介護保険とは?基礎知識や仕組み・介護保険料の給与計算方法を解説
介護保険について、基礎知識や介護保険料の給与計算方法、保険料納付期限など解説します。介護保険という言葉を知っていても、いつから納めるものなのか、いつから利用できるようになるのか、詳細を知らないという人も多いでしょう。介護保険は自分が障害をもったときや高齢になった際に生活を助けてくれる重要な制度なので、介護保険について理解しておきましょう。
目次
そもそも介護保険とは
高齢化社会の日本において、介護を必要とする人に対し、社会全体でサポートしようと作られた制度が介護保険制度です。介護を要する人がなるべく少ない負担で介護サポートを受けられるように作られました。
保険事業の運営主体は全国の市区町村、被保険者は地域に暮らす40歳以上の住民です。被保険者が納めた介護保険料と税金により運営しています。
介護が必要となった際には、どの程度の介護サポートが必要なのか判定を受け、各市区町村担当課・地域包括支援センターなどに「要介護認定申請」を行います。
介護保険制度は厚生労働省の定義において、高齢者の介護を社会全体で支えあう仕組みとし、2000年に施行された介護保険法により始まったものです。介護保険制度の内容については3年ごとに改正が行われています。
給与計算における介護保険の基礎知識
介護が必要となった人を社会全体でサポートするため、平成12年4月1日に施行されたのが介護保険制度です。介護保険制度とはどのようなものなのか、詳しく解説します。
第1号被保険者と第2号被保険者
介護保険制度では40歳以上になると介護保険の加入と保険料の負担が義務となり、介護が必要な状態となった際には少ない負担で介護サポートを受けることができます。
ただ第1号被保険者と第2号被保険者では、受給要件や保険料負担などに違いがあるので、その違いについて理解が必要です。
第1号被保険者 | 第2号被保険者 | |
---|---|---|
対象となる人 | 65歳以上 | 40歳から64歳までの医療保険加入者 |
受給の要件 | 要介護状態 :寝たきり・認知症等介護が必要要支援状態 :日常生活に支援が必要 | 末期がんや関節リウマチなど加齢に起因する特定疾病による場合のみ利用可能 |
保険料の負担 | 市町村による徴収 (原則年金から天引き) | 医療保険者が医療保険保険料と一括徴収 |
介護サービスを受ける条件の違い
介護保険制度の介護保険サービスでは、第1号被保険者と第2号被保険者で、介護サービスを受ける条件に違いがあります。
上記の表をみて分かるように、第1号被保険者は「要介護」や「要支援」と認定されれば介護サービスを受けることが可能です。
しかし、第2号被保険者は「末期がん」や「関節リウマチ」といった加齢によって起こる特定疾病であることが「要介護」や「要支援」の認定条件となります。
介護保険料の納付方法
第1号被保険者の介護保険料納付方法は、原則、年金から直接徴収される「特別徴収」です。この保険料の徴収も第1号被保険者と第2号被保険者に違いがあります。
第2号被保険者は「加入する医療保険料と共に徴収」です。国民健康保険の方は「世帯ごと」の徴収となります。国民健康保険以外に加入している方も、加入している医療保険料との合算徴収です。
ちなみに被保険者が第2号被保険者に該当しないときも、被扶養者が第2号被保険者であれば介護保険の被保険者扱いとなります。この場合は介護保険料が発生するので、加入している健保組合などに確認が必要です。
第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料の給与計算方法
介護保険料は暮らしている自治体によって基準額が定められています。基準額に加えて所得や家族・課税状況により、いくつかの段階に分けられ保険料が決定するため、誰もが同じではありません。
保険料がいくらになるのか、以下の計算式によって求めることができます。
第1号被保険者の介護保険料計算式
- 自治体が定める基準額×自分の介護保険料段階係数
例えば、杉並区では基準額が6,200円、段階は14段階と細かく設定されています。仮に第5段階だった場合、係数は1.00となっているので、月額保険料は6,200円、年間支払額が74,400円です。
第1号被保険者の介護保険料基準額が自治体によって違うのは、地域によって介護の環境が異なるためです。そこで暮らす高齢者の数も、また介護サービスの種類・費用なども異なります。
地域ごとに作られた介護保険事業計画を基礎に、自治体で不平等にならないよう基準額が設けられているのです。自治体内でも介護環境は変化していくため、3年毎に見直しを行っています。
基準額の算出方法は全国統一で、以下の計算式で求めることができます。
- (65歳以上の人が利用する介護サービス費用×65歳以上の人が負担する介護保険料の23%)/65歳以上の人数
これにより、1人当たりの保険基準額が決定します。
第2号被保険者(40~64歳)の介護保険料の給与計算方法
第2号被保険者の介護保険料は、自身が加入している健康保険により異なります。大きく分けると、国民健康保険とその他の医療保険です。国民健康保険もその他の医療保険も、給与や賞与の額、介護保険料率によって計算します。
国民健康保険に加入している場合
