日給制とは?日給月給制との違いやメリット・デメリットを解説

給与計算には、日給をベースとした日給制により支給額を算出する方法があります。日給制は、時給制や月給制と異なる計算方法があり、労働基準法にもその規定があります。ここでは、日給制、日給月給制、月給日給制について、その計算方法やメリット・デメリットなどを紹介します。
目次
日給制とは
1日当たりの金額がきまっており、出勤日数に応じて支給する給与を日給制といいます。
例えば日給1万円で出勤日数が10日のとき、給与は日給1万円×10日=10万円です。日給制は、ほかに日給月給制や月給日給制などがあります。
給与計算では、どのような制度で計算するかを把握することが大切で、それぞれの用語を正確に理解する必要があります。ここでは、日給制ごとの違いや月給制および時給制との違いなどを紹介します。
日給月給制との違い
日給制のなかで、1ヵ月当たりの総額があらかじめ決まっている給与形態を日給月給制といいます。日給制は出勤日数が増えると給与も増えるのが特徴です。
しかし、日給月給制は1ヵ月当たりの給与が決まっており、その給与から出勤日数の少ない分の額を減らし支給します。
たとえば、早退や遅刻、欠勤などが給与を減算するときにあてはまります。ここが日給制と日給月給制との違いです。
月給制との違い
月給制は、1ヵ月当たりの給与が決まっており、原則として出勤日数や、早退や遅刻、欠勤などに関係なく支給するのが特徴です。
しかし、会社によっては、就業規則で定められた所定日数を出勤しなかったとき、その月の給与を減算して支給することがあります。また、月給制の従業員に通勤手当が支給されているとき、欠勤した分の通勤手当を支給しないことがあります。
月給制は会社の所定日数を出勤していれば給与の変動がないため、これが日給制と月給制の違いです。
時給制との違い
時給制は、1時間当たりの給与が決まっており、出勤した時間に応じて支給するのが特徴です。時給制は、タイムカードにより分単位で給与を計算するのが一般的で、パート社員やアルバイトなどが該当します。
日給制も時給制も、労働時間や勤務時間をかけて計算しますが、時給制では時給単価に出勤時間をかけて給与計算をするため、ここが日給制と時給制の違いです。
月給日給制との違い
月給日給制は、日給月給制と同じく1ヵ月当たりの給与が決まっており、早退や遅刻、欠勤などがあったとき、1ヵ月当たりの給与からその分の給与を減らすのが特徴です。
しかし月給日給制では、1ヵ月当たりに支給される諸手当、たとえば役職手当や職務手当などは日割りされて減額されません。ここが日給制を月給日給制の違いです。
完全月給制との違い
完全月給制は、月当たりの給与が固定されており、早退や遅刻、欠勤などがあるときでも給与を減らすことはありません。そのため、日給月給制、月給日給制、そして日給制とはここが違いになります。
日給制のメリット・デメリット
完全月給制では、1ヵ月あたりの給与に変動がないため、会社に出勤しない日があっても給与は支給されます。しかし、日給制にはいくつかの種類があり、給与額も変動し一定ではありません。
ここでは、日給制のメリットとデメリットを紹介します。
日給制のメリット
日給制は出勤日数が増えるにつれ、給与の支給額が増えます。月給制は出勤日数が増えても給与は増えません。
たとえば、日給制の従業員が1ヵ月に20日出勤し、月給制の従業員と同じ給与のとき、日給制の従業員が25日出勤する方が月給制の従業員より給与は多くなります。
月給制の従業員は、20日出勤しても25日出勤しても給与に変動はありません。これが日給制のメリットです。
日給制のデメリット
日給制は出勤日数が少なくなると、給与の支給額は減ります。月給制は出勤日数が減っても給与は減りません。
たとえば、月20日に出勤し月給者が1ヵ月の給与を支給されるとき、月給者は19日出社しても20日分の給与を支給されますが、日給者は19日分の給与しか支給されません。これが日給制のデメリットです。
日給制の給与計算方法
日給制の給与計算方法は、日給に出勤日数を乗じて総額を集計し、他に支給する手当があれば加算し支給します。賃金の支給に関する取り決めは就業規則に記載が必要です。
ここでは、日給制の給与計算についてや日給月給制について、職務手当を支給しているときの計算方法を紹介します。
欠勤のとりきめは就業規則に記載が必要
賃金に関する計算および支払の方法は、就業規則に記載しなければなりません。これを絶対的必要記載事項といいます。給与から控除する金額が発生するときは、必ず就業規則にその計算方法が記載されていることを確認しましょう。
月給と日給の場合の控除方法
厚生労働省労働基準局監督課より、モデル就業規則が公表されています。その条文に、欠勤での控除の方法が記載されています。
第43条 (欠勤等の扱い)1 欠勤、遅刻、早退及び私用外出については、基本給から当該日数又は時間分の賃金を控除する。
2 前項の場合、控除すべき賃金の1時間あたりの金額の計算は以下のとおりとする。
(1)月給の場合 基本給➗1か月平均所定労働時間数
(1か月平均所定労働時間数は第38条第3項の算式により計算する。)
(2)日給の場合 基本給➗1日の所定労働時間数
この方法により、次のとおり日給月給制と月給日給制の欠勤控除額を計算してみます。
日給月給制の給与計算方法
