【解説】CaaSとは?意味やメリット・デメリット・サービス例について

最終更新日時:2022/10/31

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クラウドサービスが普及し、さまざまな分野で利用されるようになりました。アプリケーションの構築に役立つクラウドサービスのひとつがCaaSです。本記事では、特徴やサービス例を紹介しながら、CaaSとはどのようなサービスなのかを解説します。

CaaSのサービスとは?

CaaS(カース)とは、Containers as a Serviceの略称で、クラウド上で「コンテナオーケストレーション」を提供するサービスを指します。

CaaSを理解するために、まずは「コンテナ」と「コンテナオーケストレーション」について解説します。

コンテナとは

コンテナとは、サーバーOS上で作られた区画を意味します。IT業務ではさまざまなアプリケーションを使用しますが、アプリケーションごとに最適な環境設定は異なっています。しかし、通常は1つの環境で複数のアプリケーションを利用するのが一般的です。

その場合、アプリケーションを最適な環境で動かせなくなる可能性があります。たとえば、あるアプリケーションに最適なOS設定は、他のアプリケーションにとっては不適切で、パフォーマンスが低下する、そもそも起動できない、などのケースが考えられます。

そこで考案されたのがコンテナというシステムです。コンテナはもとのOS設定をベースにしつつ、最小限の設定だけを変更した環境を用意できます。そのため、それぞれのアプリケーションを最適な状態で利用できるのです。

コンテナオーケストレーションとは

コンテナは非常に便利なシステムですが、コンテナが複数になると管理が煩雑になってしまいます。そのような問題に対応するために開発されたのが、効率よくコンテナを運用・管理するコンテナオーケストレーションです。コンテナオーケストレーションでは、コンテナ化されたアプリケーションの管理を自動的におこなうことができます。

CaaSは、このようなコンテナオーケストレーションをクラウド上で提供します。CaaSを利用することで、サーバーの準備、保守・管理が不要となるため、エンジニアは開発にリソースを回せるようになるのです。

その他クラウドサービスとの違い

CaaSに類似したサービスとして、IaaS(イアースまたはアイアース)、PaaS(パース)、FaaS(ファース)などが挙げられます。これらとCaaSの違いは、「管理領域」にあります。

IaaS(Infrastructure as a Service)は、クラウド上で仮想サーバー・ネットワークを提供するサービスです。ユーザーは提供された環境の上にOSやアプリケーションなどを導入し、自由にカスタマイズすることができます。

PaaS(Platform as a Service)は、アプリケーションを実行できるプラットフォーム機能を提供します。サービス事業者の管理領域は仮想サーバー・ネットワーク、OS、ミドルウェアです。ユーザーはアプリケーションの導入・運用を担当します。

FaaS(Function as a Service)は、アプリケーション開発に必要な環境を提供するサービスです。サービス事業者の管理領域は仮想サーバー・ネットワーク、OS、ミドルウェアと、PaaSとほぼ同じですが、フレームワークの管理部分も事業者が管理します。そのため、ユーザーはアプリケーション開発への注力が可能です。

CaaSはIaaSとPaaSの中間にあたり、仮想サーバー・ネットワーク、OSとコンテナ管理機能が提供されます。

事業者の管理領域が広いほどユーザーの作業負荷は小さくなりますが、一方でカスタマイズ性も落ちてしまいます。そのため、ユーザーは業務実態に合わせた選択をしなければなりません。

CaaS利用によるメリット

CaaSを利用することには多くのメリットがあります。

1つ目のメリットは「環境を保持したまま移行・複製できるという点」です。コンテナで開発されたアプリケーションは最適な環境を維持したまま、他のクラウドや自社サーバーに移すことができます。

そのため、移行時にありがちなトラブルを未然に防げる、特定のクラウドサービスに依存して抜け出せない、という事態を防ぐことができます。また、コンテナは簡単に複製し、ニーズに応じてスケールの調整が可能なため、アプリケーションごとに細かく最適化することも容易です。

2つ目のメリットは「コストを最適化できる点」です。CaaSはユーザーが利用したリソースに応じて料金が発生するため、コストは必要最低限になります。また、コンテナの特性上、コンテナごとにOSを用意する必要がありません。そのため、仮想マシンに比べて必要なリソースも小さくなります。

3つ目のメリットが「セキュリティの高さ」です。コンテナを利用することで、独立した環境を用意できます。そのため、セキュリティ被害が発生しても、他のコンテナが影響を受けにくいという特徴があります。

くわえて、コンテナで区切られることで、アプリケーション間での干渉を防ぐことも可能です。複数のアプリケーションが1つの環境を共有していると、予期せぬ変更などが加わり、想定していない動きをする危険があります。セキュリティの観点でも、このような事態は避けなければなりません。

コンテナ化によってそのような不測の事態を防ぐことで、高いレベルでのセキュリティを実現できるでしょう。

CaaS利用によるデメリット

CaaSは便利なサービスですが、デメリットにも注意しなければなりません。

CaaSのもっとも大きなデメリットは「学習コストの高さ」です。KubernetesやDockerといったツールの利用が前提となるため、まずはこれらの使い方に習熟しなければなりません。

その上、一度学習すれば終わりというわけではなく、ツールのアップデートや仕様変更ごとに、使い方を学び直さなければなりません。エンジニアのリソースを継続的に割くという意味では、ある意味ランニングコストと言えます。

