ストックオプション制度とは?仕組みやメリット・デメリット、手続きを解説

2023/11/16 2023/11/16

経営

ストックオプション制度とは

自社株を決められた価格で購入できる権利がストックオプションです。どのような制度か知らない方向けに、ストックオプション制度とは何か、仕組みからメリットやデメリットまで解説します。導入するための手続き方法も説明しているので、検討している方は参考にしてください。

ストックオプション制度の権利とは?

ストックオプション制度とは、株式報酬制度のひとつです。具体的には企業が社員に対して、自社の株式を一定の価格で買う権利を与えることを指します。

株式を購入できる価格・期間・数量には規定があるものの、効果的に運用すれば利益を得られるため、インセンティブとしても有効な制度です。

ストックオプション制度の仕組み

ストックオプション制度で得た株式は、任意のタイミングで売却できます。自社の株価が上昇した際に売れば、キャピタルゲイン(売買益)を得られるのです。

自社株を1株1,000円で購入できるストックオプションを5年期限・購入上限100株で付与した場合、5年間は株価の変動に関係なく1株1,000円で購入できます。仮に業績が好調で3年後の株価が1,500円になったとすると、社員は1株あたり500円安い価格で株を購入できるのです。

このタイミングで100株を購入し、1株1,500円で売却すれば、「1株500円の利益×100株」で5万円分のキャピタルゲインを得られます。

ストックオプション制度と似た制度の違い

ストックオプションの類似表現として、新株予約権と従業員持株会があります。しかし、これらはまったく別の言葉であるため、混同しないように改めて意味を理解しましょう。

新株予約権との違い

新株予約権は、株式を一定価格で購入できる権利を与える制度です。社員を対象にするストックオプション制度に対して、新株予約権は社内外のステークホルダーが対象になります。

また、新株予約権には4つの種類があります。

種類内容
社内向け発行ストックオプション制度のこと
社外向け発行資金調達を目的に社外のステークホルダーに新株予約権を発行すること
無償割当損失補填を目的に既存の株主に新株予約権を無償で割り当てること
有利発行新たな株主を募る際に割安な価格で新株予約権を発行すること

上記内容からもわかるように、ストックオプション制度は新株予約権の1カテゴリで、社内向けに特化したものです。社員へのインセンティブに限られるストックオプションと違い、ほか3つの方法は社外の協力者にも利益を還元できる手段と言えます。

従業員持株会との違い

従業員持株会は、給与から天引きした拠出金で自社株を購入する制度です。拠出金の額に応じた配当があるほか、企業によっては、拠出金に奨励金を上乗せするケースもあります。

ストックオプション制度が「株式を購入できる権利を付与する制度」であるのに対し、従業員持株会は「株式を保有できる制度」です。この大きな違いにより、株式を取得する流れや購入方法もそれぞれ異なります。

また、ストックオプション制度は権利の付与者だけが利用できるものですが、従業員持株会は会社の福利厚生として用意されていることが一般的です。このため、すべての社員が活用できるのも違いとして挙げられます。

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ストックオプションの種類

ストックオプション制度は、課税の仕組みなどに応じて5つの種類に分けることができます。

1.無償税制適格型

無償税制適格型ストックオプションは、社員が要件を満たすことで税制優遇を受けられるタイプです。無償の名のとおり、権利付与に際する支払いも発生しません。

権利の付与対象者条件や行使期間などの厳しい適格要件を満たす必要はありますが、権利行使時の所得に対する給与課税を免れることができます。株式を売却した際の所得は、譲渡所得となり課税対象です。

2.無償税制非適格型

無償税制非適格型ストックオプションについても、無償で権利を取得できます。無償税制適格型との違いは、権利の行使で得た所得に課税がある点です。適格要件を求められない反面、権利を行使したタイミングで最大約55%の給与課税が発生します。

株式売却時の所得に課税が発生する点は、適格型と同様です。非適格型の場合、権利行使時と売却時の2回にわたって税金が生じる点に注意しましょう。

3.有償型

権利の行使を有償で提供するのが、有償型と呼ばれるストックオプションです。発行価格で株式を購入する権利が得られるほか、キャピタルゲインの獲得にも一定の条件がつきます。

