給与計算の仕組みとは?支給額・控除額・手取り額などわかりやすく解説

最終更新日時:2022/06/17

給与計算システム

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給与計算とは何か、その仕組みや控除、基礎知識まで細かく紹介しています。給与計算に携わる方も、従業員として給料をもらう人も、給与計算について知識を持っている方が安心です。支払う給与を計算する際には、ミスがないように細心の注意を払わなくてはなりません。今回は給与計算をミスなく効率よく行うための方法も紹介しているので、役立ててください。

そもそも給与計算とは?

給与計算は従業員に支払う給料を計算する重要な業務です。実際業務に携わってみると、給与計算ではさまざまな用語が使われています。

給与計算の方法を理解するためには、まず給与計算で利用されている用語を理解することが必要です。

「支給」とは

会社から従業員に給料を支払うことを「支給」といいます。支給される給与には雇用契約で定められている基本給のほか、住宅補助費用や交通費、役職手当などが含まれています。

「控除」とは

給与は支給される費用のほか、社会保険料や厚生年金保険料など課税対象外の費用があります。企業はこうした費用を給与の総支給額から差し引いて支払いますが、こうした支払いが「控除」です。

「勤怠」とは

通常勤務の状態や休日労働、時間外労働の手当などを管理する業務が「勤怠」です。通常の勤務時間以外の休日出勤や残業については、通常よりも高い賃金となります。これらを管理し給与計算に反映する業務です。

給与計算の仕組み:支給額

給与計算の仕組みは5つの要素で成り立っています。5つの要素は「基本給・各種手当・残業代・不就労控除・公的控除」です。

基本給

会社に雇用される際、従業員の賃金の基本となる労働対価が基本給です。基本給の労働対価対象は「所定労働時間」で、一般的には休憩時間を差し引いた勤務時間に所定労働日数をかけたものです。

ちなみに「賃金」は交通費や住宅手当など各種手当を含んだ金額です。

各種手当

各種手当は会社の福利厚生として設定されている費用です。交通費や住宅手当などがこれにあたります。管理職に対し、時間外労働や役務への対価として支払われることがある役職手当も各種手当です。

残業代

残業代は時間外労働・休日労働・深夜労働にわけることができます。労働基準法で以下のように定められています。

  • 時間外労働:基礎賃金の1.25倍以上の割増賃金
  • 深夜労働:基礎賃金の1.25倍以上の割増賃金(深夜手当)
  • 休日労働:基礎賃金の1.35倍以上の割増賃金(休日手当)

残業や休日出勤などした場合、法律により最低割増率により算出した賃金を支払わなければなりません。

不就労控除

具合が悪いときやお子さんの用事や寝坊などで遅刻や早退、欠勤した場合には、基本給を減額できます。

これを不就労控除といいますが、あらかじめ控除について「労働条件通知書」「就業規則」などにより決めておくことが必要です。

公的控除

給与の総支給額をもとにこれらの税金や公的保険を計算し、給与から天引きすることを「公的控除」といいます。現在、日本には以下の6つの公的控除があります。

  • 健康保険料
  • 介護保険料 (40歳以上の社会保険加入者)
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 所得税
  • 住民税

給与計算の仕組み:控除額

毎月給与の総支給額から労災保険や雇用保険など、定められた額を控除します。先ほど示したように公的控除は6つです。これら6つの公的控除について詳しく解説します。

労災保険

勤務中や通勤中にけがをすることもありますし、勤めている間には病気をすることもあるでしょう。勤務中や通勤中にけがや病気をした場合に保険給付を行う制度が「労災保険」です。万が一、死亡した場合ももちろん保険給付対象となります。

労災保険は「労働者災害補償保険」といい、労働者や遺族の生活を守るための制度です。労災保険の保険料は「事業主」の「全額負担」となり、個人で支払うことはなく、控除は給与計算で行います。

雇用保険

失業した際に次の雇用先を探し安定した生活ができるようになるまで一定期間(雇用保険をかけていた期間によって給付期間が変わります)、雇用保険から失業保険を受け取ることができます。

