Caasとは?意味や読み方・類似したクラウドサービスとの違いなどを簡単に解説
近年ではクラウドサービスが普及し、さまざまな分野で利用されるようになりました。アプリケーションの構築に役立つクラウドサービスのひとつが、CaaSです。本記事では、特徴やメリットを紹介しながら、CaaSとはどのようなサービスなのか、わかりやすく解説します。
・Caas(Containers as a Service)とは、クラウド上でコンテナオーケストレーションを提供するサービスのこと
・Caasには、複製がしやすくセキュリティ性に優れている、またコストを抑えられるなどのメリットがある
目次
CaaSとは?
CaaSとは、Containers as a Serviceの略称で、読み方は「カース」です。クラウド上で「コンテナオーケストレーション」を提供するサービスを指します。
CaaSをより深く理解するために、まずは「コンテナ」と「コンテナオーケストレーション」について解説します。
コンテナとは
コンテナとは、サーバーOS上で作られた区画を意味します。
基本的に、IT業務で利用するアプリケーションはそれぞれ最適な環境設定が異なりますが、1つの環境で複数のアプリケーションを利用するのが一般的です。
しかし、最適ではない環境でアプリケーションを利用すると、パフォーマンスの低下や起動できないなどの問題が生じる可能性があります。
そこで、コンテナを活用すれば元のOS設定をベースにしつつ、最適な実行環境を用意できるため、それぞれのアプリケーションを最適な状態で利用可能です。
コンテナオーケストレーションとは
コンテナオーケストレーションとは、効率よくコンテナを運用・管理する機能です。
コンテナは非常に便利なシステムですが、コンテナが複数になると管理が煩雑になってしまいます。そこで、コンテナオーケストレーションを活用することで、コンテナ化されたアプリケーションの管理を自動的に行えます。
このコンテナオーケストレーションをクラウド上で提供するのが、CaaSです。
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CaaSと類似したクラウドサービスとの違い
CaaSに類似したクラウドサービスとして、PaaS(パース)、IaaS(イアースまたはアイアース)、FaaS(ファース)などが挙げられます。これらとCaaSの違いは、「管理領域」にあります。
ここからは、それぞれの違いについて詳しく解説します。
Paasとの違い
Paasとは、Platform as a Serviceの略で、アプリケーションの実行に必要なサーバーやOSなどをインターネットを経由して利用できるようにするサービスです。
サービス事業者の管理領域は、仮想サーバー・ネットワーク、OS、ミドルウェアなどです。ユーザーはアプリケーションの導入・運用やデータの管理を担当します。
ユーザーは2つの領域だけを管理すればよいため、CaaSと比べて管理しやすいといえるでしょう。
IaaSとの違い
IaaS(Infrastructure as a Service)は、クラウド上で仮想サーバーやネットワークを提供するサービスで、「イアース」「アイアース」などと呼ばれます。
提供された仮想サーバーに、OSやアプリケーションなどをインストールして利用できるため、自社でハードウェアやサーバーを持つ必要がありません。
そのため、サービス事業者の管理領域は仮想サーバー・ハードウェアとなり、ユーザーはアプリケーションやデータ、ミドルウェアやOSなどを管理します。CaaSと比べて、ユーザーの管理領域がやや多いことが特徴です。
FaaSとの違い
FaaS(Function as a Service)は、アプリケーション開発に必要な環境を提供するサービスです。
サービス事業者の管理領域は仮想サーバー・ネットワーク、OS、ミドルウェアなどで、ユーザーの管理領域はアプリケーションのみとなります。
そのため、CaaSと比べてユーザーの管理領域が大幅に少なくなり、管理が楽になるといえます。
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Saasとの違い
Saas(Software as a Service)は、すでに出来上がっているソフトウェアをインターネット経由で提供するサービスです。具体例として、メールやスケジュール管理などが挙げられます。
CaaSとの違いは、ユーザーの管理領域はなく、すべてサービス事業者が管理を行う点です。そのためすぐに導入しやすく、誰にでも利用しやすいといえます。
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CaaSのメリット
CaaSには、多くのメリットがあります。ここからは、CaaSのメリットを4つ紹介します。
開発環境の複製や移動がしやすく柔軟性が高い
CaaSは、開発環境の複製や移動がしやすく、柔軟性が高い点が大きなメリットです。コンテナで開発されたアプリケーションは最適な環境を維持したまま、ほかのクラウドや自社サーバーに移すことができます。
そのため、特定のクラウドサービスに依存して抜け出せない「ベンダーロックイン」を防げます。
また、コンテナは簡単に複製し、ニーズに応じてスケールの調整が可能なため、アプリケーションごとに細かく最適化することも可能です。
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コストを削減できる
CaaSは、ユーザーが利用したリソースに応じて料金が発生するため、必要最低限のコストで利用できます。また、コンテナの特性上、コンテナごとにOSを用意する必要がなく、仮想マシンに比べて必要なリソースも小さくなります。
