ワークライフバランスを充実させる必要性とは?メリットを徹底解説!

最終更新日時:2022/10/24

ワークライフバランス

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これからの社会の基礎となる考え方であるワークライフバランス。社会全体で取り組みが進み、多くの企業でも課題のひとつとして掲げられているのではないでしょうか。本記事では、そもそもワークライフバランスを充実させる必要性とは何か、充実によるメリットとあわせて解説します。

ワークライフバランスとは?

ワークライフバランスとは、日本語で「仕事と生活の調和」のことです。「官民トップ会議」によって策定された「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章」では、仕事と生活の調和が実現した社会を、次のとおり定義しています。

「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」

[引用:内閣府男女共同参画局「仕事と生活の調和とは(定義)」より]

一部では、ワークライフバランスを「私生活の充実」だと誤解しているケースも見受けられます。仕事は日々にやりがいや充実感を与えるとともに、暮らしのための経済的基盤です。仕事か生活かのどちらか一方ではなく、仕事と生活が互いに良い影響を及ぼしていることが、理想の状態といえるでしょう。

なお、ワークライフバランスといっても、実際に仕事と生活の時間をどのような比率とするのかは、個人によって異なります。ライフイベントや家庭状況など、さまざまな要素によって変わってくるでしょう。

ワークライフインテグレーション

ワークライフバランスから派生した言葉に「ワークライフインテグレーション」があります。両者の違いは、仕事と生活を一体化(統合)して捉えているかどうかです。

「ワーク&ライフ インテグレーション」とは、会社における働き方と個人の生活を、柔軟に、かつ高い次元で統合し、相互を流動的に運営することによって相乗効果を発揮し、生産性や成長拡大を実現するとともに、生活の質を上げ、充実感と幸福感を得ることを目指すものである。

[引用:経済同友会「21 世紀の新しい働き方『ワーク&ライフ インテグレーション』を目指して」より]

ワークライフインテグレーションという言葉は、ワークライフバランスが仕事と生活を対立的に捉えているかのような印象を与える点を踏まえて、経済同友会から提案された言葉です。

ワークライフバランスの目的

ワークライフバランスの目的はどこにあるのでしょうか。ここでは、ワークライフバランスの目的を確認していきましょう。

仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章

政府は、政策としてワークライフバランスの実現を積極的に推進しています。政府が策定した「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章」で掲げられているワークライフバランスの目的(ゴール)は、次のとおりです。

  • 就労による経済的自立ができる社会
  • 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
  • 多様な働き方・生き方が選択できる社会

それぞれのゴールを詳しくチェックしていきましょう。

就労による経済的自立ができる社会

就労によって経済的に自立できなければ、仕事と生活の両立も難しくなります。その点で、就労によって経済的自立が可能な社会は、ワークライフバランス実現の前提条件といえるでしょう。

「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章」においては、特に若者の経済的自立が、結婚や子育ての基盤づくりに繋がるものとみなしています。

健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会

ワークライフバランスでは、健康で豊かな生活へ向けた時間の確保を重視しています。仕事に追われ心身が疲労し、健康に悪影響が生じているケースが多く見受けられるためです。

家族や友人との時間や地域活動の時間などを持つことが、働く人の豊かな生活や健康維持に繋がります。

多様な働き方・生き方が選択できる社会

憲章では、ワークライフバランスの実現を通じ、多様な働き方や生き方を選択できる社会の実現も目的に定めています。具体的には次のような状態です。

  • 性別や年齢にかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持ってさまざまな働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されている状態
  • 子育てや介護が必要な時期など、個人の状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、公正な処遇が確保されている状態

ワークライフバランスを充実させる必要性

政府による推進も活発なワークライフバランスですが、なぜワークライフバランスが必要となっているのでしょうか。ここからは、ワークライフバランスが求められるようになった背景を紹介していきます。

労働環境・仕事に対する意識の変化による影響

ワークライフバランスは、労働環境や仕事に対する意識の変化を背景として、その必要性が認識されるようになりました。

労働環境の変化としては、非正規社員が大幅に増加した一方、正社員の労働時間の高止まりが発生している状況が挙げられます。労働時間は減少傾向にあるものの、長時間労働者と短時間労働者という形に二極化し、週60時間以上の労働者が増加する現象も発生しました(働き方の二極化)。

