DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味・定義・重要性をわかりやすく解説

最終更新日時:2023/11/02

DX

DX

DXとは

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉をビジネスシーンにおいて耳にする機会も増えてきたのではないでしょうか。しかし実際に、「DX」の概念を具体的に説明するとなると難しいという方も多いのではないかと思います。本記事では、DXの基礎知識や正しい定義、DXを推進する重要性などわかりやすく簡単に解説します。

福本大一

監修者 福本大一 Chatwork株式会社 DXソリューション推進部|マネージャー 大学卒業後、toC領域のWEBメディア事業で起業。事業グロースに向けたSEO戦略から営業・運用広告に従事し、約2年間の経営を経て事業譲渡。2021年3月からChatworkに入社し、カスタマーマーケティングやアライアンスを経験した後、メディア事業・運用広告事業の責任者としてミッションを遂行する。現在は、DXソリューション推進部のマネージャーとして新規事業領域のセールス・マーケティング・アライアンス・メディア事業を統括。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義・意味を解説

経済産業省が公表するDXに関連したガイドラインやレポートによれば、DXとは以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

具体的には、クラウドサービス・AI・ビッグデータなどの先端IT技術を導入し、市場ニーズに合ったサービスの提供やビジネスモデルを構築することが、企業の競争力強化につながるとの意味合いを持つと考えられるでしょう。

ただし、DXはあくまで概念であり、絶対的な定義が確立されているわけではありません。自社にとって必要なデジタル技術を導入し、商品やサービスの開発につなげていく事例は、あくまでDXによる結果の一例にすぎません。

[出典:経済産業省『「DX 推進指標」とそのガイダンス』]

経済産業省のレポートで注目を浴びた概念

日本では経済産業省が2018年に発表したDXレポート以降、DXのへの関心が一気に高まりました。

DXレポートでは、レガシーシステムの継続使用やIT人材の不足などによって起きる悪影響を「2025年の崖」と称し、日本企業に対して「DX」が推進されなかった場合に待ち受ける状況について、警告とも言える内容の情報発信をおこなっています。

もともとDXは、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が提唱した概念です。ストルターマン教授の発表した論文では、DXとは「デジタル技術の発達=人々の生活に良い影響を与えていく」と定義されています。

発表当時は、あまり現実的ではない概念として捉えられていましたが、その後、デジタル技術は急速な発展を遂げ、2010年代からはビジネス用語としても徐々に認知されるようになりました。

そして現在では、「DX」=「生活の利便性向上や新たなビジネスモデルの構築に必要」と、多くの方に認知されています。

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DXとは何の略?

なぜ「デジタルトランスフォーメーション/Digital Transformation」を、DXと略すのかについて、疑問に思われる場合もあるでしょう。

その理由については、英語圏では接頭辞の「Trans」を「X」と表記する慣習があることと、プログラミング言語で定義語を意味する「DT」と区別するためであると考えられています。

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DXとデジタイゼーション・デジタライゼーションとの違い

DXは、オンライン上でのワークフローの活用・オンラインでの商品販売・高いITリテラシーなど、組織全体にデジタル技術が浸透し、それらを有効に活用する文化が定着している状態を指します。

また、それらの業務上の変革にとどまらず、デジタル技術によって、既存のビジネスモデルに変革をもたらしたり、顧客への新たな価値の提供へとつなげることがDXの本来の目的です。

ただし、通常業務をいきなりデジタル技術に置き換えたところで、一気に業務の効率化が叶うわけではありません。DX化への必要なステップを怠ってしまっては、社員に多大な負担を掛けるだけでなく、取引先などに大きな混乱を与えてしまうでしょう。

そこでここでは、DXを円滑に推進するための段階として、重要なデジタイゼーションとデジタライゼーションについて説明します。

1.デジタイゼーション

デジタイゼーションは、これまでアナログで行ってきた業務にデジタル技術を導入して、デジタル化することを指します。そのため、業務の効率改善や生産性の向上が主な目的です。

