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交通費とは?支給に関する基本的な考え方や計算方法について解説

2022/06/19 2024/08/07

給与計算システム

交通費とは

従業員に支給される交通費について、支払い義務はあるのか、給与計算はどのように行うのか気になる方もいるのではないでしょうか。本記事では、交通費の考え方や所得税との関係、給与計算方法などを詳しく解説します。交通費に関する規定の作成方法も紹介しているため、参考にしてみてください。

交通費とは?

交通費とは、従業員が職場や指示された場所に向かう際などの移動にかかる費用のことです。例えば、出張にかかる旅費や業務上で移動する電車やバス、自動車を利用した時の費用などが交通費に該当します。

交通費には、「通勤交通費」と「旅費交通費」の2種類があります。

通勤交通費

通勤交通費は、従業員が職場に通勤するためにかかる交通費のことです。電車やバスなどの公共交通機関のほか、車やバイクで通勤する際にかかる費用が該当します。通勤交通費は従業員が立て替えて、給与と同時に支給されるケースが一般的です。

しかし、通勤交通費は法的な支払い義務はないため、就業規則や雇用契約書に明記されている場合に限り支給されます。

旅費交通費

旅費交通費は「出張交通費」や「営業交通費」とも呼ばれ、出張や営業活動にかかる交通費のことを指します。従業員が立て替えを行い、あとから実費が支給されるケースが一般的です。旅費交通費が高額になる場合は、先に仮払金を会社が支給して、後日実費との差額を精算します。

通勤手当とは?課税・非課税や支給上限・計算方法ついて解説

交通費の支払い義務について

実は、交通費は会社側に法的な支払い義務はありません。

しかし、労働基準法では「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」を就業規則に定めなければならないとされています。この場合、交通費は「その他の負担」に該当すると考えられます。

交通費に関する規定をしっかりと定めなければ、従業員と会社の間でトラブルを招き、交通費の経費を処理する際にも影響を及ぼすことがあるでしょう。実際に、多くの企業では就業規則で支給基準や上限額などを定めて、従業員に交通費を支給しています。

法律上の支払い義務はありませんが、就業規則に定めた場合は規定に沿って支払う必要がある点に注意が必要です。

[出典:e-Gov 法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法」]

交通費と税金の関係

給与と一緒に支給される交通費は、課税対象になるのかどうか気になる方も多いのではないでしょうか。もし交通費が課税対象となる場合は、所得税や住民税などに大きな影響を与えます。ここからは、交通費と税金の関係について解説します。

交通費と所得税の非課税限度額

交通費は、基本的には上限額を超えなければ非課税となります。

配偶者や扶養家族の年収が103万円以下の際に適用される配偶者控除においても、年収に交通費は含まれません。仮に年収が100万円で交通費が5万円支給されていたとしても、交通費の5万円は年収に含めず100万円のみを年収として扱います。

また、年末調整では「配偶者控除申告書」などの書類を記入しますが、この際も交通費は含まない年収を記入します。>しかし、通勤交通費は通勤方法によって非課税額が異なり、限度額を超えた場合は課税されるため注意しなければなりません。

例えば、電車やバスは150,000円、自動車や自転車の場合は片道2km~10km未満で4,200円、片道10km~15km未満で7,100円など、非課税額が細かく定められています。

交通費と社会保険料

交通費は非課税ですが、社会保険料の計算に用いる標準報酬月額には通勤交通費が含まれます。

そのため、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの各種社会保険料の計算には、通勤交通費を含んだ標準報酬月額が用いられます。しかし、通勤以外にかかった交通費である旅費交通費は、標準報酬月額には含まれません。

給与明細に記載される項目とは?天引きされる税金や保険料を解説

交通費に関する規定の作成方法

交通費に関する規定は、項目をしっかりと定めて従業員含めて通達、把握していることが重要です。規定を緩く作ってしまうと、従業員とのトラブルへと発展する恐れが高まります。

ここからは、どのような項目を入れ込むべきか、交通費の規定作成のポイントについて解説します。

支給要件を定める

まずは支給要件を定めることが重要です。交通費を支給する場合と、支給しない場合の要件を定めておきましょう。

例えば、「自宅から職場までの距離が◯km未満の場合は交通費を支給しない」などの要件を定めます。次に、支給方式についても定めておきましょう。交通費の支給方式には、次の3つがあります。

  • 全額支給
  • 一部支給
  • 一律支給

全額支給は、従業員の通勤にかかった交通費を全額支給する方式です。一部支給は、「1日1,000円まで」などの上限を定めて支給します。

一律支給は、日や月単位で定められた交通費が一律で支給される方式です。会社と従業員の双方が納得できる方式で、交通費を支給しましょう。

支給内容を定める

支給内容は、交通で使うルートを定めます。交通ルートを申請する際、最短で最安のルートになるようにしましょう。

従業員の中には、遠回りで交通費が高くなる交通手段を選び、余分な額を請求するケースもあります。会社側が不要な支出を防ぐためにも、明確な支給内容を定めることが重要です。

申請方法を定める

交通費を支給するためには、申請をする必要があります。しかし、申請する方法を定めていなければ、交通費を使用していたことを証明できずトラブルを招く恐れもあるでしょう。

例えば、新規で申請する場合の手続き方法や、通勤経路が変更になった際の申請方法などを具体的に定めておきましょう。どのように申請するのか定めることで、交通費の支給がスムーズになります。

