人事評価の4段階評価とは?評価基準やメリット・デメリットを解説
従来、日本の人事評価は「5段階評価」が主流でしたが、近年では「4段階評価」を取り入れる企業も増えています。人事評価で4段階評価を導入することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。本記事では、人事評価の4段階評価におけるメリット・デメリットや評価基準について解説します。
目次
人事評価の4段階評価とは?
人事評価の4段階評価制度では、従業員の業務成績を「4・3・2・1」といった4つのレベルで評価します。
4段階評価の最大の特徴は、「可もなく不可もなく」という中間評価が存在しないため、成果に基づいて明瞭に評価できる点です。特に、極端な成績を避ける傾向にある日本人にとって、評価の正当性を高めるのに役立つでしょう。
▷相対評価とは?絶対評価との違いやメリット・デメリット、時代遅れと言われる理由
▷定性評価とは?定量評価との違いや評価方法・項目、メリットとデメリットを解説
従来は5段階評価が主流
以前の人事評価では、5段階評価が一般的で、「5・4・3・2・1」や「S・A・B・C・D」といった5つのレベルで従業員を評価しました。しかし日本では「3」や「B」の評価を受ける傾向が強いとされています。
多くの場合、「3」は平均的な成果と見なされるため、多くの評価者が安易にこの数字を選びがちです。このような評価傾向により、実際の業績が正しく評価されず、優秀な成果を上げる従業員とそうでない従業員の区別が明確にされにくいという問題が生じていました。
▷人事評価の5段階評価とは?評価基準や表現方法・4段階評価についても解説
4段階評価の各評価の基準
人事評価を「4・ 3・ 2・ 1」などの4段階で行う際、それぞれの数字が示す具体的な評価基準とはどのようなものでしょうか。ここでは4段階評価の考え方を解説します。
「4」の場合
4段階評価における「4」は、従来の5段階評価での「S」や「5」に相当します。目標を大幅に超える成果を達成した従業員に与えられ、卓越したパフォーマンスと成果によって、組織に対して顕著な貢献をしたことが評価されます。
このレベルを得るには、単に目標を達成するだけでなく、それを大きく上回る成果が必要です。
「3」の場合
4段階評価における「3」は、5段階評価の「A」や「4」に相当します。設定された目標を達成し、期待された標準を満たした従業員に与えられるものです。安定したパフォーマンスと良好な成果を示し、求められた業務を確実にこなしている状態を指します。
このレベルは、信頼できる業務遂行能力と一貫性を示す評価です。
「2」の場合
4段階評価における「2」は、従来の5段階評価での「C」や「2」に当たります。目標達成に至らなかったが、最低限の要求は満たしている従業員に与えられるものです。基本的な職務要件はクリアしているものの、期待されるレベルまでの成果や効果が不足していることを示します。
具体的なフィードバックを通じて、行動方針・パフォーマンスの改善を促す必要がある段階です。
「1の場合」
4段階評価における「1」は、以前の5段階評価で言うところの「D」や「1」に相当します。期待される基本的な職務要件すら満たしていない従業員に与えられる評価です。業務の遂行において重大な問題があるか、または目標に対して顕著な不足が見られる状態を示しています。
このレベルの評価は、現状のままでは減給や降格など、待遇にも大きく影響が出ると示すものと捉えましょう。
▷人事評価制度の種類まとめ|役割や特徴・制度を運用する際の注意点を解説
4段階評価のメリット
ここからは、4段階評価システムが企業と従業員にもたらす具体的なメリットについて紹介します。
成果を正しく評価できる
4段階評価の大きなメリットの一つは、曖昧な中間評価が存在しないことにより、従業員の成果をより正確に評価できる点にあります。
4段階評価では、各評価レベルがはっきりと区分されています。評価者は従業員のパフォーマンスを具体的な基準に照らして判断しなければなりません。結果的に、公平かつ透明性の高い評価が可能となり、従業員自身も自分の評価がどのように決定されたのかを明確に理解できます。
モチベーションの向上につながる
4段階評価制度は、評価の良し悪しが明確になることから、従業員のモチベーション向上に大きく寄与します。成果に基づく評価がはっきりしており、昇給や昇進といった報酬にも直接的に反映されやすくなるためです。従業員にとって目指すべき基準もわかりやすく、具体的な目標や対策が立てやすくなるでしょう。
結果的に、個々の従業員だけでなく、組織全体の生産性の向上にも期待できます。
4段階評価のデメリット
4段階評価制度には多くのメリットがありますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。
評価の難易度が上がる
評価の信頼性が向上する一方で、評価を行う難易度も同時に上がるというデメリットがあります。
4段階評価制度では、中間の評価値が存在しないため、評価者は「普通」という安易な選択肢を用いることができません。評価者は各従業員のパフォーマンスを非常に精密に分析し、明確な基準に基づいて評価を下さなければならなくなります。評価者には高い注意力と詳細な知識が必要とされるでしょう。