テレワークにおいて使用するweb会議ツールやチャットツール、オンラインの勤怠システムなどは身近な例といえるでしょう。

バックオフィス業務に関連するツールだけでなく、SFAやRPAといった業務プロセスの自動化ツールの導入も代表的なデジタイゼーションといえます。

2.デジタライゼーション

デジタライゼーションはワークフロー全てをデジタル化できる状態に整える他、新たなビジネスモデルの創出・転換につなげることを指します。

例えば、クラウド型の受注管理システムを導入すると、自社商品をオンライン上で販売できる体制を整備でき、新規顧客獲得・売上拡大・リピート率向上が実現可能です。

組織全体でDXを推進するためには、デジタイゼーションを推進しつつ、デジタライゼーションの目標を明確に掲げながらDXを実行していくことが求められるのです。

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DXとIT化の違いや関係性

DXはデジタル技術を活用し、ビジネスモデルの創出や働き方の多様化など、企業経営全体に影響を及ぼす取り組みを指します。

一方、IT化はweb会議ツール・グループウェア・AIなど、ITツールの導入によって業務効率化を図ることが目的です。

IT化は社内向けへの政策に留まる一方、DXは顧客・取引先・従業員など、ステークホルダー全体へ影響を与えます。また、DXを実現するための前提としてIT化があるため、IT化とDXは「手段」と「目的」の関係だと言えます。

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DXによる変化とIT化による変化の違い

DXがもたらす影響は「質的変化」です。デジタル技術を活用し、顧客へ提供するサービスや商品、またそれらの提供方法を変えるなど、ビジネスモデル自体に変化をもたらすものと考えてください。

例えば、オンラインオーダーやテイクアウトのシステムは、以前から存在していたものの、あくまで主流は「来店での食事」にあったといえます。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大や、Uberといった新たなデリバリーサービスの登場により、事業の主軸を「来店」から「テイクアウト」へとシフトした企業は少なくありません。

それに伴い、顧客における「自宅で楽しむお店の味」の価値観やビジネス環境も大きく変わっていったのです。

一方、IT化に伴う影響は「量的変化」です。

デジタル技術の活用によって、作業時間・残業時間・ミスの削減など、業務プロセスにおける課題を解消し、生産性の向上を実現するものです。また、デジタル技術導入の前後でどのように変化したか、データとして確認しやすいのも特徴といえます。

DX推進が注目される背景について

DXの必要性が盛んに叫ばれている背景には、以下4つの理由があります。

  • GAFAの台頭
  • ゲームチェンジャーの増加
  • 働き方の多様性
  • 2025年の崖

一つひとつ内容をみていきましょう。

GAFAの台頭

デジタル・ディスラプターとは、デジタル技術の活用によって、既存のビジネスモデルを破壊する企業、特にベンチャー企業の存在を指しています。

このデジタル・ディスラプターによって生み出されるサービスや価値は、サービスのコストダウンや利便性向上など、顧客にとっては多くのメリットが望めます。一方、企業にとっては、市場にデジタル・ディスラプターが参入することにより、顧客離れやシェア率低下など、市場競争の激化を招く深刻な事態に見舞われることになります。

そんなデジタル・ディスラプターの代表的存在と言えるのが、GAFAとも呼ばれるGoogle・Apple・Google・Facebookの4企業です。

GoogleとAppleは、検索エンジンとスマートフォンの在り方や利便性を変革し、Facebookはコミュニケーションの手段を変え、Amazonは、ショッピングの習慣自体を変えるなど、それぞれにデジタル技術の活用によって新たな価値を創出し、成功をおさめています。

最近では、UberやNetflixなどもデジタル・ディスラプターとして認知され、GAFAだけでなく、デジタル技術によって躍進的な成長を遂げている企業が続々と表れていることからDXの必要性への意識も高まる傾向にあるといえるのです。

