ストレスチェックとは?義務化された背景や目的・実施方法を簡単に解説

最終更新日時:2023/06/14

健康管理システム

ストレスチェックとは

近年では社会的にも問題視されている職場でのストレス。そんな中、労働安全衛生法の改定により導入されたストレスチェックとは一体どのような制度なのでしょうか。本記事では、そんなストレスチェックについて、義務化した目的や具体的な実施方法など詳しく解説します。

ストレスチェックとは?

ストレスチェックは、企業などの組織において労働者が職場でストレスを受けているかを定量的に評価するための取り組みです。

職場におけるストレスの原因を特定し改善策を講じることで、労働者のストレス軽減や職場環境の改善を図ることを目的としています。

現代社会においてはストレスが原因でうつ病や不安障害などのメンタルヘルスの問題が深刻化していることもあり、ストレスチェックの重要性は日々高まっているのが現状です。

ストレスチェックの対象者

ストレスチェックは、基本的に会社で働いている全従業員が対象です。ただし、以下の2つの条件を満たす場合には、対象から除外されることがあります。

  • 雇用期間が短い場合
  • 従業員数が少ない場合

雇用期間が1ヶ月未満・事業所の従業員数が50人未満の場合はストレスチェックの対象から除外されます。ただし、労働者の希望があれば実施する必要がある点には注意しておきましょう。



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ストレスチェックが義務化された背景

ストレスチェックが義務化された背景は主に2つです。

  • 精神障害に関する労災請求件数の増加
  • 仕事や職業でのストレスが増加傾向

ここでは、それぞれを詳しく見ていきましょう。

精神障害に関する労災請求件数の増加

ストレスチェックが義務化された背景には、労働者のメンタルヘルスに関する問題が深刻化して労災請求件数が増えているためです。

ストレスチェックの実施は、職場におけるストレスの原因を特定するのに役立ち、改善策を講じられるため、労働者のメンタルヘルスを保護することに期待できます。

仕事や職業でのストレスが増加傾向

ストレスチェックが義務化された背景には、仕事や職業に関するストレスが増加傾向にあることがあります。具体的には、以下のような原因が挙げられます。

  • 雇用環境の変化
  • 労働時間の長時間化
  • 職場の人間関係

これらの要因により、仕事や職業に関するストレスが増加していることをうけ、ストレスチェックを義務化して職場のストレスの原因を特定し、改善策を講じることで労働者のメンタルヘルスを保護することを目的としています。

ストレスチェック義務化の対象企業

ストレスチェックの義務化は、労働者のメンタルヘルス保護を目的とし、一定の要件を満たす企業に対して義務付けられています。ここでは、ストレスチェックが義務化されている対象の企業について紹介します。

義務化対象の企業条件

ストレスチェックの義務化対象になるのは、労働者が50人以上の企業です。

また、対象企業においては、常勤・非常勤・アルバイト・パートタイム・派遣社員など、雇用形態にかかわらず全ての労働者がストレスチェックの対象となります。

ストレスチェックは医師や保健師、その他の厚生労働省令で定められた者によって実施する必要があります。また、ストレスチェックの結果に応じて、必要な改善策を講じなければなりません。

ストレスチェック制度の現状

2020年度には、全事業所のうち8割以上が実施しているものの、中小企業や非正規雇用者の実施率は低い傾向にあります。

ストレスチェックの結果に基づいて、労働環境の改善やメンタルヘルス支援の取り組みを行っている一方で、改善策を実施しない企業も存在している現実が結果から見えてきます。

そのため、ストレスチェック制度の充実や、労働者のメンタルヘルスを保護するための総合的な支援策の必要性が叫ばれています。

[出典:厚生労働省「ストレスチェック制度に関する取組状況についての実態把握」]

ストレスチェックを実施しない場合の罰則

労働安全衛生法には直接的な罰則の規定がないため、未実施でも罰せられることはありません。ただし、ストレスチェックを実施したにもかかわらず、労働基準監督署に対して報告を怠った場合は、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

