給与計算の端数処理の方法と注意すべきポイントについて

2022/5/12 2022/05/12

給与計算システム

給与計算と電卓・端数処理

給与計算では端数処理が生じる場合があります。給与の端数処理は労働基準法に規定があり、原則として禁止されていますが、例外も認められています。端数処理はトラブルが多いため、その計算には注意が必要です。本記事では、給与計算における端数処理の計算方法をお伝えします。

給与計算の端数処理で気を付けるべきポイント

給与計算では端数が生じることがあります。労働基準法第24条には「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定されているため、端数の処理によっては法律違反となることがあります。原則として従業員が不利にならないように端数処理をしなければなりません。

原則切り捨てNG

給与計算で端数が生じた場合は、原則として切り捨てはNGです。会社が切り捨てにより賃金を控除してはならず、これを全額払いの原則といいます。例えば、所定労働時間を1時間15分超えて時間外勤務した場合、時間外手当は1時間単位で計算するため、端数となる15分の処理に注意が必要です。

時間外手当をする時間について、15分を切り捨てて1時間とする場合と1分を切り捨てて1時間10分とする場合のどちらも労働基準法違反になります。この場合、時間外手当は1時間15分もしくは1時間30分により計算します。

給与計算の端数処理が認められる場合

賃金は、全額払いの原則により端数を切り捨ててはなりません。しかし、従業員の不利益が大きくなく事務処理を迅速に行うために、例外として認められている端数処理の計算方法があります。ここでは割増賃金で端数処理をしても労働基準法違反とならない方法をお伝えします。

給与計算の割増賃金とは

従業員が時間外労働をした際は、割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金を計算する際に端数が生じた場合、2つの例外があります。

  • 1ヵ月の時間外労働、深夜の業務および休日出勤した場合の合計時間数に1時間未満の端数がある際、30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げ1時間にする。
  • 従業員の不利益にならないように、端数を切り上げて労働基準法に定めのある基準を上回り計算する。

給与計算の端数処理~遅刻・欠勤・早退~

給与計算では就業していない時間分を支給する必要はありません。従業員は労働の対価として給与を得るからです。

ここでは、ノーワーク・ノーペイの原則と、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されない例外をお伝えします。

ノーワーク・ノーペイの原則

賃金支払い5原則の一つ、賃金全額払いの原則は労働基準法第24条に規定されていますが、従業員の報酬を保護しているものですが、常に有利に機能するとは限りません。

・ノーワーク・ノーペイの原則

会社は従業員の勤務時間に全額の給与を支給しなければならないものの、従業員が勤務していない時間についての給与は支給する必要はありません。

たとえば、8時より業務が開始する際、2時間遅れて出社し、10時から業務を開始した場合は、会社は2時間遅刻した分の給与を支給する必要はありません。

これを、ノーワーク・ノーペイの原則といいます。特に民法では「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない」と定めがあります。従業員が就業していない時間分の給与を、従業員は会社に請求できません。

・従業員が就業した時間の給与を、端数処理により賃金カットすることはNG

従業員の就業時間について、給与計算において就業時間を30分単位で計算するため、10分遅刻した場合30分の遅刻として計算し20分の給与を減らすのは、実際の就業時間である20分の給与が計算されないため労働基準法違反となります。

・就業規則や人事規定による罰則制裁として懲戒により給与カットをした際

勤務態度に問題があり、たとえば遅刻や早退が多い従業員について、会社の諸規程にもとづき罰則として懲戒により減給をするという場合は、例外として遅刻や早退などの時間と関係なく給与カットも可能になります。その際、就業規則に規定があり労働基準法の範囲であることが必要です。

ただし労働基準法には、給与カットできる金額は、1回につき1日分の平均給与の半額が限度とされているため注意が必要です。

・ノーワーク・ノーペイの原則が適用される例

従業員が就業していない時間のため、会社が給与を支払わなくてよい例として、早退や欠勤、介護による休業、産前産後および育児休業、さらに自然災害など天災による休業などがあります。

ノーワーク・ノーペイの原則が適用されない場合

給与計算において就業していない時間の給与を支払わなくて済むノーワーク・ノーペイの原則を先にお伝えしましたが、例外もあります。

・従業員が有給休暇を取得した場合

有給休暇は労働基準法に定められた休暇で、従業員が休暇を取得しても会社はその期間の給与を支払う義務があるため、例外としてノーワーク・ノーペイの原則は適用されません。

・会社からの指示により休業した場合や自宅で待機した場合

会社からの指示により業務を行わなかった場合や自宅待機の際、労働基準法や民法などの規定により会社都合による休業指示となります。この場合、ノーワーク・ノーペイの原則は適用されず、会社は従業員に給与を支払わなければなりません。

給与計算の端数処理~1か月の賃金支払額~

賃金は全額で支払うことが、労働基準法に規定されている基本原則です。そのため、原則として1か月単位でも給与は正確に1円単位計算し支給しなければなりません。

しかし、1か月単位給与計算の端数処理で、一定額に満たない給与が生じた場合は、例外として端数処理が可能です。その端数処理の方法をここではお伝えします。

ただし、就業規則にその旨の記載があることが条件となっており、その旨の記載がなければ労働基準法違反となるので注意が必要です。

1か月の賃金支払額における50円未満・以上の扱い

給与計算において、1か月の支給総額から所得税や社会保険料などを控除した額に端数100円未満が生じた際は、その端数50円未満を切り捨て、また端数50円以上を切り上げることが可能です。

