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働き方改革が逆効果に?負担が増えたと感じる原因や給与に関する問題

2022/12/09 2022/12/09

働き方改革

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日本でも多くの企業で進められている働き方改革ですが、それらの取り組みが一律に成功しているとは限りません。なかには、労働時間や労働環境を改善するための対策が、従業員の負担を増やしてしまうケースもあるようです。そこで本記事では、そんな働き方改革について、負担増加の原因や対策を徹底解説していきます。

働き方改革とは?

働き方改革とは、長時間労働や雇用形態による格差の是正、高齢者の雇用促進など、現代の労働環境における課題を解消することで、誰もが生き生きと長く働くことのできる社会や環境を構築し、「一億総活躍社会」の実現を目指すものです。

そこには、就労意欲のある人が個々の事情に応じて、多様な働き方が選べるようにすることも含まれるため、日本の社会や企業に定着している古い体制やルールを見直し改善する取り組みも、働き方改革の一つと言えるでしょう。

実際に、政府が定める働き方改革の定義にも、以下のように記載されています。

「働き方改革」は、働く方々が個々の事情に応じた

多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革です。

[引用:厚生労働省「働き方改革とは?」]

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労働人口の減少と働き方改革

働き方改革の背景には、現代の日本が抱えるさまざまな社会問題がありますが、その中でも最も関係の深いものが「労働人口の減少」です。

少子高齢化が急速に進む中、1995年に8,726万人に達していた15歳〜65歳の人口(生産年齢人口)は、、2015年に7,592万人、2020年には7,406万人と年々減り続け、2040年には5000万人台にまで減少すると予想されています。

労働力の中核となる生産年齢人口の減少は、企業が人手不足から経済活動の縮小を余儀なくされ、その結果、国の財源の悪化を招くことになります。

その一方で、総人口に対する高齢者の割合の増加は、周知の事実となっています。つまりは、社会保障制度の給付と負担のバランスが崩壊することで財政危機に陥り、最悪の場合、国家破綻へと発展してしまうリスクが高くなってしまうのです。

[出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」]

[出典:総務省 「令和3年版 情報通信白書」]

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働き方改革が逆効果になってしまった事例

誰もが働きやすい社会を目指すための働き方改革が、なぜ「逆効果」となってしまうのでしょうか。

その理由の一つには、通称「働き方改革関連法」によって施行された法令に対応するために、半ば強引に対策を実行してしまった企業が存在することが挙げられます。

働き方改革では、重要とする3つの柱として、「長時間労働の是正」「正規・非正規の格差解消」「多様な働き方の実現」の目標が掲げられています。

特に、「長時間労働の是正」に紐づいて改正された法律の中には、違反すると使用者に対する「刑罰」が科されるものもあるため、突貫的に実態にそぐわない改革を実行した結果、従業員の負担が増えてしまうなどのケースが発生したと考えられています。

このような背景から、企業での働き方改革が逆効果となった事例は、この「長時間労働」にまつわるものがほとんどです。

ここからは、長時間労働に敏感になるがあまりに逆効果となってしまった実際の例を3つ紹介していきます。

事例1:一斉消灯の導入事例

A社では、従業員に早く退社することを促すため、オフィスの「一斉消灯制度」を導入しました。

しかし、どうしても先延ばしにできない仕事を抱えた社員は、暗闇の中での仕事を余儀なくされていました。

当然、生産性が低下するだけでなく、暗闇で仕事をすること自体が、良い職場環境であるとは言えず、働き方改革の推進が完全に裏目に出てしまった事例です。

事例2:ノー残業デーによる定時退社の導入事例

B社では、従業員のワークライフバランスの実現のため、「強制退社制度」を設けました。決められた時間になると退社を強いられるため、仕事を持ち帰らなければならない事態が多発したのです。

そのため、会社近くのカフェやファミレスには、強制退社させられた人が押し寄せ、仕事をする姿も散見されるようになりました。

結局、従業員の間では「サービス残業を強いられている」と会社に対する不満やストレスを増大させるという逆効果が生まれてしまったのです。

事例3:「残業事前申告制」の導入事例

C社では、長時間労働を是正するために、残業については、事前に上長の承認を得る必要がある制度を導入しました。

しかし、現場の実態として、定時の時間内で完了できる業務量ではなかった点が解消されていなかったことから、管理職の「承認作業」の負担を増やすだけでなく、申告せずに残業してしまうケースや仕事の持ち帰りを助長する結果となってしまいます。

残業時間の削減に失敗しただけでなく、企業側が管理・把握できない労働時間を増やしてしまうなど、新たな課題を生む施策となってしまいました。

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働き方改革により負担が増えたと感じる原因

社内での働き方改革推進が逆効果となり、従業員にさらなる負担を課す状況が生まれる原因は、問題が根本的に解決されていない点にあります。

例えば、残業時間を減らしたいのであれば、「なぜ残業時間が多いのか」という原因を解明しなければ、問題解決の糸口を見出すことはできません。

残業の増加は、業務量や作業方法、フローや担当の振り分けなどに課題があることがほとんどです。しかしながら、原因そのものが放置された状況で、一方的に労働時間だけを制限されれば、従業員の業務負荷が増え、従業員のモチベーションは低下することは容易に想像できるでしょう。

