健康管理システムとは?導入するメリットや目的・搭載している機能を解説
従業員の健康管理は、社員が増えるほど徹底した管理が難しくなります。このような場合に有効なのが、健康管理システムの導入です。本記事では、健康管理システムとは何か、導入する目的やメリットなどについても解説します。
目次
健康管理システムとは
健康管理システムとは、社員や職員の健康診断結果を一元管理するシステムです。
企業や団体においては、社員一人ひとりの健康状態を適切に管理することで、早期発見と迅速な対応が行えるようになります。
健康管理システムを導入することで、人事労務担当者の負担軽減と事務コストの削減が期待できるため、近年導入する企業が増加しています。
健康管理システムの種類
健康管理システムには、クラウド型とオンプレミス型の2種類があります。
クラウド型はオンライン上のサーバーを使用する性質上、導入やメンテナンスがしやすいのが特徴です。そのため、買い替えや人件費などのコスト削減が期待できます。ただし、月額料金で利用するのが一般的なため、利用が長期になるほどランニングコストがかかる点に注意しましょう。
一方、オンプレミス型はパッケージ型とも呼ばれ、自社でサーバーを用意してインストールする買い切り型です。柔軟なカスタマイズが可能な反面、導入時の初期費用や運用・管理の手間やコストがかかります。
健康管理システムの費用相場
健康管理システムの費用相場は、クラウド型とオンプレミス型(パッケージ型)で大きく異なります。それぞれの費用相場は以下のとおりです。
【クラウド型】
- 初期費用:約60,000円〜60万円程度
- 月額費用:社員1人あたり100〜500円程度
【オンプレミス型】
- 初期費用:約100万円〜300万円程度
- 月額費用:約30万円〜35万円程度
上記は、あくまで目安の金額です。費用面だけで見れば、社員が1,000人を超えるような規模の場合はオンプレミス型の方が安価になる傾向があります。クラウド型は初期費用こそ安いものの、選ぶサービスによっては社員数に比例して月額費用が増加するため注意が必要です。
健康管理システムに搭載されている主な機能
ここでは、健康管理システムに備わっている主な機能を5つ紹介します。
健康診断の個人データ管理機能
個人データ管理機能では、社員の個人情報や健診結果、保健指導履歴などを管理できます。
特殊健診・特定保健指導など、さまざまな項目を設定できるだけでなく、健康診断の予約管理や受診漏れのサポート、健診結果の分析やリスクの把握も可能です。
健康管理システムを利用することで、効率的に社員の健康状態を把握できるようになります。
面談やストレスチェック機能
健康管理システムは、労働安全衛生法のストレスチェック制度に対応しているものもあります。
Web上で社員にストレスチェックを受検してもらい、その結果を分析して産業医面談が必要な人の選定・抽出が可能です。面談の予約機能では、社員が自ら空き状況を確認してスケジュール調整もできるようになっています。
管理業務の工数削減だけでなく、高ストレス者の早期発見やフォローアップが効率化され、労働環境全体の改善が見込めるでしょう。
▷ストレスチェックとは?義務化された背景や目的・実施方法を簡単に解説
健康情報の分析と評価機能
勤怠記録などの健康データを収集・管理・分析し、組織や個人の健康リスクを見える化する機能もあります。
一人ひとりの健康リスクの分析や重大疾病の予測が可能になり、過重労働への警告や労働環境・勤務状況の改善など、対策が速やかに行えるようになるでしょう。
健康状態の管理機能
健康管理システムには、スマホやPCなどから社員の健康状態を入力できるものもあります。
入力された内容はシステムによって自動集計され、グラフや一覧表などで出力可能です。これにより、管理者が社員の体調不良や健康不安をいち早く把握でき、迅速な対応が行えます。
コロナ禍によって社員の健康状態の把握が重視されるようになった昨今では、このような機能が備わったシステムも登場しているようです。
健康状態のサポート機能
健康管理システムのなかには、社員の行動変化を促すサポート機能が備わっているものもあります。
担当スタッフや医師から指導があったとしても、本人の行動が変わらなければ健康リスクは改善されません。そのような点に着目し、専用アプリで運動の習慣化を促したり、食事や栄養に関するセミナーを視聴できるなど、さまざまな工夫がされています。
健康管理システムを導入するメリットや目的
ここからは、健康管理システムを導入する目的や、得られるメリットをみていきましょう。
社員の健康状態を把握・管理できる
健康管理システムの導入により、社員の健康情報を一元管理できるようになります。
社員の健康情報をデータ化し、点在する健康情報を一箇所にまとめられるため、全体を把握することも可能です。健康リスクの高い再受診対象者や、メンタルケアが必要な社員の抽出も可能になり、最小限の労力でフォローアップできるようになるでしょう。
健康管理に関する事務作業を効率化できる