仕事に対する意識の変化について説明すると、かつては男性が仕事一筋に生きることが当たり前で、理想の生き方と考えられる風潮がありました。しかし近年は、勤労者世帯の過半数が共働き世帯となるなど、人々の意識が変化してきています。

ただし、いまだに職場や家庭で男女の役割分担の意識が残っていることも事実です。結婚や出産の際に仕事の継続や柔軟な働き方を希望しても、対応の柔軟性が乏しいという問題も見受けられます。

ワークライフバランスは仕事の満足度に影響する

「少子化と男女共同参画に関する意識調査」によると、実際にワークライフバランスが図れていると感じている人ほど、仕事への意欲が高い傾向にあることがわかっています。

つまり、企業が従業員のワークライフバランス実現をサポートすることが、仕事へのモチベーションアップに繋がり、ひいては会社全体の生産性向上に繋がるということです。

[出典:少子化と男女共同参画に関する専門調査会「男女の働き方と仕事と生活の調和(ワークライフバランス)に関する調査結果概要~少子化と男女共同参画に関する意識調査より~」]

有給育休取得・産後就業継続率等の影響

ワークライフバランスの実現に欠かせない有給や育休の取得、そして産後就業継続率は、決して満足できる水準とはいえない状況です。そこで、これらの指標を改善する必要性が高まっています。

なお、ワークライフバランス政策における主な数値目標は次のとおりです。全体的に見て、実績は目標水準を下回っています。

表:ワークライフバランスのおもな数値目標

数値目標実績
就業率(20~64歳)80.00%82.20%(2020年)
フリーターの数約124万人約136万人(2020年)
週労働時間60時間以上の雇用者5.0%5.1%(2020年)
年次有給休暇取得率70.0%(2020年)56.3%(2019年)
第1子出産前後の女性の継続就業率55.0%53.1%(2010~2014年)
男性の育児休業取得率13.00%7.48%(2019年)
男性の育児・家事時間1日あたり2時間30分(2020年)1日あたり83分(2016年)

[出典:内閣府 仕事と生活の調和推進室「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)総括文書 -2007~2020-」]

ワークライフバランス充実による会社のメリット

ワークライフバランスを充実させると、会社にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは、会社側の主なメリットを紹介していきます。

優れた人材の確保・離職率低下

ワークライフバランスの充実によって、優れた人材の確保や離職率の低下が期待できます。たとえば、女性従業員が出産後でも就業を継続できるような環境があれば、女性従業員はキャリアを諦めずに済むでしょう。

また、採用面においても、そのような環境に魅力を感じる人からの応募が期待できます。優れた人材の確保や離職率の低下が進めば、経営課題である人手不足の解消に繋げられるでしょう。

生産性アップ

先ほど紹介した「少子化と男女共同参画に関する意識調査」が示すように、ワークライフバランスを充実させると、従業員の仕事に対する意欲が高まる傾向にあります。労働意欲の向上は、生産性アップにも繋がることでしょう。

費用削減

ワークライフバランスを充実させると、人材を確保しやすくなり、離職率の低下も見込めるようになります。そうなると、従来は必要だった採用や育成にかかる費用を削減することが可能です。

生産性アップによって労働時間を削減できれば、人件費を抑えられることはもちろん、オフィスの光熱費なども抑えられるでしょう。

女性社員の定着

ワークライフバランスを充実させて女性が働きやすい環境を整えると、女性社員の定着が見込めます。女性の場合、出産や育児の関係でプライベートに時間を割く必要が生じるため、業務継続のためには企業側の理解やサポートが欠かせません。

企業がワークライフバランスに理解を示し、積極的に推進することが、女性社員の働きやすい環境づくりに繋がり、退職や転職を防ぐのです。

企業体質の見直し

ワークライフバランスを推進するにあたり、重要なのが業務効率化や生産性の向上です。多くの場合、ワークライフバランスの実現には労働時間の削減と向き合う必要があります。そのため、企業は労働時間を減らしながらも、生産力や売り上げを維持しなければなりません。

業務効率化を図るためには、業務内容や体制の抜本的な見直しが求められます。結果として古い企業体質を見直すきっかけにもなるのが、ワークライフバランス導入のメリットです。

イノベーションの創造

仕事だけに時間を費やしていると、視野が狭くなり、広い視野で物事を考えにくくなります。また、いつも同じ人たちと時間を共に過ごしていると、新しい意見や考えに触れられず、思考も固まってしまうことでしょう。

