給与明細とは?基礎知識から給与計算時の発行義務・発行方法について

最終更新日時:2022/05/12

給与計算システム

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給与明細書を毎月従業員に渡す必要があるのはなぜなのでしょうか。本記事では、給与明細とはそもそも何か、さらに記載される項目の内容や、給与明細書を保管しておくべき理由などを紹介しています。給与明細書にある記載事項をもとにして給与計算をする方法についても触れていますのでぜひ参考にしてください。

給与計算に必要な給与明細の基礎知識

一月分の給与の支給額や控除額が出た時、従業員にもそれを知らせるために給与明細が渡されます。給与明細があることで給与計算をするために必要な情報を把握できます。

給与明細とはどういった過程で作成されていくのか、その流れや基礎知識について紹介していきます。

給与明細とは

給与明細とは、従業員一人一人の支給額や控除額について、それぞれいくら支払われているかの計算根拠を表示した書類のことです。特に控除額については細かく内訳されており、さまざまな種類の控除が差し引かれています。

控除額について詳細を知らなくても、給与明細に記載されている各項目を見てどのような理由で差し引かれているのか、把握することができるようになっているのです。

給与明細は交付する義務がある

給与明細は、所得税法第231条第1項でその発行が義務化されています。また、給与明細を交付するための期限も設けられており、会社側はこの期限内に給与明細を従業員へ渡さなければいけません。

所得税法施行規則100条1項によって、給与明細の交付は給与を支払う際に、その支払いを受ける人へ交付することが決められています。

給与支払日が25日の場合は、給与明細の交付も毎月25日となります。給与明細を交付する対象者となるのは、給与を受け取っているすべての従業員です。正社員はもちろん、パートやアルバイトの雇用形態を取っている方にも交付されます。

もし給与明細の発行がされなかった場合、所得税法違反となって罰則が課せられます。給与明細の不交付、もしくは虚偽の記載や交付をした際、所得税法242条7号によって、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課されるので、会社側は給与明細の交付をきちんと行うようにしましょう。

また、給与明細の交付が遅れたことに関しての罰則はありませんが、給与支払日に給与明細も一緒に渡せるようにしておきましょう。そうすることで交付していなかったというトラブルを防ぐことができます。

給与計算の基礎ステップ~初心者でもわかる基礎知識から計算方法まで

給与計算の明細書に必要な記載項目

基本的に、給与明細に記載される内容は以下の三つです。

  • 支給額(基本給や各種手当)
  • 控除額(社会保険料や源泉徴収税額などの各項目を記載)
  • 控除が差し引かれた支給額(手取り)

支給額は額面とも呼ばれています。その内訳は基本給や残業代だけでなく、住宅手当や役職手当といった会社で規定されている各種手当を合算した金額が支給額とされます。控除額に含まれるものの種類は豊富にありますが、控除として主なものは以下の通りです。

  • 所得税
  • 住民税
  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 介護保険料
  • 雇用保険料

会社によっては、ここに労働組合費や食事代、親睦会費なども控除として含まれます。基本給や手当による金額を合算した総支給額から控除が差し引かれることにより、最終的に従業員の手元に支払われる手取りの金額が給与明細にも記載されるようになっています。

勤怠項目

残業代や出勤日数などを把握するための項目として、給与明細には勤怠項目が設けられています。1ヶ月の労働のうち、出勤と欠勤の日数や労働時間について記載されています。この日数や時間が分かることで、給与計算もしやすくなります。

支給項目

支給項目は基本給や残業代、各種手当を計算根拠によって詳しく記載され、自分が働いたことでどれだけの支給がされているかすぐに確認ができるようになっています。

給与の基本となっている基本給は、ボーナスが発生する際にも基準として計算に使用される金額です。勤続年数や学歴、職種によっても基本給は変動しますが、賃金体系の中心となるものなので、基本給の把握は必ずしておきましょう。

ここに時間外労働や休日労働といった残業代が支払われる場合は、残業代についての記載もされます。残業代は通常の基本給より割増で支払われる賃金です。

さらに住宅手当や役職手当、通勤手当といった各種手当も支給項目に加えられます。こちらの手当については、会社の規程によって内容に変動があるため、就業規則を確認して何が手当に含まれるかを知っておきましょう。

控除項目

控除は会社でかけた保険に対しての保険料や、総支給額に応じて国に納めるための所得税、居住区としている市町村と都道府県に納める住民税などが含まれており、この金額についても明細に記載があります。

保険料に関しては、会社がかけている保険に加入することになるため、その保険の種類によって金額も変わります。

差引支給額

勤怠項目を元にして算出された総支給額から控除の金額を差し引いたものが、差引支給額となります。この差引支給額が最終的な手取りとなるので、総支給額=給料となるわけではないことをふまえておきましょう。

給与計算の明細書作成に必要な物

給与明細書に記載されている項目などを紹介してきましたが、ここからは給与明細書を作成するために何が必要なのかを紹介していきましょう。給与計算のために必要な書類やデータがいくつかあるので、給与計算の前にそれらの情報について把握しておいてください。

従業員の勤務時間に関する書類(タイムカード)

まず必要になるものは、従業員一人一人の勤怠記録が確認できるタイムカードなどの書類です。

タイムカード以外にも、勤怠管理システムが導入されている会社では、ICカードや生体認証、アカウントなどを用いることで勤務時間の記録を取れるようにしています。それによって保管されたデータも勤務時間を証明するための大切な情報になり、明細書作成のために必要となります。

勤怠管理は今すぐにデジタル化すべき?タイムカード廃止のメリットとは?

