RPAと内部統制の問題点|起こりうるリスクや対応策を詳しく解説
近年、多くの企業で導入が進んでいるRPA。しかし、RPAを適切に管理・運用していくためには、内部統制への対応が不可欠です。本記事では、RPAにおける内部統制への対応について、起こりうるリスクや対応策などを詳しく解説します。
目次
内部統制とは?
内部統制とは、組織の目標を達成するために経営上のリスクを適切に管理・抑制する仕組みです。具体的には、財務報告の信頼性の確保、法令や規則の遵守、業務の効率化や有効性の確保などを目的としています。
企業は内部統制を通じて、不正行為の予防や発見、情報の精度と即時性の確保、資産の保護などを行い、経営の透明性と組織の持続的な発展を図ります。内部統制は、ビジネス環境や企業の規模、業種に応じてカスタマイズされ、継続的に見直されるべきものです。
▷内部統制とは?4つの目的・6つの基本要素や3点セットについて
RPA導入時に考えなければならない問題・リスク
RPAを導入する際は、技術的課題や業務適用上のリスクを十分に認識しておかなければなりません。ここからは、RPA導入時に考えなければならない問題やリスクを紹介します。
業務のブラックボックス化
RPAの導入により、業務プロセスが自動化されることは業務効率化などの多くの効果をもたらしますが、「業務のブラックボックス化」というリスクも生じる可能性があります。
業務のブラックボックス化とは、自動化された業務の内容や動作の背後にあるロジックが不透明になり、企業内で詳細を理解している人が少なくなる現象を指します。この状態が続くと、障害が発生した際の対応や、業務プロセスの変更・更新が困難となる可能性があるのです。
RPA導入時には、ブラックボックス化のリスクを回避するための適切なドキュメントの整備や、組織内の知識共有を徹底する必要があります。
セキュリティ対策問題
RPAは、不適切な設定や管理を行っている場合、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。特に、個人情報や機密情報を取り扱う業務を自動化する際には、高度なセキュリティ対策が求められるため注意しましょう。
たとえば、RPAはシステムやアプリケーションにログインして作業を行うことも多く、ログイン情報が第三者に漏れることで不正アクセスされる危険性があります。
したがって、RPAを適切に運用するためには、アクセス権の管理や設定ファイルの暗号化、定期的なセキュリティ監査の実施など、多層的なセキュリティ対策の構築と維持が不可欠です。
予期せぬシステムの停止
RPAの導入は業務効率化を図る一方で、一部の障害や予期せぬ状況によってシステムが停止するケースも考えられます。
たとえば、ターゲットとなるシステムのアップデートや変更が行われた場合、RPAのスクリプトが正常に動作しなくなることがあります。RPAが停止すると、業務の遅延やデータの損失、信頼性の低下を招くため気を付けなければなりません。
また、RPAが頻繁にアクセスするシステムにおいて過度な負荷がかかると、システム自体の停止や遅延も考えられます。予期せぬシステムの停止を防ぐには、RPAの運用計画や監視体制の構築、定期的なテストや予期せぬ事態への対応プランの策定が必要です。
▷RPAの運用ルールはどう決めるべき?運用方法と失敗しないポイント
RPA導入によって起こりうるリスクへの対応策
ここからは、RPA導入によって起こりうるリスクを回避・軽減するための具体的な対応策を解説します。
実行ログを活用する
実行ログとは、RPAがタスクを実行する際の操作記録であり、どの時点まで正常に動作していたのかを把握できるため、エラーの原因を特定できます。頻発するエラーの原因を特定や、RPAの実行時間や効率を向上させるための調整などが可能です。
したがって、実行ログはRPAの安定した運用のための重要なツールです。適切なログの設定と定期的なレビューを行うことで、RPAの効果を最大化し、リスクの軽減が期待できます。
実行結果の正常性を確認する
RPAで自動化したタスクが完了した際、実行結果の正常性の確認は欠かせないステップです。
RPAは数多くのデータや業務フローを処理するため、微細なエラーやデータの不整合が生じる可能性があります。実行結果の確認を行うことで、期待する出力と実際の出力が一致しているか、また予期せぬエラーや問題が生じていないかを検証できます。
これにより、業務の品質や信頼性を維持するとともに、長期的な運用においてもRPAの正確性を確認することが可能です。
定期的な確認や、特定の閾値を超えた場合のアラート設定など、組織のニーズやリスク度合いに応じて適切な確認方法を導入しましょう。
アクセス権限を制限する
RPAの導入と運用において、セキュリティ面での最も基本的かつ重要な措置の一つが、アクセス権限の制限です。RPAは企業内の重要なシステムやデータベースにアクセスすることが多く、不適切なアクセス権限の設定は情報漏洩やデータの改ざんといったリスクを引き起こす可能性があります。
適切なアクセス権限の設定により、RPAが行うべき業務のみを実行できるように制限し、不正アクセスや不要な操作を防ぐことが可能です。具体的には、RPAのタスクごとに必要最低限のアクセス権限を与え、それ以外のアクセスを制限することが推奨されます。
また、アクセス権限の設定や変更を行う際は、監査ログの取得も忘れずに実施してアクセス状況や変更履歴を追跡できるようにしましょう。
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RPAの内部統制への対応で得られるメリット
RPAの内部統制への対応を行うことで、次のような2つのメリットを得られます。
業務プロセスの改善につながる
RPA導入時は業務プロセスの再確認を行うため、冗長な手順や非効率的な業務の特定ができ、内部統制の観点から見た場合の問題点も改善できる機会となり得ます。
さらにRPAを導入することで、ヒューマンエラーの発生や作業の遅延を軽減できます。そのため、業務の一貫性や正確性が向上し、全体の生産性も高まるでしょう。
RPAの導入は単なる作業の自動化だけではなく、組織の業務プロセスの質自体を向上させる重要な手段です。
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内部統制評価などの工数を削減できる
RPAの導入により、内部統制評価や監査業務などの対象範囲を削減する効果が期待できます。そのため、内部監査部門の工数削減にも寄与します。
RPAは、結果として人手による作業の誤差を減少し、評価の質を向上させることが可能です。さらに、評価関連の業務にかかる時間やコストを大幅に削減することで、ほかの重要な業務にリソースを割けるようになります。
RPAを導入する際は内部統制の観点が不可欠
正確な業務プロセスの再確認や改善、セキュリティ対策、適切なアクセス権限の制限など、多くの内部統制の要素がRPAの運用と深く結びついています。
組織の持続的な成長とRPAの最大のメリットを享受するために、導入時は内部統制の観点からの取り組みが不可欠です。内部統制の観点を持ち続けることで、RPAの導入と運用がより確実かつ効果的に進められるでしょう。
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