情意評価とは?評価の書き方・例文や情意評価のメリット・デメリットを解説
人事評価の基準の1つである、「情意評価」。従業員を多面的に評価するのに役立つ情意評価ですが、具体的に何を評価するのでしょうか。本記事では、情意評価とは何かや、評価項目、導入するメリット・デメリットを、コメントの書き方や例文などと併せて詳しく解説します。
・情意評価とは、従業員の仕事に対しての姿勢や意欲、勤務態度などを評価する基準のひとつ
・情意評価の主な項目は、規律性、協調性、積極性、責任感などがあげられる
目次
情意評価とは?
情意評価とは、従業員の仕事に対する意欲や姿勢、勤務態度などを評価する人事評価の基準の一種です。一般的な人事評価の基準には、「能力評価」「業績評価」に加え、この「情意評価」があります。
それぞれの評価項目と評価内容は以下の通りです。
評価基準 | 評価項目 | 評価内容 |
能力評価 | 知識、技術、判断力など | 業務を遂行するうえでの能力を評価 |
業績評価 | 目標達成度、実績など | 実際の業務成果を評価 |
情意評価 | 意欲、態度、倫理観など | 仕事への取り組み姿勢を評価 |
情意評価は、従業員の内面的な資質や人柄、外に現れる日常的な振る舞いなどを多角的に評価する点が特徴です。たとえば、熱意に満ちた前向きな姿勢は高く評価される一方、怠惰な態度は低い評価につながります。
判断基準となる数値がなく、評価者の主観が入りやすいため、公平性が保たれているかどうかが重要視されます。
情意評価の項目とは
情意評価では、従業員の業務への取り組み姿勢を多角的に評価します。ここでは、主な評価項目を4つ紹介しましょう。
規律性
規律性とは、会社の就業規則やルール、上長の指示などに従って行動できているかを評価する項目です。具体的には、出勤時間を守れているか、服装規定を遵守しているか、業務の手順に沿って確実に作業しているか、といった点が評価の対象となります。
つまり、組織の一員として守るべきマナーや規範をしっかりと守れているかが問われるのです。
協調性
協調性は、職場の先輩・後輩や上司と、または部署間で協力しながら業務を遂行できているかを評価する項目です。一人では解決できない課題や達成できないプロジェクトについて、コミュニケーションを大切にしながら互いに助け合うことができているか、また、風通しの良い関係を築くことができているかが重視されます。
組織の効率的な運営に欠かせない資質が問われるといえるでしょう。
積極性
積極性とは、自ら進んで業務に取り組む姿勢があるかを評価する項目です。上司から指示された業務をこなすだけでなく、自主的に新しい提案をする姿勢や、困難な課題に対して前向きに取り組もうとする姿勢があるかどうかがチェックされます。
積極的に行動し、組織の活性化や発展に貢献することが評価のポイントになるのです。
責任感
責任感は、与えられた業務や役割に対する責任を自覚し、その職務を確実に全うしようとする姿勢を評価する項目です。最後まで粘り強く取り組み、期日や品質を守ることは、顧客と良い信頼関係を築くうえでは欠かせません。また、業務の過程で生じた問題や失敗に対して素直に反省し、再発防止に努める姿勢があるかどうかも責任感の評価に加味されます。
情意評価以外の人事評価基準との違い
情意評価は、従業員がどのように業務に取り組んでいるかを評価する基準です。人事評価にはこのほかにも、すでに述べた能力評価に業績評価、そしてコンピテンシー評価があります。
ここでは、情意評価とそれぞれの人事評価の違いを比較しながら見ていきましょう。
能力評価
能力評価では、業務を遂行するうえで必要な知識・技術・判断力などを従業員が十分に有しているかを評価します。場合によっては試験や実技テストで能力を計ることもあります。
対する情意評価は、能力そのものよりも、その能力を発揮するための前向きな姿勢や意欲が見られるかを評価する点に違いがあります。高い能力を持っていたとしても、勤務態度が怠惰であれば、低評価になる可能性があるのです。
▷能力評価とは?業績評価との違いや評価シートへの書き方・評価基準を解説
業績(成果)評価
成果評価では、従業員が実際に上げた業績や、目標の達成度合いを基準に評価します。売上げ、コスト削減額、納期遵守率など、数値化された実績が具体的な評価対象です。
情意評価が内面的な事柄や取り組み姿勢といった数値では測れない部分を評価するのに対し、成果評価は数値で表すことができる客観的な結果を問うものです。成果評価においては、努力は認められても、結果が伴わなければ低評価になりかねません。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、組織の理念や戦略に合致した「求める人材像」を設定し、その人材像に照らし合わせることで、従業員のコンピテンシー(行動特性)を多面的に評価する手法です。
情意評価ではその人自身の内面的資質を評価するのに対し、コンピテンシー評価は企業が求める理想の人材像にどの程度近付くことができているかを評価する点が異なります。
情意評価を導入するメリット
情意評価は、従業員の内面的な資質や姿勢を評価する手法です。ここでは、この評価基準を導入することによって得られるさまざまなメリットを見ていきましょう。
従業員を多面的に評価できる
情意評価では、業績や能力といった数値で測れる側面ではなく、業務に対する意欲や態度、倫理観などを評価します。そのため、業務プロセス中の、成果には直接現れにくい部分の取り組みや、周りへの助言・サポートなども評価の対象となります。
このように、個々の従業員を多面的に評価できる点が大きな利点です。
