ERPの導入に失敗する原因とは?失敗しないための対策方法
近年、企業からの注目を集めているERP。しかし、ERPの導入では失敗してしまう企業も多いため、自社に適した対策が必要です。そこで本記事では、ERPの導入で失敗する原因や成功させるためのポイントについて解説していきます。
目次
ERP(基幹システム)とは?
ERPは「Enterprise Resource Planning」の略称であり、直訳すると「企業資源計画」のことで、昨今では企業の業務を統合的に管理するためのシステムを指すことも多いです。
日本では「基幹システム」とも呼ばれ、企業の核となる情報システムの一つとして位置づけられています。ERPシステムを導入することで、情報の一貫性の確保、業務効率の向上、意思決定のスピードアップなどを実現できます。
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ERPの市場について
ERPは、1990年代後半から大企業を中心に導入が進み、現在でも市場は右肩上がりとなっています。矢野経済研究所が2022年10月に発表した調査によると、2021年のERPのパッケージライセンス市場は1,278億円と、前年と比べて10.1%増加となりました。
コロナ渦によって企業のデジタル化が進んだことから、ERPを利用する企業は今後さらに増えていくといえるでしょう。また、2020年頃から進んでいるERPのクラウド化は、よりいっそう進展すると見られています。現在はIaaSやPaaSを利用する形態が一般的ですが、今後はSaaSの利用も拡大していくことが予想されます。
[出典:矢野経済研究所「ERP市場動向に関する調査を実施(2022年)」]
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ERPの導入に失敗する原因
ERPは企業に多くのメリットをもたらす一方で、導入が難しいという一面もあります。ここでは、ERPの導入に失敗する主な原因について見ていきましょう。
導入自体が目的となっている
企業の目的や戦略が明確でない場合、ERPの導入そのものが目的となってしまうケースが見受けられます。しかし、ERPは手段であり、目的ではありません。導入後にどのような体制で運用していくのかを決めておかないと、ERPを効果的に活用することが難しくなります。
また、ERPを導入する際は、社員への事前教育や既存業務の効率化など、さまざまな準備を行う必要があります。そのため、目的を明確にして事前準備を進めることが重要です。単に最新のシステムを持つことだけを目的としてしまうと、実際のニーズを満たすことができません。その結果、高額な投資をしても期待される成果を得ることが難しくなるでしょう。
ベンダーに丸投げしている
ERP導入の過程において、ベンダーやコンサルタントにすべてを委ねることはリスクとなる場合があります。確かにベンダーには専門的な知識や経験が豊富にありますが、最終的な業務の実態やビジネスニーズは企業自体が最も詳しいはずです。
導入の際に企業側が主体性を持たずベンダー任せにしてしまうと、最適な設定やカスタマイズが見逃されてしまうこともあるかもしれません。また、運用フェーズに移行した際に、システムに対する理解が不足しているため、トラブルが発生しやすくなります。導入する際は、ベンダーとのコミュニケーションを図りながら協力体制で進めることが求められます。
推進するためのリーダーが決まっていない
ERP導入プロジェクトは、多岐にわたる業務や部署を横断する複雑なプロセスを伴います。このような大規模なプロジェクトを成功に導くためには、専門的な知識を持つリーダーが不可欠です。しかし、導入を進めるためのリーダーが決まっていない場合、方向性の欠如や意思決定の遅れ、各部署間のコミュニケーションの不足などの問題が生じやすくなります。
このような状況では、プロジェクトの遅延やコスト増大、さらには導入失敗のリスクが高まるでしょう。プロジェクトのビジョンを明確にし、関連部署との連携を密に取りながら、全体を統括する存在が必要となります。
導入後の運用チェックを行なっていない
ERPを導入する際は、適切に運用できているかのチェックが欠かせません。導入後の運用チェックや評価を怠ると、システムが本来の目的に沿って機能しているのかを確認することが難しくなります。
このような状況下では、業務効率の低下やデータの不整合、システムの不具合などが生じることも考えられるでしょう。定期的な運用チェックにより、ERPシステムの健全性や業務適合性を確認し、必要な場合には改善策を講じることが求められます。
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ERPの導入を成功させるポイント
ここからは、ERPの導入を成功させるポイントを5つ紹介します。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
自社の抱える課題を明確にする
ERPを導入する際は、まずはじめに自社が抱える課題やニーズを正確に把握することが重要です。システムを導入する前に、業務プロセスの矛盾点や非効率性を明確にし、それに基づいて導入の目的を設定する必要があります。
このような課題の明確化は、システム選定やカスタマイズ、導入計画の策定においても大きな指針となります。また、関連部署やステークホルダーとのコミュニケーションを密に取ることで、実際の業務現場の声や要望を収集し、より現実に即した解決策を模索することが可能となるでしょう。
導入前から従業員に周知させる
ERPの導入は、企業の業務プロセスや組織構造に大きな変革をもたらします。導入をスムーズに進行させるには、事前に従業員へ周知することが大切です。従業員が変更の目的や必要性、及びシステムの利点を理解していれば、変革への抵抗感が軽減され、積極的な協力が期待できます。
また、ERP導入の意義やメリットを十分に伝えることで、従業員のモチベーション向上や新しいシステムへの適応速度が高まるでしょう。導入前の段階での研修を実施し、従業員の疑問や懸念を解消することも重要です。結果として、組織全体が一丸となってERP導入に取り組むことができ、導入の成功確率が向上します。
導入後の運用体制まで想定する
ERPの導入は、システムが稼働し始めるだけで完結するものではありません。実際の効果を実感するためには、導入後の運用体制の構築が非常に重要です。適切な運用体制を事前に想定しておくことで、システムの問題点や改善の余地を迅速に捉え、継続的に最適化を図ることができます。
具体的には、導入後のサポート体制やトラブル対応のフロー、定期的なレビューやアップデートのスケジュールなどを設定しておく必要があります。導入前の段階でこれらの運用体制を明確にしておくことで、長期的な視点でのERP活用が実現し、持続的なビジネス価値を生み出す土壌を整備できるでしょう。
ベンダーに依存しない運用体制を構築する
ERPシステムの導入において、ベンダーのサポートや知識は不可欠です。ただし、長期的な運用を考慮すると、ベンダーに過度に依存することは避けるべきです。
たとえば、仮にシステムのカスタマイズやトラブル対応が必要となった際に、担当者がコントロールすることが難しくなるといったことが考えられるでしょう。そのため、内部の人材を育成してERPへの理解を深めることが重要です。社内のERP専門チームを設立し、継続的な研修や情報共有を行いましょう。
ERP導入プロジェクトを推進するリーダーを選任する
ERPの導入プロジェクトを効率的に推進していくには、専門的な知識を持っていて、かつリーダーシップを発揮できる存在が不可欠です。リーダーは、導入のビジョンや方針を明確に示し、関連するすべてのステークホルダーを一つの方向へ導く役割を担います。
リーダーがしっかりとした指針を示すことで、各部署や担当者の取り組みが一貫性を持ち、効率的に進行できるようになります。また、発生する問題や障害に対して迅速な判断や対応が求められるため、経験豊富で冷静な判断力を持つ人物の選任が望ましいでしょう。
ERPの失敗事例から自社に最適な対策を学ぼう
ERPの導入は多大な費用と時間を要しますが、成功すれば組織の業務効率や経営の質を大きく向上させることができます。ただし、導入前の段階からどのような体制で運用していくかを明確にしておくことが重要です。
また、導入後も運用に関するチェックを行い、問題があれば改善していく必要もあります。本記事で紹介した失敗事例や成功させるためのポイントに留意しながら、自社に最適なシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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