ワークライフバランスによって従業員のプライベート時間が確保されると、仕事では得られない経験や人間関係を、従業員が形成できるようになります。結果として、広い視野や新たな考え方が身につき、クリエイティブな働き方が可能な従業員が増えていくでしょう。

企業イメージアップ

ワークライフバランスを充実させると、従業員満足度の向上だけでなく、対外的な企業イメージアップに繋がる可能性もあります。「従業員を大切にする企業」としてイメージアップが図れると、ステークホルダーからの信頼も高まるでしょう。

ワークライフバランス充実による従業員のメリット

ワークライフバランスの充実は、会社だけでなく、従業員側にも複数のメリットがあります。たとえば、以下のような点です。

  • 働き方の多様化
  • 経済的な自立
  • 業務の効率化・残業時間の削減
  • 健康維持
  • モチベーション維持
  • プライベートの充実

それぞれ詳しく解説していきます。

働き方の多様化

会社がワークライフバランスを充実させる手段として、次のような勤務制度の導入があります。

  • 在宅勤務(テレワーク)
  • 時短勤務
  • フレックスタイム制
  • 高度プロフェッショナル制度

柔軟な働き方が自社で可能になれば、オフィス勤務が困難な状況に立たされている人でも、退職することなく業務が継続できます。たとえば、在宅勤務が可能になった場合は、仕事と子育て、介護との両立が可能となるでしょう。

経済的な自立

会社に多様な働き方の選択肢がある場合、従来では子育てや介護の都合で離職せざるを得なかった状況でも、キャリアの継続が可能です。このように仕事と子育て、介護の両立が可能になると、生活環境の変化による仕事への影響が少なくなり、安定した収入を得られる人が増えていきます。

業務の効率化・残業時間の削減

仕事とプライベートのバランスが取れた状態だと、ストレスも少なくなり、仕事に対する意欲が高まる傾向にあります。モチベーションの高さは生産性や業務効率にもプラスに働くため、結果として残業時間が減り、より多くのプライベート時間を確保できるようになるでしょう。

健康維持

労働時間が適正化されれば、生活にかけられる時間が増えるだけでなく、心身の疲労を防ぎ、健康維持にも繋がります。また、十分なプライベート時間を確保できるようになれば、休日にスポーツや筋トレなどに取り組み、体力強化やストレス発散を図ることも可能です。

モチベーション維持

仕事とプライベートの双方の充実が図れるようになった結果、プライベート時間の不足によって生じるストレスや家族関係のトラブルなどが減少し、仕事中にプライベートの悩みを引きずる可能性が少なくなるでしょう。

高いモチベーションを維持しながら業務に取り組めると、おのずとパフォーマンスも高まります。このように、プライベートからの負の影響を減らし、仕事を充実させられる点がライフワークバランスのメリットです。

プライベートの充実

ワークライフバランスの充実は、プライベートの充実に繋がります。具体的には、家族と過ごす時間が増えることによる幸福感や、趣味に没頭することで得られる達成感や満足感などが挙げられます。

特に、それまでは仕事に比重が偏り、プライベートの時間が確保できていなかった人の場合、ワークライフバランスの実現によってプライベートに大きな変化がもたらされるでしょう。

自分自身でできるワークライフバランスの整え方

従業員にとってワークライフバランスは、会社側が制度変更などを通じて実現してくれるものと思いがちです。しかし実際には、ワークライフバランスは自ら取り組めるものでもあります。

ワークライフバランスの整え方の一例は、次のとおりです。

  • 不要な業務を洗い出して整理する
  • スケジュールを把握・整理する

要するに、業務効率化のために自己管理を徹底し、無駄な時間の発生を防ぐことが大切というです。これを実践することにより、仕事に費やす時間を抑え、プライベートに多くの時間を費やせるようになります。

ワークライフバランスを充実させてより良い社会へ

仕事と生活の調和を意味するワークライフバランスは、企業が積極的に推進することで、会社と従業員双方にとってメリットをもたらしてくれます。

また、ワークライフバランスの実現は、労働力不足の深刻化や生産性の低下、少子化問題に対しても、解決の糸口となるものです。ただし、非効率な労働体制のままワークライフバランスを推進すると、生産性の低い状態で労働時間だけ減ることになるため、ご注意ください。

必要性やメリットを理解したうえで、ワークライフバランスの積極的な推進を図っていきましょう。

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