SDGsウォッシュとは?意味のない取り組み?事例とリスク回避策も解説

最終更新日時:2022/08/31

SDGs

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日本でも取り組む企業が増加しているSDGs。しかし、それに伴い企業の新たな課題となっているのがSDGsウォッシュです。本記事では、そんなSDGsウォッシュについて、SDGsウォッシュの意味や無意味な取り組みと言われてしまった事例などを詳しく解説していきます。

SDGsウォッシュの意味

SDGsウォッシュの意味は、字面からではなかなかイメージできないかもしれません。ここでは、SDGsウォッシュの意味をSDGsと併せてご紹介します。

そもそもSDGsとは?

SDGsとは、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。2015年の国連サミットで、誰ひとり残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を、2030年までに達成することを目標に採択されました。

SDGsには17のゴールが設定されており、これらは大きく分けて3つに分類されます。

  • 経済
  • 社会
  • 環境

経済

エネルギー・資源の活用、労働環境・働き方の改善、男女格差などの不平等の是正を行い、持続可能な経済成長を目指します。

社会

貧困・飢饉の解決、誰でも教育を受けられる体制づくりといった、社会全体での開発・整備の必要な取り組みがこれにあたります。人間が不自由なく生活し、働いていける環境の構築が目標です。

環境

海や森林などの環境保護や気候変動への対策を、国家間の協力のもとで実施していきます。経済と社会を支える土台となる目標です。

SDGsの目標達成のため、日本政府はSDGs推進本部を設置し、官民一体となった取り組みを推進しています。例えば、国内の取り組みを促進することを目的に、ジャパンSDGsアワードを開催し、優れた取り組みを行っている国内の企業・団体を表彰しています。

SDGsの認知度は年々増しており、今ではほとんどの人がSDGsという言葉を知るまでになりました。

そのため、企業がSDGsに取り組むことは、よりよい社会を目指して貢献しているというアピールにもつながります。また、SDGsの推進で生まれたニーズに応えられるため、新たなビジネスチャンスも期待できるでしょう。

企業のSDGsへの取り組みは、今後も盛んになっていくと予想されます。

SDGsウォッシュとは?

SDGsウォッシュとは、表面上SDGsに取り組んでいるように見せているだけで、実体が伴っていないごまかしのことです。SDGsウォッシュという名称は、粉飾を意味する「ホワイトウォッシュ」に由来しています。

SDGsの重要性が増すにつれて、SDGsに取り組んでいることのアピールは、ブランドイメージの向上、ビジネスチャンスの獲得などのメリットを生むようになりました。このメリットは企業の取り組みを促進する一方で、実態のわからないSDGsへの取り組みを誘発するようになりました。

SDGsウォッシュが増加すると、SDGsの取り組みと効果の関係が不明瞭になる、SDGsそのものにネガティブなイメージがつくなど、さまざまな悪影響をもたらします。

注意したいのが、真剣にSDGsに取り組んでいたとしても、実体が伴わないとSDGsウォッシュと批判を受けるということです。SDGsへの理解が浅い、事前の調査が不十分などの理由で、SDGsが目指す方向とは逆の結果を生む企業は少なくありません。そのような企業は、悪意がなかったとしても、SDGsウォッシュとみなされてしまう可能性が高くなります。

SDGsに取り組む企業は、自社の方法で本当にSDGsの目標が達成できるのか、熟慮して行動することが重要です。

SDGsウォッシュの問題点やデメリット

SDGsウォッシュを犯した場合、どのような問題があるのでしょうか。最も大きなデメリットを、2つ解説します。

不買運動が起こるリスクがある

最初に考えられるのが、消費者からの不買運動です。SDGsに取り組んでいる企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることは、SDGsの促進につながります。

そのため、個人レベルでSDGsに貢献したいと考える消費者は、そのような企業の商品やサービスを選択することで企業を応援します。応援している企業のSDGsウォッシュが発覚すると、消費者は企業にだまされたと感じてしまうでしょう。

そうなると、企業の信用が損なわれるだけでなく、批判が加熱して不買運動につながりかねません。一度不買運動が起こってしまうと、ブランドイメージに深い傷をつけてしまい、信頼回復が難しくなってしまいます。

