フリーアドレス化を成功させる秘訣は運用ルール?ポイントや事前準備を解説

最終更新日時:2022/07/15

働き方改革

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昨今導入を検討する企業が増加しているフリーアドレス。導入を成功させるためにも運用ルールの作成は必要不可欠です。本記事では、そんなフリーアドレス化の成功に必要な運用ルールについて、ポイントや事前準備など詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

フリーアドレスとは?

フリーアドレスとは、自分のデスクなど決められた固定席を持たずに、オフィス内で自由に自身の席を決めて働くスタイルのことを指します。

そのため、フリーアドレスを採用しているフロアは、一見カフェのようなオープンな雰囲気となっていることが特徴です。近年、新型コロナウイルス感染症の拡大を機にテレワークの導入が一気に普及しました。

こうした変化により、「オフィス出社」の機会が減った企業においては、フリーアドレスを取り入れるケースも増えています。

導入する目的やメリット

多くの企業がフリーアドレスを導入する目的やメリットは3つあります。

  • コミュニケーションが活性化できる
  • 業務効率化に繋がる
  • スペースを有効活用できる

フリーアドレスでは座席が決まっていないので、日々の業務では関わることが少ない社員とも話す機会が増えるでしょう。

これまで関わることがなかった社員とコミュニケーションは、新たな価値観の共有、異なる視点の気付きを生じさせるため、業務効率化のヒントにもつながります。

さらに、フリーアドレスでは、個人の私物などを置きっ放しにすることがないことから、オフィス環境を有効活用できるメリットもあります。

社員全員分のデスクを設置する必要がないため最低限のオフィススペース運用が可能となり、コストを削減できる点も大きなメリットです。

フリーアドレス化における課題

フリーアドレスにはメリットがある一方で、以下のような課題もあります。

  • 導入の意義が共有できていない
  • 社内環境がフリーアドレス化に対応していない
  • 社員の居場所を把握することが困難
  • 業務に集中できない
  • 持ち物の管理が難しい

フリーアドレス化の課題をあらかじめ把握しておくことで、効果的に導入を進められるようになります。ここからは、それぞれの課題について解説していきましょう。

導入の意義が共有できていない

フリーアドレスを導入する意義を共有できていないと、社員からの協力を仰げません。

社員にとっては仕事環境が変わるため、目的やメリットが分からないと方針に対して不信感を抱いてしまうでしょう。導入の意義を共有できない場合、本来の効果を得られない可能性もあります。

社内環境がフリーアドレス化に対応していない

フリーアドレス化には、オフィスのWi-Fiといった無線LANを含む通信環境が整っていることが前提となります。

また、紙媒体での書類管理を行っていたり、社内外の連絡を固定電話で行っていたりする場合もフリーアドレス化が困難です。導入前にフリーアドレスに対応できる社内環境を整える必要があるといえるでしょう。

社員の居場所を把握することが困難

フリーアドレスでは、その日によって社員の居場所が変わるため、「どこにいるのか」の把握はしにくくなります。

オフィスの規模によっては探す手間が発生してしまうため、フリーアドレス化に合ったコミュニケーションツールを採用し、オフラインのコミュニケーションをサポートする工夫をしなければなりません。

業務に集中できない

フリーアドレスの環境によっては、業務に集中できないこともあります。その日によって会話の多い環境だったり、人の行き来が活発な環境で業務を行う可能性もあるでしょう。

静かな環境で業務を行いたい場合や、雑音が集中の妨げになるような場合は、業務効率と生産性が下がる可能性があります。

持ち物の管理が難しい

自席が決まっていないフリーアドレスは、業務に必要な持ち物の管理がしにくくなる特性もあるでしょう。

固定席の場合は、仕事に必要な筆記用具や書類をデスクに収納しておくことができますが、フリーアドレスでは、持ち物をデスクに置いておくことができません。

必要に応じて共有のロッカーなどを設置するなど、フリーアドレスに合ったオフィス環境が求められます。

フリーアドレス化の課題を解決するために必要な工夫

フリーアドレス化の課題は対策を立てることで、快適な環境を構築できるようになります。

フリーアドレス化に適した組織作り

フリーアドレスは、必ずしも全社的に導入する必要はありません。実際に多くの企業では、フリーアドレスに適した業務や部署など限定的に導入しているケースがほとんどです。

例えば、どうしても紙ベースでの書類管理が発生してしまう部署や社員の個人情報のほか、機密情報を多く取り扱う部署などは、フリーアドレス化に適していません。

その一方で、営業やマーケティングなどの外出や社内外のコミュニケーションが頻繁に発生する職種においては、フリーアドレスに向いているだけでなく、フリーアドレス化による社内交流の活性化が新たなイノベーションの種となることもあるでしょう。