なお、従業員が50人未満の企業はストレスチェックの義務はなく、報告をしなくても罰せられません。

[出典:e-Gov 労働安全衛生規則 第五十二条の二十一]

[出典:e-Gov 労働安全衛生法 第六十六条の十・第百二十条]

ストレスチェックの具体的な診断方法

ストレスチェックの具体的な診断方法は3つあります。

  • 調査票に基づく点数評価
  • アンケートの項目・内容
  • 高ストレス者の選定基準

それぞれ詳しく見ていきましょう。

調査票に基づく点数評価

ストレスチェックにおける調査票に基づく点数評価は、従業員が回答した質問紙の得点を集計し、ストレスリスクの程度を評価する方法です。

一般的にストレスチェックの調査票には、ストレスの原因となる職場環境やストレス反応に関する質問が含まれます。従業員は、自己評価に基づいて各質問に対する回答を選択しなければなりません。

得点は質問紙の設計に基づいて、各質問に割り当てられた点数に基づいて計算されます。

点数評価の結果でストレスレベルが高い従業員には、個別面接やカウンセリングなどの対策が必要です。また企業側は、ストレスを引き起こす職場環境の改善や、ストレス対策の取り組みの強化など、組織全体での取り組みが求められます。

アンケートの項目・内容

ストレスチェックのアンケートには、「仕事の内容」「人間関係」「組織・環境」「個人的なストレス反応」といった項目が含まれます。「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3つに関する項目は、アンケートに必ず入れなければなりません。

なおこれらの質問は、従業員がストレスを感じる要因を特定するために作成されます。従業員がストレスを感じやすい要因を正確に把握し、ストレス対策を講じるための情報を得ることが重要です。

高ストレス者の選定基準

ストレスチェックでは、回答内容に基づいて高ストレス者を選定する基準があります。具体的な基準は企業によって異なる場合が多いですが、一般的には以下のような項目が考慮されます。

  • ストレス反応の程度
  • 仕事とプライベートのバランス
  • 障害の有無
  • 仕事の内容

これらの基準を用いてストレスの高い従業員を選定し、適切なストレス対策を講じることが重要です。選定基準は企業によって異なるものの、基本は厚生労働省が策定したストレスチェック実施マニュアルに基づいて行われることが望ましいとされています。

ストレスチェックを実施する際の流れ・やり方

ここからはストレスチェックを実施する際の流れ・やり方について紹介していきます

導入前の事前準備

従業員や労働組合などに対して、ストレスチェックの目的や方法・プライバシー保護の重要性などについて説明しましょう。また、ストレスチェックを実施するためのアンケートの作成やアンケートを回収する方法、回答者のプライバシーを保護する措置なども必要です。

さらに、ストレスチェックの実施にあたっては、企業内にストレスチェックを担当する人材を配置しなければなりません。

実施者の選定

ストレスチェックを実施する際、適切な実施者の選定が重要です。実施者はストレスチェックの目的や方法に十分な理解を持ち、適切な指導やアドバイスを求められます。

50人以上の従業員を有する事業場においては、衛生委員会の設置が労働安全衛生法第十八条および労働安全衛生法施行令第九条において義務づけられています。事業者が任命する次の委員は労働安全衛生法にて定められたメンバーで構成しなければなりません。

2 衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。

一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者

二 衛生管理者のうちから事業者が指名した者

三 産業医のうちから事業者が指名した者

四 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者

[引用:e-Gov 「労働安全衛生法 第十八条二項」より]

ストレスチェックの実施には、企業にストレスチェックをする担当者の設定が必要です。担当者は、ストレスチェックの実施計画を立て実施者を選定し、結果の集計や分析を行わなければなりません。担当者になる人物は、ストレスチェックに関する専門的な知識や経験を持ち、適切な判断をできることが望ましいでしょう。