ゲームチェンジャーの増加

私たちの身の回りでは他にも様々な変化が起きています。例えば、YouTubeの台頭でテレビ離れが加速しました。

通勤途中・移動中・リラックスタイムに好きな動画を視聴できるYouTubeは、今や生活に欠かせないメディアになっています。

また、NetflixやAmazon Prime Videoなどの動画ストリーミングサービスの登場により、映像コンテンツは、DVDではなく配信による視聴が主流になりつつあります。

これらは、そもそも顧客が潜在的に抱えていた「好きな時に・好きな場所で・好きな作品」を視聴したい、といったニーズをデジタル技術によって実現したサービスです。

このように、顧客ニーズもまた、デジタル技術の利便性を前提としたサービスを望む傾向にあり、そのような変化に迅速に対応できる点もDXの必要性を高めていると考えられます。

働き方の多様性

ライフスタイルの変化により、近年は特に「ワークライフバランス」を重要視する求職者が増えています。

そのため、柔軟な働き方ができるテレワークの導入や実施は、従業員の満足度を重視する企業の姿勢を示す、一つの要素ともなり得ます。

実際、テレワークによって在宅勤務を実現できると、プライベートな時間の増加・コスト削減・業務効率改善など、社員と企業双方にとって多くのメリットをもたらします。


社員 
企業
メリット
・通勤に伴う心身の消耗回避
・プライベートな時間の増加
・人間関係に伴うストレス軽減
・集中力向上
・育児と介護との両立可能
・交通費やオフィス賃料削減
・ワークライフバランス改善
・優秀な人材の流出防止
・業務効率向上
・企業のイメージアップ

2025年の崖

2025年の崖とは、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」の中で、レガシーシステムの利用によって生じるデメリットや経済損失を指摘したものです。

DXの推進が進まないことで生じる影響として、具体的に以下の3点が挙げられています。

  • デジタル競争力の低下による利益損失
  • レガシーシステムの維持管理費の増大
  • 脆弱なセキュリティによる情報漏洩のリスク

上記のような問題が複合的に生じた結果、最大で12兆円もの経済損失が発生すると予想されているのです。

2021年のデジタル国家予算が1.7兆円であることを考えると、12兆円の損失がいかに莫大であり、深刻であるかがお分かりいただけるかと思います。

2025年の崖とは?経産省のレポートの要点やDX推進のシナリオについて

DX推進における日本企業の重要な課題

早急なDX化への取り組みが求められる中、日本企業は、その前提においてすでに多くの課題を抱えている状況にあります。

ここでは、代表的な課題を5つご紹介します。

一つひとつ内容をみていきましょう。

1.市場競争力の低下

デジタル競争の勝者となるには、ビックデータと呼ばれる多種多様なデータの収集と分析が欠かせません。このようなデータを有効活用できなかった場合は、ニーズやビジネス環境の流動性についていけず、市場競争力が低下します。

つまり、顧客ニーズにあった商品・サービス・ビジネスモデルを確立できないからです。

実際、「株価×発行済株式数」によって計算され、企業の価値を示す「時価総額」による世界ランキングでは、2022年1月時点でトヨタの29位が日本企業の最高位となっています。

AppleやMicrosoft、​​Alphabet(Googleの親会社)といった巨大IT企業がトップ10に名を連ねる中で、日本企業のランキングは、トヨタの次はソニーグループの92位と、その競争力は危機的状況にあるといえます。

2.レガシーシステムのリスク

導入から数十年以上が経過した基幹システムを使い続けると、様々なデメリットが生じます。まずは、基幹システムの機能維持に向けランニングコストが増大する点です。

基幹システムは生産管理・在庫管理・販売管理など、業務の中核を担う機能を一つのシステムに集約しているため、基幹システムが機能不全の状態に陥ると通常業務に支障をきたし、深刻な事業の停滞を招いてしまいます。