そのため、フリーアドレスを「適材適所」的に採用した、組織作りを行っていく必要があります。

運用ルールの策定

フリーアドレスを導入をしてもルールが不十分な場合、期待されている効果を発揮できないだけでなく、生産性を落としてしまうこともあります。

私物の管理やフリーアドレス使用時のマナーは、フリーアドレス運用開始前に明確に策定しておき、誰もが快適に働きやすい環境を整えるようにしましょう。

フリーアドレス化の成功に必要な運用ルールのポイント

では、フリーアドレスの運用ルールは、どのように策定すべきなのでしょうか。ここではルール作りの際に押さえておくべき以下のポイントを詳しくお伝えします。

  • レイアウトを工夫する
  • 席が固定化しないようにする
  • 飲食時のルールを決めておく
  • ペーパーレス化を進めておく
  • 持ち物を収納する際のルールを整備する
  • グループアドレスを導入する
  • 電話や郵便物の取り次ぎルールを明確にする

それでは、それぞれのポイントをみていきましょう。

レイアウトを工夫する

フリーアドレス化の成功には、目的に合わせたレイアウトが重要なポイントです。例えば、部署や部門を超えたコミュニケーションを目的にした場合は、オフィスを回遊できるようなレイアウトを取り入れてみましょう。

また、シーンに合わせたレイアウトもあります。集中して業務を行いたいときは専用ブースを設けたり、リラックスしたい場合はカフェを想像させるようなレイアウトにしたりなど、目的やシーンに合わせてレイアウトを組み、社員の能力が発揮しやすい環境を整えましょう。

席が固定化しないようにする

フリーアドレスでは、暗黙の了解のもと、席が固定化してしまうことがあります。

せっかくの交流の機会が損なわれることのないよう、固定化がみられるような場合には、以下のような対策を実施してみましょう。

  • くじで席を決める
  • 定期的にグループを変える
  • 私物を置かないようにする

あらかじめ「原則として日々利用する席を変えること」といったルールを定めておくのも効果的です。

飲食時のルールを決めておく

フリーアドレスの効果を発揮しやすい環境をつくるためには、飲食時のルールも決めておくようにしましょう。

例えば、仕事をしている社員と食事をしている社員が隣り合わせになった場合、仕事に集中できなかったり、あるいは、十分な休息が取れなかったりといった弊害が生じてしまいます。

そこで以下のようなルールを設定しましょう。

  • 昼休みのみ食事可
  • ドリンクや軽食は可、食事は不可

上記のようなルールを守ることはもちろんですが、フリーアドレスでは、使用する社員全員がお互いに働きやすい環境を築き上げていくための配慮や気遣いが重要であることを意識しなければなりません。

ペーパーレス化を進めておく

フリーアドレス化に備えて、ペーパーレス化(紙の書類のデータ化)を進めておきましょう。

ペーパーレス化が実現できれば、社員はインターネット環境とデジタル端末さえあれば必要なデータにアクセスでき、業務をスムーズに進められます。また、書類のデータ化は書類を紛失してしまうリスク回避にも効果的です。

ペーパーレス化は、2つの方法を用いて取り組みましょう。1つは書類のPDF化です。データ化を行うことでこれまで物理的に存在してた紙の保管場所の削減ができます。

2つ目は、各種デジタルツールの導入です。経費精算や給与計算、契約業務のほか、申請・承認などのワークフローを電子化することにより、組織のペーパーレス化が一気に促進されます。

持ち物を収納する際のルールを整備する

フリーアドレスでは席の共有をするため、従来のような方法での私物の保管が難しくなります。

そのため、持ち物を収納する際のルールを決めておきましょう。

  • 私物はロッカーに収納する
  • 部署共有の文具や備品は共有ロッカーに収納する
  • 定期的にデスクを綺麗にする日を設ける

これらのルールを用いると、フリーアドレスのスペースに「私物が散乱」するようなことはなくなり、整然とした状態を保つことができます。

グループアドレスを導入する

フリーアドレスの導入に不安を感じ、導入に踏み出せない場合はグループアドレスの導入を検討してみましょう。

グループアドレスとは、特定の部署や一部のエリアのみで行うフリーアドレスのことです。グループアドレスを取り入れることで、気心の知れたメンバー間でのフリーアドレスが実施できるようになります。

