EVM(アーンドバリューマネジメント)とは?管理方法や構成する指標をわかりやすく解説

2023/07/19 2023/07/20

プロジェクト管理ツール

EVMとは

プロジェクト管理の手法は複数あります。なかでも、スケジュールだけでなくコストも把握できるのがEVM(アーンドバリューマネジメント)です。効果的なプロジェクト管理のために、覚えておきたい手法の一つです。その管理方法や構成する指標、メリット・デメリットを詳しく解説します。

EVMとは?

EVMとは「Earned Value Management(アーンドバリューマネジメント)」の略であり、プロジェクトの進捗度を予算(コスト)とスケジュールの2つの視点から分析・管理するために用いられる手法です。

EVMでは、計画予算を表す計画値(PV)、完了した工程の予算コストとなる出来高(EV)、そして、実際に発生したコストを示す実績値(AC)の3つの指標を、主に折れ線グラフで表し、プロジェクトの進捗度を確認・分析します。

EVMはもともと、アメリカの行政機関で国家プロジェクトのパフォーマンス測定のために用いられてきた手法です。日本では、経済産業省が2003年に『EVM 活用型プロジェクト・マネジメント導入ガイドライン』を公表し、現在ではさまざまな企業で導入されています。

プロジェクト管理にEVMが有効である理由

EVMの導入により、スケジュールだけではなく、コストの面からもプロジェクト管理をすることで、納期は守れたが、コストが大幅に超過してしまったといった課題の早期発見につながります。つまり、プロジェクトの中間点など、早い段階でコストの超過に気づくことができ、手遅れになる前に軌道修正が可能となるのです。

進捗状況の定量的な可視化は、プロジェクトマネージャーの迅速で正確な判断やメンバーへの具体的な指示の基準にもなるでしょう。

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従来のコストマネジメントとの違い

従来のコストマネジメントでは、予算と実際にかかったコストという2つの指標のみを進捗管理に使用していました。一方でEVMでは、これらに加えて出来高も指標の1つとして使用するのが大きな違いです。

出来高とは、実際に完了した作業の価値を示します。一見すると予算内に収まっているようでも、スケジュールの進捗次第では予算を超過してしまうこともあるでしょう。

例えば、計画予算(PV)を1000万円とした、1年間のプロジェクトがあったとします。予算が各月均等に割り振られていた場合、半年時点でのPVは500万円となりますが、その時点で実コスト(AC)が、600万円だった場合、PVを100万円超過した状態で進捗していることになります。

EVMは計画に対するコスト進捗を可視化するため、コスト面から計画の見直しが必要なタスクを早期に発見できるのです。

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EVMに用いる基本的な指標

EVMでは、主に4つの指標を使用します。ここでは、改めて各指標について詳しく解説します。

PV(Planned Value)

PV(Planned Value)は計画予算を表す指標です。プロジェクトを進めるにあたって、特定の時期までに完了すべきすべての作業にかかる総予算を指します。作業の進捗度やコストオーバーを判断する基準となることから、ベースラインとも呼ばれます。

EV(Earned Value)

EV(Earned Value)は、成果物の出来具合やプロジェクトの進捗具合を、金銭的な価値の出来高実績値として換算した指標です。

そのため、EVがPVを上回り(実績が計画を上回り)、さらにACよりもEVが上回っている(かかったコストよりも出来高が上回っている)場合は、計画よりも前倒し、かつ低コストで進捗している状態となります。そのためEVを算出すると、作業の進捗度を時間ではなくコストの観点からも把握できるようになります。

AC(Actual Cost)

実コストを表すAC(Actual Cost)は、その時点までに実際に消費したコストの合計値のことです。コストを算出する際は、材料費や外注費だけではなく、社内メンバーの人件費も含め、EVと比較して、進捗に対してコストが超過していないかを判断します。

BAC(Budget at Completion)

BAC(Budget at Completion)は完成時総予算を指します。プロジェクト全体を完了させるために必要な予算のことです。プロジェクトの計画時に立てられる数値であり、BACをもとにEVが算出されます。