組織の連帯感を高められる
情意評価の評価項目には「規律性」や「協調性」などがあるため、個人の資質だけでなく、組織の一員としての行動も評価対象です。自分の振る舞いが評価されれば、組織のルールを守り、周りと協力することの大切さを実感できるでしょう。
結果として、従業員一人ひとりの意識が高まり、組織全体の結束力や連帯感が生まれやすくなるのです。
求める人材の育成につながる
情意評価の仕組みを構築する段階では、評価項目は企業の経営理念や方針に沿って設定されます。たとえば「革新性」を重視する企業であれば、積極的にチャレンジする姿勢をより高く評価するでしょう。
評価項目に沿って行動することで、従業員は企業が求める人材像に自然に近づくことができます。情意評価は、優秀な人材を計画的に育成するためにも役立つのです。
情意評価を導入するデメリット
情意評価は従業員の内面的資質を評価するのに有効な手段ですが、一方で留意すべきデメリットもありますので、確認しておきましょう。
目標設定が難しい
情意評価は業務への意欲や姿勢、勤務態度など、定性的な事柄を評価対象とするため、具体的な目標の設定が難しくなります。基準となる数値もないことから、評価の公平性を保つことも課題になり得ます。
事前に従業員と目標のすり合わせを十分に行う必要があるでしょう。
主観的な評価になりやすい
意欲や態度は数値化できないため、評価者の主観に頼らざるを得ません。そのため、同じ行動に対する評価が評価者によって異なってしまう可能性があるのです。そうなると評価の公平性が損なわれるリスクが高まります。
また、数値で測れないことから、被評価者も納得感を持ちにくく、場合によっては不満を抱く原因にもなり得ます。可能な限り客観的な評価基準を設け、評価者間で評価項目に対する解釈を一致させておく必要があるでしょう。
中央値に集中した評価になりやすい
情意評価では、定性的な項目を評価対象とするため、評価者が自身の判断に自信を持てず、極端な高評価や低評価をつけにくくなる傾向があります。結果として、評価が平均値付近に集中し、実力の違いが現れにくくなるのです。
こうなっては、優秀な人材と普通の人材を明確に区別することが難しくなってしまいます。
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情意評価のコメントの書き方
情意評価は従業員の内面的な資質や姿勢を評価するため、評価シートなどに記入するコメントが適切であることが大切です。
ここではコメントの書き方について学びましょう。
評価エラーが発生しないよう客観的な視点を持って書く
情意評価は業務への取り組み姿勢などを対象とするため、評価者の主観が入りやすく、評価エラーが起きがちです。そのため、客観的な事実に基づいてコメントを書くよう注意する必要があります。
個人的な印象や独りよがりな解釈にとらわれず、第三者が見ても納得できるような根拠を示すことが肝心です。できる限り具体的な行動事例を挙げ、公平な視点を保つよう心がけましょう。
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評価に至った理由を具体的に書く
評価に対して被評価者に納得してもらうためには、どのような行動からその評価に至ったのかを具体的に書く必要があります。
たとえば「常に熱心に取り組む姿勢が高く評価できる」というような抽象的な表現では、わかりにくいでしょう。「始業前から自主的に業務準備を行い、効率的に作業を進めていた」など、実際の行動を具体例として示すことで、説得力のあるコメントとなります。
具体的な改善方法を書く
従業員自身が自分の行動を正しく認識しているとは限りません。低評価をつける場合、それを受け入れやすいよう、具体的にどのように改善したらよいのかを示す必要があります。
たとえば「上司の指示を無視して勝手な判断をしがちだった。業務フローに沿って適切に指示を仰ぐよう、改める必要がある」といったように具体的な改善点を併せて示すことで、行動変容につながりやすくなります。
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情意評価のコメントの例文
情意評価のコメントを書く際は、以下の3点に注意しながら丁寧に記載することがポイントです。
- 客観的な視点
- 良かった点、改善してほしい点、それぞれ具体例を挙げる
- 改善策も盛り込む
たとえば、このようなコメントが考えられます。
【例文1】
経験が浅いなかで、わからないことを自主的に調べ、問題解決に努める姿勢は高く評価できる。しかし、周囲への気配りが足りず、自分の作業を優先するあまり、他者への配慮を欠く場面が見受けられた。今後は業務の進捗状況をよく把握し、必要に応じて同僚と協力して作業を行うことが求められる。 |
【例文2】
このように、良い点は具体例を挙げて褒め、改善が必要な点については、具体例を示したうえで、どのような対応が望ましいかを建設的にアドバイスする形が適切です。客観的な事実に基づき、丁寧かつわかりやすくまとめるよう心がけましょう。 |
情意評価は「客観的で具体的」が納得度を上げるポイント
情意評価は従業員の内面的な資質や業務に対する姿勢を評価する手法です。数値化が難しく評価者の主観が入りやすいため、評価の根拠を具体的に挙げ、公平性を保つ必要があります。
評価コメントを書く際は、良かった点は積極的に称賛し、改善が必要な点については、具体例を交えながら丁寧に指摘するようにしましょう。
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