ストレスチェックの実施

ストレスチェックの実施は、アンケート方式が一般的です。

なお、アンケートの回答は個人情報保護の観点から機密扱いされます。そのため、回答者が特定できないように、適切な措置を講じることが必要です。

結果の報告と説明

ストレスチェックの結果は、当該労働者に直接通知されます。通知に含まれる判断結果は、「個人のストレス内容」「高ストレスに該当するか否か」「面接指導の対象か」です。

評価方法や評価基準については、実施者の意見やアドバイス・衛生委員会での審議などを経た上で事業者が決断します。

なお、結果の通知にあたっては、迅速かつ適切な対応が必要であり、個人情報保護に十分注意しなければなりません。

面接指導の実施

ストレスチェックの結果、高ストレス者と判断された労働者に対しては、面接指導を行うことが求められます。

面接指導の目的は、ストレスの原因や症状を把握し、ストレス解消の方法や改善策などを提示するためです。

面接指導の実施にあたっては、事前に面接指導者が受講した研修や専門的な知識が求められます。具体的には、ストレスに関する知識・面接技術・カウンセリングスキルなどが必要です。

結果の集計・分析

ストレスチェックの実施後は、アンケート結果を詳しく分析して各労働者のストレス状態や職場全体の傾向を把握します。

集計・分析の方法は、手動で行うこともできますが、多くの場合は専用のソフトウェアを用いて自動的に行います。ソフトウェアによっては、アンケート結果を集計するだけでなく、グラフやチャートに変換して可視化することも可能です。

情報提供を受けた事業者は、高ストレス状態の組織や業務量・質の負担が高い事業場や組織と判断された場合、職場環境の改善に取り組む必要があります。

労働基準監督署への報告

ストレスチェック報告書には、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」という正式名称があります。報告時には、厚生労働省が指定する報告書の書式を使用しなければなりません。

報告書の作成に際しては、以下の点に注意が必要です。

  • ストレスチェックを複数月にわたって実施した場合、最終月の結果を記載すること。
  • 報告書提出時期は、事業所における事業年度の終了後など、事業所ごとに自由に設定できること。

また、年間を通じて部署ごとにストレスチェックを実施する事業所の場合は、以下の点を報告する必要があります。

  • 実施暦年1年間に対する対象受験者数の合計数を記載すること。
  • 受検者数に対して面接指導を受けた労働者の人数の報告をすること。

なお、報告書には個人情報が含まれるため、プライバシー保護には十分注意しましょう。

ストレスチェックの結果を保管する際の注意点

ストレスチェックの結果を保管する際の注意点は2つあります。

  • 記録の保管期間は5年間が理想
  • セキュリティ対策の実施は怠らない

それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。

記録の保管期間は5年間が理想

ストレスチェックの結果を保管する際には、個人情報保護法に基づき慎重な取り扱いが必要です。報告書などに記載されている個人情報は適切な管理が必要であり、不正アクセスや紛失・漏洩などに注意しなければなりません。

また、ストレスチェックの結果は最低5年間の保管義務があります。

保管期間は最低限の期間であり、法律で明示的に規定された期間であるため、その期間を超えたら適切に廃棄しなければなりません。また廃棄の方法も、個人情報を保護するために、適切な方法で行う必要があります。

セキュリティ対策の実施は怠らない

ストレスチェックの結果は、個人情報保護の観点から、適切なセキュリティ対策が必要です。保管場所はアクセス制限がかけられ、不正アクセスや盗難・紛失や漏洩などのリスクから保護されていることが望ましいです。

具体的にはストレスチェックの結果を記載した書類は、鍵のかかった書庫やロッカーに保管し、原則として機密性が高い情報として扱うなどが挙げられます。

ストレスチェックの目的や実施方法を押さえておこう

ストレスチェックは労働者の心理的負担を評価して健康障害を予防するための制度であり、事業者が労働者のストレスを定量的・定性的に把握し、職場環境の改善につなげることを目的としています。

従業員がストレスに気づかないことで様々なリスクが起きるので、ストレスチェックによって従業員の変化に気づけるようにしましょう。

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