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EVMの分析に用いる数値

EVMを分析するために、さまざまな指標を知っておきましょう。ここでは、EVMの分析に用いる数値について解説します。

SV(Schedule Variance)

SV(Schedule Variance)はスケジュール差異のことです。EVとPVの差で算出でき、以下のような計算式で表されます。

SV=EV-PV

SVが正の値になった場合はプロジェクトが予定よりも順調に進行しており、負の値になった場合は遅れていることが分かります。SVは定期的に算出し、結果に応じてスケジュールの見直しを行います。

CV(Cost Variance)

CV(Cost Variance)はコスト差異のことで、EVとACの差から算出できます。計算式は以下の通りです。

CV=EV-AC

CVが正の値であれば予算内に収まっており、負の値となった場合は予算を超過しているといえます。

SPI(Schedule Performance Index)

SPI(Schedule Performance Index)はスケジュール効率指数のことです。EVをPVで割ることで算出でき、計算式は以下のようになります。

SPI=EV/PV

SPIが1より大きければ、プロジェクトは計画より順調に進んでいるといえるでしょう。また、1より小さい場合は計画よりも遅れており、スケジュール効率が悪い状態です。SPIを算出すれば、プロジェクトの進捗度合いを定量的に判断できます。

CPI(Cost Performance Index)

CPI(Cost Performance Index)はコスト効率指数のことです。EVをACで割って算出します。計算式は以下の通りです。

CPI=EV/AC

CPIは1に近いほど計画通りにコストが進捗しているといえます。また、1より大きい場合は計画よりもコストが発生しておらず、1未満の場合は計画よりコストがかかっていると考えられるでしょう。1からかけ離れた数値が出た場合は予算を見直す必要があります。

ETC(Estimate To Completion)

ETC(Estimate To Completion)は残作業コスト予測を表す指標です。BACとEVの差をCPIで割って算出します。計算式は以下の通りです。

ETC=(BAC-EV)/CPI

ETCを算出すると、プロジェクトをこれまでの作業ペースで進めた場合、コストがどのくらいかかるのかを把握できます。これから必要となるコストの予測が可能です。

EAC(Estimate At Completion)

EAC(Estimate At Completion)は完了時コスト予測を指し、ACとETCを足した数値で表されます。計算式は以下の通りです。

EAC=AC+ETC

EACを算出すると、プロジェクトが完了したときのコストを予測できます。現状把握はもちろん、将来的に予算が不足するか、あるいは反対に予算が余るのかを見通せます。

VAC(Variance At Completion)

VAC(Variance At Completion)は完了時コスト差異を指します。BACとEACの差から算出可能で、計算式は以下の通りです。

VAC=BAC-EAC

VACが正の値であれば予算内でプロジェクトが進捗しており、負の値になれば予算を超過しているといえます。予算との差異が大きい場合は、予算が適切ではない可能性があります。

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EVMの導入によるメリット

プロジェクト管理にEVMを導入するとさまざまなメリットがあります。ここでは、そのメリットについて解説します。

赤字リスクを回避できる

納期通りに、高品質のプロダクトを完成させても、コストを掛けすぎて赤字を出してしまっては、プロジェクトは成功とは言えません。スケジュールのみならず、「コスト」を一つの指標とするEVMは、都度コスト面の調整も図りながら進捗管理ができるため、赤字のリスクを未然に回避することができるのです。

正確な現状把握により、適切な対応が取れる

SPIやCPIといった指標では、全体のスケジュールとコストの両面から「進捗率」が可視化されるのも、EVM導入の大きなメリットです。

特に、中長期的なプロジェクトのマネジメントを行う際、進捗率は重要な管理項目の一つとなりますが、その一方で進捗率は、定量的に可視化しにくいものでもあります。しかし、EVMを取り入れることで、例えば、進捗に遅れが出ているものの、コスト面に余裕があれば、リソースを増やし進捗を早めるといった判断がスピーディーにできるようになるのです。

