RPAシナリオとは?作り方・作成手順の流れや理解しておきたい考え方
業務の自動化するRPAに欠かせないRPAシナリオ。RPA導入ステップの中でも難易度が高く、どのように作成し進めればよいのかわからない人も多いのではないでしょうか。本記事では、そもそもRPAシナリオの概要や作り方、作成の手順や例・サンプルを詳しく解説します。
目次
RPAシナリオとは?
RPAのシナリオとは、ロボットによって業務を自動化するRPA(Robotic Process Automation)の作業手順のことを指します。シナリオを作成する際は、「ノード」と呼ばれる操作の単位をロボットに記録させ、RPAを動かします。
また、RPAシナリオには、簡易型と開発型の2種類があり、それぞれ異なった作成方法を採用しています。ここからは、2つにはどのような違いがあるのかを紹介します。
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簡易型
簡易型は、プログラミングの知識がなくても作成できるシナリオです。
パソコンの操作を記録させてシナリオ作成ができるため、初めてRPAツールを使用する現場の業務担当者でも、解説動画などを見るだけで簡単に扱うことが可能となっています。
また、ベンダーによっては、eラーニングや研修などにも対応しているので、しっかりとシナリオ作成を学びたいといった方にもおすすめです。
開発型
開発型は、基本的にドラッグアンドドロップを使用してデフォルト動作の機能を組み合わせてシナリオを作成します。
デフォルト動作に含まれない部分に関しては、プログラミングでの組み込みが必要になってくるため、専門知識がない方には難しいでしょう。特に複雑なシナリオを作成する場合には、公開してあるAPI(Application Programing Interface)を活用した方がスピーディーです。
プログラミングの知識があるエンジニアなら、開発型でのシナリオ作成でも問題ありませんが、専門知識がない人だと簡易型がおすすめです。
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RPAシナリオの作り方
煩雑な業務をRPAで自動化するには、シナリオの設計・作成・実装などの工程が必要です。ここからは、RPAシナリオの作り方を詳しく紹介します。
事前準備を行う
まずは、シナリオを作成するためにシナリオの目的を明確化したり、業務フローを可視化したりするなど、事前準備を行う必要があります。
ここからは、それぞれの内容を詳しく解説します。
シナリオの目的を明確化する
初めに、シナリオの目的を明確化しましょう。具体的には、何のためにRPAを導入したいのか、どのような効果を期待しているかなどを明確にします。これにより、次のステップである業務フローの可視化を行いやすくなるほか、費用対効果を測ることも可能です。
業務フローを可視化する
シナリオの目的を明確化したあとは、業務フローの可視化を行います。
自動化したい業務のフローを可視化することで、現在のフローにどのような問題点があるか、不要な部分がないかなどを判断できます。不要な部分や問題点があれば、業務フローを削減したり改善につなげたりすることも可能です。
また、業務が属人化している場合は、可視化することで属人化の解消にもつなげられます。
シナリオの設計書を作る
次に、エクセルなどを用いてシナリオの設計書を作成しましょう。シナリオ作成の手順を間違えてしまうと、実装後にエラーが発生して業務がストップしてしまい、全体の業務に支障が出るケースがあります。
そのため、これまでに定めた方向性や可視化したフローを厳密に確認する必要があります。シナリオの作成例として、エクセルで見積書を作成する場合の作成手順を以下に記載します。
作業名
| 見積書の作成
| |
目的
| 見積書作成の効率化・ミスの削減
| |
参照
| ||
手順1
| 社内データへログイン
| ID:◯◯ パスワード:◯◯
|
手順2
| データの読み込み
| |
手順3
| エクセルを開く
| |
手順4
| 見積書フォーマットを開く
| |
手順5
| 宛先・件名・商品・金額等の入力
| |
手順6
| 名前を付けて保存
| |
手順7
| 印刷
|
誰が見ても一目で業務フローが理解できるシナリオ作成ができているか、ミスのないように確認しながら作業を行いましょう。
また、イレギュラーが発生した際の対応手順も記載しておくと、万が一の際も業務が停止する心配がありません。
シナリオを実装する
RPAの作業の処理単位を「ノード」といいます。例えば、上記のシナリオの設計書の例であれば「エクセルを開く」「見積書フォーマットを開く」などの処理単位を指します。