健康管理システムを導入することで、健康管理業務に関する事務作業を大幅に効率化できます。具体的には以下のような作業です。
- 紙による検診結果の入力・管理
- 健診期間の違いによる検診結果のフォーマットや判定値の統一
- ストレスチェックの実施状況・結果の管理
- 労働基準監督署への報告書や関係書類の作成
これらの業務をすべて手作業でやるには、途方もない労力と時間を要します。また、どんなに注意してもミスが発生することはあるでしょう。入力や管理に追われている状態では、本来の目的である社員の健康管理を行うのは困難です。
このような煩雑な作業や課題をまとめて解決してくれるだけでも、健康管理システムを導入するメリットは大きいといえるでしょう。
健康状況を分析できて離職や休職を防げる
健康管理システムによる管理体制は、社員の健康状態悪化による離職や休職を防げるメリットもあります。
はじめは些細な変化でも、対処が遅れたり放置すると健康状態を損ない、離職や休職に発展することも珍しくありません。
健康管理システムがあれば、社員一人ひとりの健康状態を可視化し、リスクが顕在化するまえにアラートを鳴らすことも可能です。
異常の早期発見・早期対応ができれば、このような致命的な事態を未然に防げるでしょう。社員数が多ければ多いほど、その恩恵は大きくなるはずです。
法改正に対応しやすい
健康管理システムのなかには、定期的なアップデートで法改正を反映するものもあります。
課題衛生法などの関連法令は過去に度々変更されており、企業による社員の健康管理は年々厳しくなっているのが現状です。このような法令を逐一把握し、社内システムに反映させるには、相当の時間と労力が必要になります。
このような変更に自動的に対応してくれるのは、健康管理システムならではのメリットといえるでしょう。
医師との連携を強化できる
健康管理システムの導入は、医師との連携強化にも役立ちます。
社員の健康状態や診断結果を一元管理できることで、産業医や保健師への情報共有が容易になります。システムによっては、産業医や保健師専用の管理画面が用意されているものもあり、同一システムで情報や業務の共有も可能です。
医師と密に連携が取れていれば、高リスク者への対応がさらにスムーズになり、早期改善も期待できます。
健康管理システムを導入するデメリット
健康管理システムを導入することは、メリットばかりではありません。ここでは、デメリットを3つ解説します。
機能を上手く使いこなせない
健康管理システムを選定する際、豊富な機能が魅力的に見えることもあるでしょう。しかし、使いこなせなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
また、多機能なシステムは費用もかさむ傾向があるため、運用してみて使わない機能ばかりだったという事態は避けたいものです。
自社が解決したい課題や、それを実現するために本当に必要な機能を明確にし、基準を持ってシステムを選定することが大切です。
費用対効果を感じにくい
社員の体調の改善や悪化の防止、それにともなう生産性の向上は数値ではっきり表現できるものではありません。そのため、費用対効果を実感しにくいのが難点です。
残業時間や有給消化率のように数値化できる指標もありますが、健康管理システムは費用対効果を基準に導入を検討するのは困難でしょう。それよりも、経営層が健康経営や社員の健康管理の重要性を正しく認識していることの方が重要です。
システムの選定が難しい
健康管理システムには多くの種類があり、機能や費用もさまざまです。そのため、自社にあったシステムを選定するのが難しい場合があります。
単純に種類が多く選択できなかったり、自社に必要な機能が特定できないケースなどです。この場合は、従業員数やコストのほか、自社の課題を解決する機能を備えているかを基準に選定するとよいでしょう。
一方で、費用対効果がはっきり示せず社内稟議がとおらないケースもあります。この場合は社員の健康状態が秘めているリスクや、経営視点でのメリットを訴求するなどの工夫が必要です。
健康管理システムの比較ポイント
健康管理システムを選定する際に知っておきたい、比較ポイントを4つ紹介します。
目的に適した機能が搭載されているか
健康管理システムの導入は、自社の課題を解決するためのものであり、その目的に適した機能が搭載されているかが重要です。
コストの安さや豊富な機能も魅力ですが、必要な機能を備えているかという観点で比較するとよいでしょう。
ツールの操作性が複雑ではないか
健康管理システムは、操作性が重要なポイントになります。
操作性が悪いものはせっかく導入しても担当者のストレスになる可能性が高く、うまく定着しなければ十分に活用するのは難しいでしょう。
担当者がストレスなく操作でき、より使いやすくカスタマイズできるかも考慮する必要があります。
データを連携する際の選択肢が豊富か
自社で使用している既存システムと、問題なくデータを連携できるかもチェックすべきです。
