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【2024年10月施行】社会保険の適用拡大|背景や適用拡大の内容・注意点

2024/11/28 2024/11/28

福利厚生サービス

社会保険の書類

万が一のケガ・病気に備える「社会保険」。今までは正社員や一定の条件を満たす短時間労働者に加入が義務付けられていましたが、2024年10月から制度が改正され対象となる企業・従業員の範囲が広がります。本記事では、社会保険適用拡大の対象企業や従業員について解説します。

2024年10月から一部のパート・アルバイト社員の社会保険加入が義務化

社会保険は、健康保険や厚生年金保険といった、従業員の医療や老後の生活などを支えるための仕組みです。

これまでの社会保険は一部の正社員やフルタイム労働者が主な対象でした。しかし、2024年10月に制度が改正され、一部のパート・アルバイト社員にも加入が義務付けられました。

この改正は、短時間労働者の福利厚生を充実させることを目的としており、労働時間や賃金など、要件を満たすことで社会保険の適用対象となります。

[出典:厚生労働省「社会保険適用ガイドブック」]

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社会保険の適用拡大の対象となる企業

これまでは従業員数101人以上の企業が社会保険の適用対象でしたが、2024年10月の改正により、従業員数51人以上100人以下の企業まで対象が拡大されました。

以下では、この社会保険の適用対象に関係する従業員数の数え方と、必要な書類について解説します。

従業員数の考え方

一般的な従業員数は「その企業に雇用されている労働者の数」を指しますが、社会保険の適用要件の定義はこれとは異なるため注意が必要です。

社会保険の適用要件における従業員数は、所定労働時間によって決まります。具体的には「フルタイムで働く従業員数」と、「週所定労働時間及び月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の従業員数」を合計した人数となります。

実際の現場では毎月この条件で従業員数をカウントしていき、直近12カ月の内6カ月以上の月が基準を上回っていれば、その企業は社会保険の適用対象とみなされます。

また、上記のような過程を経て、社会保険の適用対象となる短時間労働者がいる事業所・企業のことを、「特定適用事業所」といいます。

必要な書類

特定適用事業所に該当する事業主は、日本年金機構へ「被保険者資格取得届」を提出する必要があります。

この書類は日本年金機構の公式ホームページからダウンロードでき、紙媒体による提出のほか、オンライン上で手続きができる電子申請も用意されています。

また、企業が特定適用事業所に該当することを証明する「特定適用事業所該当通知書」を提出する場合もあるため、事前に提出書類を確認しておくと安心です。

社会保険適用拡大の対象となる従業員の要件

2024年10月以降、新たに社会保険適用の対象となる従業員は、1週間の所定労働時間または1月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満であることです。これに加えて、以下の項目すべてに該当していることが要件となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 所定内賃金が月額8万8千円以上
  • 雇用期間が2カ月を超える見込みがある
  • 学生ではない

週の所定労働時間が20時間以上

社会保険の加入対象となる短時間労働者の要件の1つ目は、週の所定労働時間が20時間以上であることです。

ここでいう所定労働時間とは、就業規則や労働契約などの定めにより、その従業員が1週間のうちに勤務すべき時間を指し、この基準によってその労働者が安定的に勤務しているかどうかを判断します。

なお、週の所定労働時間が定められていない場合は、以下のようにケースごとに算出します。

  • 所定労働時間を1カ月単位で定めている場合

    1カ月の所定労働時間を12倍して52で割る

  • 所定労働時間を1年単位で定めている場合

    1年間の所定労働時間を52で割る

  • 1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合

    その周期における1週間の所定労働時間の平均値を基準とする

なお、特定の月の所定労働時間が繁忙期などによって例外的に変動する場合は、例外となる月は計算から除外します。

所定内賃金が月額8万8千円以上

2つ目の要件は、所定内賃金が月額8万8千円以上であることです。この基準によって、その労働者に一定以上の収入があるかどうかを判断します。

ただし、以下は所定内賃金には含まないため注意が必要です。

  • 各種手当や賞与など、1カ月以上の期間を空けて支払われる臨時的な賃金
  • 時間外・休日・深夜労働に対して支払われる割増賃金
  • 通勤手当や家族手当など、最低賃金法で算入しないことを定める賃金

雇用期間が2カ月を超える見込みがある

3つ目の要件は、雇用期間が2カ月を超える見込みがあることです。

あくまでも「見込み」のため、その時に締結した契約期間が短期であっても、その後更新を重ねて2カ月を超える可能性がある場合は、要件を満たしているものとみなされます。

上記のいずれにも該当しない場合など、判断に迷う場合は年金事務所に相談しましょう。

学生ではない

4つ目の要件は、労働者が学生ではないことです。ここでいう学生とは、学校の種類を問わず修業年限が1年以上の学校に在学する人を指します。

ただし、定時制などの夜間学生や、卒業見込みかつ卒業後に同じ事業所に就職する予定の人、休学中の人はこの要件の例外として扱われる場合があります。

社会保険の適用拡大の背景・内容

2024年10月に施行された社会保険の適用範囲を拡大するに至った背景は、主に以下の3つとされています。

  1. 被用者(従業員)にふさわしい保障の実現を目指すため
  2. 多様化する働き方や雇い方が、制度の制限によって歪められないようにするため
  3. 社会保障の機能を強化するため

少子高齢化や非正規労働者の増加など、社会と雇用を取り巻く環境や課題は常に変化し続けています。それらに対応するため、すべての働き手が公平に社会保険の恩恵を受けられるよう制度が改正されました。

今回の改正では、従業員数51人以上の企業に勤務する短時間労働者が新たに対象となったことで、労働者の老後における保障の向上や医療費負担の軽減などが期待されています。

社会保険の適用拡大に関する注意点

最後に、社会保険の適用拡大に関する注意点を3つ解説します。

社会保険の加入対象となる従業員の把握が必要

社会保険適用拡大の中で重要なのは、加入対象となる従業員を正確に把握することです。

1週間の所定労働時間や1月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満であることのほかに、複数の要件を満たす従業員が対象となります。

要件が多く判定が煩雑になりがちですが、加入対象者の判定を誤ると未加入や加入漏れなどが発生し、結果的に企業側にペナルティが課される可能性があるため注意が必要です。

扶養範囲内で働く従業員への説明が必要

扶養範囲で働く従業員には特に配慮が必要です。社会保険の適用拡大によって適用対象となった場合、配偶者の扶養から外れる可能性があるためです。

誤解が生じると、従業員のモチベーション低下やトラブルにも発展しかねません。そのため、社会保険料の負担の変化や扶養から外れるメリット・デメリットなど、分かりやすく説明する必要があります。

企業が負担する保険料が増加

適用範囲の拡大により、企業が負担する保険料は増加する場合があります。今回の改正によって、単純に社会保険加入対象者が増えるためです。

そのため、企業は改めてコスト面を見直す必要があるでしょう。しかしその一方で、従業員の福利厚生が充実するため、長期的には労働力の定着や企業イメージの向上などのメリットもあるでしょう。

社会保険の適用拡大に柔軟に対応しよう

2024年10月からの社会保険適用拡大は、短時間労働者の福利厚生を向上させ、老後の保障を強化することを目的に実施された施策です。

従業員数51人以上の企業においては、新たに設定された条件を満たす短時間労働者が社会保険の適用対象になります。自社の対象者に正確に内容を説明するなど、制度の変更に柔軟に対応しましょう。

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