パート・アルバイトも福利厚生を受けられる?要件や種類・企業側のメリットについて

最終更新日時:2024/03/21

福利厚生サービス

パート・アルバイトの福利厚生

従業員満足度にも影響する「福利厚生」。昨今代表的な福利厚生のほかに企業独自の福利厚生を充実させている企業が多く存在しますが、福利厚生はパート・アルバイトに対しても適用されるのでしょうか。本記事では、パート・アルバイトも福利厚生を受けられるのかについて解説します。

福利厚生はパート・アルバイトも利用対象

福利厚生は、雇用形態に関係なくパート・アルバイトも利用対象です。

2020年4月に、社会における働き方の多様化に対応すべく、厚生労働省によって「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されました。この法令では、正社員とパート・アルバイトとの間に不当な待遇の差をつけることを禁止しています。

パート・アルバイトのほかにも、嘱託・準社員などさまざまな呼び名がありますが、厚生労働省では、「パート労働者」を以下のように定義しています。

「パート労働者」とは(第2条)

パートタイム労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)の対象である「短時間労働者(パート労働者)」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パート労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。

[引用:厚生労働省「パートタイム労働法が変わります。」]

つまり、どのような呼び名であっても、条件に該当する人を「パート労働者」と定義しています。一方で、パート労働者が福利厚生を利用するためには、法令や企業で設定している条件を満たすことが必要です。

福利厚生とは?種類や必要性・導入メリット、企業事例を簡単に解説

パート・アルバイトが福利厚生を利用するための要件

パート・アルバイトが福利厚生を利用するために、満たすべき要件を解説します。

法定福利厚生の要件

福利厚生は大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」に分けられます。

このうち、労働基準法をはじめとする法律に基づき、企業が従業員に提供することを義務付けられているものが「法定福利厚生」で、該当するのは社会保険や有給休暇です。

以下では、代表的な法定福利厚生とその要件を解説します。

雇用保険

雇用保険とは、労働者が離職・失業した場合に一時的に収入を補償するもので、企業と労働者が毎月それぞれ保険料を負担します。

パート・アルバイトが雇用保険を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 1週間あたりの労働時間が20時間以上であること
  • かつ継続して31日以上雇用される見込みがあること

ただし、学生はこれらの条件を満たしていても、雇用保険は対象外となるため注意が必要です。

健康保険・厚生年金保険(被保険者数が101人以上の場合)

健康保険とは、労働者の医療費の一部を補償する制度であり、厚生年金保険は労働者が将来的に年金を受け取るための制度です。

企業と労働者の双方が毎月保険料を負担しますが、被保険者数が100人以下か101人以上かで要件が異なります。

被保険者数が101人以上の場合に満たすべき要件は以下の通りです。

  • 1週間あたりの労働時間が20時間以上であること
  • 月額の賃金が8万8,000円以上であること
  • 継続して2カ月を超えて雇用される見込みがあること

健康保険・厚生年金保険(被保険者数が100人以下の場合)

同様に、被保険者数が100人以下の場合に健康保険・厚生年金保険を利用する場合は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 勤務時間及び勤務日数が正社員の4分の3以上であること
  • 継続して2カ月を超えて雇用される見込みがあること

なお、2024年10月より従業員数51~100人の企業で働くパート・アルバイトも社会保険の適用となり、要件は現在の被保険者数101人以上の場合と同等になります。

健康保険・厚生年金保険の要件は、従業員数ではなく被保険者数によって変わる点に注意しましょう。

法定外福利厚生の要件

法定外福利厚生とは、法律で義務付けられているもの以外で、企業が独自に従業員に提供する福利厚生を指します。具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 従業員割引
  • 正社員登用制度
  • 家賃補助・社宅制度
  • 健康支援
  • 子育て支援
  • 就職祝金制度
  • 特別休暇
  • 宿泊・レジャー施設等の割引

上記はあくまで一例であり、法定外福利厚生は各企業が独自で提供するため、内容や条件は企業によって異なります。

福利厚生の利用率が低い原因とは?向上させる秘訣や社員が求めている福利厚生について

福利厚生をパート・アルバイトに適用する企業側のメリット

福利厚生をパート・アルバイトに適用することで、企業側にもさまざまなメリットが発生します。

生産性の向上が期待できる

福利厚生をパート・アルバイトに適用すると、生産性の向上が期待できます。福利厚生によって満足度やエンゲージメントが高まり、仕事に対するモチベーションが向上するためです。

労働条件に不満を持っている従業員よりも、納得感・満足感を持っている従業員のほうが業務の質が高まる傾向があります。接客業やサービス業など、顧客と直接接する職種であれば、業績の向上に直接寄与する可能性もあるでしょう。