実装前に書き出したシナリオの手順をノードごとに並べて設定していきますが、RPAはあいまいな指示では動作せず、明瞭な指示でなければ正しく処理してくれない点に注意が必要です。
宛先や件名、商品などの入力をどこの欄に入れるのか、どのボタンをクリックして次の動作に移るのかなど、すべてに指示出しする必要があります。
その際に、メンテナンスや追加でノードを作成したい時のために、ノードに名前を設定したりコメントを入れたりしておくと、今後の運用が楽になっていきます。
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シナリオテストを行う
シナリオを実装したら、正しく動作するかテストしましょう。テストを省いて運用を開始してしまうと、実装前には気が付かなかった処理や動作に気付くことができます。
また、いきなり運用すると確認不足でシナリオが正しく動作せず、業務に遅延や支障が起こるリスクが高くなってしまうのです。RPAにおけるシナリオテストは、4つの工程で行われます。
単体テスト
単体テストとは、一つひとつの動作が設計どおりになっているか確認する作業です。
例えば「エクセルを開く」という動作では、一つの手順内で行われる操作にエラーがないかを細かくテストし、想定していた動作ができるようになるまで調整を加えましょう。
結合テスト
結合テストとは、最初から最後までの動作が、スムーズに連携するかどうかを確認する作業です。状況に応じて変動する動作や、繰り返し行う作業がしっかり機能しているかを確かめましょう。
本番データテスト
結合テストが完了したら、実際のデータを投入し本番データテストを行います。実際のデータを使用すると、結合テストまでに発見できなかったエラーや、イレギュラーなパターンを見つけることが可能です。
特定のデータに対して、必要なノードが足りずに別処理を行っていることを発見し、シナリオの修正をする場合も少なくありません。そのため、修正したら再度テストを実施するという行為を繰り返し、シナリオの精度を高めていきましょう。
耐久テスト
耐久テストは、実装したRPAシナリオを長時間動作させたり、処理量を増やしたりして、どのくらいの負荷に耐えられるかを確かめるテストです。
この時に、処理量を通常業務の2〜3倍にすると待機処理が不十分であることが判明するケースや、通常よりも負荷をかけることで、これまでの3つのテストでは発生しなかったエラーが起こる可能性もあります。
夜間や休憩中などで、気づかないうちにシナリオが停止してしまうといったリスクを把握でき、都度修正を入れられるため問題がないかをしっかり確認しましょう。
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シナリオの保守・運用を行う
テストに合格したシナリオは、正しく保守・運用する必要があります。
例えば、RPAシナリオには一般的にパスワードが必要ですが、そのパスワードが変更された時にログイン処理でエラーが起こるケースも考えられます。エラーによってシナリオが途中停止すると利用できなくなるため、シナリオが内部で保持しているパスワードを更新する作業が必要です。
また、Webサイトから情報を取得するシナリオの場合、Webサイトの構成が変わってしまうとシナリオ修正が必要です。シナリオが修正できなければ動作できなくなるため、適切な保守・運用を行うためにもエラー発生時の解消手順や運用手順を明確にマニュアル化しましょう。
すべてをマニュアル化すると、業務担当者が変わった時やエラー発生時でもすぐに再稼働でき、遅延する時間を短縮できます。
そして、常に最適なシナリオを保持するには定期的なメンテナンスも必要です。メンテナンス作業を行うとエラー発生の確率が格段に下がり、RPAがスムーズに動作します。
RPAシナリオの作成をスムーズに行うコツ
RPAシナリオをスムーズに作成するには、いくつかのコツがあります。ここからは、RPAシナリオの作成をスムーズに行う6つのコツを紹介します。
ショートカットキーを活用する
以下のようなショートカットキーを活用すると、よりスムーズにシナリオ作成が可能です。
- Ctrl+A:すべて選択
- Ctrl+C:指定した範囲内のコピー
- Ctrl+X:指定した範囲を切り取り
- Ctrl+V:コピー・切り取りしたものをペースト
- Ctrl+S:上書き保存
- F6〜F10:入力文字をひらがな・半角全角カタカナ・半角全角英数字に変換
- F11:ページを全画面表示
- F12:名前を付けて保存
他にも便利なショートカットが豊富にあるため、有効活用してみてください。