たとえば、給料支給総額が202,222円の場合に222円を200円に切り捨てて202,200円とし、総額が202,266円の場合に266円を300円に切り上げ202,300円として支給できます。

1か月の賃金支払額における1000円未満の翌月繰越

給与計算において、1か月の支給総額に1,000円未満の端数がある場合、翌月の給与へその金額を繰越せます。たとえば、当月の給与支給総額300,880円の場合は880円を繰り越し300,000円として支給できます。

そして、翌月の給与支給額が303,500円の場合、前月の給与から繰越した880円のうち500円を加算して304,000円を支給し、残りの端数380円を翌月に繰り越すことが可能です。

給与計算の端数処理~割増賃金~

給与計算の端数処理において、実務でトラブルが多いのは、従業員が時間外に就業した場合の割増賃金の計算です。ここでは、会社と従業員間で問題となりやすい割増賃金の端数処理について3つお伝えします。

1か月を通算したときの時間外労働の30分未満・以上の扱い

給与計算において、割増賃金は1分単位で計算することが労働基準法で求められます。ただし、これには例外があり、従業員の給与を1ヶ月の期間で通算し計算する場合、30分以上1時間未満を1時間に切り上げ、かつ30分未満を切り捨てることが可能です。

たとえば、従業員の時間外労働が40時間20分の月があった際、20分は給与計算において切り捨ても可能で、割増賃金の対象となる就業時間は40時間になります。また、同様の時間が40時間40分の月があった際、40分を1時間に切り上げ、合計で41時間が合計の就業時間となります。

1時間あたりの賃金の50銭未満・以上の扱い

従業員が時間外労働をした場合、時間外労働分の割増賃金を計算する際、該当月の給与から時給である1時間あたりの金額を計算し、それに割増率の乗せた1.25を乗じて給与を支給します。

このとき、計算した時給である1時間あたりの金額で1円未満の端数が生じた際は、50銭を基準に切り上げや切り捨てによる計算が可能です。

たとえば、時給に換算した金額が1,000円10銭の場合は10銭を切り捨てて1,000円に、また時給に換算した金額が1,100円80銭の場合は、80銭を1円に切り上げて1,101円にできます。

1か月の割増賃金額における50銭未満・以上の扱い

給与計算において、割増賃金の1ヶ月分の合計額に1円未満の端数がある際、先にお伝えした1時間あたりの50銭未満・以上の扱いと同様、50銭未満を切り捨て、50銭以上で切り上げて給与計算できます。

給与計算で困ったら専門家に相談を

給与計算における端数処理には労働基準法に規定があり、複雑な計算により給与を支給します。さらに給与計算にはノーワーク・ノーペイの原則と例外などの知識も必要です。

自社に給与担当を置かず、外部に給与計算を依頼する際、顧問税理士に全部もしくはその一部を依頼することが中小企業では一般的です。給与計算は所得税や法人税の計算とも関係し、正確な税務申告を行うため顧問税理士に計算と元帳などの管理を任せた方が会社のコストや業務効率でメリットがあるからです。

会社の設立から面識のある税理士と顧問契約を締結しすでに信頼関係があること、給与計算で担当者に最も負荷のかかる年末調整の申告を税理士に依頼していること、給与計算の人材を雇用、また給与計算のプロである社会保険労務士を探す時間のロスなどを鑑み、税理士に給与計算を依頼している状況が多くあります。

なお、会社の従業員数が多く就業管理や給与計算が煩雑な場合は、社会保険労務士に給与計算を依頼することをおすすめします。現状では、従業員の多い会社の給与計算を顧問税理士が依頼を受けないことがあり、また間違いの許されない給与計算を正確に行うには、給与計算と密接な関係のある社会保険のプロである社会保険労務士に給与計算全般を依頼するのが妥当です。

税理士は社会保険労務士と連携し給与計算の依頼を受ける場合もあり、まず顧問税理士に給与計算を依頼できるか相談してください。

中小企業での給与計算は、顧問税理士や社会保険労務士に依頼しているケースが多いです。ただし、独占業務が税理士や社会保険労務士などにはあり、依頼する業務を全部いずれかに絞ることはできません。そこで給与計算の依頼先を、顧問税理士や社会保険労務士のどちらに依頼するのか検討が必要です。

まとめ

給与計算における端数処理は原則として切り捨てNGです。しかし、例外もあるため、給与計算の端数処理は労働基準法の規定に違反しないように十分注意する必要があります。特に割増賃金の計算ではトラブルが多いため、法律の規定どおりに正確に計算されているか必ず確認しましょう。

また、給与計算にはノーワーク・ノーペイの原則により、給与を支払わなくてよい場合、また給与を支払わなければならない場合などもあり、法律の原則を理解することが大切です。給与計算の端数処理や税金の処理などに困った場合は、顧問税理士や社会保険労務士などに相談することをおすすめします。

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