人事評価で社員がやる気をなくす理由とは?原因や対応方法を解説
働く人のモチベーションを大きく左右する「人事評価」。従業員の成長を促すこともあれば、納得いかない評価を受けてやる気をなくしてしまうケースも少なくありません。本記事では、従業員がやる気をなくす原因や、適切な人事評価を行うためのコツについて解説します。
・やる気をなくす要因として、不透明な評価基準、評価者との関係性が築けておらずにフィードバックに納得できないなどが挙げられる
・評価基準を明確にした上で、評価者と被評価者の関係性を良好に構築することが人事評価でやる気をなくさないポイント
目次
人事評価で社員がやる気をなくす原因
従業員がやる気をなくす人事評価には、一定の失敗パターンがあると言われています。代表的な要因を4つご紹介しますので、まずはそれぞれの背景を理解しておきましょう。
人事評価制度の基準が不透明で曖昧
人事評価制度に基準がなく属人的な評価に頼っている組織には、評価制度に不満を持つ従業員が発生しやすい傾向があります。
評価基準がわからないままに低評価を受け続けると「不当である」、「努力しても無駄」、「公平な待遇ではない」と不満が募っていきます。とはいえ、人間が評価を行う以上、主観的な要素を完全に排除することは難しいでしょう。
そのため、制度により公平性が保てる仕組みを作る必要があるのです。
人事評価基準そのものに不満がある
人事評価の基準自体への不満は、従業員が自分の仕事や成果を正当に評価されていないと感じる主な理由の一つです。
評価に業務の実態や貢献度が正確に反映されていないなど、基準そのものに不備があれば、従業員のモチベーションが下がってしまうので当然の結果といえるでしょう。
業務内容・ポジション・本人の望むキャリアプランに対して、柔軟に対応できる評価基準の設定や、評価者が「一人ひとりに合った評価」の重要性を理解していなければ、評価基準への不満は、さらに大きなものになってしまいます。
上司からのフィードバックに納得できていない
上司からのフィードバックに問題が潜んでいる場合もあります。
個人面談を行い、評価結果に対するフィードバックを行っていたとしても、その内容が、適切に被評価者へと伝わっていなければ、納得感は得られません。フィードバックでは、「良かった点」のほか、さらなる努力を期待したい点や、どういった貢献ができれば、高い評価が得られるのかを明確に伝えるようにします。人事評価の制度さえ整えればうまくいくわけではない、ということに注意しましょう。
上司との信頼関係が築けていない
たとえ上司が適切な評価、フィードバックを行っていたとしても、日常のなかで評価者である上司が部下からの信頼を得られていなければ、嫌悪感から素直に受け止めてもらうことが難しくなってしまうでしょう。
つまり、人事評価を機能させるためには、常日頃の信頼関係の構築が前提となるのです。
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人事評価を改善しないことで起こるリスク
人事評価に対する構造的な不満を放置することは、企業にとって大きなリスクです。具体的な影響からどんな損失を招くかを想定して、未然に防ぐための体制を整えておきましょう。
離職率が高まる
人事評価への不満は、離職率の上昇に直結します。不透明な人事評価から組織への信用を失い、離職を決めた社員を引き止めるのは、容易ではありません。
優秀な社員の流出は、生産性や組織力の面で大きな損失であり、早急に対処する必要があります。
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モチベーションや生産性が低下する
日々の仕事内容や努力が正当に評価されなければ、「いくら頑張っても無駄」、「努力してもしなくても同じ」と、仕事への意欲は徐々に失われることになります。
さらには、不満を持つ従業員のネガティブな意見が周囲に蔓延し、組織全体のエンゲージメントを下げる存在に変わってしまうことすらあるでしょう。このような場合も早期のコミュニケーションと改善が求められます。
不服申し立てをされる可能性がある
人事評価に不満を持つ従業員を放置すると、最悪の場合には不服申し立てなどの訴えを起こされ、損害賠償を支払うことになります。過去には、既婚を理由に不当な低評価を行ったとして、差額賃金や慰謝料の支払いが企業側に命じられた判例もあります。
裁判にまで発展してしまえば、もはや社内だけの課題ではなくなります。顧客や金融機関からの信頼にも影響しますので、こうした事態にならないように人事評価制度を整備しておきましょう。
社員のやる気を高める対応方法
では、どのような人事評価をすれば従業員のやる気を引き出せるのでしょうか?代表的な対策を見ていきましょう。
評価基準と待遇を明確にする
不明確な基準は、可能な限り明確化しましょう。評価項目や評価基準を明確にした上で全社的に開示することで、「恣意的な評価にウンザリしている」という不満は低減されます。また、評価項目や基準は、状況に合わせて定期的に見直すことも忘れずに行いましょう。
さらに、「高い評価を得るための成果基準」や「業務プロセスにおいて期待する役割」、目標を達成した場合の「待遇への反映度合い」の3点が明示されていると、不満を抑えるだけでなくモチベーションの活性化につながります。
定期的なコミュニケーションを心がける
日頃のコミュニケーションの質も重要です。人事評価制度で定めた定期面談以外にも、信頼関係を築くためのコミュニケーションを積極的にとりましょう。
何気ない雑談には、人間関係をスムーズにして職場を明るくする効果があります。人事評価では測りきれない要素として見落とされがちですが、組織の生産性を大きく左右します。
ただし、嫌なことや困っていることなどを、上司に伝えられる部下ばかりではありません。1on1などのコミュニケーションの場が、何気ない雑談だけに終わってしまわないよう、上司は、質問する内容や本音を引き出せる雰囲気づくりなどを工夫しなければなりません。
ポジティブなフィードバックを適切に行う