実装環境を整える
社内システムやソフトウェアのメンテナンスが頻繁に行われると、業務の手順などが変更され、RPAシナリオも都度変更しなければならないケースがあります。
すると、業務の自動化がスムーズにできず、さらに手間がかかってしまう可能性があるのです。また、古いシステムを使用している場合は自動化が困難なケースもあるので、しっかり確認しておきましょう。
スモールスタートを心がける
すべての業務を自動化しようとすると、RPAシナリオの作成が大きな負担となります。また、目に見える効果が実感できなければ、途中で挫折してしまう可能性もあるでしょう。
そのため、まずは費用対効果の高い業務やシナリオ作成が比較的容易なものなどから導入するなど、スモールスタートを心がけましょう。
スモールスタートで始めれば、RPAシナリオを改良しつつ進めることができたり、大きな失敗につながらなかったりとさまざまなリスクヘッジにつながります。
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サンプルシナリオを活用する
「どのようにシナリオを組み立てれば良いのかわからない」と悩んでいる方は、Web上で公開されているサンプルシナリオの活用がおすすめです。
汎用性の高いシナリオのサンプルが公開されているため、導入しやすいのはもちろん参考としてカスタマイズして利用することもできます。
また、RPAツールによってはツール内にサンプルシナリオが用意されている場合もあるので、積極的に活用しましょう。
専門業者へ作成代行依頼をする
RPAのシナリオ作成にどうしても時間が取れなかったり、どの業務を自動化できるのか不明瞭だったりする場合は、専門業者へ依頼するのもよいでしょう。
外部に依頼することによって、シナリオ作成にあたっての負担がかからず、自社で作成する場合と比べて高品質なシナリオを提供してくれます。社内にノウハウがない場合は外部にアウトソーシングするのが無難です。
なお、専門業者の利用にあたっては費用がかかります。どの程度の費用がかかるのかという点も、しっかりとチェックしておきましょう。
第3者の意見を取り入れる
業務担当者だけがチェックすると、普段の作業で不要な部分を見落としてしまう懸念があります。
また、効率化できる要素を見落としてしまい、業務手順の最適化が遠のいてしまう可能性も考えられるため、第3者の意見を必ず取り入れるようにしましょう。
RPAシナリオの例・サンプル
ここでは、「winActor」というRPAツールを利用した際のRPAシナリオの例・サンプルを2つ紹介します。
まずは、「Access操作(SQL文実行)のライブラリで在庫管理テーブルデータの登録・取得・更新・削除を行うサンプルシナリオ」です。このシナリオを利用すると、以下のような処理が行えます。
- Accessファイルの入庫データの値を在庫テーブルに挿入
- 在庫テーブルと出庫データを紐づけ、在庫テーブルの在庫数と当月出庫数を更新
- 在庫テーブルの値をExcelファイルに出力 など
在庫管理を効率化したい場合におすすめのサンプルシナリオです。
2つ目は、「Excelの予定表とアカウント一覧をもとに、Outlookのスケジュール状況を一覧化するサンプルシナリオ」です。こちらのシナリオでは、以下のような処理を自動化できます。
- 予定を記載したExcelファイルから開始日時と終了日時を作成
- 対象者を記載したExcelファイルから対象アカウントを取得
- 2つのExcelファイルの情報から、Outlookで対象アカウントの予定を検索
- 対象者を記載したExcelファイルに、予定名と予定を検索した結果を記入 など
ExcelとOutlookのスケジュールを自動連携したい場合に活用できるサンプルシナリオです。
ほかにも、winActorの公式サイトではさまざまなサンプルシナリオが公開されているため、自社の業務の参考になるものはないかを確認してみてください。
[参照元:winActor「サンプルシナリオ一覧」より]
適切なRPAシナリオを作成し業務効率化を目指そう
RPAシナリオは業務を自動化させ、生産性を上げるうえで欠かせないものです。RPAシナリオを作成する際は現在の業務フローを可視化したうえで、どこを自動化したいかを考えましょう。
RPAシナリオを作成できたらテストを実施して正しく動作しているか確認し、その後の効果測定まで行うとどの程度の効果が得られたのかがわかります。RPAシナリオを作成してRPAを社内に浸透させ、会社全体の業務効率化を図ってみてください。
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