無償で取得できるタイプと異なり、有償型ストックオプションは有価証券扱いとなり、発生する税金は最大で約20%の譲渡課税のみです。

このように、無償型ストックオプションよりも税率が低くなる点が、有償型ストックオプションの特徴となります。

4.信託型

信託型ストックオプションは、全社員分のストックオプションを信託に預け、信託満了まで保管するタイプです。

信託満了までに社員に対してポイントを付与し、ポイント数に応じたストックオプションを割り当てる流れになっています。

有償型ストックオプションの新しい活用方法として注目されており、割当先を後から決められる、発行回数が1回で済む、株式の希薄化を防げるというメリットがあります。

5.株式報酬型

株式報酬型ストックオプション(1円ストックオプション)は、無償税制非適格型ストックオプションの一種であり、権利行使価格が1円に定められています。

このため、株式を取得する際の資金準備が容易であるのが特徴です。獲得できるキャピタルゲインが、権利を行使したタイミングの株価とほとんど等しくなる点も魅力でしょう。

退職金として活用されるケースが多くみられますが、。この場合は最大で約25%の課税となるため、給与課税よりも税率を低くできます。ただし、退職から一定期間内に株式を購入するなど、権利行使の理由が退職と紐づくことが条件です。

ストックオプション制度を企業に導入するメリット

ストックオプション制度は権利を付与するという特性により、企業に対して複数のメリットを生みます。

社員のモチベーション向上につながる

ストックオプション制度は、企業と社員の利益を合致させる手段であり、ストックオプション制度を導入することによって株価を意識する社員が多くなります。

株価は業績により変動するため、業績の好転が自身の収入アップに結びつく見通しをもつことで、社員のモチベーション向上につながるのです。

社員はキャピタルゲインの利益を上げるために業績の向上を目指すようになるため、会社に対する帰属意識も高くなるでしょう

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優秀な人材を確保しやすくなる

ストックオプション制度は、働き手に有益なインセンティブとして機能するため、優秀な人材を確保しやすくなります。

特に、業績への好影響が株価に表れている企業は有利です。ストックオプションによるキャピタルゲインが期待できるほど、優秀な人材が入社する可能性が高まるでしょう。

また、ストックオプション制度は一定の待機期間が発生するため、期間外に退職すると権利が行使できません。裏を返せば、優秀な人材を引き止める材料にもなるでしょう。

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社外協力者との関係を維持しやすい

顧問・社外取締役・業務委託者など、社員ではなくても社外協力者であればストックオプションの権利を付与できます。

これにより、権利行使までの長期的な関係構築ができるのがストックオプション制度のメリットです。

また、ストックオプションを報酬化できれば、キャッシュアウトを防ぐこともできるでしょう。優れた協力者を確保するための資金に余裕がない際にも活用可能です。

ストックオプション制度の導入により生じるデメリット

複数のメリットがあるストックオプション制度ですが、デメリットもあります。デメリットを軽視すると社員の意識や関係性にマイナスな影響を及ぼすため、注意が必要です。

株価下落による影響が大きい

株価は常に変動することから、上がり続けるという保証はありません。しかし、社員にとってストックオプション制度の存在が大きすぎると、些細な下落でもモチベーションに影響を与えてしまいます。

低迷期から抜け出せない期間が続くと、自身の努力が報われないと感じ、会社に対する信頼や帰属意識を失う社員も出てくるでしょう。

したがって、ストックオプション制度はあくまでインセンティブであり、モチベーションの中核は別の部分で補うことが重要です。

非対象者との間に不公平感が生まれる

ストックオプション制度は付与対象を選定する性質上、非対象者との関係性に問題が生じやすくなります。

特にストックオプションの付与基準が曖昧であるほど、非対象者は不満を覚えやすく、組織の一体感や士気を下げるリスクが高まるのです。

このような事態を避けるためにも、ストックオプションを付与する条件を明示することを心がけましょう。

権利行使後の離職率が高まる

ストックオプションの課題として挙げられるのが、権利行使後の離職率の増加です。ストックオプションは優秀な人材を確保する材料として機能する一方、権利を行使すれば在籍する理由がなくなるとも言えます。

権利行使によって利益が確定した場合、その社員は明確なモチベーションを失う可能性があり、離職を選択しやすくなるのです。

この事態を避けるため、ストックオプションの取得・行使を限定する「ベスティング条項」を設ける企業も存在します。べスティング条項によって、一定期間は権利を行使できないようにしたり、短期間ごとに限定した行使にとどめたりすることが可能です。

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ストックオプション制度の導入に必要な手続き

ストックオプション制度の導入には、会社法の第238条1項に基づいて手続きを進めていきます。基本的な手続きは、以下の3ステップです。

  1. 新株予約権における募集要項の決定
  2. 新株予約権者を管理する原簿の作成
  3. 新株予約権の登記申請

新株予約権における募集要項の決定

まずは新株予約権を発行するための募集要項が必要です。募集要項には、以下の項目を含めることが求められています。

  • 新株予約権の内容・数量
  • 無償あるいは有償の選定
  • 権利行使における価格と期間
  • 払込金額あるいは算定方法、払込期日(有償の場合)
  • 割当日

募集要項は、公開会社(譲渡制限のない株式を発行済みの会社)・非公開会社(株式の譲渡制限事項を定款で定めている会社)のどちらに該当するかによって、必要な内容が変わります。

