BYODに必要なセキュリティ対策とは?生じるリスクや運用の課題を解説

最終更新日時:2022/07/25

働き方改革

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近年注目が集まるBYODにはさまざまなメリットがあります。しかしその一方、セキュリティ対策を施さないと重大なリスクも生じかねません。本記事ではそんなBYODのセキュリティ対策について、運用の課題などとともに解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

BYODとは?

BYODとは、「Bring Your Own Device」の略で、会社の業務に対して個人使用の端末を利用することを指しています。

以前は、個人の端末で企業内のネットワークに接続することができなかったため、会社が支給するデバイスを活用し、業務を行うことが一般的でした。しかし、クラウド環境が整った昨今では、あらゆる端末からのアクセスが可能です。

このようにインターネット環境が整ったことから、BYODを採用するケースが増えています。BYODには、使い慣れた個人のデバイスを使用することによる業務効率の向上も期待されており、これらの理由から、今後もBYODの普及は進むものと考えられています。

BYODの無視できないデメリットはセキュリティリスク

BYODの活用には多数のメリットがありますが、その一方でセキュリティリスクもあるため、十分注意しなければなりません。

主なリスクとしては次のようなものが考えられます。

  • 紛失・盗難
  • マルウエア感染
  • 無断使用・なりすまし
  • 情報漏洩
  • アップデート管理

ここではそれぞれを詳しく見ていきましょう。

紛失・盗難

BYODの導入によって個人のデバイスを利用することになると、会社の端末よりも外に持ち出す機会が多くなることが考えられます。外出先での端末の利用は、紛失や盗難に合う可能性が高いことを意識しておくことが大切です。

会社としては、盗難・紛失が起こった場合にいち早く報告する義務があることを従業員に伝え、リスクヘッジができる準備を整えておくことが重要でしょう。

マルウエア感染

個人の端末には、Web閲覧やアプリの使用制限がかけられていないケースが多数でしょう。そのため、アプリストア以外で配布しているソフトウェアもダウンロードすることが可能です。

場合によっては、ソフトウェアをダウンロードしたことでウイルスやマルウェアに感染してしまうケースがあります。

もちろん、セキュリティソフトによってブロックできるケースもありますが、最新状態にアップデートされていないと、セキュリティホールを突かれて感染してしまうこともあるのです。BYODを導入する際は、セキュリティ対策について検討することが重要です。

無断使用・なりすまし

個人端末の利用で起こりうるのが、無断使用やなりすましです。例えば、端末を後ろから見ていた第三者に盗み見されてしまう懸念もあります。カフェなどのフリーWiーFiから情報を取得され、端末自体を遠隔操作されてしまうケースもゼロとはいえません。

これらの問題は、従業員自身が気をつけていても発生してしまう可能性があります。そのため、会社は他人による無断使用やなりすましの被害に遭うことのないよう従業員に教育することが大切です。

情報漏洩

個人端末を活用する場合、端末を遠隔操作され、そこから会社が管理しているシステムに侵入されるリスクもあります。その際、マルウェアの攻撃によってサーバーがダウンしたり、業務上使用する資料を閲覧されてしまうケースも否めません。

セキュリティが強化されていないフリーWiーFiの利用によっても、情報漏洩につながる可能性があります。そのようなリスクを防ぐために、2段階認証を設定したりデータを端末に保存することを不可とするなどの対策が必要です。

アップデート管理

会社の端末はアップデートなど一括で管理できますが、個人端末の場合はこのような管理が不可能です。そのため、従業員にアップデートを促す必要があります。

しかし、中にはアップデートを忘れている人や、端末が重くなることを懸念し、あえてアップデートをしない人もいるでしょう。その場合、ウイルス感染や情報漏洩のリスクが高まります。

とはいえアップデートを強制することはモラル的に難しいため、頭を抱えている担当者が多いことも事実です。

BYODの導入は難しい?運用の課題とは?

BYODは従業員・会社の両者にとってメリットの大きい制度ですが、セキュリティの問題を解決することは困難を極めます。主な理由として、以下の2つが挙げられます。

  • 端末管理の難しさ
  • 社員のセキュリティ知識

ここでは、それぞれを詳しく見ていきましょう。

端末管理の難しさ

セキュリティソフトや一括管理アプリを使用し、高いセキュリティを実現できると理想的ですが、個人の端末を管理することはモラル的にも問題があるでしょう。

BYODを実施する場合は、従業員を信頼してセキュリティ対策を高めてもらうことしかできず、運用面の難しさがあります。

社員のセキュリティ知識

セキュリティに対する意識が従業員ごとに異なる点も、BYODの導入がちゅうちょされる理由のひとつです。ある従業員は情報漏洩に危機感を持ち、高いレベルのセキュリティ管理を行っていても、他の従業員がその体制に対応できないケースもあるでしょう。

そのため、従業員にセキュリティ研修などを実施しながら、リスクに対する共通認識を高めていくことが重要です。

BYODを安全に活用するために必要なセキュリティ対策7選

BYODのセキュリティ対策は難しいものですが、以下で紹介する7つの対策を実施することで、情報漏洩などのリスクを最小限に抑えられます。

  1. 運用ルールの策定
  2. MDM・MAM・MCMの導入
  3. セキュリティ対策ソフトの導入
  4. VPNの導入
  5. クライアント証明書の導入
  6. DLPによる機密情報の監視
  7. 社員のセキュリティ教育の実施

ここではそれぞれの具体的な方法について詳しく紹介していきます。

1.運用ルールの策定

BYODを導入する際に最も重要なのが運用ルールの策定です。ルールを設けていなければ、従業員がどこまでセキュリティを意識すれば良いかわからず、認識の「ずれ」が生じてしまいます。