その制度が雇用保険です。雇用保険料は給与額(賞与額)に雇用保険料率をかけて求め、総支給額から控除します。

住民税

住民税はその年の1月1日現在、居住している地域に支払う税金です。住民税は本来、個人で手続きし支払っていくものですが、現在は企業が給与から控除し徴収しています。

住民税は所得割と均等割で計算し算出する税金です。(道府県税には利子割・配当割・株式等譲渡所得割といった一定の株式による利益が課税対象となるものもあります。)

  • 所得割:所得に応じ一律10%(前年度の1月1日から12月31日までの所得より算定)
  • 均等割:全ての納税義務者から均等に税金を徴収するもの

所得税

所得税は従業員それぞれの所得に応じて課税される税金です。住民税と同じように本来個人で支払う税金ですが、所得税と同じく企業が控除し支払っています。

厚生年金保険料

企業で働くいわゆるサラリーマンは厚生年金保険という公的年金に加入しています。保険料は標準報酬月額(月々の給料を等級に分けて表したもの)に保険料率をかけ算出するものです。保険料は従業員と事業主で折半して支払います。

健康保険料

自営業の方々は国民健康保険に加入し、企業で働くサラリーマンが加入する医療保険が社会保険や組合保険です。病気やけがをしたとき、健康保険に加入していることで医療費の自己負担額が少なくなります。

海外ではこうした健康保険のシステムがないところもあり、民間の医療保険に加入していないと高額な医療費を自己負担することも少なくありません。

介護保険料

介護保険料は40歳以上で加入する保険です。この保険は介護を必要としている高齢者の方に治療費として利用されます。将来自分たちが高齢になった時にお世話になることもあるでしょう。

給料計算の仕組み:手取り額

実際にお給料として受け取ることができる金額のことを「手取り」といいます。一般的に手取りで受け取ったお金で生活しているので、給与は手取りのことと考える方も多いでしょう。

しかし実際には総支給額から社会保険料や厚生年金保険料、所得税、住民税など、社会保険料や税金が差し引かれています。

一般的には、手取り金額は総支給額(額面)の約8割ほどです。給与を受け取るとき、額面そのものの金額を受け取ることはありません。

額面

お給料には基本給にプラスして、時間外手当、役職手当、交通費といったさまざまな手当が含まれています。この中から社会保険料や税金といった「各種控除額」が差し引かれたのが「手取り」です。

実際に額面から差し引かれる金額、控除額は個人で違います。そのため、年収や月収を答える必要がある場合、手取りではなく「額面」総支給額を提示するのが通常です。お給料として受け取る額は、額面ではなく「手取り」となります。

給与計算の基礎知識

給与計算に携わる方は、給与計算のさまざまな知識を理解する必要があります。給与計算の基礎知識として、賃金支払い5原則について理解を深めましょう。

賃金支払い5原則

賃金支払いには以下のような5原則があります。これは労働基準法第24条に定められているものです。

<現物給与の禁止(通貨払いの原則)>

通貨払いの原則の例外として以下が挙げられます。

  • 法令に別段定めがある場合
  • 労働協約に別段定めがある場合
  • 労働者の同意のもと口座振り込みをする
  • 退職手当について一定の要件を満たす小切手・郵便為替で支払う

こうした例外とは別に、デジタルマネーによる給与支払いについて規制改革事項として決定しています。デジタルマネー支払いとは、スマートフォン決済やペイロールカードによる支払いです。こちらについても政府は早期実現を目指しています。

<直接払いの原則>

賃金は直接労働者に支払うことが定められています。賃金の支払いに対し、他の誰かが中間に入ることで賃金を搾取する可能性があり、これを禁じるためにこうした原則が作られました。

例外として、国税徴収や民事執行法に基づいた差し押さえで差し押さえたものへの支払いや使者への支払い(労働者が入院等で給与を受け取れない場合家族が使者として受け取るなど)は可能です。

<全額払いの原則>

賃金は原則全額を支払うことが定められています。会社の経営が苦しくても一括で全額を支払うのが原則です。ただし法令に別段の定めがある場合、例えば源泉徴収や社会保険控除、財形の控除などは違反となりません。

また事業場労働者の過半数で組織する労働組合やその過半数の代表者と協定がある場合、全額支払いの原則は適用とならず、払いすぎてしまった賃金を後の支払いで控除する調整的相殺も例外となります。

