SFAによる営業の行動管理とは?営業プロセスを可視化・改善する方法
SFAを使った営業の行動管理はどのように行うのでしょうか。本記事では、営業における行動管理の方法やメリットを紹介した上で、行動管理をする際に使えるSFAの機能や注意点を解説します。SFAを用いて行動管理を行いたい方は参考にしてください。
目次
営業の行動管理とは?
営業の行動管理はアポイント獲得数・有効商談数・訪問受注数など、案件受注や売上拡大に向け、営業担当者が日々行っている行動をデータ化することです。
各項目の目標数値と実情を比較し、課題発見や行動内容の改善を図ります。例えば、業績拡大に向けて全ての営業担当者に対して、訪問数のうちの2割を新規顧客訪問にあてることを指示したとしましょう。
行動管理でデータを取った結果、新規訪問件数が1割以下の担当者がほとんどであった場合、その原因がどこにあるのかを探る必要があります。数字が伸びなかった理由として、見込み顧客のリスト不足や新規顧客訪問に割く時間の不足などが挙げられます。
既存顧客との商談を優先し、案件受注や売上増加につながっていれば、新規顧客の訪問数が伸びなくても問題ありません。これは、営業担当の中で行動の優先順位付けがされており、どの顧客に注力すべきかを理解できている状態です。
一方で、売上と訪問件数が伸びていない場合、日々の行動プロセスに何かしらの問題が潜んでる可能性が高いでしょう。行動管理は、営業活動での課題を可視化し、顧客分析や提案商品の再考など、営業活動の質を高めていくことが目的です。
また、部下を指導するマネージャーとしても、今後の方向性を提示しやすくなり、組織の活性化や従業員のモチベーションアップが期待できます。
表:行動管理の項目と目的
管理項目 | 目的 | |
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内容 |
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営業の行動管理をPDCAサイクルに当てはめて解説
営業の行動管理をPDCAサイクルに当てはめてみましょう。以下の手順で進めていきます。
- Plan:営業の行動ごとに分けてKPIを設定する
- Do:営業活動を行う
- Check:数値分析を行い、課題を見つける
- Action:改善策を作成し、実行する
(1)Plan:営業の行動ごとに分けてKPIを設定する
アポイント獲得数・顧客訪問数・有効商談数など、行動内容ごとにKPI(目標数値)を設定します。優秀な成績を継続してあげている担当者の数値を基準にすると、KPIを比較した際に課題を発見しやすくなります。
ただし、初めから全ての指標でKPIを設定する必要はありません。マネージャーへの負担が大きくなるだけでなく、設定したKPIを下回る項目が多いと、社員の仕事へのモチベーションも低下します。
最初はKPI達成の指標を3つ程度に絞り、達成状況を見ながら徐々に対象項目を拡げていく形が推奨されます。
(2)Do:営業活動を行う
KPIの設定が完了後、実際に営業活動を行います。設定したKPIの達成も重要ですが、顧客に対して丁寧な対応を徹底することも重要です。
真摯な対応の継続によって顧客満足度が高まると、リピート率・購入単価・商品認知度に良い影響をもたらします。
(3)Check:数値分析を行い、課題を見つける
設定した管理項目のKPIが達成できたかどうか、数値分析を行います。KPIと実際の数値を比較し、目標達成に至らなかった項目は、今後改善が必要です。部署全体の達成状況を正確に把握するためにも、月初に営業会議を開き、前月の営業活動を振り返りましょう。
ただし、KPIを設定しただけで、すぐに結果が好転するわけではありません。長期的な視点で取り組み、課題を一つひとつ改善していくことが重要です。
(4)Action:改善策を作成し、実行する
KPIを達成できなかった項目に対し、改善案を立て実行に移す段階です。どのような理由が原因で、数字が伸びていないかを把握することが重要です。
例えば、アポイント獲得数はクリアしているにもかかわらず、受注件数が伸びていない場合、商談の質が低いことが考えられます。提案商品のミスマッチや顧客ニーズを正確に把握できていないなど、有効な商談ができていない理由を突き止めることが重要です。
一定期間数値が改善されない場合、マネージャーが同行営業を行い、普段の商談の様子を確認するのも一つの方法でしょう。
営業の行動管理を行うメリット
営業の行動管理を行うメリットは、以下の4点です。
- 部下に適切な指導を行える
- 営業活動において明確な指針ができる