このずれが情報漏洩を引き起こしてしまう原因となったり、BYODの導入にちゅうちょする理由にもなっています。そのため、運用ルールを事前に提示しておくことは重要です。例えば、下記のようなルールを設けることが効果的でしょう。

  • USBにデータを移行させない
  • パソコンには覗き見防止フィルムを貼る
  • フリーWi-Fiは利用しない

BYODの導入時にこのような運用ルールを設けることは会社、従業員のどちらにとっても大切です。

2.MDM・MAM・MCMの導入

MDM・MAM・MCMと呼ばれる機能を導入することで、セキュリティリスクを低減できます。それぞれの機能を下記に説明しています。

  • MDM:会社のシステムから、個人端末をリモートで制御し、効率的に管理できる機能
  • MAM:業務に利用する端末の設定を会社で管理し、利用できる機能を制限すること
  • MCM:モバイル機器で使用するコンテンツや、内部資料に対する各権限を管理する機能

これらの機能を活用することで、セキュリティリスクを最小限に抑えることが可能です。

3.セキュリティ対策ソフトの導入

セキュリティ対策には安全性を高める対策ソフトを導入することも効果的です。ソフトウェアを導入することで、多くの場合、ウイルスなどの脅威を未然に防げるので、会社のデータや機密情報に被害が及ぶ可能性は減少します。

具体的には、EPPと呼ばれる、ダウンロードファイル内に含まれているマルウェアを検知し、攻撃を防ぐソフトウェアを導入すると安心です。ただし、未知のマルウェアに対しては効果が小さいといったデメリットもあり、万能とはいえません。

4.VPNの導入

特定の人のみがアクセス可能な「VPN」を導入することも1つの方法でしょう。VPNを利用することで通信を暗号化できるため、第三者が情報を盗み見することを防ぎます。

また、近年のVPNはその場にいなくてもリモート環境からVPNにアクセスできるため、離れた場所からのアクセスも可能とします。

5.クライアント証明書の導入

クライアント証明書を導入することで、他の端末からのアクセスを防げるため、セキュアな通信環境を維持できるのです。

具体的には、以下のような手順でアクセスを許可します。

  1. クライアント証明書を端末にインストールする
  2. クライアント証明書を持つ端末のみのアクセスを許可する

クライアント証明書がインストールされていない端末など、第三者からのアクセスを防ぐことができます。

6.DLPによる機密情報の監視

情報漏洩を防止できるDLPを活用するのも1つの方法です。DLP(Data Loss Prevention)とは機密情報を識別し、データそのものを監視してコピー制限をかけたり、情報送信を防いだりする機能のことです。

そのほかにも情報漏洩を防ぐセキュリティソフトは多数ありますが、DLPはコストパフォーマンスに優れている点や、機密情報以外の利用制限がされず、作業効率が落ちないという点がメリットです。これらを活用することで、より効率的に機密情報を守れるようになるでしょう。

7.社員のセキュリティ教育の実施

どれだけ高性能なシステムやセキュリティソフトを使用しても、情報漏洩のリスクを0にすることはできません。行動の甘さが原因で情報が漏れてしまうケースもあるためです。

BYODを導入するのであれば、セキュリティポリシーを遵守できるよう、社員に対してセキュリティ教育を実施することが不可欠といえます。

BYODはデメリットだけではない!5つの活用するメリット

ここまでBYODのデメリットやセキュリティ対策の方法について触れてきましたが、一方でBYODを導入するメリットも多く存在します。

  1. 従業員のモチベーションが向上する
  2. コストが削減できる
  3. ミスの軽減及び生産性の向上
  4. 快適なテレワーク環境を実現できる

ここでは、上記4つのポイントについて詳しく紹介します。

1.社員のモチベーションが向上する

BYODを導入することで社員のモチベーションを高められるでしょう。会社から支給されたデバイスを使う必要がなく、慣れた端末を利用できることはパソコンを使うときのストレスを軽減します。

また、デバイスを2つ持ち運ぶ負担もなくなります。仕事に対しても、これまでよりモチベーションが高まるかもしれません。

2.コストが削減できる

従業員の端末を購入する費用やランニングコストがかからない点も大きな魅力です。会社の端末を支給する際、デバイスの利用料金を払い続ける必要があり、運用コストが嵩みます。

一方で、個人の端末にアプリケーションをインストールする場合、端末の料金は一切かからず、経費を大幅に削減できます。

もちろんセキュリティリスクを考慮してソフトウェアを導入して利用する必要はありますが、端末を全従業員に提供するよりは安いコストで運用することが可能です。

3.ミスの軽減及び生産性の向上

自身が普段使っている端末からアクセスすることが可能となるため、操作方法に悩むこともなく、スムーズに仕事ができます。企業にとっての負担も少なく業務の効率化にもつながるでしょう。

BYODを導入することでミスを軽減し、生産性も向上できるのです。

4.快適なテレワーク環境を実現できる

会社から支給されたデバイスを利用する場合は、その端末を持ち歩く必要があります。しかしBYODの導入により自身のデバイスを業務に活用できることで、2台の端末を持ち運ぶ必要がなくなり、さまざまな負担も軽減されるでしょう。

快適なテレワーク環境を実現でき、仕事もはかどるのではないでしょうか。

BYODに必要なセキュリティ対策について理解しよう

本記事では、BYODのセキュリティ対策・リスクや運用の課題、メリットなどについて説明してきました。BYODの導入によって、働く人がより効率的に業務を行えるようになります。

会社、従業員のそれぞれにメリットが大きいBYODの導入はさまざまな点で有益ですが、本記事で紹介したようにセキュリティ対策を疎かにすることなく、安全に運用することが最も大切です。

安全性を確保したうえでBYODを活用し、快適かつ安全な環境のもとで業務を行いましょう。

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