小1の壁とは?発生する原因は?意味や企業が実施すべき対策法を解説

最終更新日時:2022/05/26

働き方改革

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小学校入学と同時に直面すると言われている「小1の壁」。 本記事では、「小1の壁」とは一体どういうものなのか、公的支援の現状や保護者ができる対策などをご紹介します。多様な働き方やキャリアの実現、しいては働き方改革の推進に向けて重要な課題なのでぜひ理解の参考にしていただければ幸いです。

小1の壁とは

小1の壁とは共働き世帯において、保育園時代と比べて、小学校に入学すると、途端に家事や育児と仕事の両立が難しくなることを意味する言葉です。

保育園の一般的な閉園時間は、延長保育の時間を含めると18時〜19時ごろが多いかと思います。ただし、園によっては、20時や21時まで開園しているところもあるでしょう。そのため、保護者は自身の終業時間や通勤の状況に合わせて、閉園時間を考慮しつつ保育園選びをすることができます。

しかし、公立の小学校には学区と呼ばれる学校単位の通学区域により、進学先が決められています。そのため、公立の学校に就学するのであれば、保護者が自由に小学校を選ぶことはできません。

また、小学校にも児童クラブや学童保育といった、放課後に子どもを預かってくれる施設や支援が学校ごとにありますが、これらの公的施設の運営時間は18時もしくは19時までとなっており、それ以上の延長ができないことがほとんどです。

さらに、小学校では、親の参加が必要な行事が「平日」に増えることやPTA活動といった仕組みも「小1の壁」という言葉が生まれた背景といえるでしょう。

小1の壁により望まぬ退職をする人も

民間の学童保育であれば、公的施設よりも遅い時間まで開所していることが多いため、制限を受けることなく仕事ができるものの、公的施設に比べて、月額利用料が平均5〜10倍ほどかかるといったデメリットがあります。

さらに「時短勤務制度」の利用も、法律が定める対象期間である「3歳まで」としている企業がほとんどです。

そのため、保育時間や平日行事の多さといった「小1の壁」は、祖父母など周囲に頼れる環境がない場合、解決することが非常に難しく、本来であれば望んでいなかった退職を決断せざるを得なくなることは珍しくありません

小1の壁が発生してしまう原因

小1の壁が発生する原因はさまざまですが、その根本には、保育園と小学校の役割や意義の違いがあるといえるでしょう。

ここからは以下の主な4つの原因を細かく解説していきます。

  1. 保育園と小学校の違い
  2. 時短勤務が続けられない
  3. PTAや学校の活動への参加が必要
  4. 学童保育における待機児童の課題

保育園と小学校の違い

保育園は、そもそも「保護者の就労と子育ての両立を支援」するための施設です。そのため、平日に行事への参加を求められることはほとんどなく、また待機児童などの問題を除けば、保護者はライフスタイルに合った保育園を選ぶことができます。

一方の小学校は、「子どもが義務教育を受けるための施設」です。つまり、保育園が「親のため」の施設であるのに対し、小学校は「子どものため」の施設となることから、就労上のさまざまな問題が発生することになってしまうのです。

時短勤務が続けられない

育児・介護休業法第二十三条では、適用要件を満たす社員が時短勤務を望んだ場合、企業は労働時間を短縮する制度の利用を認めなければならないとしています。そのため、社員が希望すれば、子どもの「3歳の誕生日の前日まで」の間は、時短勤務が取得可能です。

また育児・介護休業法において、3歳以上の未就学児を養育している社員に対しての時短勤務の適用については、企業の「努力義務」としています。そのため、企業によっては小学校入学前まで、時短勤務が可能な場合もあるかもしれません。

しかし、いずれにせよ小学校入学後の「時短勤務」に言及した法令はないため、入学後に時短勤務が認められるケースは、ほとんどないのが現状です。

[出典:e-Gov 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第二十三条]