また、コンテナは細かい設定ができる反面、「エンジニアの負担が大きくなる」という問題もあります。担当範囲が増えることは、そのまま責任を負う範囲が増えることも意味するため、担当者にストレスがかかることにも注意が必要です。

CaaSを導入する際は、メリットと学習・運用コストを比較しつつ、慎重に検討するようにしましょう。

CaaSのサービス事例

CaaSを利用するためのサービスを2例ご紹介します。

  • Kubernetes
  • Docker

Kubernetes

Kubernetes(クバネティス)はコンテナの運用管理・自動管理をおこなうためのオープンソースのソフトウェアです。Kubernetesはギリシア語で「船長」を意味します。大量のコンテナを積んだ船を指揮する船長、とイメージすると理解がしやすいでしょう。

コンテナはアプリケーションを適切な環境で運用することには優れていますが、サーバー間での連携をおこなうためには、複雑な運用が必要です。Kubernetesを利用することで、サーバー間の連携をスムーズにおこなったり、自動化したりできるようにできるのです。

Kubernetesではコンテナを管理する最小単位としてPodというものが存在します。Podには複数のコンテナが格納されており、KubernetesはこのPod単位でデプロイ(サービスを利用できる状態にすること)をおこないます。コンテナを1つ1つ操作するよりも、作業負担が少なくなるのが特徴です。

Kubernetesのメリット

Kubernetesにはさまざまなメリットがあります。

1つ目は「拡張性の高さ」です。要求に合わせて、柔軟なスケーリングが可能になっています。たとえば、利用者が増えてきた際に、複雑な環境構築なしでサーバーを簡単に追加することができます。また、機能の追加や削除なども、簡単におこなうことが可能です。

2つ目は「状況に応じた自動化」です。Kubernetesには自己回復機能が搭載されており、サーバーがダウンした場合や、データを削除してしまった場合に自動で対応できるようになっています。

また、マシンのリソースがひっ迫した場合は、他のマシンにトラフィックを振り分けるといった負荷分散機能も用意されています。

3つ目は「全体が把握しやすいという点」です。Kubernetesにはサービスディスカバリと呼ばれる機能が搭載されており、現在稼働しているアプリケーション情報が一覧で取得できます。この機能により、アプリケーションのポート番号・IPアドレスを簡単に把握できるようになります。

4つ目が「セキュリティの高さ」です。Kubernetesにはパスワード、OAuth(オーオース)トークン、SSHキーといった機密情報の管理機能が搭載されています。

この機能を使って機密情報をデプロイすることで、コンテナイメージの再作成をせずにアプリケーションの構成情報の更新が可能になります。機密情報の漏洩リスクの発生を防ぐため、高いレベルでのセキュリティを保てるようになるのです。

Kubernetesは2014年にリリースされた新しい技術ながらも、さまざまな現場で利用されています。そのため、今はまだ過渡期で、今後はさらに普及していくことが予想されます。

Docker

Docker(ドッカー)は、Docker, Inc.が提供するコンテナを利用してアプリケーションの開発・配置・実行するためのオープンプラットフォームです。

2013年にオープンソースプロジェクトとして公開して以降、急速に普及しました。現在はWEB開発の場などで広く利用され、Dockerの利用が必須の現場も珍しくなくなりました。

Dockerの優れた点は、簡単に職場やチームでの環境を標準化できるという点です。DockerはDockerfileという環境設定が記録されたファイルを利用します。このDockerfileを使うことで、ファイルに記載された環境設定を瞬時におこなえるのです。

Dockerのメリット

Docker(もしくはDockerfile)の利用には、さまざまなメリットがあります。

1つ目は、「環境構築作業に時間を取られなくなること」です。新しい人員が来たときなどに、環境構築作業が発生しますが、手作業で行うと数十分から数時間の時間を取られてしまいます。Dockerを利用すれば、そのような時間は発生しません。

2つ目は、「作業ミスを防げるという点」です。環境構築手順が複雑になるほど、ミスが発生しやすくなります。チェック漏れがあった場合、ミスに気づかないまま実務を進めてしまい、あとになってミスが発覚するという事態が起こりかねません。

DockerではDockerfileに記述されたとおりに環境構築をおこなうので、そのようなミスの心配がありません。

3つ目は、「環境構築を簡単にやり直せるという点」です。環境構築でミスがあったり問題があると、最初の状態に戻すやり直し作業が発生してしまいます。Dockerで事前に環境設定を記録しておくことで、そのようなやり直し作業もすぐにおこなえます。

4つ目が、「環境の頻繁な更新が可能になるということ」です。環境の更新には作業負担が発生するため、あまりにも更新が多いとプロジェクトの進捗に影響が出ます。Dockerであれば環境構築をすぐにおこなえるため、開発メンバーに負担がかかりません。

このような特性から、Dockerはさまざまな職場で広く利用されています。

CaaSとはクラウド上でコンテナの運用や管理ができるサービス

CaaSを活用することで、複数の環境を簡単に構築し、アプリケーションごとに最適な形で運用できるようになります。また、サービス事業者に管理を任せることができるので、インフラからOSまでの管理運用にかかる人的コストの削減も可能です。

効率的なシステム運用のために、ぜひ導入を検討してみましょう。

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