プロジェクト管理のPERT図とは?構成要素や書き方・注意点をわかりやすく解説
プロジェクト管理手法の1つであるPERT図。ビジネスの歴史においてさまざまな手法が考案されてきましたが、PERT図とは具体的に何なのか疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。本記事では、プロジェクト管理のPERT図の概要や作成方法、仕組みなどを詳しく解説します。
・PERT図とは、プロジェクトで生じるタスクや工数を矢印で結び、プロジェクト達成のための流れを図にしたもの
・PERT図が全体のタスクの流れを可視化するのに対し、ガントチャートは各タスクの進捗を管理すること
目次
PERT図とは?
PERT図(パート図)とは、プロジェクトのノード(タスクや工程)を線や矢印で結び、プロジェクトの達成に必要な業務の流れを図表にしたものです。
工程と所要日数のほか、工程間の依存関係が視覚的に確認できるため、スケジュール管理や適切なリソース配分をするのに役立ちます。
PERT図を活用すると、プロジェクト内で重点を置くべき工程を簡単に把握できるのが特徴です。ただし、PERT図は、主にプロジェクト全体のなかでクリティカルパスと呼ばれる、高い影響度を持つ工程を見極めるために使用されるため、工程ごとの進捗管理には適していません。
PERT図には、アロー型とフロー型があり、どちらも基本的な使い方は同じです。
一般的に、タスクの開始または終了を表す円を作業内容を示す矢印で結ぶアロー型は、作業の流れを重視したいときに、一方、ノード(タスクや工程)を、タスク間の依存関係を示す矢印でつなぐフロー型は、細かな作業内容と工程の順序を把握する際に使われます。型によって図の見方が変わるため注意しましょう。
ガントチャートとの違い
プロジェクト管理でよく使われる図に、ガントチャートがあります。ガントチャートは、棒グラフを使って各工程におけるタスクの所要時間や進捗を図式化したものです。
PERT図との大きな違いは、図式と使い方です。PERT図はネットワーク図で表現され、プロジェクトに応じてレイアウトを変えつつ、プロジェクト全体の流れや工程同士の関係性を把握するために活用されるものです。
一方でガントチャートは、各工程の進捗状況は見えますが、プロジェクトの全体像の把握には適していません。そのため、PERT図によって全体のタスクと流れを可視化し、ガントチャートによって各タスクの進捗管理を行うといった使い方をすることが多いといえるでしょう。
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PERT図の構成要素
PERT図の構成要素は、主に以下の4つが挙げられます。
- 最早開始時刻
- 最遅開始時刻
- 余裕日数
- クリティカルパス
それぞれについて解説します。
最早開始時刻
PERT図における最早開始時刻とは、最も早く作業を開始できるタイミングのことです。前工程が完了していることを前提としているため、最早開始時刻は、前工程の作業完了までに必要な時間を足して求められます。
たとえば、前工程の最早開始時刻が12月1日で、作業に必要な時間が3日と仮定した場合、次工程の最早開始時刻は3日後の12月4日です。このように、「最早開始時刻=前工程の最早開始時刻+作業完了に必要な時間」で求められると覚えておきましょう。
最遅開始時刻
最遅開始時刻は、プロジェクトの期限に影響を与えず工程を開始できる最も遅いタイミングのことを指します。つまり、作業開始が最遅開始時刻を過ぎた場合、プロジェクトは期限までに終わらないということです。
最遅開始時刻は、次の工程の最遅開始時刻と、前工程の作業完了に必要な時間を元に計算されます。仮に、次の工程の最遅開始時刻が12月4日で、作業に必要な時間が3日だったとします。前工程の最遅開始時刻は、12月4日の3日前にあたる12月1日です。
このように、「最遅開始時刻=次の工程の最遅開始時刻-前工程の作業完了に必要な時間」で求められます。
余裕日数
PERT図における余裕日数とは、特定の作業が遅れてもプロジェクトの最終納期に影響を与えない“猶予期間”のことです。ビジネスにおいては「バッファ」と呼ばれることもあります。
最早開始時刻と最遅開始時刻の差で求められ、余裕日数分は進捗が遅れても予定通りにプロジェクトが完了します。ただし、進捗が遅れるほど余裕日数は減少し、プロジェクト完了までの余裕がなくなる点に注意が必要です。
クリティカルパス
クリティカルパスとは、プロジェクトの中で最も時間がかかる工程経路のことです。つまり、プロジェクトを最短で完了させるための鍵となるプロセスを意味します。
プロジェクトの進行に大きな影響力を持つため、クリティカルパス上の作業に遅れが生じると、プロジェクト全体が遅延する可能性も高くなります。コストの増加や納期遅延といった事態を招くリスクとなるため、プロジェクトマネージャーは、厳しくリソースや進捗状況を管理する必要があるでしょう。
PERT図を作成するメリット
PERT図を作成する3つのメリットについても詳しく見ていきましょう。
プロジェクトの工数を可視化できる
PERT図の作成には、プロジェクトの工数を可視化できるメリットがあります。
PERT図では、各タスクの依存関係と所要時間が明確に示されるため、必要期間の見積もりやリソースの配分を効率的に行えます。また、作業フローがわかるため、タスクの優先順位を見誤るミスも回避できるでしょう。
メンバー間の情報共有がしやすい
プロジェクトメンバー間での情報共有が向上する点も、PERT図を作成するメリットの一つです。
プロジェクトには多くの関係者が携わり、規模が大きくなればなるほど、齟齬なく情報を浸透させる難易度や共有の手間が増えることになります。
しかしPERT図があれば、プロジェクトの全体像や各担当者の役割などを簡単に共有することができ、プロジェクトの流れやタスク間の関係性も、一目で把握できます。
スケジュールを把握できる
正確なスケジュールの予測ができ、作業途中の日程調整が発生しにくくなるのもメリットの一つです。