- 進捗管理ができる
- ノウハウの蓄積ができる
目標数値と実際のデータを比較しながら営業活動の振り返りが行えるので、部下に適切な指導を行えます。具体的に何が良いのか、悪いのかを正確に把握でき、今後の営業活動の質を高められます。
また、優れた成績を残す営業パーソンからスキルやノウハウを学べる点もメリットです。社員同士のコミュニケーションも活発になり、個々のスキルアップや組織力強化が期待できます。
(1)部下に適切な指導を行える
客観的なデータを活用しながら、部下の指導が行え、一人ひとりの営業担当者の成績や仕事へ取り組む姿勢に良い影響を与えられます。KPIを達成できている項目は、真摯に仕事へ取り組んでいる証拠といえるでしょう。
営業担当者自身もKPIの達成で自信を深めていけます。部下が継続的にKPIを達成できるように、マネージャーは部下を適切に評価し続けることが大切です。一方、KPIを達成できていない項目は今後の課題であり、取り組み内容の再考が求められている部分です。
どのような原因で受注件数や利益率が伸びていないのか、どのような改善策を提示するべきか、部下にわかりやすく指導するのがマネージャーの役目です。
具体的な指示も送らず、目標数値の達成だけを呼び掛けても、ほとんど効果は得られないでしょう。結果的に部下からの信頼を失い、部署全体で仕事へのモチベーションが低下するおそれがあるので、注意が必要です。
(2)営業活動において明確な指針ができる
達成すべきKPIの設定によって、どのような営業活動を行うべきか、社員一人ひとりに意識の変化が生まれます。例えば、アポイント獲得数・有効商談件数・受注件数の3つの指標で、KPIを設定したとしましょう。
KPI達成に向け、受注見込みが高い顧客との商談を優先してスケジュールを組むようになります。受注見込みが高い顧客と積極的に商談を重ねると信頼関係も深まり、営業活動の効率化と売上拡大の両立が見込めます。
KPIの設定によって、目標達成に向けてどのような行動が必要になるかを明確にできる点も、行動管理を行うメリットです。
(3)進捗管理ができる
行動管理によって顧客ごとの商談の進捗状況が可視化され、マネージャーが部下に的確な指示を送れます。受注見込みが高い案件への集中的なフォローや見込み顧客へのインサイドセールスなど、状況に応じた指示を送り、売上拡大や顧客との関係強化を図れます。
仮に部下が失敗をしたとしても、素早い対応を行えるので、被害を最小限に抑えることが可能です。また、正確な売上予測を行えるようになり、設備投資や宣伝費など、予算配分を適切に行えるようになるでしょう。
(4)ノウハウの蓄積ができる
優秀な成績をあげている社員から成功事例やノウハウを学べる点も行動管理を行うメリットです。例えば、アポイントを多く獲得できている一方、受注件数が伸びていない営業担当者がいたとしましょう。
受注件数が伸びていない原因として、商談中のヒアリングや提案の質に原因があると考えられます。優秀な社員から商談中のコミュニケーションに関してノウハウを学ぶと、商談中に意識すべきポイントが明確になり、ヒアリングや提案の質が高まります。
一度の商談で顧客から多くの情報を獲得でき、課題解決に向けた商品やサービスの提案につなげることが可能です。また、社員同士のコミュニケーションが活性化し、個々のスキルアップや組織内での競争意識向上が望めます。
行動管理・プロセス管理を行うと見えること
行動管理によって営業活動の各種データを可視化すると、以下5つのパターンに課題が集約されます。
- 荷電数は多いが、アポイント率は低い場合
- 訪問数の割に受注率が低い場合
- アポイントは獲得できるが、商談からの受注に課題がある場合
- 受注数は十分だが、解約率が高い場合
- 受注額は多いものの、利益率が低い場合
(1)荷電数は多いが、アポイント率は低い場合
コール数が多い一方、アポイント獲得率が伸びていない場合、見込み顧客のリストや電話中の会話の質に問題があります。前者が原因の場合、自社商品・サービスへの購入意識が低い見込み顧客ばかりに電話を掛けても、アポイント獲得にはつながりません。
仮にアポイントを獲得できても成約には至らず、無駄な営業活動に発展する可能性が高いでしょう。一方、後者の場合は自社商品・サービスの魅力を上手く伝えられず、購買意欲が低下している可能性があります。
特徴やメリットを簡潔に伝えられないと、「直接話を聞きたい」と思ってもらえず、アポイント獲得につながりません。
(2)訪問数の割に受注率が低い場合
アポイントを多く獲得できている割に、受注率が伸びていない場合も2つの理由が考えられます。