<毎月1回以上の原則>

賃金は毎月1回以上支払うことが定められています。1回以上であれば複数回でも構いませんが、2ヵ月に1度、1ヵ月半に1度などは違法です。ただし臨時の賃金や賞与は適用外となります。

<一定期日払いの原則>

賃金は一定期日に支払うことが定められています。給料日は毎月25日、15日、末日など、一定の期日に支払うことが原則です。ただし賞与などは原則適用外となっています。

給与計算で気を付けること

給料は従業員に支払う賃金ですから、給与計算のミスは極力避けなければなりません。給与計算のミスとしては、時間外労働をしたのに割増賃金となっていなかったなどがあげられます。

こうしたことが起こらないように十分な注意が必要です。

最低賃金ルールを守る

給与には原則があり、地域別に設定されている最低賃金額以上にすることが規程されています。正社員以外のアルバイトなど非正規雇用に関しても同じです。

最低賃金は例年秋に改訂となるので、最低賃金とならないよう、最低賃金に近い給与設定の企業は必ず毎年見直す必要があります。

残業代を正しく支払う

法定労働時間は1日8時間、週に40時間と定められています。この法定労働時間を超えた業務は「時間外労働」です。時間外労働は法定労働時間ではなく、法定の割増賃金による支払いとなります。

残業が深夜帯まで及んだ場合は、割増賃金に深夜手当を上乗せすることが必要です。さらに、1ヵ月60時間を超える時間外労働は、5割以上の率で計算した割増賃金による支払いが定められています。

これに加えて、1ヵ月分の残業・深夜労働・休日労働といった時間外労働の計算では、「労働時間に1時間未満の端数」がでた際、「30分未満切り捨て・30分以上1時間繰り上げ」による計算が必要です。

給料計算をする際、端数処理のところで端数切り捨ての処理がされていると違法です。違法となりやすい端数調整は、「締め日」を過ぎてから確実に行いましょう。

給与計算を効率的に行う方法

給与計算にミスがないよう正確に行うためにどのような方法があるか理解していれば、給与計算を間違えて信頼をなくすことも避けられます。

いくつか給与計算を効率よく行う方法があるので見てみましょう。

エクセルで効率化

エクセルで独自の給与計算用シートを作成して給与計算する方法もありますし、インターネットで自由に利用できる既存の給与計算用シートを利用する方法もあります。

エクセルでこうした給与計算のシートを作ることができれば、企業の環境、従業員の雇用形態に沿った表を作り利用するといいでしょう。

無料の給与計算シートを利用する場合も、給与計算に必要な基本的な部分は網羅されているものが多いので、それをもとに独自用に作るのもいいと思います。

アウトソーシング

近頃は給与計算をアウトソーシングする(外部に委託 代行する)企業も多くなっています。

エクセルで給与計算できるのならいいのですが、人数が多くなってくると従業員それぞれの保険料や税金など控除額も多数になり、ミスが出てくることもあるでしょう。

また従業員の人数が多くなれば、その分給与計算にかける労力も大きくなります。通常業務をこなしている従業員が、給与計算の期間だけ業務をこなすとなると残業が増え、一般業務に支障をきたすことも考えられます。

給与計算業務をアウトソーシングしプロに依頼することでミスの心配もなくなり、業務に支障が出ることも少なくなるでしょう。

ただし、アウトソーシングすることでコストがかかり、個人情報の漏えいに厳しい業者の選択の必要があるなど、デメリットもあります。メリットもデメリットも考慮し、信頼できる業者に依頼しましょう。

システムを導入する

給与計算や勤怠管理ができるシステムを導入することで、給与計算の管理にかかっていた時間も労力も軽減できます。

企業の環境や業務、雇用形態にあったシステムを構築でき、法改正があっても自動的に移行できることもメリットです。

手入力や手計算でのミスの防止にもつながりますが、システムを構築する際にある程度の費用がかかります。コスト面なども考慮し、利用するかどうか考えましょう。

まとめ

給与計算は社会保険料や税金など控除のことや、支払い方が法律によって定められていることなど、理解しておくべきことが多くあります。

こうした基本的なことを理解しつつ、より効率よくミスなくできる方法を考えていくといいでしょう。いずれにしても給与計算に関わる人は、法律や会社のルールなどをよく理解する必要があります。

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