必要な時に必要な分だけコンテナを利用できるため、なるべくコストを抑えたいと考えている場合に有効です。
セキュリティ性が高い
コンテナはそれぞれ独立した環境として運用できるため、あるコンテナで障害やセキュリティ被害が起こった場合でも、ほかのコンテナに影響はありません。
くわえて、コンテナで区切られることで、アプリケーション間での干渉を防ぐことも可能です。
複数のアプリケーションが1つの環境を共有していると、予期せぬ変更などが加わり、想定していない動きをする危険性があります。セキュリティの観点でも、このような事態は避けなければなりません。
コンテナ化によって不測の事態を防ぐことで、高いレベルでのセキュリティを実現できます。
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スケーラビリティに優れている
CaaSでは、安定性や需要の急増に応じてスケーリングを行ったり、コンテナを同じクラスタ内で複製してバックアップを取ったりすることが可能です。
状況の変化に柔軟に対応できるため、スケーラビリティに優れているといえます。これにより、無駄なくコンテナを活用してスケーラブルなアプリケーションの開発・運用を行えます。
CaaSのデメリット
CaaSには、学習コストが高いというデメリットがあります。
KubernetesやDockerなどソフトウェアを利用する必要があるため、これらの技術を習得しなければなりません。一度学習すれば終わりではなく、CaaSに関連する技術は変化が激しくアップデートや仕様変更が頻繁に行われるため、継続的な学習が必要です。
また、コンテナは細かい設定ができる反面、担当エンジニアの責任や負担が大きくなる点もデメリットです。
しかし、最近ではKubernetesをフルマネージドで利用できるクラウドサービスも登場しており、CaaSのデメリットを補いつつ効率的な運用が行えます。
CaaSのコンテナ技術に関連するソフトウェア
CaaSを利用するには、関連するソフトウェアの技術が欠かせません。ここからは、CaaSのコンテナ技術に関連する「Kubernetes」「Docker」について紹介します。
Kubernetes
Kubernetes(クバネティス)は、コンテナの運用管理・自動管理を行うためのオープンソースのソフトウェアです。Kubernetesはギリシア語で「船長」を意味します。大量のコンテナを積んだ船を指揮する船長、とイメージすると理解しやすいでしょう。
コンテナは、アプリケーションを適切な環境で運用することには優れていますが、サーバー間での連携を行うためには、複雑な運用が必要です。Kubernetesを利用することで、サーバー間の連携をスムーズに行ったり、自動化したりすることが可能です。
Kubernetesでは、Podというコンテナを管理する最小単位があります。Podには複数のコンテナが格納されており、KubernetesはこのPod単位でデプロイ(サービスを利用できる状態にすること)を行います。コンテナを一つひとつ操作するよりも、作業負担が少なくなるのが特徴です。
Kubernetesのメリット
Kubernetesの主なメリットは、以下の通りです。
- 拡張性が高い
- コンテナの一括管理が可能
- セキュリティ性が高い
まず、Kubernetesは柔軟にスケーリングが可能で自由にリソースを調整できるため、拡張性が高いことが魅力です。自社のビジネス規模に合わせて柔軟に運用可能で、余計なコストも削減できます。
また、コンテナの一括管理もでき、設定ファイルを複数のコンテナ間で共有すると、設定の変更を一括で行えます。新しいコンテナの作成やリソースの適用作業、既存コンテナの削除なども自動化が可能です。
Kubernetesにはパスワード、OAuthトークン、SSHキーといった機密情報の管理機能が複数搭載されており、セキュリティ性が高く機密情報の漏洩リスクも抑えられます。
Docker
Docker(ドッカー)とは、アプリケーションごとにコンテナを分離して開発・実行するためのオープンソースのプラットフォームです。
軽量で高速動作できる点が特徴で、開発環境の共有もしやすいためチーム開発に利用すると生産性の向上が期待できます。
2013年にオープンソースプロジェクトとして公開されて以降、急速に普及しました。現在はWEB開発の場などで広く利用され、Dockerの利用が必須の現場も珍しくありません。
Dockerのメリット
Dockerには、主に以下のようなメリットがあります。
- 処理速度が速い
- 環境構築が簡単
- 開発環境の共有が容易
Dockerは、ゲストOSが不要で立ち上げ速度が速く、処理自体も高速です。コンテナのメモリやディスクの消費量を抑えて仮想化できるため、快適に開発を進められます。
また、Dockerは「Dockerイメージ」と呼ばれるファイルを展開するだけで、簡単に環境を構築できます。開発環境をDockerイメージでファイル化して簡単に共有できるため、従来のように操作ミスや手順のミスなどで環境構築が遅れる心配もありません。<このような特性から、Dockerはさまざまな環境で広く利用されています。
Caasの導入を検討しよう
CaaSを活用することで、複数の環境を簡単に構築し、アプリケーションごとに最適な形で運用できるようになります。
また、サービス事業者にインフラ部分の構築からOSまでの管理・運用を任せられるため、人的コストの削減も可能です。効率的なシステム運用のために、ぜひCaasの導入を検討してみましょう。
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