意思決定とは?正しい意思決定をするためのプロセスや種類・注意点を解説

最終更新日時:2023/11/22

経営

意思決定とは

日常生活の買い物や移動手段など、あらゆる場面で意思決定を行う機会は多いでしょう。しかし、ビジネスにおいては単純な選択肢ばかりとは限りません。状況に応じた最適な判断を下すために、本記事では意思決定とは何か、決断時のプロセスや注意点と合わせて解説します。

意思決定の定義とは?

意思決定とは、ある目標を達成するために、最も適した選択をすることを意味します。私たちは日常生活において、さまざまな意思決定をしています。たとえば何を食べるか、どの商品を買うかなどを考え、選択することも意思決定です。

ビジネスシーンにおいては、事業戦略の構築や組織の統廃合など、より複雑で重大な意思決定が求められる場面が多々あります。ビジネスにおける意思決定は組織の存続に関わるものです。そのため、慎重に情報収集や検討を行い、適切な選択をしなければなりません。

意思決定については、複数の学者によってそれぞれ定義されています。代表的なものとして、以下の2つを紹介します。

  • サイモンが提唱する定義
  • アンゾフが提唱する定義

それぞれ詳しく見ていきましょう。

サイモンが提唱する定義

ハーバート・サイモンはアメリカの経済学者であり、1978年に意思決定に関する研究でノーベル学賞を受賞した人物です。サイモンは意思決定を以下の2種類に分類しました。

  • 定型的意思決定
  • 非定型的意思決定

定型的意思決定とは、マニュアル化できる意思決定です。たとえば、コールセンターにおいて「顧客からAと質問されたらBと答える」というようなマニュアルがあるように、最適な選択が事前に決められており、その通りに行動することで問題を解決できます。

対して、非定型的意思決定とは、マニュアル化ができない意思決定です。たとえば、新型コロナウイルスの流行は誰も予想ができない未曽有の事態であり、各企業が対応を模索しました。このように、新たな問題に対して、現状を分析しながら対策を考え、意思決定を行うことが非定型的意思決定です。

ビジネスは市場や社会、環境の変化に大きく影響を受けるものであり、未知の状況を打破しなければならない場面が多々あります。したがって、企業は特に非定型的な意思決定を最適に行えるようになる必要があるのです。

アンゾフが提唱する定義

ロシア系アメリカ人の経営学者であるイゴール・アンゾフは、「戦略的経営の父」として知られている人物です。アンゾフは、意思決定を以下の3種類に分類しました。

  • 戦略的意思決定
  • 管理的意思決定
  • 業務的意思決定

戦略的意思決定は、経営者層が行う意思決定です。企業戦略の策定や経営資源の配布など、組織経営に関する意思決定を行います。

管理的意思決定は、主に中間管理職層が行う意思決定です。経営者層が決めた戦略の実現に向け、経営資源の調達や開発などに関する意思決定を行います。

業務的意思決定は、現場のリーダーが行う意思決定です。スケジュール管理や業務管理など、業務を円滑に遂行して生産性を高めるための意思決定を行います。

3つの意思決定のなかで、最も重要なのは戦略的意思決定です。戦略的意思決定は、管理的意思決定や業務的意思決定に大きな影響を与えるため、慎重な判断が求められます。

意思決定と問題解決の違い

「意思決定」と混同されやすい言葉として「問題解決」があります。2つにはどのような違いがあるのでしょうか。

問題解決とは、実際に発生している問題を解決することを意味します。問題解決の目的は「問題を解決すること」です。詳細なプロセスとしては、現状の分析によって問題の原因を明らかにし、解決策の考案および実行を行います。

対して、意思決定の目的は「複数ある選択肢から最適な選択肢を選ぶこと」です。問題解決のプロセスの一つともいえるでしょう。

しかし意思決定は、すでに発生した問題に対してのみ行われるわけではありません。問題を未然に防ぐための選択や、新たな市場開拓に向けての選択など、あらゆるシーンにおいて意思決定が行われます。

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意思決定の質を高める7つのプロセス

質の高い意思決定を行うためには、以下の7つのプロセスを踏む必要があります。

  1. 対象を明確にする
  2. 必要なデータを集める
  3. 代替案を検討する
  4. 有効性を吟味する
  5. 意思決定を行う
  6. 計画を実行する
  7. 結果を振り返る

それぞれのポイントをしっかり理解し、最善な意思決定を行いましょう。

1.対象を明確にする

まずは意思決定を行う対象を明確にします。どのような課題や目標に対して意思決定をするのかが明確でなければ、適切な選択をすることはできません。何のために目標を達成したいのか、どのような成果を求めているのかなどを整理しましょう。