人事評価では、できていることや良い点に焦点を当てたポジティブフィードバックを心がけましょう。さらなる努力が求められる要素については、できなかった点を伝えるのではなく、期待する役割を伝えることでポジティブな印象になります。
アメとムチは両方のバランスがあって初めて機能します。なによりも、多くのビジネスパーソンにとって仕事を褒められるのは大きな喜びであり、モチベーションとなることを理解した伝え方の工夫が大切です。
人事評価と人事制度を連動させる
「頑張って評価されても、処遇に反映されない…」こう思われては、人事評価がかえってマイナスに作用することすらあります。反対に、評価とキャリアに正しく連動していれば、モチベーションとパフォーマンスを最大限に引き出すことができるでしょう。
例えばプロ野球選手の評価は、打率や防御率などの数値化された成果と人事評価がわかりやすく結びつく、客観的なデータを用いた評価制度のロールモデルです。評価と人事制度が結びついていることで、組織全体の人事への納得度も上がり、信頼関係も築きやすくなります。
評価結果を本人以外に公開しない
人事評価は、被評価者同士で閲覧・共有されることのないよう、人事担当者と評価者に限定した取り扱いを徹底しましょう。
被評価者同士が評価結果を共有できる環境になると、「自分の方が頑張っているのに」といった不満が必ず生まれます。相対評価を取り入れる場合も、結果については公開することを避け、従業員一人ひとりの個性や心情を尊重した上で、柔軟にフォローしてあげることが重要です。
評価者研修を実施する
適切な評価を下すには評価者のスキルを磨く取り組みも必要です。
評価がうまくいかないと感じたときには、人材企業が行う評価者研修を利用するのも一つの手です。産労総合研究所による調査では、2016年時点での評価者訓練の導入率は71.4%に達しています。
時代や環境の変化とともに改善される評価基準に合わせて、評価者も正しく公平な評価ができる意識やスキルを身につけられる体制を整えましょう。
[出典:株式会社産労総合研究所「2016年 評価制度の運用に関する調査 人事 評価制度の運用に関する調査」]
人事評価の種類
人事評価にはさまざまな種類があります。これらの評価方法は、産業の多様化や働き方の多様化に対応するために生み出された手法です。代表的なモデルを5つご紹介します。
バリュー評価
バリュー評価とは、企業が掲げる理念にどれだけ忠実に行動できたか?を評価基準とする人事評価モデルです。バリューを実現する行動や意思決定を継続することで、成果は自然と上がるとの考えをもとに、成果よりもプロセスや行動を大きく評価に反映させる特徴があります。
一例としてヤフー株式会社は、「課題解決」「爆速」「フォーカス」「ワイルド」という4つのバリューを評価基準に組み込み、現状の利益よりも将来の創造性を重視した組織づくりを推進しています。
[出典:日本の人事部 四つのバリューで働き方のリズムを変える!ヤフーの“爆速”経営を支える“ワイルド”な新評価制度とは]
360度評価
360度評価(多面評価)とは、上司からの評価だけではなく、同僚や他部署の従業員からの評価、場合によっては、取引先に実施したアンケートの結果なども評価結果に反映させる評価法です。
360度評価を取り入れることで、評価者と批評者の関係性による恣意的な評価の偏りや不当な評価を避けることができ、より客観的で多角的な評価を下すことができるようになります。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、優秀な人材の行動特性(コンピテンシー)や思考を分析し、同じことが出来ているか?を基準に評価する手法です。
バリュー評価と似ていますが、コンピテンシー評価では、概念ではなく、実在する(あるいは、してほしいと願う)人物が実際に取る、または、取った言動を基準に評価されます。
バリュー評価と比べて評価基準を具体化しやすいため、制度の浸透や評価が明確になるメリットがあります。その反面、導入までのモデル策定に時間がかかったり、環境が変化するとコンピテンシーが時代に合わなくなるなどのデメリットがあります。
目標管理制度(MBO評価)
目標管理制度とは、個人やチームで自主的に立てた目標に対しての達成度を見る評価基準です。目標を本人たちに決めさせることで、現実離れした目標設定を回避したり、モチベーションを確保することが狙いです。
その代わり、やる気のない従業員が低い目標を立ててしまったり、やる気が過剰な従業員が難しすぎるハードルを設けるなどのリスクがあります。個人やチーム単位の意見を最大限に尊重した評価制度なので、縛られることを嫌う自主性の高い組織に適しています。
▷目標管理制度(MBO)とは?メリット・デメリットや実施手順、OKRとの違いをわかりやすく解説
ノーレイティング評価
ノーレイティング評価は、従業員のランク付け(レイティング)を廃止する代わりに、こまめな面談を行い、上司の裁量で評価を下す方法です。
変化の速いIT業界では、従来の評価基準があっという間に通用しなくなるため、フットワークの軽い評価システムが求められていました。その結果、組織としての評価基準を限りなく減らし、現場の上司に評価権限を与えることで生まれた評価手法です。
上司の恣意的な評価になりがち、ミーティングを頻繁に行わなければ正しい評価ができないなどのデメリットはあるものの、従業員をいち早く評価できるメリットもあります。実際にIBMやアドビシステムズといった大手IT企業が、ノーレイティング評価を導入しています。
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やる気をなくす原因を追求し人事評価を改善しよう
適切な人事評価制度は、従業員のやる気をより高めて組織に利益をもたらしてくれます。しかし、時代や業種によって「適切」の正解は千差万別です。先人の知恵を上手に借りながら、自社にピッタリの人事評価制度を模索してみてはいかがでしょうか。
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