給与計算を社労士に依頼するメリット・デメリットとは?
社労士に給与計算を依頼する際のメリット・デメリットや社労士と税理士の違いなどを紹介します。企業にとって重要であり、また面倒な給与計算や人事・労務管理を社労士に依頼する際、準備しておくことや考えておくことなども合わせて解説しています。給与計算のアウトソーシングについてもふれていますので参考にしていただけたら幸いです。
目次
▷給与計算とは?業務内容や計算方法・注意点をわかりやすく解説
▷給与計算を自動化・効率化するには?メリット・デメリットを徹底解説
そもそも社労士とは?
社労士は社会保険や労務管理に関する書類のスペシャリストといわれます。
社会保険、労務管理の指導や相談を受けることもありますし、社会保障法令や労働関連法令などに関する書類の作成、代行作成なども業務の一部です。
労働保険に関する書類を代理で提出することもあります。企業の顧問として行政機関の調査なども担当することもあり、社会保険や労務管理などの専門的知識を持つプロです。
社労士の業務内容
社労士は労務管理や社会保険手続きなどの業務をこなすスペシャリストです。その中で社労士が行うことのできる業務として社労士の3号業務「相談・指導」があります。
企業から相談を受け、業務に沿った指導を行う企業対応は人事コンサルタントのような業務です。こうした社労士の業務内容について紹介します。
社労士の種類①:勤務社労士
勤労社労士は社労士事務所などに雇用され、労務士の業務をこなします。一般的な企業に当てはめていえば役職なしの社員です。
社労士事務所や社労士法人に雇用され、いくつかの企業を担当し、社会保険手続きや法令等参照すれば解決するレベルの労務相談などを受けます。
企業の人事担当者へ対応するほか、従業員数が少ない企業は社長が労務や給与計算を行っていることもあるため、社長への対応となることもあるでしょう。
社労士は独占業務となりますが、社労士事務所・法人代表が社労士の代表となっていれば、雇用される従業員が社労士の資格を持っていなくても業務できます。
勤務社労士は一般的に実務経験5年未満位の経験が多く、解雇や労働組合への対応などは、知識と経験を持った社労士が担当することになるでしょう。
社労士の種類②:開業社労士
勤務社労士と比較すると経験と実績を持っているのが開業社労士です。以前は個人事務所が多かったのですが、法改正により社労士事務所が法人化できるようになり、社労士法人も増えてきました。
社労士法人が増えたことで、大手企業の社会保険関係手続きや労務管理、さらには複雑な労務相談を受ける社労士法人も増えています。
社労士法人には、一般的企業の執行役員や取締役と同じような立場となる「パートナー社員」がいます。
経験も実績も十分な社労士が在籍していることで、社会保険などの社労士の業務以外の企業からの相談や指導を受けることや、経験の少ない社労士へのマネジメントなどが主な業務です。
勤務社労士の対応する顧客は、企業の責任者クラス、また大手企業の労務担当などです。直接企業の社長に対応することも多く、培ってきた経験や実績を活かしコンサルティングやセミナーなど行うこともあります。
社労士と税理士の違い
社労士と税理士は専門分野が違います。社労士は人事労務管理のスペシャリストであり、税理士は税務のスペシャリストです。
社労士は社会保険や年金、労務管理などが専門分野となり、税理士は会計業務や税金、融資相談などが専門分野となります。
職種 | 仕事内容 |
社労士 | ・労務相談・指導 ・出産・死亡等の社会保険等申請手続き ・年金相談 ・労働における紛争相談 ・就業規則の策定 ・税理士の仕事 |
税理士 | ・相続税・贈与税等申告手続き ・会計帳簿等税務調査 ・税務申告書作成 ・税金・経営相談 |
平均年収は社労士が650万円くらい、税理士は890万円くらいです。ただ社労士の中でも開業社労士は、1,000万円を超える年収の方もいるでしょう。
社労士としてどのように働くのか、それによって業務内容も年収も大きく変化します。
社労士に給与計算を依頼するメリット
企業が書類作成や労務手続き、給与計算などを社労士に代行してもらうことで、どのようなメリットがあるのでしょう。社労士に依頼することで得られる3つのメリットについて紹介します。
- 実務代行によるリソースを浮かせられる
- 会社に合わせた提案・書類を作成してくれる