対象が明確化したら、チームのメンバーにも内容を共有します。対象に対して共通認識を持つことで、その後の分析や議論もぶれることなく進められるでしょう。

2.必要なデータを集める

次に、意思決定を行うにあたって参考となるデータを集めます。自らの経験だけを頼りにするよりも、具体的なデータも参照するほうが、より客観的で正しい判断を下すことができます。

データの収集方法としては、以下のやり方があります。

  • 社内外のデータを整理する
  • 市場調査を行う
  • 外部のコンサルティングを受ける

正確なデータや情報を多角的に収集することが重要です。また、同じ状況に対処した成功事例などがあれば、その選択も参考になるでしょう。

3.代替案を検討する

目標を成し遂げるための選択肢は複数考えられるでしょう。ここでは、意思決定の選択肢となりうる代替案を考案します。代替案を検討する際には、市場状況や顧客ニーズ、コスト、担当部署など、多角的な側面を考慮しながら案を出していきます。

特に企業においては、部署間の利害関係やコストなどの事情により、選択を変えざるを得ない局面もあるものです。万が一の際にスピーディーな方向転換ができるよう、この段階で考えられる限り複数の代替案を用意しておくとよいでしょう。

4.有効性を吟味する

複数の代替策を考えたら、それぞれの有効性を吟味し、選択肢を絞り込んでいきます。メリット・デメリットを整理し、目的を達成できる案であるのか、課題はないかなどを細かく分析しましょう。

施策内容を吟味する際は、フレームワークを活用すると効率的です。施策分析のフレームワークには、以下のものがあります。

  • SWOT分析:自社を「強み・弱み・機会・脅威」の観点で分析
  • PEST分析:外部環境を「政治・経済・社会・技術」の観点で分析
  • 3C分析:市場を「顧客・競合・自社」の観点で分析
  • VRIO分析:経営資源を「経済価値・希少性・模倣可能性・組織」の観点で分析
  • 4P分析:マーケティング戦略を「製品・価格・流通・販売促進」の観点で分析

以上のフレームワークは、多角的な視点で施策を分析するのに役立ちます。状況に適したフレームワークを用い、細やかな分析を行いましょう。

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5.意思決定を行う

代替案の吟味が完了したら、いよいよ意思決定を行います。これまで集めた情報や分析結果をもとに、目的達成に最もふさわしい案を選定しましょう。

このとき、必ずしも1つの案に絞り込む必要はありません。複数の案を組み合わせることも一つの選択肢です。

意思決定の最終的な目的は、目的を達成するための選択をすることです。柔軟な発想を持ちながら、意思決定を行いましょう。

6.計画を実行する

意思決定をした後は、実際に施策を実行します。

まずはメンバーに決定事項を共有したのちに、具体的な実行計画を立てましょう。スムーズに施策が進むよう、いつまでに、誰が実行するのかなどを明確化し、実行に移します。

また、計画実行後も逐一進捗状況を確認し、課題が生じた場合には随時対策を講じましょう。

7.結果を振り返る

最後に、今回の意思決定によって目的が達成できたのかを振り返ります。意思決定プロセスを振り返り、適切な選択だったのか、改善点はないかを分析しましょう。

PDCAサイクルを回して意思決定プロセスを最適化することで、別の機会での意思決定において経験を活かすことができます。

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意思決定モデルの種類

一般的に、意思決定は以下の3種類のモデルに分類されます。

  • 合理的意思決定
  • 直感的意思決定
  • 創造的意思決定

それぞれの特徴を詳しく解説します。

1.合理的意思決定

合理的意思決定とは、過去のデータを分析しながら論理的に意思決定を行う方法です。客観的なデータに基づいて判断するため、根拠が明確であり、成功確率も高い傾向にあります。

合理的意思決定においては、どのデータを参照するかが重要なポイントです。不正確なデータを用いてしまうと、正しい意思決定ができなくなってしまいます。信憑性のある正確な情報を収集し、分析する必要があります。

2.直感的意思決定

直感的意思決定とは、自分自身の経験を基に、直感で意思決定する方法です。過去のデータの結果が、必ずしも現在の状況に適合するとは限りません。現場での経験値を活かした直感的な判断が、成功につながる可能性もあります。

直感的意思決定で用いられる直感は、多くの成功・失敗体験によって形成されるものです。意思決定を行う人の経験値の高さが求められます。

3.創造的意思決定

創造的意思決定とは、これまでに経験したことのない課題を解決する際に、創造力を用いて選択を模索する方法です。特に変化の激しい現代において、未曽有の事態に直面することは避けられません。そのなかで、創造性を発揮することで、これまでにない画期的なアイディアを生み出せる可能性があるでしょう。