また、部署やエリアにこだわらず、プロジェクト単位でフリーアドレスを取り入れる方法も、特に業務の効率化への効果が期待できます。

電話や郵便物の取り次ぎ方法を決める

自席が固定化されていないフリーアドレスの導入には、電話や郵便物の取り次ぎに関するルールを決めておくことも大切です。

これまで電話の取次を固定電話による内線で行っていた場合は、社用携帯電話の活用やクラウド型のPBXサービスへの移行を検討しましょう。

また、郵便物についても、電子化サービスを活用したり、社員自身が特定の場所からピックアップしたりするルールを設けることで課題を解消することが可能です。

フリーアドレス化の成功に必要な事前準備

フリーアドレス化を成功させるには、事前準備が必要です。具体的に、以下のような準備を行いましょう。

  • 導入目的の共有
  • オフィス環境の整備
  • 在席管理システムの導入
  • 感染症対策の整備

ここからは、それぞれの準備について解説していきます。

導入目的の共有

フリーアドレス化する際は、導入する目的を社員に共有することが重要です。

組織全体としての導入目的のほか、フリーアドレスによって社員が得られるメリットなども共有することで、全社的な協力体制が構築できるようにします。

オフィス環境の整備

快適に仕事できるように、オフィス環境を整えることも大切です。フリーアドレス化に必要な整備としては以下が挙げられます。

  • Wi-Fiや無線LANの設置
  • 私物を収納するロッカーの準備
  • 書類の電子化
  • ノートパソコンや社用携帯などの機器の準備

目的や業務内容に合わせて準備しておくことで、スムーズなフリーアドレス化へと移行できるようになります。

在席管理システムの導入

フリーアドレス化には、在席管理システムの導入が必要です。従来の固定席での働き方とは違い、フリーアドレスでは誰がどの席に着席しているのかが確認できません。

そこで在席管理システムを導入することにより、在席状況の可視化が可能になります。

このようなシステムでは、ログイン不要で利用できるツールや位置情報を確認できるツールなど、さまざまな機能が搭載されています。目的や業務の特徴に合わせて在席管理システムを選びましょう。

感染症対策の整備

現在のビジネス環境においては、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する取り組みもBCP対策として重要です。フリーアドレスでは、従来よりコミュニケーションの活性化が行えます。

その一方で、感染のリスクが高くなりやすいといったデメリットもあります。マスク着用を徹底するほか、デスクや椅子を使った後は除菌対策を行ってから離れるなどのルール作成が必要です。

フリーアドレス化の成功事例3選

ここまでフリーアドレス化の課題や準備すべきことについて解説しました。

ここからは、より具体的なイメージを持てるよう、フリーアドレス化に成功した事例を3つご紹介します。自社の課題や目的と照らし合わせながら参考にしてください。

1.日本航空株式会社

主に航空運送事業を展開する日本航空株式会社では、全社員が今以上にやりがいをもって働くための取り組みの一環として2015年度よりフリーアドレスを導入しています。

またレイアウトでは、1人用デスクを設置した集中エリアや、4人用のデスクを設置したディスカッションも可能なエリアなど、使用用途別の工夫を実施。社員は、自分の業務に合わせてその日の席を決めることができるようにしました。

こうした取り組みによって円滑な情報共有ができる環境を実現し、その結果、社員全体の生産性が向上したことによる残業時間の軽減を達成しています。

2.JX金属株式会社

JX金属株式会社は、銅などの非鉄金属製品を製造している企業です。JX金属株式会社では、「組織・人材を育むオフィス」という観点から一部の部署でフリーアドレスを採用しました。

また、本社移転の際にこれまでのレイアウトを一新。「来たくなるオフィス」をコンセプトにラウンジを設けたり、仕切りのない広々した空間に打ち合わせエリアを設置したレイアウトにしました。

JX金属株式会社では、オフィスの役割はを人と人が交流することで刺激がもたらされ、これからの社会の変化に対応できる新たな価値を創造する場所として位置付けています。

テレワークが普及する昨今では、オンライン上で業務が完結してしまうため、しばしばコミュニケーション不足が問題になっています。

そのような現代のビジネス環境の中で、JX金属株式会社のフリーアドレス化は社員同士のコミュニケーションの活性化の役割を果たしました。

3.キユーピー株式会社

キユーピー株式会社は「キユーピーマヨネーズ」をはじめとした調味料を主力としている食品メーカーです。キユーピー株式会社では「間接業務を効率化する」という目的のもと、フリーアドレス化が進められました。

具体的には、仙川工場にて5つの部署をまとめて1つのフリーアドレスエリアに集約。これによりコミュニケーションが活性化し、今までない視点からのアイデアが生まれるなどのメリットを獲得しています。

そのほかにも、実際に431件もの業務改善を達成し、約1万3692時間分の作業時間を削減する成果を上げています。

フリーアドレス化の成功のために運用ルールを作成しよう

本記事では、フリーアドレス化を成功させる方法やポイントについて解説しました。

フリーアドレス化には、コミュニケーションが活性化することによる情報共有の円滑化や新しい価値創造の促進といったメリットがある一方で、ルール破りやマナー違反が横行してしまうと「集中できない空間」になってしまうこともあります。

そのため、フリーアドレスの効果を得るためには、適切なルール策定と運用が重要です。本記事でご紹介した方法や事例を参考にしながら、ぜひ多くのメリットを享受できるフリーアドレス化を実現してください。

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