人事評価制度がない会社とは?制度がないリスクやメリット・廃止した企業事例

最終更新日時:2024/02/27

人事評価システム

人事評価制度がない会社

昨今、人事評価制度を廃止する企業が現れています。人事評価は給与査定などの判断基準にもされていますが、なぜ制度が廃止されているのでしょうか?本記事では、人事評価制度を廃止する理由、人事評価制度がない場合のメリットやリスクを、事例などと併せて解説します。

企業が人事評価制度を廃止する場合の理由

企業が人事評価制度を廃止するに至るには、複数の理由が考えられます。人事評価の実態や影響が現場の状況にそぐわなければ、制度の存在が足を引っ張ってしまいかねません。

ここでは、企業が人事評価制度を廃止するにあたっての理由を3つ紹介します。

従業員数が少ない

従業員数が少ない企業では、上司と部下がコミュニケーションを密に行うことができます。このような環境では、上司が部下の勤務態度や成果、仕事に対する意欲を日頃から把握できるため、半年に一度などの従来の人事評価制度が不要になる場合があるのです。

密接なコミュニケーションを通じ、直接的なフィードバックを行えば、課題をその都度解決・改善していくこともできるため、業務効率の改善にもつながります。

評価に不満を抱える従業員の流出防止

人事評価制度の公平性を保つことは、多くの企業にとっての課題です。評価の結果に対する不満が原因で、従業員が離職してしまうことも少なくありません。

評価基準が曖昧であったり、評価過程でのコミュニケーションが不足している場合には、特に不満が高まりやすいといえます。このような背景からも、評価制度そのものを廃止し、従業員のモチベーション維持と流出防止につなげようとする動きが見られるのです。

環境変化に合わせた評価制度の改善ができない

現代のビジネス環境は非常に速い速度で変化しており、従来の評価制度では改善スピードが間に合わないことがあります。評価制度が固定的なために、新たな業務や役割の評価が適切に行われない、または変化する環境に対して柔軟に対応できないなどの問題が生じるかもしれません。

このような実態にそぐわない状況が続けば制度の公平性や適切性が損なわれるため、人事評価制度の廃止や大幅な見直しを検討する企業があるのです。

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従来の人事評価制度の課題

従来の人事評価制度には、運用の手間や公平な評価基準の設定の難しさ、評価者の主観による偏りなど、多くの課題が存在します。これらの課題は、従業員のモチベーション低下や組織の生産性に対する悪影響を招く恐れがあります。

ここでは、課題の内容について具体的に見ていきましょう。

評価に手間がかかる

人事評価制度の運用には、評価基準の策定から評価の実施、フィードバックを行うまで、多大な手間がかかります。特に、評価基準を明確にし、すべての従業員に公平に適用するプロセスは時間を要するでしょう。加えて、定期的な評価の準備や実施も、管理職の負担を増やす要因です。

評価基準の設定が難しい

公平かつ明確な評価基準の設定は、人事評価制度の課題の中でも特に難しいといえます。それぞれの従業員が担っている業務の種類が多様であるほど、一律の評価基準を設定することは困難になるでしょう。このため、評価基準がどうしても曖昧になってしまい、結果的に評価の公平性を損なってしまうのです。

評価者によって結果が偏ってしまう

人が評価を行う以上、評価者の主観や感情が結果に影響を及ぼすことは避けられません。評価者の個人的な好みや先入観、該当の従業員との日々の関係性によって評価結果が多かれ少なかれ左右されてしまうと、公平性の面で問題となります。

人事評価制度が浸透していない

人事評価制度が組織内に十分に浸透していない場合、従業員の理解や協力を得られないことがあります。評価制度の目的や利点が明確に伝わっていないと、従業員は評価プロセスを面倒なものと考えてしまうかもしれません。その結果、与えられた評価を真摯に受け止めようとする姿勢が欠けてしまう可能性があるのです。

こうなっては、評価制度の効果が低下し、組織の目標達成が妨げられてしまうでしょう。

評価への納得度が低い

評価基準の不明瞭さや評価プロセスの不透明さが原因となり、被評価者が自分の評価結果に納得できない場合もあるでしょう。評価に対する納得度が低いままでは、従業員のモチベーション低下や職場内の不満が高まるリスクとなり得ます。

こうした事態は組織全体の士気に悪影響を及ぼし、最終的には生産性の低下を招く恐れがあります。

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人事評価制度がない会社のメリット

人事評価制度を持たない場合、管理職の業務負担が軽減されるだけでなく、従業員の自由度が高まるといったメリットを得られます。ここでは、具体的なメリットを紹介します。

評価者となる管理職の業務負担がなくなる

人事評価制度を持たない大きなメリットとしてまず考えられるのが、評価を行う管理職の業務負担が大幅に軽減されることです。人事評価に関連する業務は、評価基準の策定、評価の実施、フィードバックの準備・実施など多岐にわたり、管理職の本来の業務を圧迫しかねません。

評価制度がなければ、管理職はこれらの業務に費やす時間とエネルギーを、本来の業務やチームの育成、新しいプロジェクトに対して割くことができます。そうなれば、組織の効率性と生産性が向上するだけでなく、管理職自身の職務満足度も高まるでしょう。

評価に捉われず業務に取り組める

人事評価制度がない環境では、従業員は評価に対するプレッシャーから解放され、業務に集中できるようになります。評価を気にして発言やアイディアの提案を躊躇したり、オリジナリティを制限されることがなくなるためです。