正しく評価しなければ従業員の不満が募る
4段階評価システムにおいては、評価の良し悪しが非常に明確になるのが特徴です。従業員の成果が正しく評価されない場合、不満が増大する可能性があります。
評価基準を明確化し、透明性を保つことは組織の信頼形成において最重要といっても過言ではありません。しかし同時に、評価基準の適用ミスや誤解による誤評価が従業員のモチベーションを著しく低下させるリスクも意識する必要があります。
評価者は、現場での様子や以前の評価に対する対応などを総合的に判断し、納得のいく評価を示すよう心がけましょう。
4段階人事評価制度導入の手順
企業が4段階人事評価制度を導入するためには、いくつかの段階が必要です。
ここでは、効果的な導入のための具体的なステップを紹介します。
評価の目的を明確化する
4段階人事評価制度を導入する際に最も重要なのは、評価の目的を明確にすることです。企業理念やビジョンを再確認し、それに基づいて、人事評価が果たすべき役割と目標を定義しましょう。
評価制度には、従業員のモチベーション向上、能力開発、適正な報酬の配分など、さまざまな目的があります。目的が明確でないと、評価制度がその効果を発揮することはできません。
▷人事評価制度の作り方|作る際のポイントや手順、成功・失敗事例を解説
評価基準や評価項目を設定する
人事評価制度を効果的に機能させるためには、役職や等級ごとに適切な評価基準と評価項目を設定することが不可欠です。
評価基準は大きく分けて、以下の三つの要素から成り立っています。
評価基準 | 内容 |
業績評価 | 売り上げや契約数など、具体的な成果や目標達成度を評価する。 |
能力評価 | 職務を遂行するために必要なスキルや知識の程度を評価する。 |
情意評価 | 職場での態度や協調性、倫理観など、対人関係に関連する要素を評価する。 |
これらの基準を適切に組み合わせて使用することで、各従業員が目標や達成基準を理解しやすくなり、公平かつ透明な評価が可能となります。
評価ルールを設定する
人事評価制度を導入する際には、評価のルールおよび評価結果が昇給や昇進にどのように反映されるかを明確にすることが極めて重要です。
評価ルールを設定することで、評価プロセスの正当性を高め、従業員が評価基準を理解しやすくなります。また、評価結果が直接的に報酬やキャリアアップの機会に結びつくと示すことで、従業員のモチベーションを維持し、生産性向上を促すことができます。
ルールを設定する際には、評価のフィードバック方法やタイミング、不服申し立ての手順も検討しておきましょう。
従業員へ内容を周知する
新しい人事評価制度を導入する際は、全従業員が評価基準やプロセスを完全に理解し、受け入れることが不可欠です。説明会などを開催して制度の詳細を説明し、従業員との質疑応答を行うようにしましょう。説明会では、評価の目的、基準、そして評価結果が従業員の昇進や昇給にどのように影響するかを明確に伝えることが重要です。
評価プロセスの透明性を保ち、公平な運用を徹底することで、従業員の制度に対する信頼と納得を得ることができます。
▷人事評価制度の事例9選|成功事例や評価制度に活用される手法を解説
4段階人事評価を行う際の注意点
ここでは4段階の人事評価を行う際の注意点について紹介していきます。
人事評価エラーが発生しないよう対策をする
人事評価エラーとは、評価者が個人的な感情や先入観により、客観的でない評価を行ってしまうことを指します。
人事評価エラーを防ぐためには、評価者への適切な研修が必要です。研修を通じて、評価者は公正かつ一貫性のある評価の重要性を学び、評価基準の適用方法を正確に把握することができます。
また、全ての評価が記録として残るようにすることも重要です。
従業員の自己評価も考慮する
人事評価を行う際には、評価者だけでなく、従業員自身の自己評価も重要な役割を果たします。従業員に自分自身の業務遂行や成果について自己評価をしてもらうことで、著しく現状に合わない評価を予防することができるのです。
自己評価は従業員にとっても有益です。自分自身の行動や成果を客観的に振り返る機会を提供することで、自己認識の向上と個人の成長が期待できます。さらに評価過程で従業員と評価者の間のコミュニケーションが促進され、信頼性の向上にもつながるでしょう。
従業員に対してフィードバックを行う
4段階の人事評価を行ったあとは、必ず従業員本人にフィードバックを行いましょう。評価は人事のためだけのツールではなく、従業員にとっても大切な成長の機会です。
従業員に対して人事評価の結果をフィードバックする際は、単に評価結果を伝えるだけでなく、理由や改善点も明確に説明することが重要です。評価の具体的な理由を示し、どのように改善すればよいか具体的なアドバイスを提供することで、従業員が自身の成果や振る舞いに対する納得感と理解を深めることができます。
人事評価に4段階評価法を採用し企業の成長につなげよう
4段階評価法の導入は、従業員個人だけでなく、企業全体の成長にも大きく影響します。中心化傾向を起こさない明確な人事評価制度で、社内の風通しを改善し、生産性アップを目指しましょう。
おすすめのお役立ち資料
人事評価システムの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら