基幹システムをクラウド化するメリット・デメリット|おすすめのサービスもあわせて紹介
システムの老朽化などにより、基幹システムのクラウド化の普及が進んでいます。これまではセキュリティ面のリスクを懸念し導入を躊躇する企業が多い状況でしたが、クラウド環境の進歩により促進している企業が増えているようです。本記事では、基幹システムをクラウド化するメリット・デメリットや、おすすめのサービスを紹介します。
目次
基幹システムはなぜクラウド化するべきなのか?
これまで企業の基幹システムは、オンプレミス型を利用するのが一般的でした。しかし、コスト削減や柔軟に利用できるという理由から、インターネットを介したクラウド型の普及が進んでいます。
また、クラウドに特化したセキュリティ認証である「ISO27017」が整備されたことも、活用が進む要因のひとつです。セキュリティが担保されたクラウドであるかどうかを把握しやすくなったことにより、クラウド化に舵を切る企業が増えています。
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基幹システムをクラウド化するメリット
基幹システムをクラウド化するメリットについて紹介していきます。
ハードウェア導入やメンテナンスが不要
クラウド化することにより、自社でのハードウェアの導入やメンテナンスが不要となります。
これにより、初期費用の削減や保守リソースの削減が期待できます。また、ハードウェアの保管場所も必要なくなり、管理面での負荷が軽減されます。
ネット環境下であればどこでも利用できる
インターネット環境があれば、クラウド化された基幹システムはどこからでも利用可能です。これにより、リモートワークや外出先からでもシステムにアクセスでき、生産性の高い働き方が可能になります。
セキュリティ対策につながる
クラウド型の基幹システムはセキュリティ関連をはじめ、頻繁にアップデートが実施されるため、セキュリティ性を常に最新の状態にしておくことができます。これにより、企業のデータ保護が強化され、安全なシステム運用が可能となります。
BCP対策の一環になる
クラウド化はBCP(事業継続計画)対策の一環となります。災害などの緊急事態でも、クラウド上にデータが保存されているため、事業の継続が可能となります。
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基幹システムをクラウド化するデメリット
基幹システムをクラウド化するさまざまなメリットがある一方で、デメリットがあるのも事実です。ここからはデメリットを紹介していくので、メリットと照らし合わせてみてください。
ネット環境に左右される
クラウド化された基幹システムはインターネット環境に大きく依存します。ネットワークが不安定な場合や接続が途切れた場合、システムの利用が困難になる可能性があります。
そのため、リモートワークや外出先での作業に影響を及ぼすリスクがある点は理解しておきましょう。
ランニングコストがかかる
クラウド型の基幹システムは初期費用が低い一方で、継続的な利用料が発生します。
これはランニングコストとなり、長期的に見るとコストが高くなる可能性があります。また、データ量や利用者数によっては、費用が増加する可能性もあります。
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基幹システムをクラウド化するための手順・方法
基幹システムをクラウド化する上ではいくつかのステップを踏む必要があります。
要件定義
クラウド化を行う前に、まずは要件定義を行います。これには、システムの目的や機能、性能要求、セキュリティ要件などが含まれます。
また、現行システムの機能やデータをどの程度クラウドに移行するかを明確にします。
移行計画の立案
要件定義が完了したら、次に移行計画を立案します。これには、移行のスケジュール、費用、リソース、リスクなどを詳細に計画します。また、移行の方法(例えば、一括移行、段階的移行など)を決定します。
移行作業
移行計画に基づき、実際の移行作業を行います。これには、データの移行、システムの設定、テストなどが含まれます。
移行作業は専門的な知識を必要とするため、必要に応じて専門家に依頼することもあります。
保守・運用
クラウド化後も、システムの保守・運用は継続的に行う必要があります。これには、システムの監視、問題の対応、アップデート、セキュリティ対策などが含まれます。
また、クラウドサービスの特性を活かし、システムのスケーリングや最適化も行います。
基幹システムのクラウド化に成功した事例
ここからは基幹システムのクラウド化に成功した事例について紹介していきます。
株式会社笑顔創造
株式会社笑願創造は、クラウドERPシステム「スマイルワークス」を導入し、販売管理システムの効率化を実現しました。導入の決め手となったのは、請求書の表示項目と請求の消込機能が要件に合致していたことです。
また、無料のトライアル版を試し、帳票類に必要項目が網羅されていることや、売上回収の消込機能で売掛金の管理ができることを確認した上で導入を決定しました。
