SaaSの指標KPI「LTV」とは?重要性や計算方法・CACとの関係を解説

最終更新日時:2023/08/14

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SaaSのLTV

近年特に注目が集まっているLTVという指標。SaaS事業において重要なKPIとして知られているLTVですが、そもそもLTVとは一体何なのでしょうか。本記事では、そんなLTVについて、LTVとは何かをはじめ、計算方法や向上施策などを詳しく解説していきます。

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LTV(Life Time Value)とは?

LTV(Life Time Value)とは顧客生涯価値を意味し、顧客が生涯にわたりそのサービスを使い続ける可能性を表しかつ収益性が高いかを図る指標です。LTVはSaaS(Software as a Service)ビジネスの重要な指標KPIの1つといえます。

SaaSビジネスにとって重要なLTVを理解し、取り入れることで継続的に高収益を上げられるビジネスモデルを目指せるでしょう。SaaSビジネスの経営判断では、LTVやCACでユニットエコノミクスを算出する方法が重要です。

ユニットエコノミクスとは?

ユニットエコノミクスとは、顧客・製品・店舗などのユニット単位で事業の経済性を測定する指標です。通常、ユニットエコノミクスは1顧客あたりで考えるケースがほとんどです。

そのため、「1顧客あたりの経済性や採算性を示す指標KPI」であるといえます。ユニットエコノミクスを算出する式は「LTV÷CAC」で表されます。LTV(顧客生涯価値)をこれから紹介するCAC(顧客獲得コスト)で割ることによりユニットエコノミクス(1顧客あたりの経済性や採算性)を算出できます。

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CAC(Customer Acquisition Cost)とは?

CACとは「顧客獲得コスト」のことを指し、指標KPIを使うことによって「効率的に顧客を獲得しているかどうか」を判断できます。

また、CACには「顧客を1人獲得するために使用したすべての費用」が含まれます。この「すべての費用」は各企業が任意で定義するため、たとえば広告費用だけを対象とする企業もあれば、人件費やシステムの管理費用を算入する企業もあります。

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LTVが注目されている背景

近年LTVが注目されている背景としては、主に下記の2つが当てはまります。

  • 新規顧客の獲得コストの増加
  • One to Oneマーケティングの主流化

新規顧客の獲得コストの増加

少子高齢化が進む日本において、競合企業との競争に打ち勝つために、新規顧客の獲得にコストをかける企業が増えています。新規顧客の獲得には、多くのコストや人的リソースが必要となり、想定より費用対効果を得られないケースも少なくありません。

一方で、既存顧客との関係性を良好に構築すれば、リピート率の向上や評判による新規顧客の獲得につながります。

新規顧客の獲得コストと比較すると、既存顧客による影響で獲得する新規顧客の獲得コストの方が安くできます。そのため、既存顧客との関係性を数値として可視化できるLTVが注目を集めているのです。

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One to Oneマーケティングの主流化

商品やサービスをアプローチする顧客を絞るOne to Oneマーケティングの主流化もLTVが注目されている理由のひとつです。

インターネットやSNSの普及により、顧客の購買行動は大きく変わりました。従来のように、不特定多数にアプローチするのではなく、需要がある顧客層にだけ購買体験を提供する方が顧客満足度の向上や売上アップにつながります。

テレビの広告よりもSNSでインフルエンサーが紹介した商品を購入する若者が多い昨今において、One to Oneマーケティングはもはや欠かせない戦略といえるでしょう。

LTVが注目されている背景としては、顧客一人ひとりの購買意欲を掻き立て、顧客満足度を向上させる重要性が高まっていることが挙げられます。

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LTVがSaaS事業で重要視されている理由

ここでは、LTVがSaaS事業で重要視されている理由を2つ紹介します。

  • SaaS事業では長期的な売上が必要
  • LTVの向上が利益に直結

(1)SaaS事業では長期的な売上が必要

SaaS事業を成功させる鍵は、いかに長期的に顧客の利用を継続できるかです。

継続してサービスを利用してもらえるSaaS事業は比較的売上が安定しやすいビジネスモデルです。顧客が継続的に利用してくれるかどうかを判断する指標として、LTVは重要視されています。