健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書

社会保険料を計算するために必要となるのが、健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書です。これは、健康保険・厚生年金保険の被保険者報酬月額算定基礎届を7月に提出することによって、その届出による情報を基にした標準報酬決定通知書が作成されて届出人のもとへ送られてきます。

住民税課税決定通知書

給与支払報告書を毎年1月31日までに地方自治体へ提出することで、5月31日までに住民税課税決定通知書が送られます。

この通知書は、従業員が毎月どれだけの住民税を納付したかが記載されており、前年度の所得を基にして算出が行われています。毎月の住民税はこの通知書を参照しながら支給額から差し引かれます。

給与計算の明細書作成の流れ

それでは、給与計算をしてから給与明細書を作成するための一通りの流れについて紹介していきます。

①勤務時間を集計

まずは、タイムカードや勤怠管理システムなどのデータを用いて、従業員の勤務時間を集計するところから始めます。この時の計算では残業時間だけではなく、休日出勤した日数と時間も計算します。これによって基本給の算出をしていきます。

②残業手当・通勤手当を計算

次に、残業手当の集計をとります。この時通勤手当も集計しますが、通勤手当が課税対象となるか非課税となるかを確認しておきましょう。会社によっては通勤手当が支給されないこともあるため、就業規則で通勤手当が支給されるかどうか確認しておいてください。残業代が発生する時、その分は割増賃金となるので、通常の基本給を求める時とは計算式も違ってきます。割増賃金となる時の計算式は以下のとおりです。

時間外手当=時間外労働時間数×1時間あたりの賃金×割増額

③総支給額を計算

上記の①と②で算出された基本給と残業代の加算をし、総支給額を計算します。総支給額の計算はいたって簡単で、以下の式を活用しましょう。

総支給額=基本給+時間外手当+各種手当

④控除額を計算

算出された総支給額の中から、保険料や住民税、所得税などの控除を差し引いていきます。

⑤差引支給額を計算

総支給額から控除額を差し引いた金額が、差引支給額です。これが従業員の手取りとなるので、計算に間違いがないか確認しておきましょう。

給与計算を内製化した場合のメリット・デメリットとは?よくある課題も解説

給与計算の明細書作成を効率化するには

給与明細書は必ず交付しなければいけないため、毎月作成するために細かな計算をする必要がでてきます。計算を一つ一つ行うと時間も手間もかかるので、効率よく明細書を作成していきましょう。より効率的に明細書の作成を行う方法についていくつか紹介していきます。

テンプレートを作成する

エクセルを使用してテンプレートを作成しておくことで、給与明細書の作成も簡単に行うことができます。エクセルでなら計算もセルにあらかじめ入力しておくことで給与明細書の作成が素早くできるメリットもあります。

従業員全員へ配布するために印刷する手間はありますが、テンプレートの作成をしておくことで作業の効率化を図れます。

給与明細を電子化する

給与明細書を印刷する手間をはぶきたい場合は、給与明細電子化システムを導入しておきましょう。

給与明細書をメールでの配信ができるだけでなく、Webブラウザを経由することで明細書の内容を確認できます。印刷コストを抑えることもでき、誤って他の従業員の給与明細書を手渡ししてしまうトラブルを未然に防ぐことも可能です。

給与計算システムが自動でアップデートされるものを選んでおけば、法改正されたとしても対応ができるので、ミスを事前に回避できます。

給与計算で給与証明が必要な場合

給与証明は、給与計算が終わった後で発行できるようになるので、計算自体に必要になることはありません。

ではどんな時に給与証明が必要になるのかというと、従業員から給与証明がほしいと求められた時です。その時には、給与明細書とは別で給与証明を作成しなければいけません。

給与証明とは、住宅ローンを組む時や賃貸住宅への入居をする時に入居者の所得証明書類の一つとして金融機関や貸主から提出を求められます。その書類を用意するため、従業員が勤務先の会社から発行してもらう必要があるのです。

特に発行様式について法律で決められた点はなく、給与証明に記載されている項目は以下のとおりです。

  • 最近の給与月額
  • 前年度の年収
  • 支払い年月
  • 支給総額
  • 所得税などの他控除額
  • 差引支給額

ほとんどは直近1年のものが有効

住宅ローンを組む時などに提出する所得証明書類は、基本的には直近1年のものが有効とされています。それを過ぎると書類が無効となってしまいます。

給与明細は保存するべき?

結論から言うと、給与明細は保存するべきです。

その理由とは、確定申告を行う時や、失業給付金を申請する時、厚生年金の確認といった手続きに必要となる可能性があるからです。こうした申請手続きの際に給与明細書が手元にないと、慌てて明細書を用意する必要性がでてきます。

再発行ができないこともあるので、できるだけ給与明細は手元で保管、または保存をしてデータを残しておきましょう。

保存期間はどのくらい?

では、給与明細書はどれくらい保存しておけばいいのでしょうか?一般的には、現在から2年前のものまでを保管しておくのが推奨されています

未払いの給料や残業代については2年前のものまでさかのぼって請求することができるので、少なくとも2年間は保存しておきましょう。

また、確定申告においては過去5年分の給与明細が必要になることがあるため、今年のものではないからといって安易に捨ててしまうのはやめておきましょう。

まとめ

給与明細書に記載されている項目など、給与明細書に関する基礎知識について紹介してきました。明細書は従業員への交付義務があるため、毎月の給与計算はミスなく行って明細書の作成を行わなくてはいけません。

自分で給与計算を行う時にも給与明細書は必要となるため、無くさないように手元に置いておくようにしてください。

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