また、役員にストックオプションを付与する場合、個別の要件を株主総会で議決しなくてはなりません。該当者がいる際は事前に確認しましょう。

新株予約権者を管理する原簿の作成

新株予約権原簿は、会社法で作成・保存を義務付けられている、株主の管理帳簿のことです。ストックオプションの発行後、滞りなく原簿を作成する必要があります。

この帳簿には、ストックオプションを付与された者の氏名や住所、付与日や行使期間、行使価格や行使可能株式数などの情報が記録されます。記載が必須の要項もあるため、会社法に照らし合わせて作成してください。

新株予約権の登記申請

新株予約権は将来的に株式となり得るため、発行の段階で登記申請が必要です。

新株予約権の割当日から原則2週間以内に一定の項目を記載し、法務局に登記申請をおこなわなければなりません。主な記載項目を以下に挙げます。

  • 新株予約権の名称・数量
  • 新株予約権における株式の種類・数の算定方法
  • 権利行使において出資される財産の価額またはその算定方法
  • 権利行使の期間・条件

登記申請後、新株予約権の発行が完了します。

ストックオプション制度を導入するのに向いている企業

ストックオプション制度は、従業員への効果的なインセンティブとなる仕組みです。インセンティブ効果の最大化を考慮した場合、ストックオプション制度は以下の企業が向いています。

  • 株式の上場を目指す企業
  • 株式を上場している企業

株式の上場を目指す企業

株式の上場を目指す企業は他の企業と比べて株式の価格が安く設定されることが多いです。そのため、社員は魅力的な条件でストックオプションを取得できる可能性があります。

加えて、株式が上場した後は株式の流動性が高まり、ストックオプションの価値向上が期待できるでしょう。

業績においても成長の余地が十分にあることからも、ストックオプション制度を導入することで、優秀な人材に対して自社のアピール材料を増やすことができます。

上場企業

すでに上場している企業は、株式の流動性が高く、市場価格が常に反映されているため、ストックオプションの価値を容易に把握できます。

自分自身の努力や成果が株価に影響を与えることから、社員はキャピタルゲインの利益を増やすためにも、自社の業績や成長に貢献しようとします。これが結果として社員のモチベーションアップにつながるのです。

このように、上場企業ではストックオプション制度のインセンティブ効果を最大限に発揮することができます。

ストックオプション制度を導入する際の注意点

ストックオプション制度を効果的に運用するためには、いくつかの注意点があります。

対応を怠ると期待した効果が得られないだけでなく、ストックオプション制度がマイナスに働く可能性もあるため、この機会に確認しておきましょう。

権利の付与に条件を設ける

ストックオプション制度では、権利を付与する条件を明確に設定しましょう。社員のモチベーションや帰属意識を高めたいからといって、すべての社員に権利を付与すれば良いというわけでもありません。

例えば、成果や勤続年数など、業績への貢献度を無視してストックオプションを付与すると、不公平感を抱く社員が出てくる可能性があります。曖昧な条件も不満につながるため、明瞭で説得力のある内容かどうかを判断すべきです。

そのため、自社への貢献度を客観的に示せる条件を設け、社員同士の軋轢が生まれないように工夫することが大切です。

権利を付与し過ぎないよう調整する

ストックオプションの権利を過剰に付与した場合、自社の株価に悪影響を及ぼす恐れがあります。権利が同時期に連続で行使されると、株式の希薄化を引き起こすリスクが生じ、既存株主が不利益を被ってしまうのです。

権利を調整する手段として、ストックオプションで付与される株式の持分比率を決めることが挙げられます。ストックオプションにおける株式の持分比率は、一般的に全体の10%程度に抑えることが望ましいと言われるので、把握しておきましょう。

導入するタイミングで効果に差が出る

ストックオプション制度は、導入のタイミングが極めて重要です。

株価が高い時期にストックオプション制度を導入するとキャピタルゲインが少なく、インセンティブとしての効果が弱まる可能性があります。

逆に株価が低い時期にストックオプションを発行できれば、社員が得られるキャピタルゲインが上昇する見込みが高まります。

したがって、ストックオプション制度を導入する際は将来的な株価を考慮して、最適なタイミングを見極めることが大切です。

ストックオプションとは定めた価格で自社株の取得権利を付与する制度

ストックオプション制度は、自社株を一定価格で買う権利を与え、売却時の株価との差額で利益を得られる株式報酬制度です。

ストックオプション制度を効果的に運用できれば、社員や社外協力者のモチベーションの向上が図れるほか、優秀な人材を確保しやすくなるメリットがあります。

企業の魅力を高める手段として、本記事を参考にストックオプション制度を有効活用してください。

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ビズクロ編集部
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