サービスを長期的に利用してもらうには、定期的にアップデートしたり、顧客の要望にあったサービスを提供したりする必要があります。

顧客満足度を上げられれば、解約率が下がるため、結果的に売上アップが期待できるはずです。顧客が今後もそのサービスを使うのか、収益性は高いのかを判断する指標としてLTVは重要な役割を担っています。

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(2)LTVの向上が利益に直結

顧客が継続してサービスを利用することは売上を上げるために大切ですが、一人ひとりのLTVを高めることも重要です。

サービスを継続して利用してもらうには、顧客一人ひとりとの関係性を保ちつつ、ファン化してもらう必要があります。ファンとなった顧客は契約を更新し続ける傾向にあり、解約率も必然的に下がっていきます。また、熱狂的なファンになった顧客は、企業が提供しているほかのサービス導入への障壁も低くなるため、事業の横展開がしやすくなるでしょう。

いかにリピートしてもらえるか、どれだけ自社サービスやブランドを好きになってもらえるかがSaaS事業では注力すべきポイントのひとつです。

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LTVの計算方法

ここでは、LTVの計算方法を紹介します。

LTVを計算するうえで押さえるべき、平均顧客寿命・チャーンレート・顧客の平均単価の3つの用語も併せて解説します。

LTVの計算式

LTVの計算式は下記のようになります。

【LTV=顧客の平均購入単価×平均顧客寿命】

平均顧客寿命は、「平均顧客寿命=1÷チャーンレート」で算出可能です。つまり、以下のように表すことができます。

【LTV=顧客の平均単価÷チャーンレート】

この式を理解するためには、各単語の意味を把握することが必要です。

  • 平均顧客寿命
  • チャーンレート
  • 顧客の平均単価

それぞれ順を追って解説していきます。

平均顧客寿命とは?

平均顧客寿命とは、契約している顧客がどれだけ継続しているかの平均値を表すものです。上述したサブスクリプションなどは1ヶ月で辞めてしまう顧客もいれば、1年・2年と継続して利用する顧客もいます。

これらの平均値を算出したものが平均顧客寿命です。一般的に、平均顧客寿命が長ければ長いほど多くの顧客が継続してサービスを利用してくれるので、顧客がもたらす利益も大きくなります。

反対に平均顧客寿命が短ければ、新規顧客の獲得に力を入れるか、継続年数を上げるような施策をとらなければ収益が安定化せず、消耗してしまう可能性があります。平均顧客寿命は、顧客がどの程度継続してサービスを利用してくれるかを見える化するSaaSビジネスにおいて重要な指標です。

チャーンレートとは?

チャーンレートとは「解約率」を指し、サービスの利用をやめてしまった人の割合であり、顧客満足度をダイレクトに表す指標です。チャーンレートには大きく分けて「カスタマーチャーンレート」と「レベニューチャーンレート」の2種類があります。

カスタマーチャーンレートは顧客数をベースに算出します。カスタマーチャーンと呼ばれることもあり、よく利用されるチャーンレートです。

対して、レベニューチャーンレートは収益を基準に割合を算出します。収益をベースに算出することで、同じサービス内で複数の価格帯のプランを提供している場合、「価格帯別の解約率」「収益の増減」「顧客単価の変化」の把握が可能です。

そのため、LTVを算出する際のチャーンレートはレベニューチャーンレートの方が適しているといえます。しかし、レベニューチャーンレートは非常に小さな値となったり、マイナスになってしまったりする可能性もあります。

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顧客の平均単価とは?