また、このようなレガシーシステムは、システムに精通している従業員の高齢化により、退職してしまってるケースも多く、不具合が生きた際には、復旧に時間がかかったり、修復の際の費用が高額になったりするといった、人的リソースや費用の課題も抱えています。

その結果として、メンテナンスに多くの予算が割かれ、新規人材獲得やデジタルツール導入に向けた資金を確保できなくなってしまうのです。さらに、セキュリティの脆弱性といった問題は、コンプライアンスの面からも看過できないリスクとなるでしょう。

約2,000社の日本企業が導入しているSAP社の基幹システム「SAP ERP」 は、2027年にメーカーのサポートが終了することが決定しています。あと5年の猶予があるとはいえ、早急な対応が求められるでしょう。

3.非積極的なIT投資

日本企業の経営層はITへの投資意識が海外企業の経営層に比べて低く、意識の差がDXの推進状況にも表れています。

世界900社の企業を対象に、エンタープライズソフトウェアとリミニストリートが実施した2018年の調査では、「ITイノベーションに対して投資すべき」と回答した海外企業が89%だったのに対し、日本企業はかろうじて過半数を超えてはいるものの66%にとどまっています。

意識の差は、予算の使い道にも顕著に表れており、日本企業と世界企業では、DXをどの分野の業務に適用しているかの質問において、日本企業はITシステムや業務オペレーションなど、社内向けへの投資が目立っています。

「顧客エクスペリエンス」の項目では、世界に比べ15ポイント以上の低い結果となっているなど、顧客データの収集や分析におけるDX化が特に遅れている事実を見てとることができます。

[出典:Rimini Street「IT投資に対する企業の意識調査」]

[出典:IDC Japan「デジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査」]

4.IT人材の不足

経済産業省からの委託によって実施された、みずほ情報総研株式会社による「IT人材需給に関する調査」では、IT人材不足も、2015年の17万人から2025年には約43万人に、そして、2030年には約79万人に膨れ上がると予想されています。

つまり、IT技術の進化、IT市場の拡大、顧客ニーズの変化に対し、人材供給のスピードが全く追い付いていないのが現状です。

さらに、IT業界は技術変化のスピードが速く常にスキルアップを求められる一方、その専門性に見合った待遇が得られない、ネガティブなイメージが払拭しきれていないこともIT人材の創出・供給スピードを鈍化させる要因となっています。

現状では、IT人材を社内で育成できる体制が整っている企業はごく僅かであり、ベンダー任せのシステム管理から抜け出せなかったり、そもそも有効なDXを提案できる社員がいなかったりなど、依然としてDXに踏み出せない企業が多いのです。

[出典:みずほ情報総研株式会社「IT人材需給に関する調査」]

5.ITリテラシーが低い

ITリテラシーはデバイス機器・アプリ・インターネットを正確に操作できるスキルに加え、情報やセキュリティに関する理解力も含まれています。

IT教育の欠如やデバイス機器への関心の薄さなどが要因で、日本人のITリテラシーは世界的に低く、企業や行政は、今なおアナログ体質なのが現状です。

民間企業における紙媒体でのやり取りやハンコ文化は根強く、行政手続きにおける「認印全廃」を推進した行政においても。年末調整といった手続きのオンライン化が推進されてはいるものの、高齢化社会の現実も相まって、順調に浸透しているとはいえないのが実情です。

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DX推進に取り組むべき理由をわかりやすく解説

ここではDX推進によって得られるメリットについて、4つのポイントに絞りわかりやすく解説していきます。

1.市場での競争優位性を獲得

企業競争力を維持するにはビッグデータの収集と分析、効果的な活用が大切です。

例えば、MAツールを導入すると、見込み顧客の情報を一元管理し、購買意欲の高いユーザーだけに絞ったマーケティングを実行できるなど、市場の変化や顧客ニーズを察知できるようになるだけでなく、効率的なマーケティングが可能になります。