株価の下落・資金調達の困難化

SDGsウォッシュは株価や資金調達に悪影響を与えます。近年は、EGS投資に注目する投資家が増えています。EGS投資とは、環境(Environment)、Society(社会)、Gorvernance(企業投資)の3つの要素をもとに投資企業を選別する方法です。

これら3つに配慮した企業は、持続性が高く、社会的意義も大きいと考えられ、企業価値の向上が期待できると考えられています。SDGsに取り組む企業は、EGS投資において優位に立ちます。SDGsウォッシュの発覚は、そのような投資家が離れる原因となってしまうでしょう。

また、SDGsウォッシュの発覚は、イメージダウンによる売上の減少も引き起こす可能性が高まります。そのため、EGS投資家だけでなく、その他の投資家も株を手放し、株価の下落を招く恐れがあるのです。

さらに、SDGsウォッシュは金融機関の評価を低下させます。SDGsウォッシュのまん延はSDGs自体のイメージ低下を招くため、金融庁は厳しい対応を運用会社やファンドの評価機関に求めています。

SDGsウォッシュが発覚した場合、ESG評価機関から低評価を受けて、融資を得ることが困難になるでしょう。

SDGsウォッシュの具体的な事例

ここでは、SDGsウォッシュだと批判を受けた事例をいくつかご紹介します。

食料品を製造しているA社は、環境保全への取り組みを積極的に行っており、環境対策を大きなアピールポイントとしていました。しかし、2010年、原料として使用していたパーム油の調達先が、違法伐採を行っていたと発覚し、30万ものクレームを受けることになりました。

2011年、大手電機メーカーのB社の部品調達先企業であるマレーシア工場にて、ミャンマーからの移民労働者が不当に差別されていることが発覚。これはB社ではなく、サプライヤー企業で起こった問題でした。しかし、企業倫理や人権の尊重を謳っていたB社の理念とかけ離れた実態に批判が殺到し、デモにまで発展しました。

大手銀行のC社は環境保全の観点から、再生可能エネルギーへの積極的な支援と、環境破壊への適切な対応を行う姿勢を見せていました。しかし、石炭火力への融資が環境破壊を助長しているとの声が上がり、預金口座解約などの抗議運動が起こりました。

このように、企業がSDGsへの取り組みをアピールしている一方で、それと矛盾したような活動を行えば、SDGsウォッシュであるとみなされ、厳しい批判の対象になります。

SDGsウォッシュの批判を回避する方法

SDGsウォッシュは意図せずに犯してしまう危険性があります。そのため、SDGsに取り組む企業は、SDGsウォッシュと批判を受けないよう慎重に準備をすすめなければなりません。

ここでは、具体的な方法について解説します。

情報発信での注意点

SDGsへの取り組みを発信する場合には、発信内容に十分に注意しなければなりません。電通が作成したSDGsコミュニケーションガイドでは、情報発信の際の注意すべきポイントを示しています。

根拠のない、情報源が不明な表現を避ける

思い込みなどをもとにした表現は、嘘やデマだと捉えられる可能性があります。根拠となる資料や信頼性が高いエビデンスがない情報を使わないことが大切です。

事実よりも誇張した表現を避ける

小さい取り組みを大規模で行っているように誇張することは、厳しい批判を受ける原因になります。また、法律で規制されていることを、あたかも自主的にやっているように見せかけることも、SDGsウォッシュとみなされる恐れがあります。

言葉の意味が規定しにくいあいまいな表現を避ける

言葉の意味が定まっていないような表現は、具体性に欠け、誤解を招くことになります。受け取り方によって意味が変わるような表現も避けましょう。

事実と関係性の低いビジュアルを用いない

取り組んでいる内容と異なる写真やイメージを使わないようにしましょう。例えば、貧困改善への取り組みを行っていないのに、貧困を想起させるような画像を利用するのは、誤解を生んでしまいます。