結果的に、生産性も下がることから、誰も徳をしない「働き方改革」事例が生まれてしまうのです。

【解説】働き方改革の問題点とは?企業が直面する課題と解決策について

働き方改革が逆効果のまま放置するリスク

企業側の一方的な労働時間を制限するために導入したルールや制度が形骸化し、放置されることで、従業員には2つの不利益が生じます。

1つは、サービス残業が横行すること。そしてもう1つは、労働実態に即した適正な給与が支払われないことです。

サービス残業の横行

「エン転職」などの求人情報サイトを運営するエン・ジャパン株式会社が実施した「働き方改革に関する意識調査」によると、在籍する企業における働き方改革の取り組みによって自分の働き方が「変わった」と答えた人は22%という結果が出ています。

しかしその中には、労働環境が悪化したと取れる意見も上がっており、必ずしもポジティブな変化ばかりではないことがわかりました。

「会社の新たな政策にのっとって、まるで公務員のように必ず定時上がりをする社員の分まで仕事をしなければいけなくなった。残業時間もさらに増えている」

(30歳男性、100名以下の企業)

「残業が出来なくなり、家での仕事が増えた」

(38歳男性、1001名以上の企業)

[引用:エン・ジャパン株式会社「6,700名の社会人に聞いた「働き方改革」意識調査。働き方改革の課題は、取り組みと実態の整合性、仕事量の調整。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表―」]

業務改善や見直しを行わずに、安易に労働時間を削減する取り組みを実行した場合、当然ながら、本質的に残業時間を削減することはできません。

そのような状況で、定時退社ルールなどを強行した場合、従業員は、定時の時間内に終わらなかった仕事を家に持ち帰ったり、残業を申告せずに働き続けたりするようになります。

企業側からしたら、一見、残業時間が減り、労働環境の改善や人件費、オフィスの光熱費などのコスト削減に成功したように見えるでしょう。

しかし、負担が変わらない従業員にとっては、心身のストレスが蓄積され、モチベーションが下がるだけでなく、労働時間が正当に給与に反映されないことによる会社への不信感を募らせてしまうことになってしまいます。

働き方改革における長時間労働の是正とは?原因・問題点・対策について

給与に関する問題

労働基準法では、法定時間(1日8時間、週40時間)を超えて発生した時間外労働に対しては、割増率25%以上の割増賃金を支給することが義務付けられています。

さらに時間外労働が22時以降になると深夜手当が発生するため、割増率がさらにプラス25%となり、合計50%の割増賃金が支給されます。

しかし、企業側が一方的に残業を制限することで、企業側が把握できない時間外労働や休日出勤などが横行するほか、従業員自らが残業時間に関する上司からの指摘を恐れ、勤怠情報を改ざんしてしまうことも考えられます。

これらの行為は、本来支払われるはずの給与や割増賃金が未払いとなってしまうだけでなく、ブラックな労働環境を、ある意味、助長してしまうことになりかねないでしょう。

[出典:e-Gov 労働基準法第二十四条]

[出典:e-Gov 労働基準法第三十七条]

働き方改革を成功させるための対策

従業員にさらなる業務負荷を課すことになり、モチベーションの低下や生産性の悪化を招くような働き方改革の失敗は、できれば避けたいものです。

そこでここからは、従業員と企業の双方にとってポジティブな影響をおよぼす働き方改革を進めるための5つの対策について解説していきます。

業務の見直し

残業時間が多い、または減らない原因は、業務フローや作業方法に問題があることがほとんどです。

まずは、1日・1週間・1ヶ月などの期間ごとに、必ず発生する業務のフローや手段に、無駄や非効率が発生していないかを見直しましょう。

長きにわたってフローが確立されている業務ほど、その問題点に気づきにくいものです。「本当に必要な業務なのか」、「システム化は可能か」といった視点も持ちつつ、改善を実行します。

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管理職による積極的な推進

日本社会や企業には古くから同調圧力の考え方が根強く残っているため、上司が残業していたら先に退社するのは気が引けると感じる人は少なくありません。

そのため、まずは上司が積極的に定時退社や残業時間短縮などの、働き方改革に取り組む姿勢を部下に示すことが大切です。

経営層やマネジメント層が率先することで、社内に働き方改革に対する前向きな風土が醸成され、部下はより一層ポジティブに取り組むようになるでしょう。

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社内全体への周知

働き方改革は社内の一部の部署だけで実行しても、あまり目立った効果は得られません。

新しく導入する制度・ルールの意義や目的、期待できる効果などは、社内全体で共有し、すべての従業員が理解した上で運用を開始しましょう。

ITツールの導入

「業務フローが複雑すぎる」「単純なルーティン作業の負担が大きい」などが理由で残業時間が増えているのであれば、ITツールの導入を前向きに検討しましょう。

特に、膨大なデータを取り扱う、手入力が多く発生するなどの業務は、システム化することで、作業時間を大幅に削減できるだけでなく、ヒューマンエラーの軽減や、データ処理の正確性などから、生産性の向上も期待できます。

人事評価制度の見直し

日本社会においては、長らく「仕事優先の生き方」を美徳としてきた風潮が一部あり、人事評価においても、残業の多さを評価するケースは少なくありません。

残業することでプラス評価を得られるのであれば、従業員が仕事の効率化に積極的になることはないでしょう。

そのため、決められた時間内でより生産的・効率的に業務にあたり、残業なしで高い成果を生むことを評価する新しい仕組みの構築が求められます。また、評価基準はしっかりと可視化し、透明化を図ることも大切です。

働き方改革が逆効果にならないよう対策を実施していこう

企業における働き方改革は、社内の課題を把握することから始まります。

丁寧な原因追求や分析が行われないまま設計され、安易に運用を開始した制度やルールは、従業員の新たな負担となるリスクも高くなってしまいます。

表層的な制度やルールの設計ではなく、問題の本質を理解した上で解決策を編み出すことが、働き方改革における成功事例となるために重要なポイントなのです。

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