って、強みを活かした仕事ができる体制を整えることにより、全社的な生産性向上に役立つのです。

従業員のストレス軽減

アサーティブ・コミュニケーションによる、「お互いの尊重」と「適切な表現での意見交換」が、良好な人間関係を築く上で有効であることは明白です。

そのため、仕事におけるストレスとして、常に上位に位置する「人間関係」が円満に保てることは、従業員のストレスの軽減に大きく貢献するはずです。

アサーティブ・コミュニケーションの実現に必要なDESC法とは?

アサーティブ・コミュニケーションを実現する際には、「DESC法」という手法が役立ちます。

適切かつ有効な表現スキルを体系的にまとめたDESC法は、必要な以下の4つのステップの頭文字によって構成されています。

  • Describe:描写
  • Explain:表現
  • Specify:提案
  • Choose:選択

それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

STEP1:描写(Describe)

「事実だけを伝える」ことが描写です。描写の段階では、自分の意見や感情は伝えません。

事実から相手の意見・主張を引き出す必要があるからです。自分の意見も伝えてしまうと、聞き手は話し手の意見も踏まえた偏りのある意見・主張になる可能性があります。そのため、最初は事実のみを伝える描写をすることが大切です。

STEP2:表現(Explain)

描写し相手の意見や主張を聞いた後は、事実に対する自分の意見を表現します。しかし、思ったこと・感じたことを伝えるだけではいけません。相手に対する思いやりを持った表現・言葉遣いを意識することが大切です。

STEP3:提案(Specify)

事実・相手の意見・主観的な意見をもとに解決策や手順を提案します。ただし、あくまでも提案に徹しましょう。この段階で、相手の意見を聞かずに提案を強要することのないよう注意してください。

STEP4:選択(Choose)

最後に、提案への回答に対する行動を示します。提案に対して「Yes」と答えた場合の行動、「No」と答えた場合の行動を示すのです。そうすることで、相手も提案に対して回答しやすくなります。

アサーティブ・コミュニケーションを実践する際のポイント

アサーティブ・コミュニケーションを実践する際に効果的なDESC法をご紹介したところで、実際に実行する際には意識すべきポイントもあります。

その「4つのポイント」についても、確認していきましょう。

誠実な態度を心がける

誠実な態度を取ることで、相手の意見や立場を尊重していることを示せます。

相手と意見が合わない場合、感情的になって頭ごなしに反論するのはもちろん、自分の意見を言わないこともある意味では、誠実とは言えません。自分自身に正直になることを心がけてください。

自分の意見を率直に伝える

自分の意見を率直に伝えることが重要です。周囲からの見え方や対立を懸念するあまり、わかりにくく遠回しな表現をするのは逆効果です。

また、「他の人が言っていた」「それをすると〇〇さんに怒られるから」など、他人に責任を押し付けるような表現も好ましくありません。あくまで、自分の率直な意見として相手に伝わるようにしましょう。

対等な立場で相手と向き合う

上司と部下、発注者と受注者など立場の有利性が発生する場合においても、必ず対等であることを意識しながら相手と向き合うことが大切です。

立場を利用して無理強いしたり、逆に自分の意見を押し殺して相手に合わせたりするような環境で良好な人間関係を築くことは不可能です。お互いに発言の機会や意欲を失わないよう対等な関係の維持に配慮する必要があります。

責任感を持って実践する

意見を主張した以上は、その言葉に責任を持つ必要があります。それは意見が通らなかった場合でも同様です。結果はどうであれ、自分の意見が相手の考え方に影響を与える可能性があることを認識しておきましょう。

また、意見を主張しなかったことにも責任を持つことが大切です。失敗した際、「実はこう思っていた」などの後出しの言い訳を主張するのは、人間関係を悪化させるだけでなく、ビジネスにおいて生産性のないコミュニケーションと言えるでしょう。

意見を主張する・主張しないのどちらとも責任感を持って実践する必要があります。

アサーティブ・コミュニケーションの活用事例

最後にアサーティブ・コミュニケーションの活用事例を紹介します。

部下に対するアサーティブ・コミュニケーションの具体例

資料作成のタスクが期日までに終わらなかった場合の、上司と部下間のアサーティブ・コミュニケーションの例です。

  • 描写:「今日12時が締め切りの資料は、まだもらってなかったよね?」
  • 表現:「チェックが必要だから提出してくれないと困るんだけど、状況はどう?」
  • 提案:「締め切りに間に合わないとわかったら、すぐに相談してもらっていい?」
  • 選択:「相談してくれたら、手伝ったり、誰かに割り振ったりすることができるから」

部下を一方的に責めることのないアサーティブ・コミュニケーションを取ることで、事実を確認しつつ、改善できるようになります。業務が終わらなかったことを頭ごなしに非難されるのではなく、事実を確認した上での提案は、部下が極端に不満を抱えることもないでしょう。

上司に対するアサーティブ・コミュニケーションの具体例

今度は、同様のシチュエーションにおける、部下目線のアサーティブ・コミュニケーションの例です。

  • 描写:「先日引き受けた資料の作成ですが、期日までに間に合いそうにありません」
  • 表現:「ご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません」
  • 提案:「明後日の12時まで、お時間をもらうことは可能でしょうか?」
  • 選択:「また、そのほかの業務を(ほかの社員に)手伝っていただくことを指示してもらうことは可能でしょうか?」

ここでは、表現する際に「自分の仕事が忙しく手が回らなかった」ことの主張に終始するのではなく、期日までに資料が受け取れなかった上司の立場や状況を尊重することが大切です。そのような目線を持つことで、相談するタイミングも変わってくるでしょう。

アサーティブ・コミュニケーションで良好な関係の構築を

本記事では、アサーティブ・コミュニケーションの実践ポイントや活用事例などを解説しました。

アサーティブ・コミュニケーションは、組織のダイバーシティ化にかかわらず、また、ビジネスシーンに限定することのない、良好な人間関係を築くための基本的な「心構え」と言えるのではないでしょうか。

ここでご紹介した方法やポイントに注意しつつ、ぜひ効果的なアサーティブ・コミュニケーションを仕事や実生活に取り入れ、円満なコミュニケーションを実現していきましょう。

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ビズクロ編集部
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