また、営業活動を支援してくれるSFAツールの活用により、効率的かつ無駄を省いた営業活動がおこなえるようになるでしょう。

このようなツールの活用により、定型業務を自動化することで、よりコア業務に人的リソースを集中させられるようになるのです。

2.レガシーシステムからの脱却

様々なリスクが潜むレガシーシステムは、最新システムへの早急な移行が必要です。

中でも、基幹システムのクラウド化では、以下のようなメリットを得ることができます。

  • ランニングコスト削減

  • 運用負担軽減
  • BCP対策強化
  • 常に最新バージョンを利用可能
  • テレワークにも対応

3.変化する消費者ニーズへの対応

1970年代は所有することに価値を見出した「モノ消費」、そして1990年代の珍しいこと・新しいことの体験へのニーズが高まった「コト消費」を経て、人との何らかの交流の上で生み出される価値を求める「トキ消費」が注目を浴びています。

デジタル技術の発展により、その場にいなくても「臨場体験」ができるようになった反面、「この瞬間・その場所」でしか味わえない感覚に、価値を見出す消費者が増えてきているのです。

このようにニーズは、時代とともに変遷し、近年はその流動スピードも速まる傾向にあります。ニーズをいち早くキャッチし、ビジネスへと転換していくには、DXによる迅速なデータ分析や業務の効率化が重要となります。

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4.新たなビジネスモデルへの変革

DX推進によって市場ニーズの変化に柔軟に対応できる組織を構築できれば、自ずと他社との差別化を図れます。顧客が求めるビジネスモデルの創出・転換を実現できるからです。

オンラインのDVDレンタルから動画配信サービスへと、素早くビジネスモデルの転換を図Netflixは、今や配信サービスの最大手とも言えるポジションを確立しています。

それ以外にも、今後は医療業界においても続々とオンラインによるサービスの拡充が展開されると予想されています。

市場競争が激化の一途を辿る現代においては、新たなビジネスの展開、新たな価値の創出を避けて通ることはできません。

DX推進の取り組みや成功事例について

DXに積極的に取り組み、利便性向上・市場シェア拡大・格差是正に成功した事例を4つ紹介します。

1.株式会社メルカリ

メルカリはフリマアプリ業界のデジタル・ディスラプターです。

以前の個人間売買はネットオークションが中心でしたが、メルカリの登場以降は取引のスピードアップや、「匿名性」という特徴から、利用への心理的ハードルが下がり、個人間売買が活性化しました。

メルカリの特徴はAIの活用です。月間1,200万人以上(同社HPより)がアプリを利用しており、過去に利用したユーザーから多くのデータを収集しています。

膨大なデータを活かし撮影された商品の写真を瞬時に解析する他、商品名・カテゴリー分類・ブランド名を自動で入力します。

仮に利用規約違反に該当する商品を取引しようとしていた場合はAIが検知するため、不正行為を未然に防ぐことが可能です。メルカリの画期的なアイデアは高く評価されており、経済産業省による「IT経営注目企業2019」にも選出されています。

2.家庭教師のトライ(トライグループ)

指導実績120万人以上(同社HPより)を誇る家庭教師のトライは、教育の地域格差を無くすため、インターネット環境とデバイス機器があれば視聴可能な無料映像学習サービス「Try It」を配信しています。

1コマ15分の授業が約4000本用意されており、定期試験から入試試験対策まで活用できます。また、有料サービスでは、わからない箇所をその場で講師に質問できるサポートが受けられます。

3.サントリー食品インターナショナル

サントリー食品インターナショナルは、「サントリー天然水」を製造する北アルプス信濃の森工場のスマートファクトリー化を実現しました。

IoT基盤の構築によって各ラインの設備にエラーが発生した場合、素早く影響範囲を特定し、品質に問題が無いかを把握できます。

IoT基盤にデータは蓄積されるため、次回エラーが発生した場合も素早く対処できる他、毎分1,000本のライン生産と品質改善の両立が実現可能です。

また、生産設備やITシステムのデータをダッシュボード上で収集・分析・可視化できる状態を整備し、業務の省人化を図ることで、業務負担を軽減する他、現場従業員のテレワークの推進にも役立てています。