また、進行中の工程だけでなく、その後に続く工程にかかる日数も可視化されていることから、進捗に遅れが生じた際のリソースの再配分も行いやすくなるでしょう。進捗状況を見ながら工程順序の変更やリソースを調整することで、作業時間やプロジェクトの工期を短縮できる可能性もあります。
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PERT図の作成方法・書き方
PERT図の作成は、以下4つのステップで行います。
- タスクを洗い出す
- 所要時間を見積もり、依存関係を定義する
- ネットワーク図を作成する
- ダミーを設定する
PERT図の書き方を覚えて、ぜひ作成してみてください。
タスクを洗い出す
PERT図を作成する際には、プロジェクトを構成する全タスクの洗い出しから始めます。万が一、タスクの抜け漏れがあると、あとからスケジュールの見直しが必要になるため、時間をかけて慎重に抽出作業を行ってください。
抽出作業の際には、WBS(作業分解図)を作成するとよいでしょう。WBSは、各タスクを分解して構造化する手法であるため、漏れが起きにくくなります。ただし、初期に作成したWBSはプロジェクト後半で使えないことが多いため、必要に応じて段階的に活用するのがおすすめです。
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所要時間を見積もり、依存関係を定義する
タスクを洗い出したら、各工程で必要な作業時間を見積もり、タスク間の依存関係を定義します。
見積もり作業では、個々のタスクに必要な完了時間を、最速・最遅・平常時の時間といった3つのシナリオで検討します。もしも情報が足りず時間の見積もりが難しい場合は、目安時間を記載してください。実際にプロジェクトを進めながら現実的な時間に変えるのがおすすめです。
依存関係の定義とは、あるタスクを始めるために完了しておかなければならないタスクを明確にする作業です。適切に定義するには、タスク間の先行関係を評価し、関連するタスクに結びつける必要があります。
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ネットワーク図を作成する
洗い出したタスクや定義した依存関係をもとに、ネットワーク図を作成します。
ネットワーク図とは、プロジェクトの各タスクがどのように関連しているかを視覚的に表した図のことです。ネットワーク図を作成する際は、必ず以下の6つのルールが全て守られているかを確認しましょう。
<6つのルール>
- 各作業の矢印は、必ず前後でノード(タスクや工程)とつながっている
- スタートとゴールのノードを除いて、ノードは必ず作業の矢印とつながっている
- ノードに付与する番号もしくはアルファベットは、完了に向かって大きくなっている
- 矢印は一方通行であり、戻る作業経路を持っていない
- あるノードは、前工程にある全作業が終わっていなければ、開始できないものである
- 並行作業がある場合はノードを増やして、点線矢印によるダミー作業を設ける
ダミーを設定する
ネットワークを作成したら、ダミーの設定を行いましょう。ダミーとは、プロジェクトの進行の流れを示す仮想的な線のことです。具体的には、2つのタスクを並行して行う必要があっても、タスク間の直接的な依存関係がない場合があるでしょう。このような状態になったときはイベントを分けて、ダミーでつなぐのが一般的です。
たとえば、だし巻き卵を調理する際の工程をPERT図に表すと、卵液を作る前工程には、出汁を取って、調味料を計量し、卵を割って、出汁や調味料と混ぜるという工程があります。
この場合、出汁を取る作業と計量および卵の準備は、依存関係になく、並行して行えることから作業は、ダミーである点線矢印で示されることになります。
なお、イベントを分けた後にダミーの設定を忘れると、以降のスケジュール計算がすべてずれます。そのため、設定忘れがないかを必ず確認してください。
プロジェクト管理でPERT図を活用する際の注意点
プロジェクト管理でPERT図を活用する際には、注意点があります。注意点を把握していないと、PERT図の更新や修正に時間がかかったり、スケジュールの見直しが生じたりする恐れがあるため注意しましょう。
ここからは、プロジェクト管理でPERT図を活用する際に理解しておくべき注意点を紹介します。
手書きの場合には修正に時間がかかる
PERT図はプロジェクトの進行に伴い、頻繁な更新・修正が必要です。しかし、手書きだと修正作業に時間を要するため、効率が著しく低下するでしょう。
たとえば、ある工程に遅延が生じた場合、関連する工程のスケジュールも書き直さなければなりません。複雑なPERT図の修正作業は煩雑であり、多くの手間と時間を要します。
PERT図において書き直しは避けられないため、更新が容易なプロジェクト管理ツールを活用するのがおすすめです。
作業漏れや時間の見積もりは慎重に行う
PERT図を活用する際には、作業工程の漏れがないか十分に確認し、なおかつ時間の見積もりを慎重に行うことが重要です。なぜなら、作業漏れや時間の見積もり誤りがあると、プロジェクト全体のスケジュールに影響してしまうからです。
計画の再編成が必要になり、場合によってはコストの増加や納期遅延を引き起こすことがあります。このような事態を引き起こさないためにも、作業工程の抜け漏れがないか、時間の見積りが適切かを慎重に確認することが求められます。
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PERT図を活用してプロジェクト管理をしよう
PERT図は、プロジェクトの流れや各工程の関係性、所要時間や納期などを視覚的に把握できるネットワーク図です。工数の可視化やスケジュールの把握、メンバー間の情報共有が容易になるといったメリットがあるため、プロジェクト管理を行ううえで役立つでしょう。
一方で、PERT図を活用する際には注意点もあります。注意点を理解し、対策を講じたうえでPERT図を活用するのがおすすめです。
本記事で紹介したPERT図の書き方も参考にしながら、効率的にプロジェクト管理を行ってみてください。
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