労働力の確保につながる

福利厚生をパート・アルバイトに適用することは、労働力の確保にもつながります。満足度の高い従業員が多い職場は離職率が低い傾向があるためです。

離職率の高い職場は慢性的に人手不足に陥りやすく、採用や人材育成に追われがちです。少子高齢化や若手不足が続く近年は人材獲得の難易度も高まっているため、労働力の確保は重要な経営課題といえます。

節税につながる

パート・アルバイトに福利厚生を適用することは、企業の節税にもつながります。法定外福利厚生も一定の要件を満たせば経費(=福利厚生費)に計上できるためです。

なお、福利厚生費を経費計上する要件は以下の通りです。

  • すべての従業員が利用できる状態になっていること
  • 負担する金額に妥当性があること
  • 現物支給とみなされないこと

福利厚生費は非課税対象として給与から差し引けるため、企業側が負担する保険料も軽減されます。

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法定外福利厚生の種類

法定外福利厚生は企業によってさまざまですが、ここでは比較的よく耳にするものを紹介します。

従業員割引

従業員割引とは、自社の商品やサービスを割引価格・特別価格で購入・利用できる福利厚生です。

従業員の満足度が高まることに加えて、自分たちが提供している商品・サービスを体験する機会にもなるため、間接的な人材育成につながる可能性があります。

自社の商品・サービスが個人向けでない場合は、企業向けに福利厚生サービスを提供している会社と提携して、擬似的な従業員割引や特典を作るのも良いでしょう。

正社員登用制度

パート・アルバイトの正社員登用制度も法定外福利厚生に含まれます。

個人差はあるものの、現在の職場でのキャリアパスをイメージしやすいため、仕事をするうえでのモチベーションになり得ます。普段の仕事ぶりと評価制度を連動させることでさらにモチベーションを高められ、人材育成を兼ねることもできるでしょう。

家賃補助・社宅制度

家賃補助・社宅制度は人気の福利厚生のひとつです。企業が従業員の家賃の一部を肩代わりしたり社宅への居住を安価で提供したりすることで、実質的に従業員の手取り収入が増えるためです。

ただし、従業員になるべく職場の近くに住んでもらえるよう、支給条件に「職場から◯km圏内」または「◯駅以内」などの基準を設けているケースもあるようです。

健康支援

法定外福利厚生に健康支援を採用している企業は少なくありません。具体的には、以下のようなものを会社で一部または全額負担するものが主流です。

  • 健康診断
  • 人間ドック
  • ワクチン接種

従業員の健康を守ることは、中長期的な欠員や長期休業による損失を防止することになります。また、近年は健康経営がトレンドのため、このような制度が従業員や社会からの信頼性向上にもつながるでしょう。

子育て支援

子育て支援として、出産・育児をサポートする制度を導入する企業も増えています。

政府が女性の働きやすい職場づくりを推進しており、共働き世帯も増加傾向にあることから、子育ては企業も協力すべき課題になりつつあるといえるでしょう。

法律で定められている育児休業とは別に産前・産後休暇制度を導入しているほか、職場に託児所を併設したり、保育費用の一部を企業が負担したりと、企業によって内容はさまざまです。

就職祝金制度

就職祝金制度とは、パート・アルバイトを含む新たに採用した従業員に対して企業が数千円〜数万円の祝金を支給する制度です。

就職祝金は労働の対価として支払う給与とは異なり、課税されないうえ福利厚生費として経費計上できます。

ただし、この制度にはさまざまなルールが絡み、「契約金」や「給与所得」とみなされ源泉徴収を行う義務が生じることもあるため、導入・運用する際は注意が必要です。現金を支給する場合は、どのような名目で、いつのタイミングで支払われたかによって適用される法律が異なります。しっかり確認したうえで制度設計しましょう。

特別休暇

有給休暇などの法定休暇とは別に、独自の特別休暇を設けている企業もあります。休暇の内容や期間は企業によって異なりますが、よく見られるのは以下のようなものです。

  • 慶弔休暇
  • リフレッシュ休暇
  • バースデー休暇
  • 勤続◯年休暇

これらの特別休暇は、欠勤扱いにならないのが一般的で、従業員の満足度につながりやすいため、多くの企業で導入されています。

宿泊・レジャー施設等の割引

宿泊・レジャー施設等の割引も法定外福利厚生に含まれます。

従業員だけでなく、その家族も適用になるケースが多く、休日やプライベートが充実することでリフレッシュ効果や満足度・エンゲージメントの向上などが期待できるでしょう。

パート・アルバイトのやる気が上がる福利厚生を導入しよう

パート・アルバイトであっても、条件さえ満たせば福利厚生を利用できます。

福利厚生を導入することで従業員の満足度やモチベーションが高まり、生産性の向上や離職率の低減につながるのが大きなメリットです。法定外福利厚生は企業によってさまざまであり、独自の制度を導入することで内外からの企業価値を高めることもできます。

自社の状況やリソースを鑑みて、従業員に喜ばれる福利厚生を導入しましょう。

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