PTAや学校の活動への参加が必要

小学校では、平日に保護者の参加が求められる行事が増えるのも原因の一つです。例えば授業参観をはじめ懇親会、個人面談などがあります。

また、保護者と学校、そして地域の連携を支援するPTA活動への参加を実体として義務づけているケースも少なくありません。

PTA活動では、地域の防犯活動や、学校行事のサポートや広報活動などをおこなうことになり、その多くが平日の日中での参加を求められることになるため、その頻度によっては、仕事の継続が難しくなってしまう場合もあるのです。

学童保育における待機児童の課題

厚生労働省が2021年に発表した​​「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)実施状況」によれば、放課後児童クラブを利用できない児童の数、いわゆる待機児童数は、1万3,416人いるとされています。

待機児童は、保育園だけの問題ではなく、小学校においても支援員の不足や施設の問題などから、そもそも児童クラブを利用したくてもできないケースが発生していることも事実として存在しています。

[出典:厚生労働省「令和3年(2021年) 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」]

国(内閣府)による小1の壁への取り組み

「小1の壁」に対しては、国も2014年に「放課後子ども総合プラン」を策定し、その4年後の2018年には「新・放課後子ども総合プラン」を発表するなどの課題解決に向けた取り組みを実施しています。

放課後子ども総合プランと新・放課後子ども総合プラン

「放課後子ども総合プラン」では、待機児童解消に向け、新たに放課後児童クラブの30万人分の整備を進めることを目標として掲げていました。その目標は達成したものの、待機児童の完全な解消までには至らなかったため、政府はさらに2018年に「新・放課後子ども総合プラン」を策定しています

このプランでは、まず2019年から2021年までに放課後児童クラブ約25万人分を整備することで学童の待機児童を3年間で解消し、その後2023年までに5万人分の整備をする計画となっています。

しかしながら、児童クラブの入所を希望する児童数が上回っている状況にあり、待機児童の問題は依然として解決されないままとなっています。

市町村や都道府県の体制・取り組みについて

市町村や都道府県ごとに放課後児童クラブおよび放課後子供教室の整備を進めていけるよう「行動計画策定指針」を作成し、「放課後子ども総合プラン」に基づく取り組みを、国が促す動きもあります。

同プランには、各市町村や都道府県が平成31年度に達成すべき目標事業量も記載されており、具体的には、小学校等の余裕教室の活用方法などが「行動計画策定指針」に記載されています。

また、都道府県や市町村における推進委員会や運営委員会の設置により、円滑な運営が可能となる体制づくりに努めることといった内容にも言及しています。

余裕教室の活用

余裕教室とは、現時点で教室として活用されておらず、また、学区域の児童数の状況から今後5年間も教室として活用される見込みのない教室のことを指します。

このような教室は、地域のニーズに応じて活用することが求められており、その用途の一つとして放課後児童クラブ施設としての活用も期待されています。

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保護者ができる小1の壁への対策

これまでお伝えしたようなさまざまな問題から、「小1の壁」に不安を抱えている保護者は少なくありません。

しかしながら、小学校入学後も育児と仕事を両立をしつつ、小1の壁を乗り越えている人たちがいるのも事実です。ここでは、主な対策を3つ紹介します。

民間学童保育の活用

主に学校に併設された公的な学童保育では、閉所時間が18時〜19時であることがほとんどですが、民間の学童保育であれば、20時や21時などの延長保育が可能な施設もあります。

「お迎え時間に間に合わない」ことが問題であれば、このような民間の施設を利用するのも一つの手段といえるでしょう。ただし、先にもお伝えした通り、民間の施設は公的な学童保育に比べて、利用料金が高額になりがちなのがデメリットです。

しかしながら、お迎えまでの間に「専門講師が宿題を見てくれる」「ネイティブ講師による外国語授業」といったサービスを充実させている施設もあり、保護者によっては、利用料を「+習い事代」として考えるケースもあるようです。