日給月給制では、1ヵ月の給与総額が決まっており、従業員が遅刻や早退、欠勤をしたときに、総額(基本給+職務手当)から日給により計算した金額を1ヵ月の給与から減算します。特に、職務手当を加算した総額から計算することに注意が必要です。
1度日給を時給に換算してから金額を求めます。
- 基本給:20万円
- 職務手当:2万円
- 1ヵ月の所定労働日数:20日
- 1日の所定労働時間:8時間
このときの給与計算方法を、以下のとおり紹介します。
遅刻(早退)したときの給与計算方法
日給月給制の従業員が1時間遅刻(早退)したときの控除額は、1度時給に換算してから金額を計算します。
・控除額
=1ヵ月の給与総額÷1ヵ月の所定労働時間×遅刻時間
=(20万円+2万円)÷(20日×8時間)×1
=1,375円
・1ヵ月の給与
=22万円-1,375円
=21万8,625円
欠勤したときの給与計算方法
日給月給制の従業員が1日欠勤したときの控除額は、日給額より計算します。
・控除額
1ヵ月の給与総額÷1ヵ月の所定労働日数×欠勤日数
=(20万円+2万円)÷20日×1日
=11,000円
・1ヵ月の給与
=22万円-11,000円
=20万9,000円
月給日給制の給与計算方法
月給日給制では、1ヵ月の給与総額が決まっており、従業員が遅刻や早退、欠勤をしたときに、総額から日給により計算した金額を1ヵ月の給与から減算します。ただし、職務手当は減算しません。
- 基本給:20万円
- 職務手当:2万円
- 1ヵ月の所定労働日数:20日
- 1日の所定労働時間:8時間
このときの給与計算方法を、以下のとおり紹介します。
遅刻(早退)したときの給与計算方法
月給日給制の従業員が1時間遅刻(早退)したときの控除額は、日給月給制と同じく1度時給に換算してから金額を計算します。ただし、職務手当は控除しません。
・控除額
=1ヵ月の給与総額÷1ヵ月の所定労働時間×遅刻時間
=20万円÷(20日×8時間)×1
=1,250円
・1ヵ月の給与
=22万円-1,250円
=21万8,750円
欠勤したときの給与計算方法
月給日給制の従業員が1日欠勤したときの控除額は、日給額より計算します。ただし、ここでも職務手当は控除しません。
・控除額
1ヵ月の給与総額÷1ヵ月の所定労働日数×欠勤日数
=20万円÷20日×1日
=10,000円
・1ヵ月の給与
=22万円-10,000円
=21万円
日給制の時間外手当の給与計算方法
日給制の従業員の給料を支払うとき、時間外手当の給与計算には定めがあります。給与は従業員の生活に密着しているので、間違いは許されません。また、法律にも定めがあるため、給与計算を間違えると法律により罰せられます。
ここでは、日給制の時間外手当について、残業手当、休日残業手当、深夜・早朝手当などの3つの給与計算方法を紹介します。なお、日給制の残業手当は日給を時給に換算し、時給に残業時間を乗じて計算します。
日給制の残業手当の計算方法
「残業手当」とは、法定労働時間をこえて労働した時間に対して支払われる給与をいいます。その金額は基本給を1.25倍して計算した額です。法定労働時間とは、1日8時間以内(休憩を除く)、かつ1週間40時間以内の時間をいいます。
たとえば、日給8,000円で1時間残業したときの残業手当は以下になります。
- 日給8,000円÷8時間×1時間×1.25⁼1,250円
なお、1ヵ月中に60時間を超えて労働したときは、基本給を1.5倍して計算した額を支給しなければなりません。また、法定労働時間のなかで会社が決めた労働時間を所定労働時間といい、就業規則に支払の記載があるときを除き、割増賃金を支払う必要はありません。
日給制の休日残業手当の計算方法
「休日残業手当」とは、労働基準法に定めのある法定休日に出勤したときに支給する割増賃金です。その金額は基本給を1.35倍して計算した額です。
たとえば、日給8,000円で1時間残業したときの休日残業手当は以下になります。
- 日給8,000円÷8時間×1時間×1.35⁼1,350円
なお、法定休日は4週に4日以上とする規定があり、土曜日や日曜日でなく会社の定める休日であることに注意が必要です。
日給制の深夜・早朝手当の計算方法
「深夜・早朝手当」とは、労働基準法に定めのある、午後10時〜翌朝5時に出勤したときに支給する割増賃金です。その金額は基本給を1.25倍して計算した額です。
たとえば、日給8,000円で1時間、深夜・早朝勤務したときの支給額は以下になります。
- 日給8,000円÷8時間×1時間×1.25⁼1,250円
なお、この手当は残業手当と休日残業手当に加算し、重複した金額を支給しなければならないので注意が必要です。もし所定労働時間を超えて深夜・早朝勤務したときは、1.5倍の率を乗じた額を支給します。
まとめ
日給制には、日給に出勤日数を乗じて計算する方法と、月給が一定で月給のなかから遅刻・欠勤、早退などと諸手当を該当分だけ減算する日給月給制、さらに日給月給制から諸手当の該当額を減算しない月給日給制の3つがあることをご説明しました。
もし、給与から控除する金額があれば、就業規則には必ずその計算方法を記載する必要があります。さらに、日給制の時間外給与の計算方法も紹介しました。給与計算は、従業員の生活に密接に関係し、労働基準法にも定めがあるため、間違いは許されません。
この記事を参考に、正確な日給制の給与計算を行ってください。
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