4.経済産業省

行政手続きのオンライン申請率向上を図るため、手続きのデジタル化を進めました。

デジタル化によって、異なる手続きでも同じ情報の入力や記載内容の確認作業を減らし、手続きのスピードアップを実現しています。

また、確定申告や補助金申請など、14システムで利用可能なGビズIDを発行し、ユーザーの利便性を高めました。最初に印鑑証明を提出すれば、本人確認書類や登記事項証明書等を用意する必要もありません。

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DX(デジタルトランスフォーメーション)の進め方

DXを進めるためには様々な点に気を配る必要があります。

実行すべき内容をまとめたので、一つひとつ内容をみていきましょう。

1.ゴールの明確化

デジタル技術の活用によってどのような課題を克服したいかだけでなく、どのような価値の創出へとつなげたいかを明確化する作業が重要です。

目的が曖昧なままデジタル技術の選定作業を進めても、ミスマッチが起きる確率が高くなるからです。

自社に見合わないデジタル技術を導入しても高い投資に見合った効果が得られず、DXは進みません。

営業活動の効率化・他分野への事業参入・働き方の多様化など、デジタル技術の導入目的を明確化する作業を最優先でおこなってください。

2.経営層のコミットメントの確保

組織全体でDXを進めるためには、経営層がDXの戦略〜実行まで関わる体制が必要です。現場の社員が声を挙げても、組織を動かす経営層が必要性を理解しない限りDXは進まないからです。

実際、日本は海外企業と比べて経営層のDXへの意識は低水準に留まっています。米国企業では54.3%の経営層がDXの戦略策定〜実行まで携わっているのに対し、日本は35.8%の経営層が実行のみに携わっている状態です。

DXの推進を進めるためには、経営層も積極的にDXへ関与する必要があります。

[出典:JEITA「日米企業のDXに関する調査」]

3.DX人材の確保・育成

DXを進めるためには、データサイエンティスト・エンジニア・テクノロジーマネージャー・プロジェクトマネージャーといった人材が必要です。

優れたITスキル・経営戦略の策定スキル・リーダーシップを持つ人材が集まらないと、DXを組織全体で進められません。

DXの内製化ができれば、開発スピードの加速やコスト削減が図れます。

ただし、自社で全ての分野に関わる人材を確保できるケースは少なく、特にIT人材は市場でも獲得困難な状況です。人材の確保や育成に時間を要する場合は、コンサルティングや外部サービスの活用も検討しましょう。

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4.DX推進の組織体制を整える

営業・生産管理・経理など各部門の従業員とシステム担当者など、ITの知見をもつ従業員もしくは外部の担当者によってDX推進のための専門チームを編成します。

各業務で抱えている課題がデジタル技術でどう変革できるのかを具体的にイメージしながら、実際の業務のシステム化を検討していきます。

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5.現状のICTシステム環境の可視化

業務の中核を担う基幹システムの現状を正確に見極めます。

レガシー化したシステムは、その中身に精通した従業員がすでに退職していることも多く、時間と手間を要する作業となります。

しかし、この見極め作業をていねいに実行することで、「必要な機能」が可視化されるだけでなく「不必要な機能」も見えてくるはずです。

不必要な機能を徹底的に排除し、システム機能のスリム化を図ることで、コストが削減できるだけでなく、大幅な業務の効率化が可能となります。

6.ワークフローのデジタル化

クラウド型のグループウェアを導入し、各種申請・承認業務をオンライン上で完結できる体制を整備しましょう。

経費精算・有給休暇申請・見積書など、提出書類の申請と承認がスムーズに進むため、バックオフィス業務の業務効率改善につながるだけでなく、テレワークの推進も可能になります。