- 助成金の相談にのってくれる
実務代行によるリソースを浮かせられる
社労士が労務手続きや給与計算を行うことで、従業員は本業に集中できます。
総務や人事といった単独部署がない企業は、給与計算など役職付の方が対応することも多いため、社労士に実務代行させることでリソースを確保できる時間が多くなるのは大きなメリットです。
▷給与計算のミスを防止するには?5つの原因と対策方法を徹底解説
会社に合わせた提案・書類を作成してくれる
行政機関に提出する書類は、全ての企業が同じとは限りません。企業の規模や業種によっても異なり、申請する行政機関によっても異なります。
こうした特殊な書類を自分で調べて作成・提出し、全てが完了するまでには労力を使うでしょう。企業が社労士をつけることで、企業に合わせた書類作成や提出・管理ができ、事務にかかる時間を大幅に減らすことができます。
助成金の相談にのってくれる
現代にはさまざまな助成金制度がありますが、助成金の申請の書類もまた複雑で面倒なことが多いです。該当要件の設定が細かいうえに、早くから申請しなければならず、書類のミスによって対象から外れることもあるのです。
助成金の申請に関しても必要書類や添付書類などを渡せば、面倒で複雑な書類に頭を悩ますこともなくなります。
▷給与計算を内製化した場合のメリット・デメリットとは?よくある課題も解説
社労士に給与計算を依頼するデメリット
社労士に給与計算業務を依頼するメリットは様々ありますが、逆に依頼するデメリットがあるのも事実です。
依頼してから後悔しないためにも、デメリットを把握しておきましょう。
- 継続的に費用が発生する
- 年末調整に関わる業務の依頼はできない
継続的に費用が発生する
社労士に給与計算業務を依頼する場合、継続して費用が発生するのが大きなデメリットと言えます。
相場は従業員数によって変動するものの、従業員数が多いほど多額の依頼料がかかります。
また、社労士に依頼してしまうと、社内に給与計算業務のナレッジが蓄積されずいつまでも社労士に依頼し続けなければなりません。
年末調整に関わる業務の依頼はできない
「年末調整」にかかわる「法定調書」の作成については、社労士の業務範囲外になるので依頼することはできません。
年に一度だけにはなるものの、年末調整は給与計算に関して非常に重要な業務になり、専門的な知識を要します。
法定調書の作成については、税理士の業務となるため、別途税理士に依頼しなければならないということを理解しておきましょう。
▷給与計算に必要なダブルチェックのポイントとミスをなくす防止策とは?
給与計算を社労士に依頼する相場
社労士に給与計算を依頼する際の料金は、一般的に社員数によって違います。相場は以下のようになります。
従業員数 | 社労士報酬相場 |
---|---|
4名まで | 20,000円~ |
10名まで | 25,000円~ |
20名まで | 35,000円~ |
30名まで | 45,000円~ |
50名まで | 60,000円~ |
依頼にあたっての費用は、社労士の業務内容によっても異なります。給与計算のみ、労務手続きから相談、給与計算まで含めて…など、給与計算から管理、相談まで顧問として契約した場合など、費用は顧問契約ごとに異なるので理解しておきましょう。
社労士にかける費用が決定しているのであれば、その費用の中で給与計算から労務管理までしてもらうか、それとも給与計算のみなのか費用によって考えることができます。
会社内に社会保険や給与計算などについての知見のある人材がいないのであれば、その人材を新しく得るよりもコストが低くなり、労力も少なく済みます。
給与計算を社労士に依頼する際に必要なもの
社労士に給与計算を依頼する際には、会社と社労士とすり合わせを行うために必要なものがあります。
社労士と契約する前に必要な書類を準備し、依頼する業務をある程度明確にしておくと契約までスピーディに運ぶことができるでしょう。
規則を作成する
会社には就業規則や給与規定、さらに雇用契約に対する規則などがあります。
社労士に規則の作成について相談する場合、給与や勤務、雇用契約などあらかじめまとめておくといいでしょう。
社労士はそれをもとに、企業にとって必要な規則や規程をプラス、また不必要な部分をマイナスしてくれます。
従業員情報のメンテナンス