導入後、請求金額を月別に消込でき、自動的に請求書に反映されるため、複雑になっていた請求業務が楽に処理できるようになりました。さらに、社印の画像データを請求書に印刷できるため、押印の手間が省略でき、業務効率化が進みました。
株式会社キントー
株式会社キントーの基幹システムクラウド化の成功事例は、トヨタファイナンシャルサービスのマルチモーダルモビリティサービス「my route」の全国展開に向けたバックエンドシステムの再構築です。このプロジェクトでは、マイクロサービス化によりシステムの再構築を実現し、開発の高速化を達成しました。これにより、地域のサービス展開スピードを2倍以上に加速することができました。
「my route」の展開エリアの拡大が進むにつれ、拡張性や保守性においてシステム上の課題が浮き彫りとなり、スピード感あるリリースに限界がありました。そこで、マイクロサービス化によるシステム再構築を決断し、オージス総研が開発を支援しました。再構築により、地域リリースまでの期間を2倍以上に高速化することができ、機能追加も容易に対応できる仕組みを実現し、現在も安定稼働しています。
株式会社八天堂
株式会社八天堂は、昭和8年に広島県三原市港町で和菓子店として創業し、その後、西洋文化の浸透とともに「和」から「洋」への変革を遂げ、新しいお菓子を次々と生み出しました。その中で生まれた「くりーむパン」が大ヒットし、パンを冷凍で送るといった通販スタイルを確立し、EC事業も成功しました。
しかし、販売管理業務はシステム化されておらず、自社ECや楽天、Amazon、Yahoo!については、各管理画面から注文確認をするといった管理を行っており、受注が増えるにつれ業務工数も膨れてしまう状況でした。そこで、複数チャネルの管理をクラウドERPシステムで一元管理することで業務効率が上がると判断し、アナログ管理からシステム管理へと舵を切りました。
その結果、キャムマックスというシステムを導入し、複数チャネルの受注データを一つの画面で管理できるようになりました。また、他のシステムとの連携も可能となり、業務効率が大幅に向上しました。特に、ヤマトの送り状システムとの連携により、紛失や入れ間違いなどの事故がなくなり、業務のスムーズ化が実現しました。
おすすめのクラウド型基幹システム
ここからはおすすめのクラウド型基幹システムについて紹介していきます。
1.クラウドERP freee
「クラウドERP freee」は、AIによる自動仕訳機能を搭載したクラウド会計ソフトで、銀行やクレジットカードの明細データ取得から仕訳・記帳までを自動化し、業務工数を大幅に削減します。
SalesforceやKintone、Slackといった外部ツールとの自動連携も可能で、部門をまたぐ業務もスムーズに遂行できます。
提供元 | freee株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 | 経理一元化と月次決算早期化、稟議(ワークフロー)のペーパーレス化、人事労務管理の一元化、リアルタイムな勤怠管理ほか |
URL | 公式サイト |
2.ZAC
ZACはクラウドERPで、業務報告書にて工数登録、仕入・発注登録、見積・請求書作成、経費精算を一つの案件に紐づけて処理できるため、一つの仕事にかかった労務費、経費、売上など業績をまとめて管理できます。また、権限設定が細かくできるのも特徴です。
提供元 | 株式会社オロ |
初期費用 | ZAC初期設定費用:10万円 ※導入支援費用別途 |
料金プラン | ライセンス費用:要問い合わせ 保守費用(データセンター利用料):6万円~/月 |
導入実績 | 900社 |
機能・特徴 | 基幹管理、情報共有、管理会計、外部システム連携、スマートフォン対応ほか |
URL | 公式サイト |
3.Reforma PSA
Reforma PSAは、プロジェクト管理に特化したクラウドERPで、工数の自動集計やプロジェクト原価の自動計算が可能です。導入企業は350社以上で、初期コストは0円、月額は3万円から利用できます。
販売・購買管理から工数・経費管理まで一元化し、あらゆるデータを案件に紐づけて管理することで、正確な案件別収支を“見える化”します。
提供元 | 株式会社オロ |
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
※月額費用は利用機能と利用人数によって変動あり |
導入実績 | 400社以上 |
機能・特徴 | 販売管理、購買管理、勤怠管理、経費管理、経営分析・アウトプット、プロジェクト管理ほか |
URL | 公式サイト |
自社に合うサービスを選定し基幹システムのクラウド化を進めよう
基幹システムのクラウド化は、企業の業務効率化やコスト削減、BCP対策など、多くのメリットをもたらします。しかし、その一方でネット環境に左右されるデメリットも存在します。
また、移行には要件定義から移行作業、保守・運用までの一連の手順を踏む必要があります。成功事例を参考にしつつ、自社のニーズに合ったサービスを選定し、基幹システムのクラウド化を進めましょう。
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