また、グループウェアにはチャット・ファイル共有・プロジェクト管理など、様々な機能が搭載されており、社員間でのコミュニケーションやナレッジ共有を活性化します。

7.継続的な評価と検証による改善

計画→実行→評価→改善のPDCAサイクルを継続的に運用する取り組みが大切です。

DXはあくまで概念であり絶対的な定義がない一方で、最終的には、顧客エクスペリエンスの向上や顧客への新しい価値の提供といった明確なゴールが掲げられています。

世界企業は既に顧客エクスペリエンスに注力したDXに取り組んでいます。日本企業も自社の課題を解決し、顧客との関係強化に向けたDXへ移行しなければなりません。

DXで注目される新たなデジタル技術

ここでは多くの企業で導入が進められている5つのデジタル技術を紹介します。

それぞれのツールの特徴を理解し、自社の課題解決へ導くデジタル技術を選定してください。

AI

AIは学習能力・再現性・正確性に優れ、自ら収集した大量のデータを基に、状況に応じた行動を自ら「判断」できるデジタル技術です。

例えば、コールセンターの自動応答・ロボット掃除機・自動車の自動運転機能などは、AIの豊富なデータベースと学習機能を実用化した事例です。

AIの導入によって人件費削減・人手不足解消・業務の品質向上など、多くのメリットが見込めます。今後は在庫算出・売上予測・機器の故障リスク算出など、高度な分析機能を活かした使い方が増えると予想されます。

  • AI導入に伴うメリット

  • 労働力不足解消
  • 危険な箇所での作業をAIが代行
  • 業務の正確性と生産性の向上
  • 人件費削減
  • 顧客満足度向上
  • スムーズなコミュニケーションを実現

5G

5Gはスマートフォン・ノートPC・タブレット端末など、デバイス機器に適用される通信規格です。

5Gの普及によって通信速度がこれまでの4Gに比べて約20倍以上速くなり、大容量かつ高速なデータ通信が可能になりました。

さらに、通信の安定化・速度遅延減少・多数接続も実現しています。デジタル技術の普及を支える根幹とも言えるテクノロジーです。

IoT

IoTは対象アイテムにセンサー・カメラ・無線通信をなどの技術を搭載し、収集した情報をインターネット上で共有する技術です。ロボット・自動車・エアコンなど様々なモノが対象となり、位置情報や稼働状況などの情報を把握できます。

IoTによって遠隔操作・環境把握・動作検知など、物理的距離があっても設備の自動化や稼働状況のチェックが可能となるため、あらゆる産業における業務効率化や自動化をサポートする技術といえるでしょう。

ビッグデータ

ビッグデータとは、データ量(Volume)・種類(Variety )・スピード(Velocity)の3分野で、高い価値を持つデータを指します。

具体的には、IoT機器で収集した設備の稼働状況や購買履歴を含む個人情報などが該当します。

ビッグデータの活用によってリアルタイムの情報を収集・分析でき、顧客ニーズ・商品発注数・売上などを正確に把握できます。

クラウド

クラウドは、インターネット経由で利用できるサービスやシステムを指します。

ユーザーはサーバー・ストレージ・ソフトウェアを用意しなくても、ベンダーが提供しているサービスをインターネット上で申し込めば、サービスを利用できます。

クラウドサービスの利用に際しては、大規模なシステム開発やインフラ整備の必要がないため、初期導入費用はほとんどかかりません。さらに、メンテナンス・アップデート作業はベンダーによって定期的におこなわれるため、管理の負担も大幅に軽減できます。

DX推進で導入すべきおすすめツール・システム

今後テレワークの実施を検討している場合、業務を進める上で欠かせないツールやシステムを紹介します。

ここでご紹介する全てのツールを一度に導入する必要はありません。導入すべきツールを優先順位化し、必要なツールから選定してください。

ビジネスチャット

ビジネスチャットは社内外の方と効率的にコミュニケーションを図れるツールです。リアルタイムでメッセージのやりとりを行える他、件名やアドレスを入力する必要はありません。