例外事項を定める

交通費を支給するのかは会社次第ですが、従業員が働きやすくするため、例外事項を定めることもあります。

有給休暇や慶弔休暇などにおける交通費の支給有無、入社や退職時は交通費の金額が日割り計算になるのかなどが例外事項にあたります。就業規約で例外事項を定める際は、トラブルを回避できるように考慮が必要です。

交通費の給与計算方法

交通費の給与計算をする場合、公共交通機関や自家用車など通勤方法によって非課税額が異なります。ここからは、それぞれの通勤方法における給与計算方法を解説します。

公共交通機関で通勤している場合

公共交通機関で通勤した場合、非課税限度額は「1カ月で15万円」です。交通費を支給する前に、路線やルートに間違いがないかの確認が重要です。

問題がなければ、定期代や現金など、会社が指定した方法で支給されます。しかし、月額15万円という高額の交通費を限度額にしている会社は少なく、勤務地からの距離など通勤範囲内で決め、見合った交通費を支給限度額として設定しています。

自家用車で通勤している場合

自家用車で通勤した場合、片道の通勤距離で非課税となる限度額が異なります。具体的な限度額は以下のとおりです。

片道の通勤距離1カ月当たりの限度額
2km未満全額課税
2km以上10km未満4,200円
10km以上15km未満7,100円
15km以上25km未満12,900円
25km以上35km未満18,700円
35km以上45km未満24,400円
45km以上55km未満28,000円
55km以上31,600円

[出典:国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」]

また、基本的に車を使った際に消費するガソリンなどの燃料は、自己負担となる場合が多いです。そのため、燃費が悪いと従業員の負担が増してしまう点に注意しましょう。

公共交通機関と自家用車を併用する場合

公共交通機関と自家用車を併用した場合、それぞれの非課税限度額が適用されます。公共交通機関であれば月額15万円が限度額で、通勤に利用するルートなどを提出し、金額を割り出していきます。

自家用車の場合、片道の距離を先述した非課税限度額の表と見合わせて、1カ月当たりの限度額を確認しましょう。

しかし、上記の方法以外に従業員に不平等にならないように交通費を支給できれば、計算方法については特に決まりはありません。交通費を支給する場合は、算出する方法をしっかりと定めておくことが大切です。

出張の場合

出張に関する交通費は旅費交通費に含まれ、経費としてみなされるため基本的には非課税となります。しかし、旅費が高額になる場合は課税対象となる場合があるため注意しましょう。

例えば、業務のための移動だからといって、飛行機でファーストクラスを利用するなどの必要以上の出費をした場合、課税対象となる恐れがあります。

また、国税庁の基準に則って定めた社内規定で、非課税の金額を定めることも可能です。この場合も、出張に関する旅費について定めた規定を逸脱した交通費は、課税対象となる場合があります。

交通費を支給する際の注意点

交通費の支給方法について誤ると、不正問題やトラブルを招く恐れがあります。ここからは、交通費を支給する際の注意点を3つ紹介します。

就業規則と賃金規定

就業規則や賃金規定で交通費の支給に関する規定を定めていた際、支払い義務が発生します。この規定を決める時に考慮するポイントは、会社の事業内容や経営状況などに合わせて作成することです。できる限り詳細に交通費の設定をしておくと、後々のトラブルを回避しやすくなります。

例えば、通勤手当がどのようなケースまで許容されるのか、有給でも交通費の支給があるのかなどがあげられます。。交通費で定める規定は多くあるため、規定の内容によっては会社のデメリットを極力減らせます。

意図しない不正受給に注意

通勤ルートの確認ミス、または申請を忘れたことによって不正受給になる場合があります。例えば、引越しでルート変更したことを申請しない場合や、申請内容と違ったルートを使う場合などが不正受給に該当します。

軽いものならば注意されるだけで済むこともあるでしょう。しかし、大きな問題の場合犯罪とみなされて、懲戒処分などの罰を受けることもあります。意図せず不正受給にならないように、ダブルチェックなどの確認作業にも力を入れるべきでしょう。

給与計算に必要なダブルチェックのポイントとミスをなくす防止策とは?

テレワーク中の交通費精算に注意

テレワークでは仕事の環境が変わりやすいため、交通費の支給額などを変更しなければならない場合もあるでしょう。例えば、社内での仕事からテレワークになったとき、交通費の支払い額は少なくなります。

もし交通費をテレワーク前と同様に支給していたならば、会社にとって不必要な負担となってしまいます。このようにテレワークに切り替える会社が増加したことで、交通費精算も見直しが求められているのです。

会社の負担を減らすために考慮するポイントなので、テレワーク中の交通費精算をする際は注意して対処することが必要です。

【2024年最新版】給与計算ソフトおすすめ11選!タイプ・規模別に徹底比較

給与計算における交通費の扱いを理解しよう

交通費は、法的には支払う義務はありませんが、就業規則で交通費について定めている場合は支払う義務があります。

また、交通費を給与計算する際には、経費に含まれる「旅費交通費」と、給与計算にも含まれる「通勤交通費」のどちらに該当するのか把握し、課税対象なのかを調べなければなりません。交通費を支給する際は、規定を詳細に定めて間違いがないか確認することが非常に大切です。

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