SDGsウォッシュの予防策

企業がSDGsウォッシュを犯さないよう、事前にできる対策をご紹介します。

SDGsに関する教育の実施

従業員がSDGsを深く理解できるよう、社員教育を実施しましょう。SDGsウォッシュは、プロジェクトメンバーの無理解から生まれてしまうことがあります。

そのため、広報部、調達部、製造部、営業部など、SDGsの取り組みにかかわるすべての部門がSDGsをしっかり理解する必要があります。

従業員がSDGsを理解することで、現在取り組んでいることに本当に効果があるのか、発信する情報は妥当かなど、独自に正しい判断が行えるようになります。

現地監査の実施

SDGsウォッシュは社外の下請け企業で発生することが少なくありません。過去には、SDGsを守っているように見せかけて、実際は下請け企業がしわ寄せを受けるタイプのSDGsウォッシュがあり、厳しい非難を受けています。

このような事例もあり、SDGsウォッシュが下請けで発生しても、企業は責任を回避することはできません。現地で監査を徹底して、事前に決めた事項を遵守しているか確認することは、企業の義務と言えるでしょう。

企業の根本的な考え方の変革

SDGsへの取り組みは、短期的で即効性のあるものではなく、中長期的な視野で臨まなければなりません。そのためには、局所的ではなく、企業のあり方を根本的に改革することも必要になります。

その際には、事業活動を機能ごとに分類したバリューチェーンが役に立ちます。バリューチェーンを利用することで、供給拠点、調達物流、生産、販売、廃棄といった事業にかかわる工程を俯瞰できるようになるのです。

自社のバリューチェーンをマッピングすることで、どの工程がどのようにSDGsに影響を与えるのかを考えられます。場合によっては、業務工程の大幅な変更や、ステークホルダーとの協働が必要になるかもしれません。そのような課題を達成するには、企業体制の改革を積極的に行える姿勢が不可欠です。

危機管理対応マニュアルの整備

SDGsウォッシュが起こる危険は、どのような企業にもあります。そのため、万が一の事態を想定したマニュアルの整備が必要になります。

SDGsが起こってしまった場合、どのように事態の収拾に努めるべきなのかを、しっかりシミュレーションして対策を考えましょう。初動を誤ってしまうと、問題の深刻化やネガティブなイメージがさらに大きくなる危険性があります。

認証制度の導入

認証制度を導入することで、自社のSDGsへの取り組みがたしかなものだとアピールできます。認証制度とは、企業が提供する製品・サービスの品質や倫理性を保証するものです。認証を受けることで、消費者は安心して企業の製品・サービスを受けられるようになります。

認証制度を設けている団体はさまざまですが、第三者機関による国際認証が信頼性の高い制度として知られています。代表的なものが、国際フェアトレード認証ラベルです。

国際フェアトレード認証ラベルは、生産、輸出入、加工、完成までの各工程が、国際フェアトレードラベル機構が定めた基準(国際フェアトレード基準)を守っていることを証明するものです。

コーヒーやカカオ、スポーツボールなどの製品は、主に開発途上国で生産され、先進国で購入されます。そのため、価格が先進国の都合で決められ、開発途上国での低賃金労働や児童労働を招いていました。

そこで登場したのが、フェアトレードという考え方です。国際フェアトレード基準は、生産者・労働者・環境を守るために設けられた、経済的基準、社会的基準、環境的基準の3つの要素で構成されています。

国際フェアトレードラベル機構は、これらの要素を満たした製品を購入することで、従来は不利な立場にあった小規模生産者と労働者の生活を改善するとしています。

SDGsウォッシュを回避するには正しい理解が必要

SDGsへの注目は年々高まっており、人々の労働や環境への関心が強くなっています。SDGsへの取り組みは、企業にとって重要な課題となりました。適切にSDGsに取り組むことは、よりよい社会を目指す運動に貢献し、新たなビジネスチャンスを獲得することにつながります。

しかし、SDGsの取り組み方を誤ると、SDGsウォッシュを行った企業として批判を受けてしまいます。結果を生まない中身のない取り組みは、ごまかしや詐欺と捉えられ、企業の信用を大きく損なってしまうでしょう。

SDGsウォッシュを犯さないためには、会社全体でSDGsについて深い理解を共有しなければなりません。自分たちの取り組みが、本当に労働者や環境をよくすることにつながるのか、自分で考えられる人材が求められています。

現在、SDGsについて学べるコンサルティングや研修が活発になっています。そのようなサービスを通して、SDGsへの理解を深めていくとよいでしょう。

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