新しい人材が入ってくることもあれば、長く務めた人が退職することもあります。最近は契約社員やパート社員など、短期間や短時間での雇用形態もあるでしょう。
社労士に給与計算を依頼する際、従業員情報について資料を用意しておくことも重要です。入社日や異動、給与振込先などの情報をまとめておけば、給与計算依頼もスムーズにすすみます。
給与計算を社労士に依頼する際の流れ
給与計算を社労士に依頼する場合は、以下のような流れです。
依頼してすぐに業務にとりかかるわけではなく、打ち合わせを行い見積内容を確認し、内容に同意したうえで依頼することとなります。
- 問い合わせ
- 具体的な相談を打ち合わせ
- 見積内容の確認
①まず問い合わせをする
依頼したい社労士事務所や社労士法人に、電話やメールで依頼について問い合わせが必要です。どんなことを依頼したいか相談したいか大筋を伝えて打ち合わせ日程を決めます。
打ち合わせまでに相談したい内容や労務上の問題などをあらいだしておくといいでしょう。
②具体的な相談を打ち合わせ
打ち合わせ当日は実際に社労士と会い、どのような業務を依頼するのか相談します。
社労士事務所によって多数経験している業務や実績の高い業務が違うので、打ち合わせの中でしてほしいことをはっきり伝えることが重要です。具体的な内容を伝えることで社労士も見積りしやすくなります。
③見積内容の確認
打ち合わせの内容から社労士が作成した見積の内容を確認しましょう。内容に問題がなければ契約し、契約範囲内で相談など依頼できるようになります。
社労士以外の給与計算依頼先
給与計算を社労士以外に依頼する場合、どのような依頼先があるか紹介します。
アウトソーシング
最近は給与計算業務の一部をアウトソーシングする(外部に委託する)企業が多くなっています。一般業務に従事している社員が月末など締め日に給与計算しなければならない会社もあり、本業に支障が出ることもあるでしょう。
給与計算や労務管理といった業務をアウトソーシングすることで、労力や人件費の削減、給与計算ミスの防止にもなります。
アウトソーシングの方法は1つではなく、例えば給与計算だけ依頼するなど、企業にあった使い方ができるのも魅力です。
▷中小企業は給与計算をどうすべき?アウトソーシング(外注)で解決する?
▷給与計算をアウトソーシング・代行するメリット・デメリットは?
税理士
給与計算業務の依頼先に税理士を選択する会社もあります。税理士は税務・会計のプロであり、税理士法に基づく国家資格者です。
税理士は税金の申告・調査などを代理で行う税務の代理「1号業務」、確定申告など税務書類の作成代行をする「2号業務」、税務相談の「3号業務」が独占業務です。
税理士は税務会計のプロなので、給与計算についても安心してお任せできる点も利点ですが、年末調整や決算などを含めた給与計算業務を依頼できることが大きなメリットでしょう。
しかし社労士とは違い、人事や労務管理には対応していないため、給与計算についてどこまでの業務を依頼するか、その内容によって依頼先を考えることが必要です。
クラウド型の給与計算ツールの活用もおすすめ
クラウド型の給与計算ツールの活用も給与計算業務をする上でおすすめです。
内製化するという点は変わりませんが、人の手で計算するよりもスピード・正確性がアップします。
また、アウトソーシングすると費用がかさんでしまうものの、ツールを活用すればコストを抑えることができます。
費用を抑えて業務効率がアップするので、効率化を考えている方はぜひ検討してみてください。
なお、数ある給与計算ツールの中で最もおすすめなのはジンジャー給与です。
シンプルな見た目と操作性の良さが好評で、多くの導入実績があります。検討されている方はぜひ資料を一読してみてください。
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給与計算業務を社労士に依頼するか検討しよう
社員がいれば給与計算は必要になってくる業務です。労働者への賃金計算となりますので、ミスなく行う必要があります。
社労士は給与計算や社会保険手続き、就業規則の作成など人事、労務に関するプロであるため、給与計算を依頼先としておすすめできる資格者です。
給与計算に関してどのように関わってもらうのかよく考え、自社の良き相談相手となるような社労士を見つけましょう。
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