習い事を入れる

子どもが一人で通える範囲にある習い事や、送迎サービスを実施しているところを選び、「習い事+預け先」として利用するのも一つの手です。

そのような場合、例えば、子どもの友達同士で通えるなどであれば、子どもたちも寂しさを感じることなく楽しんで過ごすことができるかもしれません。普段から親同士が情報共有できる関係づくりをしておくことも大切です。

「ファミサポ」を利用する

「ファミサポ」とは、地域の行政がおこなう会員制の子育て支援サービスであるファミリーサポートセンターの略称です。

このファミサポでは、子どもの送迎や一時預かりを依頼することができ、その利用料金も民間のベビーシッターサービスや学童などと比べて、比較的低いことが特徴です。このような行政のサービスを積極的に使うのも良いでしょう。

子ども自身に任せる事を増やす

子どもは、親が思う以上に適応能力があり、たくましく成長しているものです。そのため、4年生ごろからは、学童保育を利用せず、一人で留守番をしているという児童も少なくありませせん。

もちろん、子どもの意見を聞いた上で決めるべきことではありますが、あと数年で子ども自身に任せられることや一人でできることが増えると考えられれば、小1の壁や低学年の期間をどう仕事と両立させるのかの計画も立てやすくなるのではないでしょうか。

企業における小1の壁への対策

人材不足が慢性化する現代社会における「小1の壁」は、一種の社会問題でもあります。そのため、企業側にも何らかの対策を講じる必要があるでしょう。

ここでは、企業ができる対策について、詳しく解説します。

テレワークの導入

テレワークの導入は、「小1の壁」対策としてだけではなく、育児や介護といった家庭の事情による離職を防止するための最も効果的な対策の一つといえます。

完全なテレワーク化が難しい職種や業務を担当する社員であっても、例えば午前中は会社で通常業務、午後からは在宅勤務に切り替えるといった勤務形態を取り入れることで、子育てと仕事の両立が可能になる場合もあります。

このような柔軟な勤務形態の導入は、離職の防止だけでなく、新たな人材確保の面でも大きなメリットとなります。

テレワークで生産性は向上するのか?低いと感じる原因や改善策を解説

就業時間の見直し

フレックスタイム制の導入や中抜け制度など、就業時間の見直しや体制を整えることも有効な対策となるでしょう。

具体的な対策の例としては、フレックスタイム制の導入のほか、勤務時間中に職場を一度離れる中抜け制度を設けることや、時間単位の有給休暇の取得などが挙げられます。

フレックスタイム制の一斉導入が難しい場合などは、個別の雇用契約書などで社員ごとの就業時間を設定する方法もあります。

マネジメント層へ育児の大変さを共有

育児や介護といった問題を、「個人の事情」として突き放すのではなく、大切な社員が抱える課題であり、企業としてサポートすべきことといった企業文化を醸成することも大切です。

そのためには、ただ制度を設けるだけでなく、制度を利用しやすい環境づくりも併せておこなわなければなりません。制度の必要性やメリットについての説明は、対象となる社員だけにおこなうのではなく、全社員に伝えるようにしましょう。

特にマネジメント層に対しては、貴重な人材流出を防ぐ施策であることだけでなく、育児と仕事の両立がいかに困難であるか、その実情を共有することで、チームにおいて、当該社員が不当な扱いを受けないよう配慮することができるようになるでしょう。

小1の壁は今後ますます解決が求められる課題

人材不足が深刻化する現代社会において、育児や介護などの理由から、社員が本来望んでいなかった、フルタイム勤務の断念や退職といった選択をするのは、社員本人だけでなく企業にとっても大きな痛手となってしまいます。

現状、国の政策もあり、このような環境の改善は少しずつ進んでいるものの課題はまだまだ多いのが現状です。そのため、「小1の壁」はもちろん、育児と仕事の両立は、社員のみに解決を任せるのではなく、企業が支援体制を築くことも重要となるでしょう。

柔軟な働き方の導入、育児中の社員が働きやすい企業文化の醸成など、企業ができる対策は多々あります。人材の確保といった企業における重要課題を解決しつつ、社員のワークライフバランスの向上を目指してみてはいかがでしょうか。

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