1つめは無駄な訪問を繰り返している点です。既存・見込み顧客問わず、購買意欲が低い顧客に定期的に訪問しても、案件受注につながる確率は高くありません。予算がある程度確保できており、自社商品・サービスの利用に積極的な顧客への訪問を重ねることで受注率改善が期待できるでしょう。
2つめの理由は、コミュニケーションの質の低さです。顧客が困っていること=ニーズを上手く引き出せていないため、案件受注につながっていない可能性が考えられます。顧客ニーズを正確に理解できていないと、見当違いの商品・サービスを提案してしまい、顧客からの信頼喪失や他社への受注を許す結果となります。
(3)アポイントは獲得できるが、商談からの受注に課題がある場合
アポイント獲得数が多い一方、対面商談での受注率が伸びていない場合、対面商談時の対応力に原因があると推測できます。初めての対面商談では顧客側も警戒感や緊張感が強く、すぐに購入に至るケースはさほど多くありません。
まずは、電話で伝えきれなかった商品・サービスの魅力を説明し、顧客側が何を求めているかを正確に把握することが重要です。相手との信頼関係を構築できていない段階で購入を勧めても、強引な印象を与えるだけで次回のアポイント獲得にも響いてきます。
継続的な取引につなげられるように、顧客との信頼関係構築を最優先に商談を重ねましょう。また、商談に臨む前に「顧客ニーズを把握する」、「新商品の特徴を伝える」など、商談での目的を明確化しておくと、会話の組み立て方も変わってきます。
(4)受注数は十分だが、解約率が高い場合
安定して案件を受注できている一方、解約率が高い場合は顧客側へオーバートークを展開している可能性があります。オーバートークは、実際の性能・効果よりも誇張して話すことです。
顧客側の関心・期待・購買意欲を高められるため、案件受注にはつながりますが、顧客側は期待していたよりも商品購入のメリットを実感できません。購入後に「期待外れだった」との印象を持たれ、解約に至るケースが多くなります。
オーバートークは顧客との信頼関係が崩壊するだけでなく、社会的信用損失や裁判に発展する可能性もあるため、社員には控えるよう指導しましょう。また、会社にとって重要なのは一度の購入ではなく、継続的な利用です。
リピート率向上には、顧客との強固な信頼関係が必要です。継続的なフォローや商品提案時にはデメリットも伝えるなど、真摯に顧客と向き合う姿勢が求められます。
(5)受注額は多いものの、利益率が低い場合
受注金額は大きい一方で利益率が低い場合は、確実に案件を受注するため、値引きを多くしている可能性があります。顧客にとっては安く購入できるため感謝されますが、会社側としては必要以上の値引きは避けるように、指導しなければなりません。
また、利益率の低い商材を多く販売しているケースも考えられますが、現行の商品やサービスに不満を感じていない限り、アップセルやクロスセルの提案は困難です。
仕様変更や追加コストが発生するにもかかわらず別の商品を勧めた場合、顧客側に不信感を与え、最悪の場合は解約に至るかもしれません。代替商品を提案できることが前提にはなりますが、まずは顧客側へ現行商品に不満を抱いていないか、確認することが先決です。
営業の行動管理・プロセスの可視化を行う時に使えるSFAの機能
営業プロセスの可視化に役立つSFAの機能は、以下の4つです。
- スケジュール管理機能を使う
- 案件管理機能を使う
- 行動管理機能を使う
- ファネル分析機能を使う
一つひとつ機能の内容をみていきましょう。
(1)スケジュール管理機能を使う
各営業担当者のスケジュールを共有できる機能です。社員一人ひとりの予定を把握し、適切な人員配置や提出物の対応漏れ防止を実現します。
外部からもSFAへアクセスできるため、在宅勤務やリモートワークを導入していても各自の行動予定を把握できます。
(2)案件管理機能を使う
顧客別にどのような内容の案件が、どの程度進行しているかを可視化する機能です。提案商品・進捗状況・受注金額など、案件に関する詳細な情報をSFAへ打ち込みます。案件管理機能を使うメリットは、受注見込みの高い案件を一目で把握できることです。
マネージャーは受注見込みの高い案件を優先して取り組むように、部下へ指示を送り、1件でも多くの案件受注に努めます。同行が必要な場合は一緒に顧客を訪問し、クロージングの精度を高めるなど、より効果的な営業活動が行えます。
一方、受注見込みの低い顧客に対してはインサイドセールスに留め、無駄な行動を最小限に抑えられます。また、大型案件や新規受注に成功した場合、成功事例を部署内で共有することで、受注率向上が期待できます。
(3)行動管理機能を使う