人事システムや勤怠システムとスムーズに連携できれば、健康管理システムを導入した際のデータ移行・入力の手間が大幅に省けます。社員数が多いほど移行作業のボリュームも大きくなるため、各システムの連携可否は事前に確認しておきましょう。
面談機能が搭載されているか
提携している産業医や産業保健師がいたり、健康管理の専門部署がある場合、面談管理機能の有無で業務効率が大きく変わってきます。
面談候補者の選定・カルテの閲覧・面談予約・記録など、ひとつのシステムで完結できれば業務の効率化につながるでしょう。
▷【2023年最新】おすすめの健康管理システム16選比較|選び方とメリット・デメリット
おすすめの健康管理システム
ここからは、導入を検討している企業におすすめの、健康管理システムを5つ紹介します。
Carely
Carelyは、複数の有名大手企業も導入しているクラウド型の健康管理システムです。
国際規格のセキュリティ認証を取得しているセキュリティの強さと、マニュアルなしで誰もが扱えるシンプルな操作性が人気です。
一人ひとりの健康状態はもとより、組織全体の健康状態を一画面でグラフ表示できます。外部システムとの連携やPDF・CSVのインポートにも対応しているため、バランスの取れた健康管理システムと言えるでしょう。
提供元 | 株式会社iCARE |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
mediment
medimentは、2022年に「業務効率化に導入したいクラウド健康管理システム」で1位に選ばれています。医療機関や学校法人などにも採用されている、実績豊富なシステムです。
年度別・部署別など、さまざまな角度から健康状態を分析し、ピンポイントで改善点を判別。これにより、問題解決に向けた対応を検討できます。
業務効率化の面では、約90%の作業軽減が可能です。また、多言語にも対応しているため、外国人の従業員もカバーできます。
提供元 | メディフォン株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
Worker Connect
Worker Connect(ワーカーコネクト)は、作業現場の安全管理・リスク軽減を目的としたウェアラブルIoTソリューションです。
「ウェアラブル」とは身につけて持ち運べるデバイスを指し、人に装着した端末から身体情報を取得できる画期的な仕組みです。
これにより、遠隔で離れた場所にいる社員の健康状態の検知・管理が行えます。災害や工事現場などで広く活用されている健康管理システムです。
提供元 | センスウェイ株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 16,258円(税込)/月~ |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
newbie
newbieは、ストレスチェックと健診結果のデータ化・分析がメインのクラウド型健康管理システムです。多くの有名大手企業でも導入されています。
最短1週間でストレスチェックを実施でき、健康診断業務の代行も行っているのが特徴です。問診や面談記録など、必要な機能は一通り揃っていますが、比較的シンプルなシステムとなっています。
豊富な機能や複雑なシステムは必要ないが、低コストで包括的に管理したいという企業におすすめです。
提供元 | 株式会社マイクロウェーブ |
初期費用 | 【ストレスチェックのみ】 550円(税込)/1ユーザー(1,000人以上は一律55万円(税込)) 【健康診断のみ】 【ストレスチェック+健診】 【検診業務代行セット】 |
料金プラン |
※最低利用期間:1年間 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
バリューHR
バリューHRは、独自開発のシステムとサービスを組み合わせ、企業の健康管理をワンストップでサポートするトータルサービスです。
健診の予約やデータ管理のシステム、オンライン指導やインセンティブプログラムなど、さまざまなツールを搭載しています。企業の状態や目的にあわせて、柔軟にカスタマイズできる点が大きな特徴といえるでしょう。
提供元 | 株式会社バリューHR |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
健康管理システムで社員の健康状態を管理しよう
健康経営を実現するためにも、社員の健康管理の強化が急務となっています。
社員の不調は放置しつづけると深刻な事態に発展することもあり、貴重な人材の流出につながるリスクも孕んでいます。とはいえ、収集・分析すべきデータが多く、活用するには専門的な知識が必要です。
健康管理システムは、そのような課題をまとめて解決するだけでなく、企業単位のリスクを軽減する補助ツールです。健康管理システムをうまく活用して、コストや作業ボリュームを軽減しつつ、健康経営を実現していきましょう。
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