また、テーマや相手によってグループチャットを作成すれば情報を一元管理できるため、対応漏れのリスクを最小限に抑えられます。

さらに、ファイル共有やビデオ通話機能も搭載しており、状況に応じてweb会議も実施できます。

人事管理システム

人事管理システムは従業員の雇用条件や人事評価などの人事情報や、入社から退職までに発生するワークフローをオンライン上に集約したシステムです。

必要なデータや作業はシステム上で完結できるため、手続きの効率化・ペーパーレス化促進・ミスの削減が望めます。

また、各社員ごとのスキル・資格の有無・業務経験を可視化し、適切な人員配置につなげられます。

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SFA(営業支援システム)

SFAは営業活動における課題を可視化し、業務効率化や成約率向上を図るツールです。顧客情報・案件情報・営業マンの行動履歴など、営業活動に必要な情報をSFA上で一元管理できるからです。

外出先でもスマートフォンやタブレットから必要な情報を閲覧でき、前回までのやりとりやポイントを確認してから商談に臨めます。

また、商談の進捗状況・受注金額・受注見込みなど、顧客ごとの案件情報を細かくデータ化し、優先順位を割り振ることができるため、最優先で取り組むべき内容を明確化し、無駄な行動や迷っている時間を最小限に抑えられます。

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MAツール

MAツールは購買意欲の高い見込み顧客を可視化し、効率的なマーケティング活動につなげるためのツールです。

直接訪問・セミナー・展示会などで一度会った見込み顧客の情報を一元管理する他、スコアリング機能によって購買意欲の高さを数値化することができます。

Webサイト閲覧や資料請求など、過去の行動履歴から自社製品・サービスにどの程度興味を持っているか、一目で把握できることから、購買意欲の高い顧客に集中的に売り込みを掛け、新規案件発掘や継続的な取引に結びつく確率を高められます。

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オンラインストレージ

オンラインストレージは、業務で利用するデータファイルをクラウド上で格納できるサービスです。クラウド上でデータを管理するため、自社でサーバー手配・運用・管理をする必要はありません。

初期費用やランニングコストを大幅に削減できます。

また、ファイル共有や編集作業をオンライン上でできるため、チーム単位で進める作業を効率的に進められます。

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RPAツール

RPAツールは、コンピューターを使った定型業務の自動化が図れるツールです。ルーティン業務の自動化によって、業務負担軽減・労働力不足解消・ミスの削減が図れます。

また、フローチャートに処理したい業務内容を順番に並べておくと、指定された時間にRPAツールが自動処理を行います。日中に処理できない業務があった場合も夜間に処理できるため、通常業務に支障をきたす心配はいりません。

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タスク管理ツール

タスク管理ツールは、個人や部署で処理しなければならない業務内容を可視化するツールです。

タスクのリストアップによって全体の業務量をメンバー内で把握する他、最優先で取り組まなければならない業務内容を共有します。

また、ガントチャートなどによってタスクの進捗状況が一目で把握できるため、人員配置やサポート体制の見直しをする際にも役立ちます。

【最新版】おすすめタスク管理・ToDo管理ツール20選!機能や料金を徹底比較

DXとはテクノロジーを活用して事業を変革させること

YouTube・Facebook・Netflixの登場によって、コミュニケーション方法や、コンテンツの楽しみ方が変わるなど、デジタル・ディスラプターの台頭は、私たちの生活やビジネスのあり方に大きく変化を与えました。

人々の生活における利便性を高めた一方、デジタル競争の敗者となった企業が必ず存在することも事実です。そのため、市場ニーズの変化に素早く対応できる組織作りは、企業が生き残るための術でもあるといえるでしょう。

現在、日本企業は、レガシーシステムのリスク・IT人材不足・ITリテラシーの低さなど、DX推進の必要性を前に、大きな課題を抱えています。

今回の記事で紹介した進め方・成功事例・デジタル技術を参考に、少しずつDXを進めてください。

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