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EVMの導入によるデメリット

EVMの導入にはさまざまなメリットがある一方でデメリットもあります。ここでは、そのデメリットについて解説します。

品質管理に向いていない

EVMは、スケジュールとコストに関する指標で進捗管理と評価を行うマネジメント手法であり、品質管理の観点が不足していることを理解しておきましょう。

品質を基準にプロジェクトを管理する場合は他の手法を用いる必要があります。

クリティカルパスを明確にできない

プロジェクトを進めるうえで、全体進捗に高い影響度を持つ重要なタスクは、クリティカルパスと呼ばれます。

EVMでは、このクリティカルパスが、そのほかの重要度の低いタスクと同様に管理されてしまうため、タスク間の関連性や重要度を可視化するための策を別に講じておく必要があります。

EVMを作成する流れ

EVMを作成するにはどのような工程を踏めば良いのでしょうか。ここでは、その流れについて解説します。

PVの見積もりを行う

EVMの作成にはPVの見積もりが必要です。PVを決めるにはプロジェクトの全体像を把握する必要があるため、全体の業務を分解して全作業工程を洗い出しましょう。作業工程の分解・洗い出しにはWBS(Work Breakdown Structure)の活用が便利です。

WBSはプロジェクトの階層ごとにタスクを細分化・構造化し、すべてのタスクを洗い出します。それを元に、スケジュールや必要な予算・コストを見積もります。

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EVやCVなど実績値を収集する

プロジェクトが動き出したら実績値の収集を行います。日々の実績値をしっかり記録することで、EVやACを導き出せます。これらのデータが取れたら、CV・SVも算出しましょう。

指標を元にグラフを作成する

測定したEV・ACと、プロジェクト開始前に設定したPVの推移をグラフ化します。縦軸をコスト、横軸を時間として、単位時間ごとの推移をプロットし、グラフにしていきます。

EVMグラフが完成したら、それぞれの指標を比較します。EVがPVを下回っている場合はプロジェクトは予定より遅れており、反対にEVがPVを上回っている場合はプロジェクトが前倒しで進んでいることになります。

コストの進捗はACとEVの比較で行います。ACがEVを下回れば予定よりコストがかかっておらず、ACがEVを上回っている場合は予定よりコストがかかっていることを表します。

つまり、EVが、PVやACを上回っているケースでは、作業が予定よりも早く進み、コストも予算内に収まっている、高い効率でプロジェクトが進捗していることがわかるようになるのです。

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EVMの導入に向いているプロジェクト管理ツール

最後に、EVMの導入に向いているプロジェクト管理ツールを紹介します。

Clarizen

ClarizenはSaaS型のプロジェクト管理ツールです。1日単位で工数実績を登録できるスケジュール・進捗管理のタイムシート機能を搭載。入力した情報は即座に反映され、進捗はロードマップ・ガントチャートで「見える化」されます。

コスト管理やリソース管理なども行えるため、グローバル・複数拠点でのプロジェクトや期間限定プロジェクトの管理、経営視点でのプロジェクト管理をしたい方におすすめです。

提供元NSW 株式会社
初期費用無料
料金プラン

ライセンスの種類によって価格変動
ユーザー毎にライセンスを選択し、合計額を毎月支払い

■Enterprise版

  • Full7,260円(税込)/月
  • Team Member:5,940円(税込)/月
  • Time&Expense:2,904円(税込)/月
  • Social:660円(税込)/月
  • Email User:無料

■ Unlimited版

  • Full:10,560円(税込)/月
  • Team Member:8,316円(税込)/月
  • Time&Expense:3,696円(税込)/月
  • Social:660円(税込)/月
  • Email User:無料
導入実績全世界3,000社以上で導入(※2023年3月時点)
機能・特徴スケジュール・進捗管理、コスト管理、リソース管理、レポート出力、課題管理など
URL公式サイト

Time Krei

Time Kreiは、管理職・従業員・経営者の3者の視点からプロジェクト管理ができるツールです。

WBSを用いた個別タスクの管理やリソース管理表を使って適切な人員配置ができるほか、EVMを用いたプロジェクト進捗・コスト状況の確認、原価構成比分析によるプロジェクトごとの状況確認も可能。社内の情報共有を円滑にするグループウェア機能も搭載しています。