自営業の方などは国民健康保険に加入することになりますが、介護保険料は以下のように求めます。
- 所得割額を求める
- 介護保険料を求める
(前年の総所得-基礎控除額)×所得割料率
所得割額+(均等割額)+(平等割額)+(資産割額)
- 均等割額 自治体が被保険者に割り当てた保険料×世帯被保険者数
- 平等割額 定額(世帯ごとに決められている金額)
- 資産割額 被保険者の資産によって算出
2の介護保険料を求める計算式は、自治体により計算式の項目が異なります。所得割額と均等割額を足したものを介護保険料とするところなどもあるので、確認するといいでしょう。
会社を経由して健康保険に加入している場合
サラリーマンなど会社に所属している場合、会社が利用している健康保険に加入します。代表的なものとして、「全国健康保険協会」がありますが、そのほかにもグループや組合などの健康保険もあるでしょう。
国民健康保険以外の健康保険に加入している場合の介護保険料(1ヵ月あたり)は、以下の計算式で求めることができます。
1ヵ月あたりの介護保険料
- (標準報酬月額)×介護保険料率
これに加えて賞与も介護保険料の対象となるため、賞与に対する介護保険料計算式は以下で求めます。
- (標準賞与額)×介護保険料率
1ヵ月あたりの介護保険料を求める際の標準報酬月額は、税金を引かない給与額により、健康保険ごとに段階が決まっています。
賞与における介護保険料を求める際には標準賞与額に介護保険料率をかけて求めますが、標準賞与額は賞与総額から1,000円未満を切り捨てた額です。賞与が554,500円であれば、標準賞与額は405,000円となります。
会社経由で健康保険に加入している方は、1ヵ月あたりの介護保険料や賞与にかかる介護保険料の半分を会社が負担してくれます。介護保険料率は加入している健康保険により異なり、介護保険料率については毎年変わるので、こちらも確認が必要です。
介護保険料には納付期限がある
介護保険料の支払いは国民の義務であり、保険料を滞納すればペナルティがあります。40歳になった月から一生涯支払うことになります。しかしこれを支払っていることで一生涯、公的介護サービスを受けることもできるのです。
会社員の場合は、会社が給与を支払う際に介護保険料を引いて支払ってくれる特別徴収となるため、支払忘れは起きないと思いますが、国民健康保険の場合は自分で支払う普通徴収です。
支払いを忘れることがないように国民の義務としてしっかり支払いましょう。
期限を過ぎて1年未満の場合
介護保険料が未払いとなっていると、20日以内に督促状が発行され、延滞金・督促手数料も請求されます。延滞金も督促量も各自治体によって異なりますが、一般的に以下のようなイメージです。
- 納付期限日翌日から1ヵ月未満 延滞した保険料の4.3%から14.6%
- 納付期限日翌日から1カ月以上 延滞した保険料の14.6%
- 督促量は1回70円から100円
期限から1年以上経過した場合
納付期限を支払わず1年経過すると、介護保険サービスを利用する際に影響が出てきます。通常は、介護保険料をしっかり納めていれば介護保険サービスを利用した場合の支払いは1割から3割程度です。
しかし、納付期限から1年以上経過すると、介護保険サービスにかかったサービス料の10割、つまり全額を支払わなければなりません。
ただし、滞納分を納付し納付したことを申請すれば、支払った10割のサービス利用料のうち、9割から7割を払い戻せます。
期限から1年半以上経過した場合
納付期限から1年半以上経過すると、1年以上支払わずにいた場合と同様に、介護保険サービスを利用した場合に10割負担となります。
ただし、滞納が1年半以上となると、後に滞納分を納付したとしても9割から7割の戻りはありません。これは後から納付した分を滞納した保険料に充当するためです。
期限から2年以上経過した場合
納付期限から2年以上滞納してしまうと、後から支払うことはできず「未納」確定となります。介護保険サービスを受ける際の負担は通常1割から3割ですが、滞納が2年以上となると介護サービスを利用した際に自己負担が3割から4割と上がってしまうのです。
これに加えて高額介護サービス費の制度も利用できなくなり、介護保険サービスを利用する際、自己負担額が大きくなってしまいます。
ただ介護保険料の滞納に、震災や火災、風水害などの損害を受けたなど理由がある場合や、収入が著しく減少した場合などは介護保険料を減免する申請ができるのです。
申請が認められれば、最長1年まで保険料の減免となり、納付期限延長猶予なども受けられます。長期間入院して支払いができない人や事業の廃止に追い込まれ収入が激減した人、失業し収入が減少しそうだという人は、未納のままにせず市区町村に相談し申請しましょう。
まとめ
介護保険料は有無を言わさず40歳以上になると納付が義務付けられ、介護保険サービスを利用していない人たちにとって、何となくもったいないと感じるかもしれません。
しかし、実際に介護保険サービスを受けることになると、介護生活になくてはならない制度だとわかってくるでしょう。
介護を受ける側に加えて、介護する家族の負担を減らすことにもなるので、介護保険料は未納することなく、しっかり支払いましょう。
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