行動管理はアポイント獲得数・提案商材数・見積件数など、各担当者が案件受注のためにどのような行動を取っているかをデータ化する機能です。
優れた営業成績を残している人と伸び悩んでいる人を比較し、どの部分に問題を抱えているかを把握できます。また、ノウハウやナレッジを部署全体で共有すると、パフォーマンス向上や営業活動の効率化が期待できます。
(4)ファネル分析機能を使う
ファネル分析は見込み顧客獲得〜案件受注に至るまで、各営業プロセスでの離脱率に着目し、どのプロセスが原因で多くの顧客が離脱しているかを把握するマーケティング手法です。
ファネル分析機能の活用によって、ボトルネックを正確に把握し、課題分析やマーケティング戦略の見直しを図れます。また、ファネル分析は、社員の長所・短所を把握するための機能としても活用可能です。
例えば、顧客との関係構築能力に優れた社員を見込み顧客との初回商談へ起用する一方、受注目前の案件にはクロージングが得意な社員と同行営業を行うなど、特徴を踏まえた人員配置を行えます。
SFAを用いて行動管理を行う際の注意点
SFAを使って行動管理を行う場合、以下の3点に注意しましょう。
- 営業プロセスがチームに共有される流れを作る
- 営業プロセスをできるだけシンプルにする
- 定義を明確にする
チームのメンバーから理解を得られないと行動管理が根付かないため、SFAの導入や行動管理を行う目的を必ず説明する必要があります。
また、営業プロセスを細分化しすぎると、管理負担が大きくなり、提案資料作成や顧客分析など、コア業務に割く時間が少なくなります。一目で状況を把握できるように、各プロセスの細分化は最小限に留めておきましょう。
(1)営業プロセスがチームに共有される流れを作る
現場で働く担当者がSFAを利用して行動管理を行うように、行動管理の必要性やSFAの導入目的を説明します。全員が共通認識を持たない限り、SFAを利用して案件管理やスケジュール管理を行う習慣は身に付きません。
また、スムーズにSFAを導入できるように操作方法やデータの見方に関してチュートリアルが付いたSFAを選択するのも有効です。本格的な運用を始める前に、無料トライアルを利用するのも一つの選択肢です。
そして、ベンダーからの研修機会を設けることで、より効果的なSFAの使い方を学べます。
(2)営業プロセスをできるだけシンプルにする
営業プロセスをシンプルにすることが重要です。例えば、案件管理の場合、顧客からの問い合わせ〜案件受注までのプロセスを細分化しすぎると、SFA上でのプロセス管理に必要以上の時間を割く形となり、かえって業務効率が悪化します。
SFAは営業活動の効率化を図るための一つのツールです。各人が優先順位の高い案件に集中して取り組めるように、案件の進捗状況やスケジュール管理機能を搭載しています。
営業担当やマネージャーが一目で状況を把握できるように、プロセスや情報量を細分化し過ぎないことが重要です。
(3)定義を明確にする
社員同士で認識のズレが起きないよう、各プロセスへの定義付けを徹底しましょう。認識の食い違いが発生すると、コミュニケーションロスの発生や売上実績の精度低下につながります。
例えば、新規顧客訪問数は、数年間取引が止まっている休眠ユーザーも含めるのか、見込み顧客リストに該当する顧客のみをカウントするかで、今後の対応が変わってきます。
SFAの機能を活用して営業活動を改善を実践しよう
今回の記事では以下の4点について解説してきました。
- 行動管理のメリット
- 行動管理によって可視化できる内容
- 行動管理に利用できるSFAの機能
- SFAを用いて行動管理を行う時の注意点
行動管理を導入すると、KPIと実際の数値を比較しながらチームのメンバーへ指導を行えるため、今後の営業活動の方針が明確化されます。例えば、訪問数が多い一方で案件受注率が低い場合、顧客の見極めやコミュニケーションの質に問題を抱えていると考えられます。
前者の場合、購買意欲の低い顧客に多く商談を重ねても、案件受注につながる可能性は高くありません。後者の場合は顧客ニーズを正確に引き出せず、見当違いの商品・サービスを提案している可能性があります。
数字が伸びていない原因を正確に把握するためにも、一度マネージャーが同行営業を行うのも有効です。また、SFAはスケジュール管理・案件管理・行動管理機能などを搭載しており、営業活動の効率化を図れるツールです。
SFAを導入して営業担当者の行動管理を行う場合、営業プロセスの簡略化や各プロセスの定義付けなど、いくつかの注意点を意識しながら運用することが重要です。
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