提供元株式会社テンダ
初期費用
  • トライアル:無料
  • クラウド:無料
  • シングルテナント:要問い合わせ
料金プラン
  • トライアル:無料(1ヶ月のみ)
  • クラウド:32,780円(税込)/月、10ユーザーまで(以降1ユーザーごとに3,278円(税込))
  • シングルテナント:要問い合わせ
導入実績使用実績累計1,100社以上(※2023年3月時点)
機能・特徴プロジェクト管理、予定・実績管理、グループウェア、実績を元にした各種分析データを即時に出力など
URL公式サイト

ProjectExceller

ProjectExcellerは、Excelをベースに作成されたプロジェクト管理ツールです。すべての操作がExcel上で完結するので、サーバーの管理や設定が不要です。

EVM分析によるプロジェクト管理も可能です。ガントチャートで進捗を可視化するため、プロジェクトの進捗度合いを直感的に理解できるのも特徴です。。ワークロード分析により、リソースごとの稼働率も把握できます。

提供元エクセラーシステムズ株式会社
初期費用
  • フリー版:無料
  • ProjectExceller 2 日本語版:21,780円(税込)
  • ProjectExceller 2 英語版:21,780円(税込)
料金プラン買い切り型
機能・特徴Excelで操作、EVM分析、ガントチャートでプロジェクト進捗を可視化、ワークロード分析、複数プロジェクトを統合・管理可能など
URL公式サイト

Lychee Redmine

Lychee Redmineはプロジェクト管理を多角的にサポートする機能が備わったツールです。ガントチャートでスケジュールの全体像を確認し、カンバン機能でメンバーのタスクをリアルタイムで把握できます。

各工程のバッファを一元管理できるCCPM機能が備わっているのも特徴です。ガントチャートや分析グラフによりプロジェクト全体のバッファが可視化されるので、スケジュールの遅れも発見できます。

提供元株式会社アジャイルウェア
初期費用無料
料金プラン■クラウド版
  • フリー:無料
  • ビジネス:2,310円(税込)/月
  • プレミアム:1,540円(税込)/月
  • スタンダード:990円(税込)/月

■ オンプレミス版

  • ビジネス:2,530円(税込)/月
  • プレミアム:1,650円(税込)/月
  • スタンダード:880円(税込)/月
導入実績導入企業7,000社以上(※2023年6月時点)
機能・特徴タイムマネジメント、リソースマネジメント、EVM分析、プロジェクトレポート、CCPMなど
URL公式サイト

クラウドログ

クラウドログは、ドラッグ&ドロップの操作で簡単に工数管理ができるプロジェクト管理ツールです。

外部カレンダーツールと同期して作業工程の予定をカレンダー登録したり、ガントチャートと連動してタスクの負荷やスケジュールの遅延を可視化したりすることができます。日報も合わせて登録できるため、工数予実やガントチャートからは分からない情報のキャッチアップや、メンバー間のコミュニケーション促進にも役立つでしょう。

提供元株式会社クラウドワークス
初期費用
  • ベーシックプラン:要問い合わせ
  • プレミアムプラン:要問い合わせ
料金プラン
  • ベーシックプラン:要問い合わせ
  • プレミアムプラン:要問い合わせ
導入実績累計導入社数650社以上(※2023年2月時点)
機能・特徴ドラッグ&ドロップの簡単操作、ガントチャート、外部カレンダーツールとの同期、勤怠管理との連動など
URL公式サイト

EVMとはコストの数値でプロジェクトを管理する手法

EVMを用いると、スケジュール、コストの双方からプロジェクト管理ができます。

プロジェクトの進捗度が、定量的なデータによって可視化されるため、起こりうるリスクの

備えとなる正確な判断が早期に下せるようになるのです。ぜひ高効率なプロジェクト管理の実現に向け、EVMへの理解を深めた上で、実践してみてはいかがでしょうか。

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