厚生年金保険とは?基礎知識や加入条件・計算方法をわかりやすく解説

最終更新日時:2022/06/23

給与計算システム

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厚生年金に加入すると給与や賞与などから保険料を徴収されます。厚生年金保険には一定の条件を満たすと加入し、所定の方法に基づき保険料を計算し、従業員と会社などの負担分を合わせて納付します。ここでは、厚生年金保険料の計算方法や注意点などを紹介します。

厚生年金保険とは?

厚生年金保険とは、厚生年金保険料に規定のある70歳未満の従業員が加入する公的年金制度をいいます。厚生年金に加入するには、勤務先が厚生年金の加入事業者であることが必要です。

また、厚生年金保険は自営業者の加入する市町村に上乗せする保険であり、国民年金が1階建てとすると厚生年金は2階建ての保険で、厚生年金の対象者には1階と2階を合わせた金額の給付をします。

なお、厚生年金保険料は、会社と従業員が折半し国に納付するため、実際に納付している額は給与明細に記載してある保険料の2倍となります。

厚生年金基金と厚生年金保険の違い

厚生年金保険は公的年金ですが、民間の企業が設立し運営する年金があり、これを企業年金といいます。企業年金のなかで中心的な役割をはたしているのが、厚生年金基金です。

厚生年金基金は厚生年金の一部を代行し、さらに独自の上乗せ給付をするのが特徴で、厚生年金保険との違いです。

厚生年金基金は昭和41年に発足しましたが、社会情勢の変化により財政状況が圧迫され、基金数や加入者は減少傾向にあります。

厚生年金保険の給付の種類

年金の1階部分である国民年金保険には、高齢者になったときを保障する老齢基礎年金、障害者になったときを保障する障害基礎年金、配偶者が死亡したときを保障する遺族基礎年金など、3つの基礎年金保険があります。厚生年金保険には、国民年金の3つの基礎年金にそれぞれ上乗せする3種類の給付があります。

厚生年金の受給額は、国民年金の受給額に勤続年数に比例した額を上乗せして計算します。3種類の厚生年金保険について、以下のとおり紹介します。

・老齢厚生年金

厚生年金の加入者で一定の条件を満たすと、65歳になってから老齢厚生年金を受給できます。老齢厚生年金は60歳から繰り上げ受給でき、70歳まで繰り下げて受給できます。

60歳から繰り上げの申請をすると年金額は一定額を減額され、また、65歳から繰り下げの申請をすると年金額は一定額増額され、いずれの場合でもその受給額は一生涯続きます。

・障害厚生年金

厚生年金に加入し障害者になると、加入期間に関わらず障害厚生年金が支給されます。障害基礎年金は、1級もしくは2級障害であることが条件ですが、障害厚生年金は1級もしくは2級に加え3級障害までが支給の対象です。

・遺族厚生年金

厚生年金加入者が死亡したとき、一定の条件を満たすと遺族厚生年金が支給されます。受給者は原則として、妻、夫、子、父母、孫、祖父母となり、兄弟姉妹を除きます。

厚生年金保険の加入条件

厚生年金保険は事業所単位で加入し、この保険に加入する事業所を適用事業所といいます。従業員が厚生年金保険に加入するには、勤務先である事業所が厚生年金の適用事業所である必要があります。

ここでは、適用事業所となる条件と従業員の加入条件を紹介します。

事業主側の加入条件

適用事業所となる事業主側は、強制適用事業所か任意適用事業所であることが加入条件です。

・強制適用事業所

法人で被保険者となる従業員がいる事業所、農林漁業およびサービス業を除く従業員が常時5人以上いる個人の事業所などが強制適用事業所となります。

・任意適用事業所

強制適用事業所以外で、従業員の半数以上が適用事業所になることに同意し、事業所が厚生労働大臣の認可を受けると適用事業所になります。この事業所を任意適用事業所といいます。

従業員側(被保険者)の加入条件

厚生年金に加入している事業所で常時働く70歳未満の従業員は、国籍や性別、そして年金の受給と関係なく厚生年金保険の被保険者となります。

アルバイトやパートタイマーなどは、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が、通常働く従業員の4分の3以上であるとき厚生年金保険に加入できます。

また、被保険者とされない従業員は、日々雇い入れられる人のほか、雇用期間の条件により異なります。ただし、所在地が一定しない事業所で働く人は被保険者となりません。

厚生年金保険料の給与計算方法

厚生年金保険料は従業員と事業所で折半とし、合算した額を事業所が納付します。また、厚生年金保険料を計算するには保険料率が必要で、毎月の給与では標準報酬月額、賞与では標準賞与額などに共通の保険料率をかけて保険料を決定します。ここでは、それらについて紹介します。

厚生年金の保険料の計算式

厚生年金保険料は、毎月の給与と賞与を支給する度に以下の式で計算します。

・毎月の保険料

標準報酬月額×保険料率

・賞与

標準賞与額×保険料率

標準報酬月額と標準賞与額、そして保険料率については次に紹介します。

厚生年金の保険料率

毎月の保険料と賞与の厚生年金保険料を計算するとき、保険料率はどちらにも共通の率を使います。なお、保険料率は平成16年から年金制度改正により段階的に引き上げられ、平成29年9月に終了し、現在18.3%で固定されています。