評価のプレッシャーがなくなれば、従業員は新しい取り組みにより自由に挑戦できるようになるため、組織としてのイノベーション促進も期待できます。このような環境では、従業員のモチベーションも高まり、職場の雰囲気やチームワークも良くなるでしょう。

人事評価制度がない会社のリスク

一方で、人事評価制度がない場合、昇給や昇進についての公平な基準がないために、何にどのように取り組めばよいのか、従業員に迷いが生じる可能性があります。

ここでは、人事評価がない会社に発生するリスクを見てみましょう。

昇給・昇進の判断基準がなくなる

人事評価制度がないことで考えられるリスクの1つ目は、昇給や昇進の判断基準が不明確になることです。従業員間に不公平感が生じれば、職場内の人間関係に悪影響が及ぶでしょう。

具体的には、業績や貢献度が同じように評価されず、昇給や昇進の決定が管理職の主観に偏ることが考えられます。透明性が欠けることで従業員の間の信頼関係が損なわれてしまうと、組織全体の士気が低下する恐れもあるのです。また、判断基準がないことは、かえって管理職の評価に関する業務を増やす可能性もあるでしょう。

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適正な人材配置ができなくなる

人事評価制度がない状況では、従業員の能力や適性に基づいた適正な人材配置が難しくなります。評価制度によって得られるはずの客観的なデータやフィードバックがなくなることで、管理職は従業員の実力を正確に把握しにくくなるためです。このため、それぞれの能力に最も適した役割やプロジェクトに配置することが困難になると考えられるのです。

このような状況では、従業員は自分の能力を発揮できないことにフラストレーションを抱え、生産性が低下する可能性があります。

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従業員の目標が定まらない

人事評価制度が存在しない場合、従業員は自己の成長や業務の目標を定めにくくなります。個々の目標設定とそれに基づくフィードバックを通じて、従業員の成長を促すことが評価制度の目的です。そのため、このプロセスがないと、従業員は仕事に対する具体的な目標や進捗の指標を持てず、仕事への意欲を失ってしまうかもしれません。

また、個人やチームの技術革新や改善に向けた動機づけも弱まり、組織の革新性や競争力の低下につながる恐れもあるでしょう。

従来の人事評価制度に替わる「ノーレイティング」とは?

ノーレイティングは、従来の人事評価制度に代わる新しい評価手法です。このアプローチでは、従業員を数値やランクで評価する代わりに、継続的なフィードバックや対話を通じて、個々の成長と組織の目標達成を支援します。

ノーレイティングの最大の特徴は、年に一度の評価ではなく、日常的なコミュニケーションを重視する点にあります。従業員は自己の仕事に対して随時フィードバックを受け取り、それを基に自己改善を図ることができるのです。

従来の評価制度がもたらすストレスや不満を軽減し、より柔軟で生産的な職場環境を促進することがこのノーレイティングの目的です。ノーレイティングは、部下と上司の積極的なコミュニケーションとポジティブな関係構築を促すことで、組織全体のパフォーマンス向上を図る制度なのです。

人事評価制度を廃止した企業事例

人事評価制度の廃止は、企業にとって大きな転換点となります。ここでは、その決断を下し、新たな人材管理のアプローチを採用した企業の事例を紹介します。

サッポロビール株式会社

サッポロビール株式会社は、20年ぶりとなる人事制度の全面刷新を決行し、2021年1月にノーレイティングも含む新制度を開始しました。

人事制度を刷新する一番の理由は、世の中の変化に対する対応力を強化するためでした。従業員への調査や観察から、新しいことへのチャレンジや変化への対応スピードに課題があることがわかったため、大きな変革が起きずらい業界においても、積極的に変化していく体制を目指す必要があったのです。

そこで、評価の視点そのものを変え、「どれだけのチャレンジをしたか」と「組織の目標にどれだけ貢献したか」という2つを主眼とすることにしました。この変革は、コミュニケーションの活発化や評価への納得感の高まりから、多くの従業員にポジティブに捉えられています。

参照元:人材・組織システム研究所「年齢給廃止・ノーレイティングにまで踏み込んだ人事制度改革が目指すもの

カルビー株式会社

カルビー株式会社では、2012年からノーレイティングを取り入れた評価を実施しています。特徴的なのが、その年の初めに「Commitment & Accountability」と呼ばれる契約を企業と従業員で行うことです。1on1の場を用いて仕事の内容と目標のコミットメントを決めてこの契約を結び、達成度合いに応じて評価が決まります。そのため、内容は従業員一人ひとり異なります。

従業員本人が目標を決めることで評価に対する納得感が高まるほか、他の従業員の目標と影響し合う場合も多いため、お互いがフォローやサポートを行う場面が増えたこともメリットです。決めたコミットメントは全社に公表されることも透明性を担保する一因です。

この人事制度改革によって、カルビーは5年で利益率を10倍に上昇させることに成功しました。

参照元:カルビー株式会社「人材・組織システム研究所「年齢給廃止・ノーレイティングにまで踏み込んだ人事制度改革が目指すもの」

評価制度の目的は、組織のパフォーマンス最大化

運用に手間がかかることや管理職の負担が多いことなどから、人事評価制度を廃止する企業があります。ノーレイティングなどを取り入れて、上司と部下が積極的にコミュニケーションを取る方式は、変化の速い現代のビジネス環境にも適しているといえます。一方で、明確な基準がないことで従業員の目標が定まらないといったリスクには注意が必要です。

自社の状況や課題に照らし合わせ、人事評価制度について再検討してみるとよいでしょう。

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