創造的意思決定では、案の比較・検討を慎重に行う必要があります。実現可能な案であるのかを論理的に考察したうえで、最終的な意思決定を行いましょう。

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意思決定を実施する際の注意点

意思決定を実行する際は、以下の3点に注意しなければなりません。

  • 情報が少ない状況で実施しない
  • 情報や意見の視野を狭めない
  • 過去の先入観に捉われない

正しい意思決定ができるよう、それぞれのポイントを見ていきましょう。

情報が少ない状態で実施しない

情報が少ない状況での意思決定は、選択を誤る可能性が高まります。したがって情報収集のステップで、正確な情報を可能な限り多く入手しましょう。

情報収集では、市場調査を行ったり社内外のデータを集めたりするほか、外部の専門家からアドバイスを受けることも有効な手段です。さまざまな側面から情報を収集したうえで、意思決定を行いましょう。

情報や意見の視野を狭めない

情報や意見の視野を狭めないことも、気を付けたいポイントです。せっかく多くの情報を集めたとしても、吟味する前から「この意見は違う」と排除してしまうと、新たな可能性を見出せなくなります。

また社員同士で話し合いを進める際にも、同調圧力によって意見が失われないよう、それぞれの考えに耳を傾けることが大切です。少数派の意見のなかに貴重なヒントが隠れていることもあります。チーム内で良好なコミュニケーションを取ることを意識し、活発な議論を展開させましょう。

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過去の先入観にとらわれない

意思決定を行う際には、過去の先入観に捉われないよう注意する必要があります。

過去のデータや経験は、意思決定を行う際の重要なデータであり、それらを分析することは大切です。しかし、組織や市場の状況は常に変化しており、過去と同じ状況はありません。過去に適切だった選択が、現在もふさわしい選択であるとは限らないのです。

過去のデータを分析しながらも、現在の状況に適しているかを冷静に見極める必要があるでしょう。

意思決定プロセスを促進するためのポイント

意思決定プロセスを促進するポイントとして、以下の5つがあげられます。

  • 解決する問題を明らかにしておく
  • 正確な情報を元に論理的な議論を行う
  • 意見が違うことを否定しない
  • 意思決定に期限を設ける
  • 繰り返して意思決定を実施する

それぞれ詳しく解説します。

解決する問題を明らかにしておく

意思決定プロセスを促進するための1つ目のポイントは、解決する問題を明らかにすることです。

どのような問題を解決しなければならないのか、何が課題であるのかを把握していなければ、最適な選択はできません。目的を明確化することで、その後の意思決定プロセスをスムーズに進められます。

正確な情報を元に論理的な議論を行う

意思決定を行う際には、正確な情報を用いて論理的に議論しましょう。

検討材料となる情報に誤りがあれば、当然間違った選択をしてしまいます。そのため、情報収集は慎重に行い、信頼できるデータを集めなければなりません。

また、代替案の有効性を議論する際には、論理的に話し合いを進めましょう。それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのか、課題解決が可能であるか、なぜそう言えるのか、などを徹底的に議論することで、正しい意思決定へと導くことができます。

意見が違うことを否定しない

意思決定に至るまでのプロセスでは、異なる意見が衝突することもあるでしょう。その際、意見が違うことを否定せず、さまざまな可能性を検討することが大切です。

年齢や立場、部署などによって、課題に対する見方や考え方は異なります。しかし自分とは違う意見を聞くことで、今まで見えなかった可能性に気付く場合もあります。互いの考えを受け入れながら、建設的な議論を行いましょう。

意思決定に期限を設ける

よりスピーディーな意思決定を行うためには、期限を設けることも大切です。いつまでに意思決定をするのかを事前に設定することで、各プロセスを効率的に進められます。

意思決定を行う際には、データの分析や代替案の比較・検討などのプロセスを踏む必要があることを説明しました。しかし、各プロセスに時間をかけすぎてしまっては、意思決定が遅くなってしまいます。意思決定が完了しなければ、施策も実行できません。

意思決定が遅れてしまうと課題が深刻化するリスクも高まるため、可能な限り迅速な意思決定を行うことが望ましいです。期限を設定し、計画的に意思決定のプロセスを遂行しましょう。

繰り返して意思決定を実施する

意思決定の質を高めるためには、意思決定を何度も繰り返し実施することがポイントです。経験を積むことで、意思決定プロセスをよりスムーズに進められるようになります。

さらに、意思決定を行う度にプロセスをフィードバックすることで、意思決定スキルをより向上させることができます。正しい意思決定ができたか、課題はないかを振り返り、PDCAサイクルを回しながら、経験を次に活かしましょう。

意思決定とは数ある選択肢から最適解を選ぶこと

本記事では意思決定の定義やプロセスについて解説しました。意思決定とは、数ある選択肢のなかから最適な案を選ぶことです。

目標達成や課題解決に向けて正しい意思決定ができるよう、本記事で紹介したポイントを理解し、繰り返し実践しましょう。

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