標準報酬月額の計算

標準報酬月額は、毎年4月〜6月の給与により計算し、これを算定基礎といいます。事業所は、算定基礎届を提出することで従業員ごとの標準報酬月額が決定します。

標準報酬月額が変動し一定の条件を満たすと、標準報酬月額を変更する手続きをしなければなりません。これを随時改定といいます。

標準賞与額の計算

標準賞与額は、賞与の支給額からその都度計算し、算定基礎届は必要ありません。その対象になる賞与は、賃金、給料、俸給、賞与等の名称に関係なく、従業員が受ける賞与のうち年3回以下で支給されるものです。

なお、会社から現物支給されるものも賞与に含まれることに注意が必要です。

厚生年金保険料の支払期限

事業主は、毎月、被保険者である従業員の給与から徴収した保険料と会社が負担する保険料を合算して納付します。まず、会社の負担する金額と従業員から給与天引きする金額の確認を行い、金額の一致を確認した後、支払期限までに保険料を納付しなければなりません。

ここでは、厚生年金保険料の金額の確認の方法と支払期限について紹介します。

厚生年金保険料の金額を確認

厚生年金の保険料は、被保険者の資格取得や喪失の状況に応じた標準報酬月額、または賞与支払などの変動に関する届出の内容などを基に計算します。

保険料の金額は、通常毎月10日に前月分の保険料を確定し、20日ごろに事業所に送付される「保険料納入告知書」に前月分の納付総額が記載されています。

会社は、従業員から給与天引きした保険料と会社が負担する保険料の合計額が、この通知額と一致しているかを確認し納付します。

「保険料納入告知書」は、郵便のため会社に届くのに時間がかかることもあります。この告知書が会社に届かないときは、会社を管轄する年金事務所に連絡し、再発行を依頼するなどの手続きが必要です。

厚生年金保険料の支払期限

厚生年金保険料の支払期限は、納付対象月の翌月末日です。例えば、4月分保険料の納付期限は5月末日になります。保険料を支払期限までに支払していないときは、年金事務所より指定期限を設けた督促状が送付されます。

支払期限を過ぎると延滞金が発生し、延滞が続くと会社に調査の入る可能性があるため、期限内に必ず支払いましょう。また、支払期限の末日が休日のときは、翌日以降の最初の営業日となります。

厚生年金保険料の支払方法

厚生年金保険料は、会社に届く「保険料納入告知書」の金額を指定期間に支払います。その支払方法は、金融機関での窓口納付、口座振替、電子納付などの3つがあります。

保険料の口座振替は支払い漏れがないため、督促状が届く心配はありません。また、パソコンやスマホなどによるインターネットバンキングなどの電子納付も条件によっては可能です。

給与計算における厚生年金保険の注意点

厚生年金保険料は、給与計算の際は毎月計算し、賞与の際は支払報告書を年金事務所に送付し、確定した金額を確認し期日中に支払います。

給与計算において厚生年金保険料を計算するとき、どのようなことに注意すればよいのか、ここで紹介します。

被保険者の給与の変動に注意

厚生年金保険料は標準報酬月額に保険料を掛けて計算しますが、標準報酬月額は4月〜6月までの算定基礎期間の給与をもとに決定しています。

給与に変動があり、標準報酬月額表で2等級以上の変動があるときは、随時変更届を提出し正しい保険料を支払わなければなりません。昇格に伴う昇給や降格などがあり、給与に変動のある従業員がいるか、給与計算では注意が必要です。

パートやアルバイトで対象者がいるか注意

雇用形態がパートやアルバイトでも、条件を満たしたときは厚生年金の被保険者となります。毎月、給与計算をするときは勤務形態や雇用形態に変更があり被保険者となるパートやアルバイトがいるか注意が必要です。

パートやアルバイトは、所定労働時間および所定労働日数が通常の社員の4分の3以上あれば厚生年金の被保険者となり、さらに以下の5つの条件を満たしたときも厚生年金の被保険者となります。

  • 週当たりの労働時間が20時間以上
  • 月給与が8万8千円以上
  • 雇用契約期間が1年以上
  • 事業所の被保険者が501人以上
  • 学生でないこと

賞与支払いの届出に注意

被保険者である従業員に賞与を支払うとき、支払日から5日以内に被保険者賞与支払届を提出しなければなりません。賞与の支払が不定期な場合は、被保険者賞与支払届の提出漏れがないか注意が必要です。

厚生年金保険料でいう賞与は、従業員が年に3回以下で支払を受けるものを指し、年4回以上の支払があるものは給与としてみなし標準報酬額の対象となることにも注意が必要です。

まとめ

厚生年金保険に加入するには、会社が適用事業所であることと従業員が一定の加入条件を満たす必要があります。会社が適用事業所となり、従業員が被保険者となると、毎月の給与や賞与などから標準報酬月額に保険料率を掛けた金額を、会社と従業員で折半し会社が支払います。

標準報酬月額は毎年4月〜6月の給与をもとに算定基礎を行い決定するので、被保険者である従業員に給与の変動があり標準報酬月額が変更となるときは変更届を提出し、保険料は変更になります。特にパートやアルバイトも一定の条件を満たすと被保険者として加入が必要です。

また、賞与を支給したときは、標準賞与額に保険料率を掛けた金額を会社と従業員で折半し会社が支払います。なお、賞与を支給したときは、被保険者賞与支払届を提出しなければなりません。

以上、厚生年金保険料の給与計算方法と注意点などをここでは紹介しました。この記事を参考に、給与における正しい厚生年金保険料の計算を行ってください。

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