顧客の平均単価とは、1人の顧客が購入するサービスや物品の平均単価です。売上ベースと利益ベースで算出する方法がありますが、LTVの目的を考えると、利益ベースで考えた方がよいでしょう。

対して、利益ベースの利益とは「粗利益」を指します。SaaSビジネスの原価には、サーバーの維持費用などサービス運営のための費用が含まれています。これらが売上に対して何割を占めるかを計算して、粗利益を割り出すのです。

よって、LTVの計算式は「LTV=顧客の平均単価×粗利益率÷チャーンレート」で算出できます。

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LTVの向上に必要な施策

LTVを高めるために必要な施策は下記の通りです。

  • CRMやMAツールを活用する
  • チャーンレートの改善
  • 顧客の平均単価の向上
  • 粗利益率の向上

4つの施策について順を追って解説していきます。

CRMやMAツールを活用する

CRMとは「Customer Relationship Management」の略で「顧客関係管理」と呼ばれ、顧客との関係性やコミュニケーションを管理し利益を向上させるのが目的です。

取引や商談の日時を管理する「顧客情報管理」やメールを用いて顧客へ情報配信する「配信機能」などを活用し、顧客満足度の向上を図ります。

MAとは「Marketing Automation」の略で、効率的なマーケティングを実現することを目的としてMAツールを用います。見込み顧客の管理やスコアリング、分析レポートといった機能を備え、マーケティング活動のサポートが得意なツールです。CRMやMAツールを活用して効率的なマーケティングを行い、顧客満足度の向上を図ることでLTVの向上が期待できます。

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チャーンレートの改善

チャーンレートを下げることができればLTVの向上を図れ、下げるための施策は下記の通りです。

  • 製品やサービスの品質を向上させる
  • 価格や料金プランを適正にする
  • 顧客との信頼関係の構築

「製品やサービスの品質を向上させる」ことで、顧客が不満を抱くリスクを低減できればチャーンレートの改善が可能です。そのためには、サービスを分析してPDCAサイクルを回すことや、サービスの魅力・メリットを伝えられるように改善する必要があります。

「価格や料金プランを適正にする」ことで、価格と性能の不一致によるチャーンレートの上昇を防ぎます。競合他社を分析しつつ、自社の価格がサービスの対価として適正かどうかを確認することが必要です。「顧客との信頼関係の構築」を行うことで、製品やサービスに愛着を持ってくれる「ロイヤルカスタマー」を作れます。

ロイヤルカスタマーは、一般的な顧客と比べると新製品購入のハードルが低く、高価格なサービスを利用してくれる可能性が高まります。そのためには、購入後のアフターフォローなど利用を継続してもらうための工夫が必要不可欠です。

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顧客の平均単価の向上

顧客の平均単価が上がればLTVも向上させることができます。顧客の平均単価を向上させるためには、下記の施策が考えられるでしょう。

  • 商品の単価を引き上げる
  • 上位商品を提案する(アップセル)
  • 安いプランへのダウングレードを防ぐ
  • 複数の契約期間を提供する

商品の単価を引き上げることが最も簡単な施策であり、上述したようにサービスの対価として見合わない場合はチャーンレートの悪化を招いてしまうため、慎重な検討が必要になります。

上位の契約プランへ誘導したり、ダウングレードを防ぐことも重要な施策でこれには、サービスの質の向上が必要不可欠です。

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粗利益率の向上

粗利益率の向上を図ることもLTVを高める方法として有効な手段の1つです。粗利益率=(売上-原価)÷売上×100で計算しますので、粗利益率を上げるための方法は、原価を下げるか売上を上げるかの2択になります。

売上を上げるためには顧客の平均単価向上で紹介した「商品の単価を引き上げる」ことや「上位商品を提案する(アップセル)」ことが有効な手段です。原価を下げるためにはSaaSサービス運用のサーバーなどのコストを見直すことが考えられるでしょう。

ただし、サービスの品質低下を招いてしまうと顧客の満足度が下がり、チャーンレートの悪化などにつながってしまう恐れもあります。売上の向上と原価の引き下げのバランスを考えながら慎重に進めていきましょう。

LTVの向上はSaaS事業において不可欠

LTVの向上はSaaS事業において必要不可欠です。

LTVとは、顧客が生涯にわたりそのサービスを使い続ける可能性を表し、かつ収益性の高さを図る指標のことで、昨今のサブスクリプションの拡充により、SaaS事業に参入する企業も増えてきています。

SaaS事業においては1人もしくは1社の顧客が、継続してどれくらいの利益をもたらしてくれるかが重要になります。LTVの趣旨を理解し、常に向上を図ることで継続的に収益を生み出せるSaaS事業の運営を目指しましょう。

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